概要
陸に恐竜、空に翼竜が繁栄していた中生代白亜紀後期、世界各地の海に棲息していた大型の海棲爬虫類。全体的なシルエットはワニに似ているが、手足は鰭となり、太く幅広い尾を持ち(最近発見された化石から、どうやら尾鰭を持っていたらしいことがわかっている)、完全に水生に適応していた。子供は体の中で孵化させ、成長した形態で水中に出産する「卵胎生」だったと判明している。肉食性で、その生態は現在で言えばシャチや大型の鮫に近かったらしい。
頭骨の構造は現在のオオトカゲのそれに酷似していて、かなり類縁が近いものと考えられている。
モササウルスの発見は最初の恐竜よりも50年ほど早かった。1770年頃、オランダのマーストリヒトで未知の動物の顎の骨が見つかり、地元の医者だったホフマン博士が一人で顎の骨を発掘した。地元の教会に保管されていたのを、オランダに攻め込んだフランス軍が戦利品として掠奪、これを1795年、パリ自然史博物館がワイン600本の賄賂で手に入れた。後に時の自然科学の権威ジョルジュ・キュヴィエ博士が研究・鑑定し、「マース川のトカゲ」という意味のモササウルス(Mosasaurus)と命名した。この時のモササウルスは顎の骨の長さが1.6mにも達し、そこから推測される体の大きさは実に17.5mにもなる。マジンガーZかちょっとしたクジラ並みの大きさである。
創作におけるモササウルス
白亜紀の海の覇者ともいうべき生態と、シーサーペントさながらの姿(図鑑によってはほぼそのまんまである)から人気自体は有るのだが、海棲でこの巨体故に描写が難しい・ストーリーに絡ませづらい等の理由でフィクションでの出番はさほど多くはなかった。しかし、近年は映像技術の発展の影響などで、徐々にスポットが当てられつつある。
竜の国のユタ
白亜紀の海の頂点生物と言う事から海王国の紋章に使用されているが、やはり巨体と海棲と言う事がネックになったのか出演自体はしていない。ただしおまけコーナーにて本作でのデザインの元ネタや生態等に付いて軽く触れられている。
ジュラシック・ワールド
2015年公開の映画「ジュラシック・ワールド」では、ジュラシック・パークシリーズ初の海棲爬虫類として登場。それもあってか、本作のメインとも言うべきインドミナス・レックスや、第1作にも登場した隠し目玉とも言うべきティラノサウルスのレクシィ、そしてブルーたちヴェロキラプトルを差し置いて、全ての予告でやたらと押し出されており、アロワナよろしく水面下からの大ジャンプで吊るされた鮫(おそらくホホジロザメと思われるが、サイズ差が凄まじく、モササウルスとの対比を人間に当てはまるとどう大きく見積っても煮干しの範囲を出なそうな程)や、上空を飛んでいた翼竜プテラノドンに飛びつく姿は巨体と相まってインパクト絶大である。
常に水中で生活し陸上に上がれないため、本編では出番こそ少ないものの、非常に重要な役どころを与えられて登場している。
本編では1頭しか確認出来ないが、レクシィ1頭しかいないというティラノサウルスとは対照的に、複数飼育されており、作中施設内で飼育されている個体は、多くの恐竜と同様全てメスである。その中でも最大の個体は、全長18mに達しており、飼育員によると彼女は凶暴そうに見えて、意外とシャイで恥ずかしがり屋な性格らしく、餌が与えられる時以外は滅多に水中から出てこないらしい。なお、モササウルスは本来、視界に入るものは何でも襲うほど凶暴とされているが、エサやりの時に観客を襲う事はない事から、ある程度人間に慣れているようである(プテラノドンもろともザラを喰らったのは、プテラノドンしか視界に入っておらず、ザラの存在に気づいていないからだと思われる)。
余談
恐竜研究の二大英雄にして業界におぞましいカオスを齎した元凶であるオスニエル・C・マーシュとエドワード・D・コープが仲違いをした頃に、マーシュがモササウルス属の新種を発見した。紳士で大人のマーシュ大先生は、コープへの「敬意を表して」この新種をM COPEANUSと命名している。が、時期が時期だけにこの学名は「コープアヌス」に見えるよなぁという意見がある。