ゲーム概要
Dの食卓2とは、株式会社ワープが1999年にリリースしたドリームキャスト専用サバイバルホラーゲーム。略称は「D2」。前作「Dの食卓」と直接的なストーリーのつながりはない。
ゲームシステム
前作Dの食卓が建物内の決まった場所を探索する形式だったのにたいし、今作は主人公(ローラ)を屋外で自由に動かし、探索をすることができる。建物内は基本的に決まったポイントしか動けない。
屋外を歩きまわっていると一定確率で敵(設定ではモンスター化した現地人)と遭遇し、コントローラでねらいを定めて銃で撃退しなければならない。敵を倒すと経験値を得られ、ローラの各種ステータスが上昇する、RPGのようなシステムとなっている。
ストーリー
2000年のクリスマス、カナダ上空を飛行していた旅客機がテロリストの襲撃にあい、さらに隕石の直撃をうけて山中に墜落してしまう。旅客機に乗っていた主人公「ローラ・パートン」は奇跡的に生還したが、そこで彼女を待ち受けていたものは…。
登場キャラクター ※ここから先は本編のネタバレを含みます
- ローラ・パートン CV:駒塚由衣
主人公。前作のローラとの繋がりはない。飛行機事故の生き残り。キンバリーが避難する山小屋の中で目覚めて本編が開始する。この時点で記憶を失っている。不思議な力に守られていて、その力に導かれる。彼女だけはセリフが存在せず、困惑や狼狽するリアクションだけが描かれる。
- デビッド・ブレナー CV:大塚明夫
FBI捜査官。拳銃を所持していてテロリストと撃ち合うシーンがある。飛行機事故の後はローラと行動を共にしていたらしい。本編開始時点では消息不明でローラの回想のみに登場する。
- ジェニー CV:小桜エツコ
飛行機事故の生き残り。カナダに住む祖父の元に遊びにいく予定だったが事件に巻き込まれてしまい、ローラと行動を共にする。
- キンバリー・フォックス CV:幸田直子
ニューヨークのアングラシーンで詩人として活動している。飛行機事故の生き残り。両親の死後、男からの暴行で男性不信になり、深いトラウマを抱えている。ドラッグ「リンダ」を常習していて言動が不安定になることがある。
- パーカー・ジャクソン CV:山野井仁
CETI(地球外知的生物探査)のエンジニア。飛行機事故の生き残り。6500万年前にカナダに落ちた隕石を研究することが目的で、宇宙やUFOに強い興味を持っている。おおらかな性格。
- ノレックス・ゲオルギータ CV:ケン・サンダース
魔術師の格好をした人物。テロリストを操ってハイジャックを起こさせる。破壊の神「シャドウ」に導かれていて、シャドウの名前を何度も呟く。飛行機事故の後も生き残り、シャドウの元へ向かう。
- ラリー・デヴェルー CV:荒川太朗
サングラスをかけたテロリスト。魔術師に従ってハイジャックを行うが、心から魔術師に従ってるわけではないらしい。飛行機事故の後にローラが目撃する最初にモンスター化する人物。
- クリフ・アンドリューズ CV:中井和哉
長髪のテロリスト。ラリーに従ってハイジャックを起こす。苛烈なように見えて気が弱く臆病。飛行機事故の生き残り。
- キャサリン・ハウ CV:一木美名子
客室乗務員(ゲーム内の表記はスチュワーデス)。本編では既にモンスター化している。墜落した飛行機から救難信号を発信していて、そこに駆けつけたローラと戦闘になる。キャサリンの足元に倒れている緑色の服を着た女性(モデルは広末涼子らしい)をサブマシンガンで撃つと物を投げて反撃してくる。
- ボブ・レインズ CV:永井一郎
ジェニーの祖父。クリスマスに遊びに来るジェニーを喜ばせるために懐から鳩を取り出す手品を練習していた。本編では既にモンスター化していて採掘場に着いたローラと戦闘になる。
- ジョン・ブレナー CV:大塚芳忠
カナダの山奥の研究所に勤務するブレナー薬品の研究員。リンダを製造している。大量のリンダを摂取していて言動が異常な状態になっている。デビッドの弟。
- ケニー・ブレナー CV:山野史人
マッドサイエンティスト。地球の滅亡に関する研究を続けている。潤沢な研究資金を手に入れるためにリンダを製造していた。デビッドの父。
- リンダ・ブレナー CV:麻生美代子
ケニーの妻でデビッドの母。本編では既に他界している。記憶がコンピューターに移植されていてケニーと会話するシーンがある。ドラッグ「リンダ」は彼女の名前からケニーが命名したもの。
- ケビン・ノイズ CV:藤本譲
宗教家。オウムと暮らしている。予言書を所持していてローラを運命の子であると語る。
- トム・ワーレン CV:野島健児
音楽家。部屋に立てこもってピアノのレッスンに励んでいる。異常なまでに母親を恐れている。隠し部屋に蝶の標本を収集している。
- マーサ・ワーレン CV:弘中くみ子
トムの母親。音楽家でバイオリニストだった。夫とは離婚している。トムに過度な期待をして英才教育を施し、リンダを与える。その結果、凶暴性に取りつかれたトムによって顔を焼かれ、火傷を仮面で隠している。
- ルーシー・パートン CV:榊原良子
博士。ローラの母。ルーシー・パートン研究所の設立者。クローン技術の研究をしていた。研究中の事故で他界。記憶を研究所のコンピューターに移植させている。
- ローラの父
氷漬けのマンモスの胃袋に消化されずに残っていた羽根の生えた人の形をした男性。
- グレートマザー CV:北浜晴子
ローラを導き、ローラの命を何度も助ける存在。「グレートマザー」は心理学者ユングが生み出した心理学用語で何かを育てる力や包み込む力、生産する力の象徴。
- 破壊の神シャドウ
本編のラスボス。「シャドウ」は心理学者ユングが生み出した心理学用語で他の人を恨んだり、呪ったり、嫉妬したりする暗い衝動の象徴。キャラデザインのモチーフは恐らくテレンス・マッケナの「神々の糧」の表紙の絵から。
※デビッド、キンバリー、パーカーは役割は違うがエネミー・ゼロからの手塚スターシステムが採用されている。
※主人公ローラの名前は前作のDの食卓とエネミー・ゼロの主人公と同じ。
本作を合わせてローラ三部作と呼ばれている。
評価
- ゲーム開始時点では雪山下山のサバイバルなのだが、終盤では地球を救う話へと広がっていき、エンディングでは環境問題や人類の戦争の歴史が羅列される。
- 自然、環境、遺伝子、歴史、人間と植物(ドラッグ)、人間個人についての哲学などメッセージ性が散りばめられているものの明確な描写がないのでプレイヤーがゲーム内の表現を見て読み解くのは非常に難解。
- 登場人物は狂気と混乱ばかりを表現していて後の展開に関わってくることもなく、その場限りの演出が多い。そのせいで淡白な印象を与えがち。
- なんの伏線もなくローラが選ばれた人間である事も唐突に描かれたりと荒削りな部分がある。物語のスケールが大きいのに説明不足が多く、ストーリーを「電波」と称するプレイヤーも少なくない。
- キャラクターのバックボーンについて設定があるものの、それについても説明が少ない、もしくは全く説明がないので伝わりにくい。
- バイオハザードのような三人称視点のアドベンチャーゲームに近い表現だが、同じ扱いにされるのが嫌だったのかジャンルはなぜかRPG、敵との戦闘のたびに画面が切り替わるのはテンポが悪い印象を与えがち。
- 逆に当時では高いクオリティの映像、加えて飯野賢治の作る独特な世界観の表現や音楽を好むファンは国内外に存在していて、評価は賛否両論と分かれている。
シナリオ
飯野賢治はシナリオ制作で大量の本を読み込んでいて、ホテルにカンヅメになって本を読み込むシーンが確認できる。(映像の4:35あたり)
参考文献は500冊購入し、200冊は完全に読み込んだらしい。
その中でも「神々の糧」「個を超えるパラダイム」「SO MANY WORLDS」を挙げ、特に「地球白書1999-2000」を推している。(D2読本より)
D2本編に散りばめられたメッセージについては例を挙げると…
- 植物化するモンスターは人間の森林破壊によって植物と動物の共存のバランスが崩れていることを表現している。植物化する人間は破壊の神シャドウの意志の象徴。
- ストーリーの根幹にクローン技術が展開されていて、中盤で登場するクローンキンバリーはその伏線となっている。
- ドラッグ「リンダ」は植物から精製されており、リンダの常習者が多いのは植物による人間への寄生を表現している。
- 植物から精製されたドラッグ「リンダ」の常習で狂気や凶暴性を持つ人間が増えていくのは、人類と植物の共存と闘いを表現している。
- オープニングの隕石は地球を支配する恐竜や人間に対する警告や罰。恐竜の時代を終わらせた6500万年前の隕石になぞらえて、今回の隕石もモンスターの出現に関係性があるとしている。
- 氷土から発見されたマンモスの胃に残っていた男性はグレートマザーが遣わした羽根の生えた人の形をしたもの。その精子を使って生まれた新人類がローラという設定。
- 前作Dの食卓の「D」はDracula(ドラキュラ)だったが、今作ではDNA(デオキシリボ核酸)、Drug(ドラッグ)、Dream(夢)、Dusk(夕方)、Dawn(明け方)、Destruction(破壊)と複数の意味が込められているらしい。
3DO M2版 Dの食卓2
- 開発中止になった3DO M2版のDの食卓2開発中のゲーム映像
主人公は前作のローラの息子で、舞台は中世の古城。
ローラの家系や血の謎を描く予定だったらしい。
時間経過で朝・昼・夜の演出が入ることになっていたようだ。
- 3DO M2版Dの食卓2ムービー
(3:43)で悪魔を呼び出すシーンがあるが、これがD2におけるシャドウに当たるのかは不明。
そして、(5:41)では前作のローラが飛行機に搭乗しているシーンがある。身籠った赤子を悪魔に奪われた後に飛行機が墜落。ローラの生死は不明。魔術と飛行機の墜落はD2本編と似通っている。
M2版Dの食卓2の構想がD2でも踏襲されているのかは不明である。
飯野賢治はM2版Dの食卓2について特にコメントを残しておらず、彼が他界してしまったことで前作のローラがどのような結末を迎えるのかは永遠の謎になってしまった。
謎、疑問点
- リアルな世界観を描いているのに対してローラが極寒の雪山をスーツ姿で走り回るのはリアリティに欠けるという声が上がった。それに対して飯野賢治は刺激や感動や冒険心という言葉を挙げて「絵として、あれでいい」と回答している。
- クローンキンバリーの出生については作中で明言されていない。序盤の山小屋でキンバリーが口の中にモンスターの触手を捩じ込まれるシーンがあるが、その時点でDNAを採取されて複製されたという推測ができる。しかし、実際のところは不明。
- クリフ(テロリスト)、ケビン(宗教家)、トム(音楽家)の殺害、ブレナー薬品の貯蔵庫でローラを監禁して凍死させようとする人物がリンダで正気を失ったキンバリーとの推測ができる。しかし、キンバリーが手を下したという確証が得られるシーンは描かれていない。
- 終盤ではローラ以外のキャラクターは全員死亡(もしくは消滅)するのだが、ラスボスとの戦闘後に時間が巻き戻り、全員生存してると思われるシーンになる。グレートマザー側のローラが勝利したことでシャドウの力が及ばない世界に書き換わったという意味だと推測できるが、特に明確な説明はなく、この現象も含めてプレイヤーの想像力に委ねられる場面は多い。