Why so serious?(そのしかめっ面はなんだ?)
解説
2008年に公開されたDCコミックスの出版するアメリカン・コミック『バットマン』の実写映画化作品。配給はワーナー・ブラザース
2005年公開の『バットマン ビギンズ』の続編であり、クリストファー・ノーラン監督・クリスチャン・ベール主演によるリブートシリーズ『ダークナイト・トリロジー』の第ニ作目である。
原作コミックの『Batman』#1・『Batman: The Killing Joke』・『Batman: The Long Halloween』から題材を採っており、バットマンシリーズ最大最凶の宿敵ジョーカーとの死闘と、バットマンが「ダークナイト(闇の騎士)」と呼ばれるようになるまでの経緯がテーマとなっている。
前作から続くノーラン節の効いたフィルム・ノワールを思わせるシリアスかつ重厚でリアルな作風と、「人間の正義と善性の限界」を問いかけるストーリー、そして本作撮影終了後に急逝したヒース・レジャーが鬼気迫る凄絶な演技と数々の素晴らしいアドリブで演じたジョーカーが高く評価され、世界的な大ヒットを収めた。
また、本作の成功によって『ダークナイト』はノーラン版バットマンの呼称としても定着、最終的にはノーラン版3部作が『ダークナイト・トリロジー』と呼ばれるきっかけにもなった。
第81回アカデミー賞にて助演男優賞、撮影賞、美術賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、音響編集賞、編集賞にノミネートし、助演男優賞(ヒース・レジャー)と音響編集賞を受賞。ヒースは死後に助演男優賞を受賞することになった。
2012年に完結編となる『ダークナイトライジング』が公開された。
あらすじ
全米屈指の繁栄を誇りながら、犯罪と汚職の蔓延する都市ゴッサム・シティ。
だが、バットマンの活躍と彼に触発された人々によって、街は少しずつではあるが秩序を取り戻す兆しを見せつつあった。
そんなある日、ゴッサムマフィア達と繋がりのある銀行がピエロのマスクをかぶった強盗団に襲撃されるという事件が起こる。
まんまと大金をせしめた強盗団であったが、突然彼らは殺し合いを始める。一人生き残ったピエロがマスクを外すと、その正体は不気味なピエロのメイクで覆われたグラスゴースマイルを浮かべた男・ジョーカーであった。
ジョーカーは犯罪こそ最高のジョークであると豪語し、マフィア達を利用してバットマンとゴッサムに住む人々に対し、恐るべき「ゲーム」を仕掛ていく…。
主な登場人物
演:クリスチャン・ベール(吹替:檀臣幸)
表向きはゴッサム・シティ最大の大富豪のプレイボーイだが、裏では闇に紛れて犯罪者達を制裁するクライムファイター。
自分とは違い、白日の下で堂々と悪と戦う新任地方検事のハービーこそがゴッサムに必要な真のヒーローであると高く評価しているが、同時にレイチェルとハービーと自分の関係に苦悩する。
演:アーロン・エッカート(吹替:木下浩之)
ゴッサム・シティの新任地方検事で、レイチェルの恋人。
公明正大・清廉潔白で強い正義感と高い行動力の持ち主であり、マフィアの脅迫にも臆することなく立ち向かう姿勢から、人々からはゴッサムの「光の騎士」とあだ名されている。
自らの行動をコイントスで決定する癖があるのだが、このコインは両面とも表であり、これは「自分の行動は常に正義である」という彼の信念を表したもの。
ゴードンとバットマンと協力体制を築き、ゴッサムマフィアを一掃するために行動を起こす。
ブルースは白日の下で法を以って堂々と悪を裁くことができるハービーがいれば、いずれバットマンも必要なくなると考え、引退を考えるほどに高く評価しているのだが…。
ゴッサム・シティに突如現れた狂気の犯罪者であり、本作のメインヴィラン。
口元から耳に至るまるで笑っているかのような傷跡と不気味なピエロメイクが特徴で、自分の犯行現場にはトランプのジョーカーを名刺代わりに残していく。
「犯罪こそ最高のジョーク」と豪語し、極限状態に追い詰めた相手に敢えてゲームじみた選択肢を与えることで、そのモラルを破綻させて破滅させる手段を好んで用いる(本人曰く「オレと同じレベルにまで堕ちてきてもらう」)。
殺人・破壊行為を屁とも思っておらず、手下すら必要なくなれば平然と殺して使い捨て、それどころか楽しめるならば自分の命にさえ頓着しない。
バットマンを自分と同類の「狂人」と捉えており、そんな彼が正義と秩序に執着して敵である犯罪者を殺さないことを面白がり、マスメディアを利用した劇場型犯罪でバットマンとハービー、そして彼らが守ろうとするゴッサムの人々を精神的に追い詰めて破滅させることを目論む。
本作のジョーカーは演じたヒースの圧倒的な狂気の演技によって主役である筈のバットマンを食ってしまうほどの凄まじい存在感を放っており、鉛筆手品、脅迫ビデオ、ギャラ焼却、病院爆破シーン等、見どころを挙げていくとキリがない。
原作では単純なステゴロだとジョーカーはバットマンに一方的にボコボコにされているが、本作では(バットスーツに不具合があったとはいえ)バットマンとそれなりにやり合える程度の身体能力を持つ。また、相手を苦しむところゆっくり見れるという理由でナイフ類を好んで使う一方で、銃火器の扱いにも長けるなど、総じて戦闘能力は高め。
- レイチェル・ドーズ
演:マギー・ギレンホール(吹替:本田貴子)
ブルースで幼馴染で、ゴッサムの悪を法で裁く検事。
ブルースとの約束とハービーからのプロポーズの間で揺れ動く。
- ジェームズ・ゴードン
演:ゲイリー・オールドマン(吹替:納谷六朗)
ゴッサム市警の刑事。
ハービーにバットマンを仲介し、彼らと協力体制を築いてマフィア達に立ち向かう。
ウェイン家執事であり、ブルースの後見人。
自分のせいで無関係な人々が犠牲になる事に苦悩するブルースに、バットマンの役割と必要性を説く。
演:モーガン・フリーマン(吹替:池田勝)
ウェイン産業応用科学部門元室長で、現在はブルースにウェイン産業社長を任されている。
様々なガジェットを製作し、バットマンの活動を陰からサポートする。
- ジョナサン・クレイン/スケアクロウ
演:キリアン・マーフィー(吹替:遊佐浩二)
前作にて真のラーズ・アル・グールの命令の下で動いていた元アーカム精神病院の医師。
前作における影の同盟のゴッサム・シティ襲撃のドサクサに紛れてこっそり逃げ延びており、独自に精製した薬物をマフィアに密売することで利益を挙げていた模様。
物語冒頭で取引相手のマフィアと揉めていた最中に偽バットマン達の襲撃を受け、さらに本物のバットマンまでもが乱入。バットマンによってその場にいた全員まとめて警察に突き出された。
登場ガジェット類
- バットスーツ
ブルースの要望により、軽量化と柔軟性が上がって非常に動きやすくなっており、首を後ろに回すことができるようになった。しかし、装甲が分割された分、防御性能が少々落ちている。
マスク部分に携帯電話から発信される信号を高周波ジェネレーター経由でリアルタイムで映像に変換して映すレンズが内蔵されている。
アームカバー部分のトゲが三枚刃から六枚刃に増設され、手裏剣のように回転させながら発射できる。
- ニューマチックマングラー
バットスーツ前腕部に取り付けられた腕力補助強化装置。
レバー部分を握り込むようにして使い、銃の銃身を片手で捻じ曲げたり、ワゴン車のボディを破るほどの力を発揮できる。
- バットポッド
バットモービル(タンブラー)に搭載されたオートバイ型脱出ユニット。
タンブラーのコクピット部分真下の車輪部分をベースに分離変形し、離脱する。車軸ごと回転して真横へスライドするなど通常のオートバイには不可能な機動を行うことができ、最高速度は169km/h。
前車輪には80mmブラスト砲、マシンガン、ワイヤー付きロケットアンカーを装備している。