F-82
えふはちにい
まるで架空機のような恰好をしているが、ちゃんと実在した戦闘機である。
型式番号は『F-82』(命名基準変更前は『P-82』)。
P-51の設計を流用した長距離戦闘機であり、「ツイン・ムスタング」と名づけられた。
その姿は文字通り『ムスタングの双子』である。
武装はP-51と同じく12.7㎜機銃が6連装されており、もちろん一撃離脱にも威力を発揮した。
第二次世界大戦前のアメリカ、とりわけアメリカ陸軍航空隊(USAAF)では、
爆撃機(B-29)の飛行に完全に随伴し、護衛できる戦闘機を求めていた。
だが、当時の戦闘機(P-38、P-47、P-51等)ではいずれも航続距離が足りず、
またはパイロットが一人なので、操縦の負担も大きい短所があった。
そこで要求されたのが『爆撃機に随伴し、長躯護衛できる護衛戦闘機』である。
これに対してノースアメリカン社が提案したのが「F-82」で、
なんとP-51を2機繋げた恰好になっている。
これは開発期間を最短にするための措置で、もちろんエンジンも同系になっている。
両方のコクピットに操縦装置があり、2名の搭乗員は交替しながら操縦できる。
(もう片方は航法を担当)
もちろん、主翼で左右をつなげた恰好に由来している。
武装はP-51と変わらないが、搭載量などがほぼ2倍となった。
さらにエンジンが改良型になっているので、最高速度も良くなっている。
(742km/h:6400m)
二人乗りなのを生かして夜間戦闘機型も作られた。
これがF-82F/Gで、それぞれ100機と50機が生産されている。
また夜間戦闘機ならば単純な「迎撃機」でよく、一撃離脱を生かせる利点もある。
ただし昼間では「軽快な単発戦闘機」との空戦で太刀打ちできない。
これはP-38やMe110のような双発戦闘機に共通の項目であり、
運用が短命で終わった要因ではないかとも考えられる。
(他にもF-89やF-94など、「もっと高性能の戦闘機」が開発された事もある)