概要
イギリス海軍の戦艦の艦級。イギリス国王ジョージ5世にちなんで名づけられた。
1912年から1913年にかけて就役した初代と、1940年から1942年にかけて就役した2代目がある。
初代
1910年度海軍計画で4隻の建造が議会に承認された。
前級オライオン級の改良発展型で、マストの位置の変更、威力のある主砲の採用などが行われたが、ドイツとの開戦を睨んだ大量建造の必要から、建造費高騰を防ぐためあまり手は加えられていない。
34.3cm砲は連装砲塔に収められ、艦橋の前部に背負い式で1番砲塔、2番砲塔、2本の煙突と後部見張り所の間に3番砲塔、後部見張り所の後に背負い式で4番砲塔、5番砲塔が配置された。
満載排水量:25,700t 全長:182.1m 全幅:27.1m 最大速度:21kt
同型艦
1番艦:キング・ジョージ5世 2番艦:センチュリオン 3番艦:エイジャックス 4番艦:アンソン 5番艦:オーディシャス
1914年10月27日に触雷して沈没したオーディシャス以外は第一次世界大戦を生き抜いた。
センチュリオンはリモコン標的艦として再就役した。第二次世界大戦中は新戦艦「アンソン」として各地に出没してドイツ軍を混乱させ、最期はノルマンディー上陸作戦の人工港マルベリーの防波堤に利用された。
2代目
1935年12月9日、英米仏は第二次ロンドン海軍軍縮条約を締結した。戦艦については主砲口径14インチ・基準排水量35,000トンの制限が設けられ、(2代目)キング・ジョージ5世級はこれに沿って設計された。
ワシントン海軍軍縮条約から日本とイタリアが脱退したので、エスカレータ条項によりアメリカは16インチ主砲のノースカロライナ級、フランスは15インチ主砲のリシュリュー級を建造し、脱退した日本は18インチ主砲の大和型戦艦、イタリアは15インチ主砲のヴィットリオ・ヴェネト級級を建造したので、イギリスだけ見劣りすることとなった。
主砲は4連装3基の予定であったが、重量オーバーのため第2砲塔を連装とした。イギリスとして初の4連装砲で、初期の稼働率は低かった。
舷側装甲が374mmに達するなど、防御力は充実しているが、時代に逆行して傾斜装甲から垂直装甲になっている。これは機関の小型に失敗した代償であった。
13.3センチ砲両用砲が採用され、対空・対小型艦用が統一されたが、対艦攻撃寄りの性能で対空砲としては使い難かった。
ポンポン砲や17.8cm 20連装対空ロケット砲も信頼性が極めて低く、後にアメリカから供与されたボフォース40mm機関砲、エリコン20mm機関砲に装換されている。
速力は28ノットと標準的だが、航続性能は10kt/7,000浬と要求性能の半分程度に過ぎず、世界を股にかけなくてはいけないイギリス海軍としては不安が残った。
ドイツ、イタリアとの開戦を睨み厳しいスケジュールで建造されたため、性能を煮詰める事が出来なかったが、第二次大戦中に5隻の同型艦を就役させる事に成功した。ビスマルク、シャルンホルストの撃沈や船団護衛、砲射撃など多方面で活躍しており、単純な性能比較ではその価値は量れない。
満載排水量:42,237t 全長:227.1m 全幅:31.5m 最大速度:28kt
同型艦
1番艦:キング・ジョージ5世 2番艦:プリンス・オブ・ウェールズ 3番艦:デューク・オブ・ヨーク 4番艦:アンソン 5番艦:ハウ
建造当時の国王はジョージ6世だったが、兄エドワード8世が既婚女性との恋愛の末に王位を捨てるなど混乱があり、そのためか1番艦に父ジョージ5世、2番艦に兄エドワード8世、3番艦にやっと自分という形になっている。4、5番艦は著名な提督の名前である。