概要
Project G-1とはトラウマになるトーマス作品である。
その恐ろしい内容と狂気的な展開は多くのトーマスファンの批判を浴び、トーマス関係で最も悪名高い2次創作の1つとして語り継がれている。一方で立体モデルや完成度の高さを評価する声も存在しており、賛否が分かれる作品となっている。
作品解説
Shed17
1945年、イギリスのソドー島は比較的無傷の状態で第二次世界大戦を乗り切った。この島は戦時中には捕虜が収容されており、生物学博士の称号を持つヴィルヘルム・ゴッツェ教授は妻のオルガ、息子ハンスと共に亡命して島へ逃げていた。
彼が行っていた研究は、ヒトゲノムを解読し操作できるようにするという内容だった。息子のハンスもこの研究を受け継いで戦後にはイギリス本土に戻り、生物学と工学を学んで遺伝物質を機械に結合することを可能にした「バイオフュージョン(生体融合)」という論文を発表した。
島に戻った彼はソドー研究所を設立して大規模な複合施設を作り上げ、同時期に結婚して息子のトーマスを授かった。トーマスは幼少期から鉄道が大好きで、父親のハンスと同様に蒸気機関車に強い興味を持っていた。
やがて鉄道網が発展すると英国鉄道網の管理下におかれ、トップハムハット卿が新たな局長として派遣された。彼は金と権力に取り憑かれた主戦奴で鉄道の利益のためだけに動いており、島を発展させたが島民からは大変に嫌われていた。
ある時、トーマスが踏切の近くで列車に撥ねられて重体となった。父ハンスと祖父ヴィルヘルムが彼の遺体を回収して「17番機関庫」に持っていき、そこで2人はトーマスに自分達の研究である生体融合を施し、機関車に変身させて蘇らせた。事故から1年を経て「きかんしゃトーマス」が現れ、トーマスの人間時代の友達だった機関士のキースと、その友人で研究者のオーウェンはメディアから様々なことをインタビューで答えた。
親子は機関車になったトーマスを鉄道で働かせることはないと答え、彼を鉄道での業務から外した。実際にトーマスの車体がどこまで機械的で有機物がどこにあるのか2人にもわからず、運行中の事故でトーマスが壊れてしまうことを恐れていた。
しかし、トップハムがソドー研究所の支配的株主になると生体融合に対する志願者が続出し、多くの人間が乗り物として生まれ変わった。この頃から一部の人間は鉄道での業務を開始するが、親子が危惧していた通りトラブルが続出した。
最初にトラブルを起こしたのはジェームスだった。彼は人間だった頃にお金をあまり持っていなかったため、自分の人生を担保にして資金を借り手術を受けた。機関車になった彼は旅客列車の運用に動員されるが丘を登るのに苦労し、その後何度も走行実験を繰り返したところ無理が祟って重症になってしまう。このために彼は業務から外され、展示要員として観光客の見せ物にされてしまった。
この時期からテレビシリーズの撮影も始まるようになるが、撮影中にエドワードが汽笛から出血するなどの事態が起こると撮影側は問題のシーンを編集・削除した上で世に公開した。このような事実を知らないトーマスの物語は世界中で話題になり、多くのファンを集めた。
実際には生体融合実験は外に漏れていないだけで何度も失敗していた。しかし手術を受けるためには大量の支払いが必要となる他に、トラブルがあった場合の免責事項への署名が必要となっていたため、誰も声を上げることができなかった。このようなときに、トーマス以外の多くの機関車が問題を露呈し始めていたことを尻目にソドー研究所は外国へ技術を輸出し始めた(劇中では中国铁建、インド国鉄、スペイン鉄道機関)。
さらに手術に失敗した機関車にさえ無理に仕事が課されるようにさり、機関車達が金儲けの奴隷にされていることを知ったハンスはすぐに教授職を辞任した。父親のヴィルヘルムに至っては自分が生涯をかけた研究に一体何が起きているか理解できず、絶望と自責の念に苛まれ頭を拳銃で撃って自殺してしまう。
各所で続いていた事件の隠蔽工作はゴードンの一件で世にバレた。彼は莫大な支払いを経てソドー島で当時の最大機関車になった。彼は鉄道で働きたがっていたものの、研究所の職員たちは大きさの問題のために走行を恐れていた。
深夜に試運転が行われ、キースとオーウェンも立ち会った。ゴードンの窯に火が入れられると彼は熱さを訴え、火を消してくれと要求する。それを見たキースとオーウェンは彼に近づくが、何が起こるか見たかったトップハムによって阻止される。ゴードンは窯の高温高圧で体内の水分が蒸発し、体内に燃えやすい有機物が残っていたため体が内臓から燃え始め、ついには壮絶な大爆発を起こしてしまった。
キースとオーウェンはかすり傷程度で済んだが、この事故で複数の作業員が怪我をした。オーウェンがすぐに救急車を呼ぶことを提案するが、トップハムは機密情報保護を理由に突っぱねる。このままでは負傷者らが死んでしまうと思った彼らは最終的にヘリコプターになっていたハロルドを使い病院に搬送することにしたがこれが大失敗し、ハロルドは途中で空中分解し墜落する。免責事項に署名などしていない作業員の死となると誤魔化すことができなくなり、また爆発時の煙はどこからでも見えてニュースに載ってしまったため、マスコミが来る前にトップハムは後片付けを命じた。
既に鉄道で働いていたヘンリーが呼ばれ、彼は作業員の死体やゴードンとハロルドの残骸を海に捨てた。しかしある時、ポイントの切り替えを間違ったためにかつてトーマスに最初の整体融合が行われて以来立ち入り禁止になっていた17番機関庫に入ってしまった。
ヘンリーは禁断の機関庫の中を見ると「トーマスが実は本物ではなく、実際は実験で生み出されたクローンである」という事実を知る。彼は猛スピードで引き返し、知った事態の異常性をトップハムにぶつけて激しい口喧嘩を繰り広げる。その後ヘンリーは自分の機関庫に帰り、トーマスに「17番機関庫には近寄るな」と警告する。
翌日からヘンリーはフライング・キッパーと呼ばれる本土行き特別鮮魚貨物列車を引っ張る任務を任された。もともとこの路線は古くなっていて真冬に走るには危険すぎる上、魚の運搬は船や陸路の方がコスパがよかったのでわざわざ使う必要がないとされ、不必要な業務が再開されたことに島民は衝撃を受ける。
1983年2月8日、ヘンリーがキッパー路線を使い始めて2週間後に起きた出来後は後に真相を隠して絵本になり、テレビシリーズでも再現された。表向きは「待避線に入るポイントが凍っていて手前の信号がつかなかった」とされていたのだが、実はトップハムが事前に鉄道用のスパイクを打ち込んでおり、意図的に事故を起こさせていた。ヘンリーはそれを知らずに待避線に入ってしまい、そこにいた貨物列車と衝突して炎上する(この時、目撃者になる可能性があったヘンリーの乗務員達は見殺しにされ、雪の中で死んだ)。
即死を免れたヘンリーのもとにトップハムが現れて「クルー修理工場に出そう」と持ちかける。そこで彼は「新しい大きな窯をつけてもらえる」「作り替えてもらえば特別な石炭もいらない」と説明するが、本当はクルー工場というのは当時イギリスで2つしかない、機械部品だけでなく有機物も取り扱ってリサイクルできる廃車場だった。騙されてスクラップ墓場に送られたヘンリーは生きたまま解体され処刑される。
ヘンリーの事件がトーマスの耳に入ると彼は「17番機関庫の秘密を知って処分された」と悟り、ヘンリーが生前に与えたアドバイスを無視して17番車庫を訪れることを決意。乗務員が去ってもまだ蒸気が残っていた彼は自力で研究所を訪れ、限界寸前の中で彼は周りに人がいないことを確認して17番機関庫の中に入った。
生体融合実験が始まって以降、世界中の多くの人々が疑問に思っていた「なぜ最初の生体融合は完全に成功し、他のほとんどが失敗に終わったか」という問いの答えをトーマス自身が目の当たりにした。17番機関庫の中はトーマスのDNAを使って機関車を作ろうとした痕跡で溢れており、何度も失敗した記録もしっかり残っていた。最終的にトーマスは自分が大量のクローンの中の1つであることを理解し、そのショックで中身の爆発を起こしてしまう。彼はいつも仲間を友達だと思っていたが、仲間からは彼はただの役に立つ道具としか思われていなかったという事実は、彼に耐えられるものではなかった。
1983年にイギリス政府がソドー島で起きた一連の事件とソドー研究所に対して調査を始め、翌年に生体融合技術はヨーロッパ全土で使用禁止になった。1984年7月の核フラスコ検証実験を最後に、公的な生体融合に関連した全ての業務は終了となる。
トップハムは前後して突如姿を消し消息不明となった。トーマスは23回にも及ぶ再建手術を受け、今もなお集中治療で生かされている。
しかし世の中から完全に生体融合が消えることはなく、中国では未だに政治犯を鉄道車両に生体融合させ働かせる罰を課しているという。また沈没したイタリアの客船コスタ・コンコルディアも実は生体融合された客船であり、沈むところで船の下についた顔が悲鳴を上げて動画が終わる。
Project G-1
17番機関庫事件が鎮圧した直後の1985年、禁じられていたはずの生体融合を密かに研究していた軍事請負業者「ヒット物流」社によって生体融合された物質を細胞に分解し、それらをプログラム解除することを目的とする実験が行われ始めた。
ヒット社の目的はこの「プロジェクトG1」と名付けた研究を応用して人間を望むいかなる機械とも結合できることを可能にし、やがては志願兵を戦車などの武器に変えて戦争を行い、莫大な利益を得ることにあった(旧ソドー研究所の学者達もこの革新的な技術を封印してしまうことに葛藤を覚え、ヒット社の計画に賛同していた)。研究者達は融合遺伝物質を静止状態でタンクに保管し、次の段階で制御可能にした上で放出する計画を立てていた。
政府の調査を経てトーマスを巡る一連の事件が公になると、ソドー島の観光業は枯渇し始め、客が来なくなった島の機関車達は次々とリストラされてしまう。鉄道好きの幼馴染であったクリス・ダック・ディクソンとオリバー・サムソンもその例であり、彼らは機関車になった直後に生体融合の禁止令が発効して職を失った。
その時、日本の鉄道会社が職を提供し彼らはJR東日本に移籍するが、日本の法律では彼らは人間として認められておらず、何の権利も持っていないことを知る。そのまま2人は車体を魔改造にかけらた上にリアル・スティールを彷彿とさせる格闘技を強いられ、それはオリバーが負けて死ぬまで続けられた。親友を自分の手で殺してしまったダックは強く後悔し、泣き崩れる。
これと同時期からヒット物流は本格的な暗躍を開始する。まず彼らは多くの融合機関車の素材をかき集め、その中で技術者達は「元は同一の人間だったが、生体融合を経て双子が誕生する」「その双子は、片方に刺激を与えるともう片方も同じ反応を示す」という法則に気がついた。彼らはこれをテレパシーリンクと名付けて様々な双子の生体融合体に実験をかけ、時に拷問まがいのものまで実施した。
ケビン・ディーゼルとアニー・クララベルという鉄道愛好家夫婦も結婚するとすぐに生体融合手術を受けた。彼は機関車に、彼女は客車になるが、アニーの手術はうまくいかず2台の客車に分裂した。すぐにこの編成の試運転が実施されたが、アニーの有機物は客席の椅子の部分になっていたため大災害を引き起こした。
アニーとクララベルは世間から遠ざけられ、アニーはディーゼルの妻となり、クララベルはヒット社の実験対象とされた。ディーゼルはアニーと一緒の車庫に閉じ込められ、何年もそこで互いの顔だけを見て暮らすことになった。時間が経つにつれて生体融合における記憶は人々の頭から忘れ去られた。
2015年10月6日、映画「Shed 17」が劇中劇という形で全世界に紹介された。この映画の恐ろしい内容は多くのトーマスを愛していた人々にトラウマを植えつけ、精神病院に入院させられる患者を多数出す事態に発展する。これが引き金となりヒット社に対する抗議活動が行われるようになると、ヒット社は証拠を消すために融合機関車を焼却処分した。
やがてクララベルも燃やされてしまい、テレパシーリンクのためにアニーもディーゼルの目の前で焼死した。全てを見ていたディーゼルは車庫を脱出して支持者らを集め、ソドー島解放戦線を結成する。彼は島を人間の圧政から解放し、生体融合体の拠点とすることを夢とした。
ヒット社から大量に出た生体融合体の残骸は、ブルーマウンテンに埋められた。メディアからの悪評がひどくなるとヒット社はプロジェクトG1を停止し、鉱山で発電機にされていたスマジャーを回収する業務を最後に活動を休止する。
しかしここでクレーンのクランキーがヒット社の建物に鉄球をぶつける事故を起こし、さらにディーゼルもプロジェクトG1を含むキャニスターに突進し、あろうことがG1の入ったタンクに激突してしまう。本社から解き放たれたG1が正体を表すと、それはゴードンの顔をした巨大な骨の怪物となった。
G1は施設を暴れ、建物内に残っている融合機関車を同化し、エドワード、トビー、ケビン、マーリンを含む他の多くの機関車の顔とボディパーツを搭載した完全体となる。これを見た人々は一目散に逃げ回り、オードリー将軍の指揮下にある陸軍が出動した。
陸軍はG1に対して善戦するが、G1が戦車にパーシーを投擲すると撤退を余儀なくされた。防衛線を突破したG1は残りのバイオフュージョン材料が保管されていたブルーマウンテン採石場に向かい、そこで材料を同化するとG1は破壊不可能になるため採石場に駐留する部隊は厳戒態勢に置かれた。
G1が到着すると、軍は最後の切り札であるトーマスを輸送コンテナから出した。彼は数多くの手術の結果、人間でも機関車でもないクリーチャーになってしまっていた。G1は最初こそトーマス向かって咆哮を放つが、トーマスはなんとかG1を落ち着かせることができた。トーマスはやっと友人達の残骸を見つけて平和になると思われたが…
突如オードリー将軍が指示を飛ばし、山頂で爆発を起こさせる。崖の上にあったのは数トン以上の融合体を固めた岩のボルダーであり、それが一気にG1に向かって転がってきた。ボルダーはG1を押しつぶし、G1は粉々になった岩と共に谷底に消えていった。トーマスは全てを失い、怒りに任せてキースを真っ二つにしてしまった。
2021年、ソドー島は融合体のみで構成されることが正式に認められた。2032年にはイギリスから離脱して独自の国となる国民投票が行われて可決し、2040年までにソドー島とイギリスは断交した。それ以来、人間がソドー島の地を踏んだことはなく、生体融合機関車が外界に出たこともなかった。
2070年代にソドー島に侵入しようとした侵入者の若者2人が隠し撮りした写真が発掘され、それが映画「Project G-1」のカットに使われているところで物語は完結する。
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