本来名前の『Cthulhu』は人間には発音できない音であり、クトゥルー、ク・リトル・リトルなどと表記されることもある。
ラヴクラフトの書いた手紙(1936年8月29日付け、ウィリス・コノヴァー宛)によれば、一番近いものは、舌先を口蓋に押し付けて、Cluh-Luhと、唸るように、吠えるように、咳こむように言えばようだろう、とのことである(ダーレスによれば、ラブクラフトは『クトゥルー』と発音していたとのこと)。
近年の訳書では『クトゥルー』と表記していることが多いがクトゥルフ関係の発音は日本ではクトゥルフ神話TRPGが基準になること多くPixiv内でも『クトゥルフ』が用いられることが多い。
概要
旧支配者の一人とされ、ダーレスによる分類では四大元素の一つ水に属する。宇宙の原初の混沌「アザトース」を遠い祖とする。
風に属するハスターとは対立しているとされる。
風貌はタコに似た形状の頭部に無数の触手を持ち鉤爪のある腕と蝙蝠に似た羽、全身は緑色の鱗とに覆われておりその大きさは30メートル以上。タコとドラゴンを掛け合わせたような姿とも描写される。
神ではあるが、いわゆる霊的な存在ではなくゾスの星から飛来した生物である。これは異界の怪物たる多くの旧支配者に共通することである。
とはいえ、肉体的な死を迎えても滅びない生態を持つなど、我々が考える「生物」にカテゴライズされる存在ではないのは間違いない。
「クトゥルフ神話」の代名詞となっているが、位置づけは最高神ではない。旧支配者の大祭司、あるいは水属性の者たちの長である。これは広い海洋に覆われたこの地球において、もっとも大きな影響力を持つに至ったことが理由として自然といえよう。
だが同時にクトゥルフ神話とは混沌神話である。つまり最高神もありえるのである。
大いなるクトゥルー〈旧支配者〉の縁者なるも漠々として〈旧支配者〉を窺うにとどまりたり。
(ネクロノミコンより抜粋)
旧支配者の中では彼らを祭る大祭司の役割を持つ。ルルイエが浮上し、クトゥルフが復活するときがこの世が滅ぶときであるという予言がある。
「ルルイエの館にて死せるクトゥルフ夢見る内に待ちいたり」という詩文が示す通り
現在は海底に沈んだ古代都市ルルイエに封印されている。星辰が適切な位置に近づいたごくわずかの期間や地殻変動によって海面に浮上した時、クトゥルフの意思が外の世界に漏れ、芸術家や子供など感受性の強い人間は悪夢や精神異常などの状態に陥ることがある。彼らは次第に眠ることを拒絶しはじめ自ら命を絶つ。そうでない場合、いずれ眠ったまま極大の恐怖の表情を貼り付けて絶命した姿で発見される。
クトゥルフ信仰は各地に存在しする。
我々が平穏と感じる時間は、クトゥルフが眠る僅かな間だけである。
旧神にクタニドがいる。クトゥルフの兄弟あるいは従兄弟とも。
化身
肉体が封じられているためか、精神体や人々の夢を介して顕現する化身が多い。
・ビーモス(ベヒーモス)
夢とテレパシーを通して顕現する青、緑黄色に輝く霧のような姿。物理的な力を一切持たないが、強力な精神能力がある。ビーモスの精神支配下に置かれた動物や人間はビーモスの肉体の延長として操られる。その間その事実に気づくことすらできない。
・コラジン
クトゥルフの意識体。クトゥルフとして夢の中に現れる。人間の精神を貪り、力を蓄えると物理的に顕現することもできるという。海洋生物の肉体を支配し肉体を形成すると、合体しクトゥルフの物理的な化身となる。この化身はクトゥルフと同等の力を持つ。
・すべてのサメの父
聖書にあるリヴァイアサンの可能性がある。
古代のカルカロドン・メガロドンなどの巨大なサメに似た姿であるが、大きさは倍ほどもある。幽霊のように白く、海はその周りで輝いているように見える。絶えず空腹で目の前のものをすべて貪り食う。常に激怒で狂乱している。大きな外用船すら一噛みで壊滅させる。
深きものに崇拝されており、彼らはすべてのサメの父を呼び出す儀式を知っているが、制御できないため呼び出すのは最後の手段である。彼らの共同体全体が脅かされる最悪の事態に呼び出される。
・ルムル=カトゥロス
人間。アトランティスの神官王。
関係性
リン・カーター系
現在最もメジャーな系譜。ラヴクラフト系とスミス系を統合整理している。
ヨグ=ソトースの息子がクトゥルフ。
ハスター、ツァトゥグァ、ブルトゥームは異母兄弟。ハスターとは敵対(ダーレス系)。
雌神イダ=ヤー(ゾスの星に残留)との間にガタノソア、イソグサ、ゾス=オムモグの三兄弟(ゾス三神)をもうけている。
ムー大陸ではカタノソア教団とは信仰上の対立があった。
ブライアン・ラムレイ系
リン・カーター系に準じ、ゾス三神の下に秘密のクティーラ姫がいる。
ただし、かなり独自の世界観となっている。
邪神の王はアザトースではなくクトゥルフであり、力はヨグ=ソトースすら上回る。
邪神の総称にCCD=クトゥルフ眷属邪神群と名付けられている。CCDの有名な配下として、地底種族のクトーニアン、水棲邪神で「クトゥルフの騎士」と呼ばれるオトゥームなどが挙げられる。邪神群が意思疎通に使うテレパシーの力がナイアルラトホテップである。
対存在とでも呼べるような旧神クタニド(サニド)がいる。旧神の王はノーデンスではなくクタニド。
ジョゼフ・パルヴァー系
ラムレイ系をさらに拡張した。TRPGの適用範囲といえる(こちらはアザトースが王)
二番目の妻スクタイ(詳細不明)がいたが、クトゥルフ自身が殺害している。
三番目の妻カソグサ(蛇の女神)は妹でもあり、双子の姉妹ヌクトサとヌクトルーをもうけている。
右腕的な邪神としてムナガラーが挙げられている。
ラヴクラフト系その他
ナグからクトゥルフが生まれた。イェブからツァトゥグァが生まれた。
あとはいろいろ変わるので割愛するが、ナグとイェブが出てくるのが特徴。
カーター系に繋がる。
クラーク・アシュトン・スミス系
ラヴクラフト系をベースに、ナグの連れ合いでクトゥルフの母を「プトマク」と記している。が、この設定は特に掘り下げられない。
これとは別の系図で(ナグとイェブが出てこない)、両性具有のサクサクルースがトゥルー(クトゥルフ)を産んだともある。
カーター系に取り込まれプライス系に。
ロバート・プライス系
両性具有のサクサクルースが、雄のナグと雌のイェブに分裂し、これらが夫婦になってクトルット(クトゥルフ)らを産んだ。
またロイガーとツァールが、秘められた名ナグとイェブを持っており、星辰正しき時にクトゥルフとナイアルラトホテップになる、とも。
フレッド・ペルトン系
旧神に創られた。
邪神の王ナイアルラトホテップの顕現がクトゥルフである。
配下に邪悪な四大霊の勢力がいる。水の王がイタカである。
ドナルド・タイソン『ネクロノミコン』
旧支配者の「七帝」がいる。
アザトース、ダゴン、ナイアルラトホテップ、イグ、シュブ=ニグラス、ヨグ=ソトースが兄妹。
クトゥルフはその父親の兄弟の息子。別格扱いで最強の軍神である。
シュブ=ニグラスと交わり、古のもの時代の地球侵略のための軍勢を生み出した。
栗本薫『魔界水滸伝』
邪神の首魁。配下に十二神がいる。
十二神には、他作品なら外なる神や旧支配者に分類される錚々たる邪神たちがいる。
珍しいところだとヒプノス(ヒュプノス。他作品なら大地の神々or旧神)もカウントされている。イレムとヨゴスが神になっている。
眷属
・ダゴン
父なるダゴンと呼ばれ、信仰されている。
・ハイドラ
母なるハイドラと呼ばれ、信仰されている。
・ムナガラー
クトゥルフの右腕とされる。
・クトゥルフの落とし子(クトゥルヒ)
無数にいる。力は弱い。
・オトゥーム
クトゥルフの騎士と呼ばれる神性。
・シャッド=メル
地底種族クトーニアンの長老。容貌はイカに似ている。
信仰
地球上で最も巨大な勢力を誇る旧支配者。それでも知っている人間はほとんどいないということらしい。
名前の知られていないカルトも含めれば、クトゥルフを崇める教団はそれこそ無数にあると思われる。個人がクトゥルフ神話的事象を追い求める内に、クトゥルフ信仰に辿り着くこともある。
司祭という立場もあってのことだろうが、他の神をたたえる祈祷文の中にも名前が出てくるほど影響力が大きい。
・ダゴン秘密教団
ダゴン、ハイドラ、クトゥルフを崇める教団。構成員のほとんどは深きものとその混血児。太古から続くクトゥルフの軍勢が形を変えたものと思われる。アメリカ政府に存在を暴かれ、拠点を壊滅されるも地上の侵略とクトゥルフの復活を今もなお目論んでいる。
・銀の黄昏教団
1657年にフランスで結成された魔術秘密結社。
目的はルルイエの浮上とクトゥルフの復活であり、世界有数の魔術師達がその結成に関わっている。
・中国奥地
教団の不死の指導者が潜んでいるという。
TRPG由来の設定では、漢字では『鬼歹老海』と書かれ、そもそも漢字の『鬼』(=死者)はクトゥルフの頭部を象った象形文字だという(現代中国語では「克蘇魯」と書かれる)。ルルイエ異本の原本が夏王朝の時代に書かれた。
・ムー大陸、レムリア大陸、アトランティス大陸、北米の地底世界クン=ヤン
トゥルーと呼ばれ、宇宙の調和を司る神として信仰されている。宇宙の魔物のしわざで大陸が水没し、海底都市レレクス(ルルイエのこと)に幽閉された。生き残りの崇拝者達はクン=ヤンに逃れ信仰を伝えている。イグやシュブ=ニグラスも人類に友好的な神として信仰の対象になっている。
崇拝者側の言い分がこのように語られている。
関係のある呪文
・いあ! いあ! くとぅるふ ふたぐん!
・ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがなぐる ふたぐん
関連書物
『アル・アジフ』『ネクロノミコン』 著者はアブドゥル・アルハザード。イスラム教の神を捨てて邪神信仰に走ったという。
『ルルイエ異本』 クトゥルフ信仰の歴史が書かれている。クトゥルフ研究の上では最重要。
『セラエノ断章』 原典はセラエノ図書館の石板。シュリュズベリイ博士によって翻訳冊子化された。「対クトゥルフ」としてのハスターについての記述が多い。
『ネクロノミコンにおけるクトゥルフ』 シュリュズベリイ博士の未完の研究草稿。
『ルルイエ異本を基にした後期原始人の神話の型の研究』 シュリュズベリイ博士の論文。クトゥルフ教団を世界の8個所に特定した。
『水神クタアト』 水棲の妖魔について書かれているため、クトゥルフにも触れている。
『ポナペ経典』 ムー大陸で書かれた。著者はガタノソア(クトゥルフの長子神)の神官という。
『ザントゥー石板』 ムー大陸で書かれた。著者はイソグサ(クトゥルフの次男神)の神官という。
初出
クトゥルフの呼び声(The Call of Cthulhu)…ラブクラフト全集文庫版2巻などに収録
関連イラスト
関連タグ
九頭龍大神