ウギンの眠る地、現実が常に移ろう「きずな」を越えたサルカン・ヴォル。
その先に彼は1280年前
――まだ龍が在りし日の、氏族と龍が争い合う、古のタルキールへと辿り着いたのであった。
『運命再編』におけるタルキール次元について
『運命再編』の舞台となる世界は、『タルキール覇王譚』の1280年前。
まだウギンが生きており、タルキールの龍も滅んでいなかった時代である。
ウギンが死に、龍が死に絶えたことにより果てしない氏族の争いに突入し、荒れ果てる前のタルキール。
『タルキール覇王譚』の時代には既に滅び、消え去ったもの。
『タルキール覇王譚』の時代にまで残り続けるもの。しかし今はまだ異なった様相を見せるもの。
サルカンの選択によって、それらの運命は大きく変わっていくことになる。
(『『運命再編』、その基本』、『風景は変わる』、『変化の証人』、『命運の交差点』)(外部リンク参照)
「運命再編」におけるキーワード
龍の嵐
タルキールの上空に存在する、ウギンの魔術とタルキールの嵐とが融合したことによって生み出された魔法的な嵐。
土地からエネルギーを吸収することにより、その地の群れに対応する種の龍を生み出す、タルキールにおける「全ての龍の源」である。
『タルキール覇王譚』の時代においてはウギンの死と共に消滅しているが、
『運命再編』の時代ではまだ消滅していない。
「龍の大嵐」としてカード化されている。
(『古の、新たなタルキール』、『書かれざるもの』、『再編の連環』)(外部リンク参照)
龍
タルキールにおける絶対の強者たる存在であり、それぞれ強大な一体の龍によって率いられる五つの異なる種の龍の群れとして存在する。
タルキールにおける龍は「龍の嵐」が、土地からエネルギーを吸収することにより、その地の群れに対応する種の龍を生み出すことによって誕生し、それぞれの群れを率いる龍を模した姿と力を持つ特徴がある。
『タルキール覇王譚』の時代においては「龍の嵐」がウギンの死と共に消滅し、新たな龍が生まれなくなったことからタルキールの龍は死に絶えたが、
『運命再編』の時代ではまだ死に絶えていない。
(『プレインズウォーカーのための『運命再編』案内』)(外部リンク参照)
背景ストーリー小説(外部リンク参照)
タイトルが太字のものはタルキール覇王譚ブロックのまとめである「タルキール・ブロックの物語」にて筋書きとして重要視された物語である。
『運命再編』の物語における主な登場人物
プレインズウォーカー
サルカン・ヴォル
「お前の言った通りだった。氏族は強かった、人は素晴らしかった」
「きずな」を越え、広大なティムールのツンドラの只中に現れたサルカン。
ナーセットを喪ったこと。
「きずな」へと導くウギンの声が、「きずな」を越えた途端に絶え、進むべき道を見失ったこと。
それらに困惑し、狂乱する中、
彼はタルキールに龍が生まれる姿を目の当たりにし、古のタルキール、龍たちのタルキールに辿り着いたことを知って歓喜する。
龍の群れの姿を追う中、宿営地を襲う龍達の姿を「純粋なる力の体現」として享受するサルカン。
しかし、ある人間の女戦士が立ち向かい、龍が倒される姿にサルカンは怒り狂う。
一度はその女戦士に激しい憎しみを燃やすも、彼女は龍すら超える素晴らしい征服者だったのだと気付き、龍がいるタルキールがいかに素晴らしいものであるかを実感したサルカン。
彼はナーセットに「龍が待つタルキール」の姿を見せることを誓うのだった。
(『古の、新たなタルキール』、『書かれざるもの』、『再編の連環』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「サルカン・ヴォル」の紹介記事)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「サルカン・ヴォル」の項目)(外部リンク参照)
ウギン
古のタルキール、ウギンはまだ生きており、空には全ての龍の源たる「龍の嵐」があった。
だが、ニコル・ボーラスによって襲われたウギンは敗れ、地に墜ちる。
ウギンが息絶えようとしているその時、駆けつけたサルカンが差し出した面晶体の欠片がウギンの身体を包む繭を作り出したのであった。
ウギン自身が「精霊龍、ウギン」
面晶体の繭に包まれたウギンが眠る地が、「精霊龍のるつぼ」
としてカード化されている。
(『再編の連環』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「精霊龍、ウギン」の紹介記事)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「精霊龍、ウギン」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ウギン」の項目)(外部リンク参照)
ニコル・ボーラス
ドラゴンの男性。
旧く強大で邪悪なるエルダー・ドラゴン。
ウギンを殺害すべくタルキールに現れ、
幻視によって「ウギンを殺すことで氏族の人々は龍との争いから解放され、豊かなタルキールで繁栄を得られる」と信じたヤソヴァを従えウギンに襲いかかる。
ニコル・ボーラスとウギンが争う姿が「命運の核心」としてカード化されている。
(『再編の連環』)(外部リンク参照)
(『命運の交差点』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「ニコル・ボーラス」の紹介記事)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「命運の核心」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ニコル・ボーラス」の項目)(外部リンク参照)
『運命再編』の時代のカン
「カン」の称号は、各氏族において最も指導者に相応しいとされた者に代々受け継がれていく指導者の称号である。
『タルキール覇王譚』の時代の1280年前に当たる「運命再編」の時代では、ナーセットやズルゴ達の遥か先代のカンに当たる人物達が登場する。
(『『運命再編』における氏族のフレーバー』)(外部リンク参照)
ヤソヴァ
「我らは家が蹂躙され、子供達が殺されるのを無力に見てきた。怯える兎のごとく空を見上げ、何よりも生き伸びることに人生を捧げ、他者の領域で、間の抜けた小物のごとく這い足掻ながら生きてきた」
「それでもお前は我らの方が良いなどと言うのか?」
「ティムール境」のカン。
人間の女性。
『タルキール覇王譚』の時代のティムール境のカンであるスーラクと同じく、戦闘の偉業を通じて授けられる、ティムール境における氏族の指導者の公的な称号「龍爪」を持ち、
「龍爪」の称号はサルカンら他氏族出身の者からも「ティムールのカン」を表す称号と見なされている。
龍の鉤爪の付いた杖を振るい、剣歯虎「アンチン」を従えて戦う、
「彼女は素晴らしかった。彼がかつて知るどんな人間よりも。」とサルカンから称されるほどの龍をも倒す屈強な女戦士にして巫師。
幻視によって、
「ウギンが死ねば、全ての龍の源たる『龍の嵐』は止み、龍たちは滅びる」
「龍たちを滅ぼす事によって、氏族は争いもなく豊かなタルキールでの繁栄を得ることができる」
「ウギンを殺し、それをもたらすために、ウギンの元へと道を示せ」
と「一体の、偉大なる龍」によって告げられたことにより、ウギンを殺し氏族の繁栄を得るために「二つの曲線の印」を道標と残している。
「龍爪のヤソヴァ」としてカード化されている。
(『古の、新たなタルキール』、『書かれざるもの』、『再編の連環』、『カンの落日』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「龍爪のヤソヴァ」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ヤソヴァ」の項目)(外部リンク参照)
アリーシャ
「お前はお前の戦名を名乗るといい」
「お前自身を知り、それを名乗れ」
「マルドゥ族」のカン。
人間の女性(肉体的には男性だが、性自認は女性である)。
マルドゥの民は敵を殺すことで「戦名(いくさな)」と呼ばれる新たな姓を授かり、
未だ戦名を授からぬ者は『柔らかな踵』と呼ばれる風習がある。
弱冠十六歳の少年、誰の目にもそう思われていた頃、彼女は龍を殺し、戦名を授かる名誉を得た。
彼女は祖母の名「アリーシャ」を戦名として選び、自身を「女である」と証明してみせた。
ある時、彼女は数多くの戦に参加しながらも、『柔らかな踵』であるオークの姿を見る。
彼はアリーシャが十分に龍を殺せると認めるほどの優れた戦士としての技量を持っていた。
しかし、彼は龍を殺せる好機がありながら、他の戦士の腹を割こうとする鉤爪を防ぐことを優先し、龍殺しの機会は他の戦士に奪われるものとなった。
その『柔らかな踵』は強く素早く、戦いの技術に何ら欠けるところはないが、
龍を乱打し、体勢を崩させることで、
「龍が他の戦士達を傷つけさせない」、「他の戦士達が龍へと攻撃に移れるようにする」
ことで自身の手で龍を討ち取ることこそなかったものの、他の戦士達が龍に致命傷を与えられるようにする異端の戦法を取る戦士であったことを見届けたアリーシャ。
彼女はその『柔らかな踵』に今一度自身の戦いの栄誉を問う。
「ありません」
そう答えた『柔らかな踵』に対し、アリーシャは氏族の戦士達に呼びかける。
「お前は今日この『柔らかな踵』の隣で戦っていたな。何を見た?」
彼らは口々にその『柔らかな踵』が龍との戦いで自身を危険から救ってくれたこと、命を助けてくれたことを答えた。
「マルドゥはお前を知っている。だがお前は、全てのマルドゥが『背中壊し』や『兜砕き』でなければならないと思っている。お前は、自分の行いが彼らのように栄誉あるものではないと考えている。それは誤りだ」
「マルドゥの中でお前の居場所を知った時、お前の名を選ぶといい」
彼女は『柔らかな踵』に、
「『龍に止めを刺すこと』だけが栄誉に値する戦いではないこと」
「戦名とは自身の行いを以て、自身が何者か証明してみせるものであること」
そう伝えたのであった。
「死に微笑むもの、アリーシャ」としてカード化されている。
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「死に微笑むもの、アリーシャ」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「アリーシャ」の項目)(外部リンク参照)
タシグル
「私は黄金牙だぞ?」
「スゥルタイ群」のカン。
人間の男性。
ある朝、毒味役が倒れ、何者かがタシグルの食事に毒を盛ったことが明らかになる。
タシグルは自身に仕えるラクシャーサ(猫の獣人の姿をした悪魔)、クーダルを呼びつけようとするも、側近のナーガ、シディーキに「クーダルは呼べません」と答えられたことからやむなくクーダルの元へ向かう。
「我がカン、裏切り者の名を告げましたなら、貴方様が相応しいと思う罰をその者にお与え下さいませ――ただ裏切り者の命は残しておいて頂きたい。私自らその生命を頂き、裏切り者の魂を食らいましょう」
その言葉を条件に、クーダルはタシグルの毒殺を謀った裏切り者の名は昨日タシグルの元で龍殺しの栄誉を称えられた女戦士、ヤーラだったと告げる。
ヤーラを宮殿へと呼びタシグルが見せたもの。
それは生ける屍へと変わり果てたヤーラの夫の姿であった。
剃刀鞭での拷問を楽しむタシグル。
しかし、ヤーラの記憶を読んだ際、ヤーラが毒殺を謀ったというのは全くの嘘偽りであったことを知る。
怒り狂い、ヤーラの命を奪ったタシグル。
その側にクーダルが現れ、自身の所有物となるはずであったヤーラの生命を引き渡さなかったことを咎める。
クーダルの虚言にタシグルは怒るも、何ら悪びれることもなくクーダルは食事に毒を盛った真犯人は自分だと告げる。
タシグルの糾弾に対し、
「もし私が貴方様の死を望んだなら、若き公子殿、貴方様は死んでいたでしょう」
とクーダルは自身の優位を示すも、なおも食い下がるタシグルに対し、
「タシグル殿、貴方様はすぐに拗ねる子供のようですな」
「自身を御覧なさい。癇癪を巻き散らし、意味のない怒りに震えている。何故なのです? 貴方様は欲しいものを得たというのに――打ちのめし、殺すことのできる犠牲者を。ですが私は彼女の魂を求め、貴方様はその褒賞を拒否された。この過ちは、貴方様が長く後悔することになるものです」
とラクシャーサとの契約で栄華を得ていながら、その契約を裏切ったことを咎める。
「子供のごとく愚かでもあるのですな。人間がスゥルタイを統べているのは、ラクシャーサとナーガがそうさせているため。貴方様の傲慢がその道楽を終わらせることになりますでしょう」
「間もなく、スゥルタイは滅びる」
その言葉を残し、クーダルとシディーキはタシグルの元を去った。
兵士の半数はいなくなった宮殿に座るタシグル。
ナーガの屍術なくして、生ける屍の奴隷達を支配下における者もいなくなった。
「人間がスゥルタイを統べているのは、ラクシャーサとナーガがそうさせているため」
その言葉通り、スゥルタイのカンたる人間の一族は強大な力を持つラクシャーサと、ラクシャーサと契約したナーガの傀儡君主に過ぎなかったのだ。
ついにアブザンは宮殿に攻め入るほどに近付き、タシグルを恐れて兵士達も去って行った。
タシグル自身も最早毒味役もおらず、食事の味を気にする余裕すらないほどに飢えていた。
そんな中、伝令が龍の襲来を告げる。
タシグルは召使いに連れられ、宮殿の奥の隠し部屋で恐怖にすくんでいるしかできなかった。
マラング川の浅瀬。
黄金と宝石で飾られた翡翠の玉座を貢ぎ物とし、シルムガルへと生命を請い跪くタシグルの姿がそこにあった。
「黄金牙、タシグル」としてカード化されている。
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「黄金牙、タシグル」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「タシグル」の項目)(外部リンク参照)
ダガタール
「ドロモカよ、我らの祖先は何世紀にも渡って我らを導いてきた。彼らが長い間私に与えてきてくれた、何よりも真実の助言を貴女と共有したい。彼らは私に、カンの義務は一人の生よりも、万の生よりも巨大なものだと気付かせてくれた。私には、終わりの日までの子孫全ての生への責任がある。それこそがアブザンだ。我らは敗北に耐え、敗北したとしても力を失うことはない。そして我らは必要であることを行わねばならない、それが困難であろうとも。思いもよらないことであろうとも」
「アブザン家」のカン。
人間の男性。
最初の族樹(アブザン家に属する各一家が育てる樹。祖先の霊を宿し、時に祖先の加護を用いてアブザン家は戦う)の一つから現れた琥珀を鎚頭とし、アブザンの代々の長老達の霊が宿る鎚、『追憶』をアブザン家のカンとして代々受け継いでいる。
ウギンが面晶体の繭の中で眠りについた後、「龍の嵐」が激しくなり各氏族が未曾有の危機に晒される中、アブザン家と対立する龍の群れを率いるドロモカとの対話に臨む。
「不屈のダガタール」としてカード化されている。
(『終わりなくして始まりなし』、『カンの落日』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ダガタール」の項目)(外部リンク参照)
シュー・ユン
「争っているように見えながらも、各氏族は巧妙な調和の中にある」
「アブザンは安定と交易を促進し、街道を巡回している。マルドゥは領土を遥か遠方まで広げ、他の氏族にとっての脅威となるであろう龍を殺している。霊的に深く根ざした頑健なティムール、彼らの巫師は隠れ潜んだ見えざる危険を他氏族に警告する。不誠実な者達かもしれぬが、スゥルタイですら沼地の害獣と恐怖をその支配下に留めている。そして何よりもジェスカイ、山の僧院にてタルキールの記憶を務め、伝承、秘密、真実の記録を保持している。他の氏族が歴史の騒乱に忘れてしまうかもしれぬものを」
「ジェスカイ道」のカン。
人間の男性。
ウギンが面晶体の繭の中で眠りについた後、「龍の嵐」が激しくなり各氏族が未曾有の危機に晒される中、生き残りを懸け、ジェスカイの高山にて各氏族のカン5人による頂上会談を召集する。
「沈黙の大嵐、シュー・ユン」としてカード化されている。
(『カンの落日』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「沈黙の大嵐、シュー・ユン」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「シュー・ユン」の項目)(外部リンク参照)
レイハン
「どうやら、臆病なあなたがたは見切りをつけられないようですね」
アブザン家において三家族の軍をまとめる指揮官であったが、ダガタールの後に「アブザン家のカン」を称し、自身に賛同する者達を率いた「最後のアブザン」。
人間の女性。
ウギンが面晶体の繭の中で眠りについた後、「龍の嵐」が激しくなり各氏族が未曾有の危機に晒される中、アブザンの全戦力を集め、ドロモカを倒す徹底抗戦を主張する。
タルキール覇王譚ブロックにおいてはレイハン自身はカード化されることはなかったが、
後に統率者2016において、「最後のアブザン、レイハン」としてカード化されている。
(『終わりなくして始まりなし』、『カンの落日』、『『統率者(2016年版)』の話をしよう』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「レイハン」の項目)(外部リンク参照)
『運命再編』の時代の主な氏族の構成員
翼番いのジェイガン
「今日、俺は見ました。一人の戦士がただの一撃で龍を打ち倒したのを。彼女はその顔に、戦いの喜びをまとっていました」
「我がカン、仰せの通りに俺は自分自身を知りません。ですが、貴女のことは知っています。貴女について行きます――」
「......そして俺はこう呼ぶでしょう。死に微笑む者、アリーシャと」
マルドゥ族に属する戦士。
オークの男性。
彼は九度の戦を戦ってきたが、未だマルドゥ族における栄誉の姓「戦名」を授からぬ『柔らかな踵』の戦士だった。
しかし、それは彼が強く素早く、戦いの技術に何ら欠けるところはないが、
龍を乱打し、体勢を崩させることで、
「龍が他の戦士達を傷つけさせない」、「他の戦士達が龍へと攻撃に移れるようにする」
ことで自身の手で龍を討ち取ることこそなかったものの、他の戦士達が龍に致命傷を与えられるようにする異端の戦法を取る戦士であったため、龍に止めを刺したことがないからであった。
そのため、自身の戦いに栄誉の行いなどなく、戦名に値しないと考えていた彼に対し、アリーシャは氏族の戦士達に呼びかける。
「お前は今日この『柔らかな踵』の隣で戦っていたな。何を見た?」
彼らは口々にその『柔らかな踵』が龍との戦いで自身を危険から救ってくれたこと、命を助けてくれたことを答えた。
「マルドゥはお前を知っている。だがお前は、全てのマルドゥが『背中壊し』や『兜砕き』でなければならないと思っている。お前は、自分の行いが彼らのように栄誉あるものではないと考えている。それは誤りだ」
「マルドゥの中でお前の居場所を知った時、お前の名を選ぶといい」
そう告げるアリーシャに対し、彼はこう答える。
「今日、俺は見ました。一人の戦士がただの一撃で龍を打ち倒したのを。彼女はその顔に、戦いの喜びをまとっていました」
「我がカン、仰せの通りに俺は自分自身を知りません。ですが、貴女のことは知っています。貴女について行きます――」
「......そして俺はこう呼ぶでしょう。死に微笑む者、アリーシャと」
彼はアリーシャが
「戦名とは自身の行いを以て、自身が何者か証明してみせるものであること」
を告げたように
「戦名によって他者の行いに対し、他者が何者か認めてみせた」
のであった。
(『名の真実』(『柔らかな踵』のオークとして)、『カンの落日』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ジェイガン」についての記述)(外部リンク参照)
クーダル
「子供のごとく愚かでもあるのですな。人間がスゥルタイを統べているのは、ラクシャーサとナーガがそうさせているため。貴方様の傲慢がその道楽を終わらせることになりますでしょう」
スゥルタイ群のカンであるタシグルの側近の助言者、シディーキと契約を交わしたラクシャーサ(猫の獣人の姿をした悪魔)の男性。
シディーキと共謀してタシグルに
「我がカン、裏切り者の名を告げましたなら、貴方様が相応しいと思う罰をその者にお与え下さいませ――ただ裏切り者の命は残しておいて頂きたい。私自らその生命を頂き、裏切り者の魂を食らいましょう」
というラクシャーサとの契約を破らせるように仕向ける。
クーダルが告げた裏切り者の名が嘘であったことを糾弾するタシグルに対し、
契約においてクーダルへの正当な所有物となるはずであった裏切り者の命を、タシグルが怒りに任せて奪ってしまったことを
「タシグル殿、貴方様はすぐに拗ねる子供のようですな」
「自身を御覧なさい。癇癪を巻き散らし、意味のない怒りに震えている。何故なのです? 貴方様は欲しいものを得たというのに――打ちのめし、殺すことのできる犠牲者を。ですが私は彼女の魂を求め、貴方様はその褒賞を拒否された。この過ちは、貴方様が長く後悔することになるものです」
と契約を裏切ったとして咎め、
「子供のごとく愚かでもあるのですな。人間がスゥルタイを統べているのは、ラクシャーサとナーガがそうさせているため。貴方様の傲慢がその道楽を終わらせることになりますでしょう」
「間もなく、スゥルタイは滅びる」
という言葉を残してタシグルの元を去る。
(『黄金牙の破滅』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「クーダル」についての記述)(外部リンク参照)
シディーキ
「間もなく、スゥルタイは滅びる」
スゥルタイ群に属する、スゥルタイ群のカンであるタシグルの側近の助言者。
ナーガの女性。
クーダルと共謀してタシグルに
「我がカン、裏切り者の名を告げましたなら、貴方様が相応しいと思う罰をその者にお与え下さいませ――ただ裏切り者の命は残しておいて頂きたい。私自らその生命を頂き、裏切り者の魂を食らいましょう」
というラクシャーサとの契約を破らせるように仕向ける。
ラクシャーサとの契約を破ったタシグルの元を去ったクーダルに続き、
「間もなく、スゥルタイは滅びる」
という言葉を残してタシグルの元を去る。
『タルキール覇王譚ブロック』においてはシディーキ自身はカード化されることはなく、背景ストーリー中でも「シディーキ」とのみ呼ばれていたが、
後に統率者2016において、「簒奪者、イクラ・シディーキ」としてカード化されており、
フルネームが「イクラ・シディーキ」であることが明らかになった。
(『黄金牙の破滅』、『カンの落日』、『『統率者(2016年版)』の話をしよう』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「イクラ・シディーキ」の項目)(外部リンク参照)
クーアン
「大師様、いけません」
「お前が心配しているのは私の安全か?」 シュー・ユンは微笑みながら尋ねた。「それとも巻物か?」
「巻物です」 一切の躊躇なくクーアンは言った。「氏族において個人は重要ではありませんが、知識は我らの源泉です」
ジェスカイ道に属する、ジェスカイ道のカン、シュー・ユンが最も信頼する書記者。
シュー・ユンに伴い、各氏族のカン5人による頂上会談の内容を筆記していたが、
シルムガルの龍の群れとオジュタイの龍の群れによる襲撃の中、シュー・ユンの言葉に従い、
5人のカンを、カンの率いるそれぞれの氏族の存在を記録した巻物を、
シュー・ユンに託す。
(『カンの落日』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「クーアン」についての記述)(外部リンク参照)
龍
タルキールにはそれぞれ強大な一体の龍によって率いられ、縄張りを持つ五つの異なる種の龍の群れが存在する。
それぞれの龍の群れは縄張りとする地に住まう氏族と対立しつつも、群れを率いる龍は各氏族によって崇められ、それぞれの氏族の理想を体現するものとされる。
(『プレインズウォーカーのための『運命再編』案内』)(外部リンク参照)
ドロモカ
「ドロモカは貴方がたに知っておいて欲しいと願っています、貴方がたを学び、多くの尊敬すべきものを見つけたと。貴方がたは勇気をもって互いを支え合う。共にあれば、分かたれているよりも遥かに強くなる。貴方がたは犠牲と力とを理解している。貴方がたのクルーマの伝統もまた、似ていないわけではない。彼女へと誓いを立て人間達の中から選び、任命した者達と。だが貴方がたが屍霊術に汚れている限り、我らの種は貴方がたを砂漠から一掃しようとし続けるだろう」(ソエムスによる龍詞(タルキールの龍の用いる言語)からの訳)
アブザン家と対立する龍の群れを率いる龍であり、アブザン家の理想「忍耐」の体現として崇められる龍。
雌。
ドロモカとドロモカの群れの種の龍は防具に用いられるほど頑強な鱗に全身を覆われている特徴があり、焼けつく光のような吐息を使う。
ウギンが面晶体の繭の中で眠りについた後、「龍の嵐」が激しくなり各氏族が未曾有の危機に晒される中、通訳のソエムスと共に対立するアブザン家のカン、ダガタールとの対話に応じるも、
「死者はただ去り行くのみが自然のあり方であり、それに反する行いを断じて許さない」
旨を告げダガタールに迫る。
「永遠のドロモカ」としてカード化されている。
(『終わりなくして始まりなし』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「ドロモカ」の項目)(外部リンク参照)
オジュタイ
「偉大なる龍王オジュタイ様は宣言された、ジェスカイはもはや存在しない」
「お前達のカンは死に、要塞の一つもまた陥落した。他の者は従うがよい。オジュタイ様は命じる......」
「......この死体、全ての屍は葬儀なく処分される。そして......幽霊火の戦士の刺青を持つ者は全て、剣により処刑される」
「偉大なるオジュタイ様はお前に仕事を申しつける」
「この日より、氏族はもはや存在しない。カンはもはや存在しない。その二つの言葉は口にされることはない。全ての書庫からお前達の記録を探し、氏族の名を存在から消し去るように。お前達の歴史は今日より始まるのだ」(通訳のエイヴンによる龍詞からの訳)
ジェスカイ道と対立する龍の群れを率いる龍であり、ジェスカイ道の理想「狡知」の体現として崇められている龍。
雄。
オジュタイとオジュタイの群れの種の龍は白と赤の羽毛に全身を覆われた姿をしている特徴があり、氷の吐息を使う。
各氏族のカン5人による頂上会談を自身の群れの龍及びシルムガルの龍の群れと共に襲撃する。
「冬魂のオジュタイ」としてカード化されている。
(『カンの落日』)(外部リンク参照)
(『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトにおける「冬魂のオジュタイ」の壁紙ダウンロード)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「オジュタイ」の項目)(外部リンク参照)
シルムガル
(画像左側の龍)
「龍王様はお前に保証する」
「これこそが最も誇らしき位置だと」
「つまるところ、タシグル」
「お前は彼の最高の戦利品ということだ」(シディーキによる龍詞からの訳)
スゥルタイ群と対立する龍の群れを率いる龍であり、スゥルタイ群の理想「残忍」の体現として崇められる龍。
雄。
シルムガルとシルムガルの群れの種の龍は蛇のような姿と鋭く長い牙を持つ特徴があり、腐食性の猛毒の吐息を使う。
ウギンが面晶体の繭の中で眠りにつく中、
ラクシャーサとナーガを失ってスゥルタイ群が衰退する中、シルムガルの龍の群れはついにカンの宮殿へと迫るほどとなり、
シルムガルはスゥルタイ群のカンであったタシグルより直々に黄金と宝石で飾られた翡翠の玉座を貢ぎ物として助命の嘆願を受けることとなる。
「漂う死、シルムガル」としてカード化されている。
(M:TG Wikiにおける「シルムガル」の項目)(外部リンク参照)
コラガン
その龍王はかつてないほど大きく迫ってきた。コラガンは身体を揺すりながら近づき、彼女らを見下ろしていた。その口が大きく開かれ、触れるまでもなく彼女らを焼き焦がしてしまえる稲妻が放たれようとしていた。アリーシャは弓を掲げ、合図すべき時を待った。
一人と一体の目が合った。ごく僅かな一瞬、時は静止したようだった。
龍の口が閉じられた。アリーシャは弓を下げた。そしてコラガンは渦巻く埃の雲を長く残し、過ぎ去った。
マルドゥ族と対立する龍の群れを率いる龍であり、マルドゥ族の理想「迅速」の体現として崇められている龍。
雌。
コラガンとコラガンの群れの種の龍は二対四枚の翼(他の種の龍は一対二枚)を持つ特徴があり、稲妻の吐息を使う。
各氏族のカン5人による頂上会談の後、マルドゥ族の元へと馬を走らせるアリーシャ達の背後より現れるも、アリーシャと眼差しを交わし飛び去っていった。
「嵐の憤怒、コラガン」としてカード化されている。
(『カンの落日』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「コラガン」の項目)(外部リンク参照)
アタルカ
ヤソヴァはマンモスの死骸の残骸を指差し、そして何も持たない両手を広げた。
「アタルカ!」 彼女は言った。「もうあなたと戦う気はない。私は戦いに疲れた。それは貢物だ。我らを生かせ、そうすればもっと多くの食べ物を渡そう」
アタルカは首をかしげ、そして吼えると再びクルショクを噛みしめた。
ティムール境と対立する龍の群れを率いる龍であり、ティムール境の理想「獰猛」の体現として崇められる龍。
雌。
アタルカとアタルカの群れの種の龍は大きな鹿のような角を持つ特徴があり、龍炎の吐息を使う。
貪欲に獲物を求める龍である。
「世界を溶かすもの、アタルカ」としてカード化されている。
(『古の、新たなタルキール』、『カンの落日』)(外部リンク参照)
(M:TG Wikiにおける「アタルカ」の項目)(外部リンク参照)
『運命再編』についての外部リンク
非公式リンク
あなたの隣のプレインズウォーカー
「アニヲタWiki(仮)」における「古のカン(Mtg)」の項目
『タルキール覇王譚ブロック』
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『運命再編』におけるタルキールの氏族
アブザン家
ジェスカイ道
スゥルタイ群
マルドゥ族
ティムール境
「何をしたのだ?」 裂け目の上から叫ぶ声が響いた。ヤソヴァの声だった。
サルカンは顔を上げた。彼女が裂け目の端から見下ろしていた。その表情には当惑があった。
彼女を囲むように、頭上の空高くで龍の嵐が新たな活気に沸いていた。新たな龍達がそこから弾け出た。純粋で自由な、存在の喜びを声として上げながら。
サルカンはヤソヴァへと笑ってみせた。感謝と、単純かつ言葉では言い表せない喜びから出た笑みだった。「やるべき事を、です」 彼は声を上げた。「感謝致します、ヤソヴァ・カン」
彼女は困惑とともに面晶体の繭を見た。サルカンは笑った。そして知った、彼をこの場所へと導いた一連の出来事は、決して周りくどい冗談などではなかったと――一つの目的のための連環だったと。命運が彼をここに連れてきた。この、歴史の分岐点へ、行動の機会を与えるために。もし彼がボーラスに仕えることがなければ、ウギンの目へと送り込まれなければ、壊れた心に鳴り響く声とともにタルキールにやって来なければ――その苦難全てが無ければ、彼はその世界のために、新たな連環を作り上げる機会は決して持てなかった。
とても久しぶりに、サルカンは脳が自分自身のものであると感じた。清明さと高揚の、馴染みのない感覚が彼の身体に広がった、まるで前の見えない夢から目覚めたかのように。思考は乱れることなく素直に流れ、意識は分かたれても、壊れてもいなかった。
そして、全てが一瞬のうちに――
――サルカンの存在は不可能となり――
――自身の世界の過去への旅は、歴史の秩序と流れへの冒涜となり――
――彼の行動は、死した龍のプレインズウォーカーの絆へと彼を導いた状況を、改変不可能なまでに変化させ――
――彼をこの世界の歴史へと導いた出来事の全て、そして彼自身の存在すら、無と化し――
――時の力が、サルカンを、運び去った。
空から落ちる雪片がヤソヴァを過ぎ、裂け目の底に秘めた構築物に白い斑点を描いた。剣牙虎は静かに彼女に歩み寄ると鼻を触れ、そして彼女はその頭に手を置いた。頭上高くでは、龍たちが鳴き声とともに、空を舞っていた。