概要
藤子・F・不二雄原作のアニメ作品『ドラえもん』のエピソードの一つ。2000年3月24日に放送された大山のぶ代版アニメオリジナルエピソード。
ドラえもんとのび太の友情を改めて描いたエピソードであり、のび太がドラえもんに頼り過ぎた罰としてロボット裁判にかけられてしまうも、彼の元へ向かう為に力強く走るのび太の姿は感涙必至。
ストーリー
ママが洗濯物を取り込んでいると、ドラえもんが花に水をあげていた。それだけでなくのび太の代わりにドラえもんが観察日記に花の様子を書き込んでいた。
その様子を見ていたママは「のび太ったら何でもドラちゃんに頼りっぱなしで…」と言うが、ドラえもんは微笑みながら「もう慣れてますから」と言う。
するとのび太が帰宅するが、すぐにドラえもんの元へ駆け寄り「学校にランドセルを忘れちゃったから、とりよせバッグを貸してよ」と言う。彼に呆れつつもドラえもんはポケットを弄るが、「タイムふろしき」や「具象化鏡」、「カチンカチンライト」に「まじんのいないまほうのランプ」、「感情エネルギーボンベ」に「星とりあみ」等、関係無いひみつ道具を次々に取り出してしまう。
ようやく「とりよせバッグ」を見つけてランドセルを取り出すと、のび太はお礼を言ってそのまま走り去って行く。ドラえもんの傍には間違えて取り出したひみつ道具の山が出来上がってしまっていたが、既にのび太はどこかへ行ってしまった。その為、ドラえもんは仕方なく一人で道具を片付けることにした。
その後、道具を片付けたドラえもんが部屋に戻ると、体の調子がおかしく熱っぽいことに気が付く。するとのび太がやって来て、ドラえもんは彼から「しずかちゃんと遊ぼうと思っていたけど、ママにお使いを頼まれちゃった。だから買い物カゴだけが家に戻って来る道具を出してよ」と頼み込まれる。
ドラえもんは何とかのび太の要望通りのひみつ道具(正式名称不明)を取り出すが、その直後に体の具合が悪化してしまう。何とかドラミに連絡を取ろうとしたドラえもんだったが、そのまま気を失ってしまった。連絡を貰ったドラミが駆け付けた時には、ドラえもんは意識不明の状態になってしまっており、彼女は急いでドラえもんを22世紀のロボット病院に搬送する。
これらの出来事を、謎の飛行物体を通じて眺めていた者がいて…。
夕方、のび太が帰宅すると部屋には誰もいない。するとドラミが机に残しておいた端末型のひみつ道具(こちらも正式名称不明)から、「お兄ちゃんの体の具合が悪いので、ロボット病院で検査を受けることにしました」という伝言が流れる。
この時、のび太は「きっとドラ焼きを食べ過ぎたのかな」と軽く考えていた。しかしその夜、気持ち良く眠っていたのび太は誰かに起こされる。目を覚ますと、両脇に謎のロボットが2人立っていた。彼らは22世紀のロボット警察と名乗り、のび太に衝撃の事実を伝える。
「貴方をロボット条例第三条違反により逮捕します」
当然驚愕するのび太だが、彼らは続けて「貴方のせいでドラえもんさんが故障したのです。貴方は22世紀のロボット裁判にかけられるのです」と告げる。そして彼らは嫌がるのび太に手錠をかけ、そのままのび太を22世紀へ連行してしまった。
22世紀に着くと、のび太はロボット警察に捕まれたまま裁判所へ連れて行かれてしまう。そこにドラミとセワシが駆け付け、2人は「ドラえもんは少し頑張り過ぎただけ。これはきっと何かの間違いだ」と言い、ドラミがのび太の弁護士を務めてくれることになった。ドラミは裁判の間、自分の代わりにドラえもんの様子をミニドラに見てもらうことにする。
そして裁判が開廷され、検事が改めて「被告人野比のび太君は、ロボット条例第三条に明記された、ロボットの基本的権利を侵害した」と説明する。のび太がドラミにどういうことかを尋ねると、彼女は「ロボットは人間のパートナーであり、奴隷では無い。つまり人間がロボットに強制的に奉仕させてはならない」と説明し、続けて「のび太さんは、お兄ちゃんを働かせ過ぎた罪でここに連れて来られた」と補足する。
ドラミは「有罪になってものび太さんが罰せられることは無いわ。けど有罪が確定すると、お兄ちゃんとのび太さんは二度と一緒にいられないことになってしまう」と告げる。それを聞いたのび太は衝撃を受けるも、裁判は無慈悲に続けられ、検事が「こころそんざいかん」(指定した相手の心を立体映像として呼び出すことが出来るひみつ道具)を使用し、各証人を呼び出し始める。
最初に呼び出されたのはママで、検事がのび太は普段ドラえもんにどのように接しているかを尋ねると、やはり「いつもドラちゃんに頼りっぱなしで、今日なんてランドセルを忘れたからとりよせバッグで…」と証言する。
そこでドラミがママに、ドラえもんとのび太の仲を尋ねる。ママは「2人は普段から仲良しで、この前も一緒にテレビゲームをしていて、コントローラーを取り合うほど夢中になった」と証言する。しかし検事は「それは喧嘩をしていただけでは?増してテレビゲームに失敗したのをドラえもん氏のせいにし、そのストレスが故障の原因に繋がったのでは?」と反論する。
続いて検事はジャイアンとスネ夫を呼び出す。彼らは案の定「のび太は生意気なんだよ。何かあると、いつもドラえもんに助けてもらってさ!」と証言する。その様子を見ていたセワシは、どんどんのび太が不利になっていくことを心配する。そこにミニドラが現れ、彼にドラえもんの容態が悪化してしまったことを告げる。
その頃、ロボット病院ではドラえもんの手術が行われていたのだが、体中に様々な異常が現れており、このままでは電子頭脳が破壊されてしまうところまで追い詰められていたのだ。
セワシはミニドラから聞いた情報をドラミに伝え、2人はこのことをのび太に黙っておくことにする。その間に、今度はドラえもんのガールフレンド・ミィちゃんが「私とドラえもんがデートしていると、いつものび太さんがドラえもんに道具をねだるから、デートを邪魔されます」と証言する。
落ち込むのび太だったが、ドラミにドラえもんの容態を尋ねる。すると手術中という答えが返って来た為、のび太は動揺してしまう。
ドラミはのび太の裁判を少しでも有利にする為、しずかを証人として呼び出すことを提案する。こころそんざいかんによって呼び出されたしずかに、ドラミは「最近、空き地であった出来事について話して下さい」と告げる。
しずかの証言によると、スネ夫はいつものようにのび太達に「今度の連休、ヨーロッパ旅行に行くんだ」と自慢する。しかしのび太は「スケールが小さいな!僕はドラえもんに頼んで、土星の輪でゴーカートを走らせるんだ!」と反論する。
しずかとジャイアンはもちろん、結局はスネ夫ものび太に「連れて行って」と頼み込み、のび太は自信満々な様子で「良いよ!ドラえもんに頼んでみる!」と答える。
ドラミはこの出来事を、ドラえもんとのび太が固い友情で結ばれていることの証明だと主張する。同時に、ドラえもんがのび太の傍にいなければどうなるかをしずかに尋ねる。するとしずかは「そんなことは考えられません。のび太さんにはドラちゃんがいてくれて本当に良かったと思っています」と答える。
しかし検事はしずかに「今の空き地での出来事の中で、のび太君は何回ドラえもんに頼んでみると発言しましたか?」と尋ねる。答えられないしずかに対し、検事は「僅か3分の間に5回です」と断言し、続けて「これはのび太君が普段からドラえもん氏に頼り切りだった証明です!」と言い放つ。
検事は裁判長及び陪審員のロボット達に、「以上のようにドラえもん氏の発病の原因は、被告人野比のび太君にあることは明らかです。よって、有罪を強く希望するものであります」と言い放つ。
この言葉で怒りが頂点に達したのび太は、涙を流しながら「僕はそんなつもりじゃなかったんだ!勝手なことばかり言わないで!」と叫んで検事に掴み掛かる。しかしすぐにロボット達に取り押さえられ、独房に連れて行かれてしまう。
裁判は休廷され、続きは午後から行われることになった。ドラえもんと離れ離れになる悪夢にうなされたのび太だが、目を覚ますとミニドラが傍にいた。のび太はミニドラに、ここから出してドラえもんの所へ連れて行って欲しいと頼み込む。
慌てるミニドラだったが、涙を流したのび太から「もしこのままドラえもんに会えなくなったら、僕はどうすれば…」と言われ、ミニドラはのび太の脱走を手伝う決心をする。
ミニドラの助けを借りて独房を抜け出したのび太だが、やはり検事達に監視されていた。すると先程のび太を連行したロボット警察が現れ、のび太とミニドラを巨大な袋に包んで捕まえてしまう。
しかしミニドラがハサミで袋に穴をあけ、のび太達は「タケコプター」で脱出する。その様子を見ていた検事は「被告人が逃げ出したということは、自ら罪を認めたようなものでは?」と告げる。しかし検事はここですぐにのび太を拘束するようなことはせず、「のび太君のこれからの行動で、彼の本性が分かるはずです」と言いながら、あえてこのまま監視し続けることを提案する。
のび太とミニドラが向かう先は、当然ドラえもんが手術を受けているロボット病院である。検事は「この期に及んで、まだドラえもん氏に何とかしてもらおうと考えているのか!有罪は確定的であります!」と言いながら呆れ果てる。
だが、のび太はそのまま病院の中に入り、一度も立ち止まることはなく走り続ける。そしてついにドラえもんがいる部屋に辿り着くが、彼は未だ意識不明の重体だった。
のび太は急いでドラえもんの元へ向かおうとするが、そこにロボット警察が現れてのび太の腕を掴む。ミニドラは既に拘束されてしまい、ひみつ道具を使用することが出来ない。
だがのび太は一瞬の隙を突き、ロボット警察の拘束を抜け出してドラえもんの元へ駆け寄る。しかしドラえもんは一向に目を覚まさない。のび太は涙を流しながら、ドラえもんにこう告げた。
「ドラえもん、僕だよ。のび太だよ!起きて!ねぇ!ドラえもん、目を覚ましてよ。お願いだよ!これからは、もうドラえもんばっかりに頼らないからさ!四次元ポケットもいらないよ。だから目を覚まして!お願い、ドラえもん…!」
ドラミや陪審員達は涙を流しながら、そして裁判長や検事は真剣な顔つきで、のび太の悲痛な叫びを聞いていた。そしてのび太が「ドラえもんが目を覚ますまでここにいるんだ!」と言うと…
「のび太君が泣いてる…?誰だ、のび太君を泣かしたのは!」
のび太の心の叫びが届き、ついにドラえもんが目を覚ましたのだ。のび太は感極まってドラえもんに抱き着くが、ドラえもんは自分が意識不明に陥っていた間のことを知らない為、何故のび太が涙を流していたのかがよく分からなかった。
裁判長は手で涙を拭いながら「私はロボットと人間が、これほどまでに強く結ばれている例を他に知らない…!」と言い、検事も同意する。裁判長がのび太の評決を陪審員達に尋ねると、全員が無罪と宣言した。
そして裁判長が「野比のび太君を無罪とする」と告げると、ドラミとセワシが手を取り合って喜び、検事や陪審員達も拍手を送り、のび太の無罪を祝福した。
のび太は自分が無罪になったことを知らないまま、疲れ果ててドラえもんの胸元で眠ってしまった。その様子を、ドラえもんは微笑みながら眺めていた。
すると突然「起きろ!のび太君起きろ!遅刻だぞ!」というドラえもんの声が響き渡り、のび太は目を覚ます。そう、先程までの出来事は、全てのび太の夢だったのだ。安心したのび太は「これからも一緒だよ!もうあんまり頼らないようにするから!」と言いながらドラえもんに抱き着いた。
その後、準備を終えたのび太は元気良く学校へ向かい、ドラえもんは笑顔で「のび太君、行ってらっしゃい!」と言いながら彼を見送るのだった。