PS13形パンタグラフとは日本の鉄道で使用された集電装置の一つ。
概要
物資が極度に欠乏した太平洋戦争末期に、運輸通信省(のちの国鉄)が設計した戦時仕様の電車用ばね上昇式パンタグラフ。
限られた材料で、できるだけ簡便な工作で組み立てることを目的としており、管材の代わりに板材を曲げ加工した下枠や、斜材を廃した簡易なスタイルが主な特徴。
戦時設計のモハ63形電車やEF13形電気機関車(※)に採用されたが、本格的に普及するようになったのはむしろ戦後であり、強度は不足気味なものの離線しにくいなど、コストの割に信頼性は意外に高いことから、PS16形パンタグラフが登場するまでモハ90系(のちの101系電車)やモハ20系(のちの151系電車)等の新性能電車でも使用された。
(※国鉄の直流電気機関車には大電流を扱う舟が重いこと、非常時の確実な電流遮断から通常であれば空気上昇式パンタグラフを使用する。)
運輸省規格形電車にも採用されたため、規格形電車の製造しか認められなかった戦後混乱期には私鉄各社でもPS13形パンタグラフを搭載した電車が登場し、その後も引き続きPS13形パンタグラフを採用する私鉄もあった。
戦前の私鉄のパンタグラフは各社銘々の機種を積んでいたため脚の寸法規格が異なるものもあり、載せ替えの際に取付台そのものの改造を要するものもあった(小田急デキ1051など)。
戦後しばらくパンタグラフがこれ一択であった時期があること、国鉄では上述の新形2系列で積んでいた時期があることからも分かる通り、パンタグラフの取り付け脚の寸法規格は後継機種でも揃えられており、結果として広い互換性を持っていた。
後にシングルアームパンタグラフが量産されてからも、在来機種からの置き換えの場合PS16等と(つまりはPS13とも)取付台の位置を揃えたものが用意されている。かくして1980年代まではバリバリに現役の事業者もあったが、2000年代を過ぎるころにはさすがに保存的性格の物以外現役を退いている。
なお、1993年生まれの相鉄9000系にも搭載されていた時期があった。工業デザイン的に50年近い差異があった両者は相当のミスマッチであったが…。