あらすじ
舞台は荒廃した近未来のアメリカ合衆国の都市デトロイト。10月30日のハロウィン前夜は、各地で放火をはじめとする破壊活動が多発し「悪魔の夜」と呼ばれ恐れられている。アルブレヒト巡査は、ある事件の現場に立ち合っていた。立ち退きに反対していたマンション住民シェリー・ウェブスターが4人の暴漢に強姦・暴行され、その婚約者でギタリストのエリック・ドレイヴンも窓から突き落とされ殺害されたのだ。駆けつけた二人の友人の少女サラに、アルブレヒトは励ましの言葉をかける。
しかし、サラはエリックが死に、既にシェリーも死の縁にあることを悟っていた。果たして、シェリーは30時間の手術の後に死亡し、エリックとともに埋葬されたのだった。
一年後、冥界と現世をつなぐカラスの力に導かれ、殺人者に復讐を果たすため、エリックはこの世に舞い戻る。ギャングたちの支配者トップ・ダラーは、配下を次々と殺していくエリックの神秘的な力に目をつけ、異母妹で愛人でもあるマイカと共に、逆にエリックを狙い始める。
登場人物
「晴れる日もある」
原作では職業はぼかされていたが、映画版ではギタリスト。ハロウィンに結婚式を挙げる予定だったが、暴漢たちによって婚約者ともども殺され、一年後に墓地の番人であるカラスによって冥界から連れ戻される。
彼を蘇生させたカラスが無事な限り不死であり、強化された身体能力や他者の記憶を読み取るサイコメトリーのような力を駆使して下手人たちを追いつめていく。
カラス | 撮影には四羽使われたらしい |
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カラスは死者の魂を冥界に導くと信じられている だが魂が悲しみのあまり安らぐことができずにいると、悪を正すため死者を呼び戻すのだという
墓場の番人であり、現世と冥界を橋渡しする存在。エリックを蘇らせた。視界はエリックと共有されているらしく、逃げようとする者も空から捕捉する。
監督のコメンタリーによると、ワタリガラスらしい。
「すべてのパワーは目に宿る。目さえあれば本人はいらん。俺はそれを妹から教わった」
原作ではドラッグの売人だが、映画版では町のギャングたちを取り仕切る暗黒街の支配者。混沌と無秩序を愛し、「悪魔の夜」の放火は自分が始めたと豪語する。最終決戦では二挺拳銃と日本刀でエリックを迎え撃つ。
巡査。原作では白人だが、映画では『ゴーストバスターズ』にも出たアフリカ系のアーニー・ハドソンが演じている。エリックの現場に立ち合い、シェリーの最期を看取った。彼の記憶が後にエリックを助ける。
暗い雨に包まれた町をスケボーで駆ける少女。薬物中毒の母ダーラを抱えている。エリック、シェリーの生前からの友人。映画のナレーションも彼女のもの。
トップ・ダラーの異母妹で愛人。アジア系の妖艶な美女。兄に劣らぬ異常性を秘め、トップ・ダラーが壊した女の目玉をナイフで抉り出し蒐集している。魔術的な知識に通じ、エリックのカラスを奪って彼の力を奪おうとする。
「悪魔の夜に乾杯。俺のお気に入りの祝日だ」
演じるデヴィッド・パトリック・ケリーは『コマンドー』のサリーの人。
スカンク(Skank) | エンジェル・デイヴィッド(Angel David) | 中村雄一 | 中村雄一 |
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「Tバードが悪いんだ」
Tバードの取り巻きの一人。エリックの復讐に怯える。
ギデオン(Gideon) | ジョン・ポリト(Jon Polito) | 島香裕 | 島香裕 |
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「俺はお前らみたいにひねくれちゃいないぞ」
質屋。彼の扱う商品には、Tバード一味が殺害した人々から奪い取った盗品が多く含まれている。エリックとシェリーから奪われた婚約指輪も店に仕入れられていた。
グランジ(Grange) | トニー・トッド(Tony Todd) | 大友龍三郎 | 石塚運昇 |
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「ミーティング中だ」
トップ・ダラーに仕える寡黙で大柄な黒人。『キャンディマン』のトニー・トッドが演じた。指に鉤爪のような銀のアクセサリーをつけている。
エリックの婚約者。物語の冒頭でエリックとともに殺害される。映画版ではマンション住民の立ち退きに反対していたことが原因だが、原作では道路上にエンストした車を停めていたところをTバード一味に殺害される。
Tバードの取り巻きの一人。ドラッグ中毒のガンマン。腹に銃の刺青がある。報復に現れたエリックの不死の力に「キリストか」と驚愕する。
「人殺しだと? ああそうとも、楽しいぜ」
Tバードの取り巻きの一人。ナイフ使いの黒人。シェリーのもとに駆けつけたエリックに投げナイフを喰らわせた。
原作者ジェームズ・オバーのインタヴューによると、Tバード一味やトップ・ダラーの名前は街で見かけた落書きから取ったとのこと。
「ある人に救われたの」
サラの母親。ウェイトレス。ファンボーイの情婦で、麻薬とセックスに溺れる。
ミッキー(Mickey) | ビル・レイモンド(Bill Raymond) |
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ホットドッグ屋。頽廃した街の暮らしを嘆き、「天変地異に襲われるべきだ」とぼやく。
「誰を庇ってる? 顔を白塗りにしたマンガ男か?」
アルブレヒトの上司。巡査でありながら独自に動くアルブレヒトを目の敵にしている。
スタッフ
監督 | アレックス・プロヤス(Alex Proyas) |
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製作 | ジェフ・モスト(Jeff Most)/エドワード・P・プレスマン(Edward R. Pressman) |
脚本 | デイヴィッド・J・スコウ(David J. Schow)/ジョン・シャーリー(John Shirley) |
製作総指揮 | ロバート・L・ローゼン(Robert L. Rosen)/シャーマン・L・ボールドウィン(Sherman L. Baldwin) |
音楽 | グレーム・レヴェル(Graeme Revell) |
撮影 | ダリウス・ウォルスキー(Dariusz Wolski) |
編集 | ドヴ・ホウニグ(Dov Hoenig)/M・スコット・スミス(M. Scott Smith) |
製作会社 | ディメンション・フィルム(Dimension Films) |
公開日 | 1994年5月13日 |
上映時間 | 102分 |
配給 | ミラマックス(Miramax Films) |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
悪魔の夜
「悪魔の夜(Devil's night)」とも「地獄の夜(Hell's night)」とも呼ばれるハロウィン前夜にヴァンダリズムが多発する事件は、デトロイトやミシガンで発生している実在の事件。
少なくとも1940年代には始まっていたとされ、都市部の若年層が悪ふざけに参加した。当初は卵や腐った野菜や果物が家に投げつけられたり、窓に石鹸やワックスが塗りつけられたり、前庭やポーチに犬の糞が入った紙袋が置かれて火をつけられたり、街路樹や街灯にトイレットペーパーが巻きつけられるなど、ほとんど害のない他愛のないものだった。しかし1970年代以降、行動が過激化した。まず都心部で、続けて周辺の郊外で放火事件が発生した。破壊活動は1980年代の中期から後期にかけて頂点に達し、1984年には800件の火事が発生し、3日間に500から800件の火事がハロウィン前夜に起きるのが例年になった。
不動産市場の下落で急速に資産の価値を失いつつあった当時の不動産業者たちは、住宅が焼き払われ、クレームをつけて保険金を無効にできるチャンスを活用した。コメンタリーによれば、映画の中でシェリーが立ち退き運動に反対して殺され、トップ・ダラーが地上げ屋なのはそれが元ネタとのこと。
800件以上の火事を伴う、特に劇的な夜になった1994年以降、当時のデトロイト市長デニス・アーチャーは、放火活動を阻止する夜間パトロールのため、翌年以降は5万人規模のデトロイト市民が参加する「天使の夜(Angel's night)」を組織した。加えて、若年層の夜間の外出禁止が布告された。放火事件の数は目に見えて減少した。2010年、報告を受けた火事の数は169件にまで上り、前年と比較して42パーセントの増加を見せた。しかし翌年の3日間の合計は、再び90件に減少した。2015年、火事は52件の最低数を記録し、そのうち24件だけが放火とみなされた。
関連動画
予告編シリーズ
クロウ/飛翔伝説(オリジナル版)
THE CROW/ザ・クロウ(日本版)
クロウ 復讐の翼(オリジナル版)
クロウ 真・飛翔伝説(日本語吹き替え版)
クロウ・天国への階段(オリジナル版)