ノベルズ
のべるず
概要
新書と同じサイズ(173mm×105mm)で刊行される小説のこと。
また、各出版社のノベルズレーベルから出版される書籍のこと。ノベルスとも。
ライトノベル等との最大の違いはレーベルが確立しているのと同時にサイズまで特異なため類別がしやすい点にある。
ペンギン・ブックス等の海外のペーパーバックをモデルにして、国内では1950年代からこのタイプの刊行が開始されたとされる。
60年代に光文社のカッパ・ノベルスが『砂の器』や『日本沈没』といったミステリーやSF分野でヒットを連発したことでノベルズを大衆文学の大きな一角として確立させる。
ハードカバー版より小型で持ち運びやすく廉価でもあり、また松本清張や赤川次郎ら当時の新進気鋭の作家陣がそろい「攻めた」作品が次々に発表されたことで次第に社会人だけでなく当時の学生ら若者から高い支持を得るようになっていった。
取り扱うジャンルは非常に広範囲に及ぶ。
本格ミステリーやトラベルミステリーあり、SFもあれば架空戦記もあり、果ては今日のライトノベル的な作風(当時でいえばジュブナイル?)から伝奇ロマンなんていう謎ジャンルまで揃えており、文字通り何でもありである。
ノベルズの『何でもあり』っぷりを象徴するものにメフィスト賞がある。
これは講談社が主催している新人文学賞であるが、元々は1994年に京極夏彦が『姑獲鳥の夏』を持ち込んでいきなりノベルズ媒体でデビューを決めなんとヒット作となり、続いて1996年に森博嗣が『すべてがFになる』(旧題『冷たい密室と博士たち』)が同じく持ち込みからのノベルズでいきなりデビューしてヒット作となる。これによって、『すべてがFになる』を第1回受賞作、『姑獲鳥の夏』を第0回受賞作とする「メフィスト賞」が創設され、以降文芸誌「メフィスト」に持ち込まれる作品の中で編集者の目にかなったものが受賞してすべからずノベルズで出版➡作家デビューとなるのが慣例となる。
(※現在ではこの限りではない。後述。)
驚くべきはこの賞、ジャンルに関する規定が設けられておらず「エンタメ作品なら何でもいい」。また2014年に講談社BOX新人賞と統合されるまでは文字数にすら制限が無かった。
そのため、あまりの凄まじさに一時期はイロモノ視する批評家や読者が続出。具体的には京極や森に続いた作家が清涼院流水や舞城王太郎、佐藤友哉、西尾維新や古野まほろといったメンツだといえばとれほど濃いものであったか想像ができよう。
特に80年代~90年代にかけてSFブームと架空戦記ブーム、さらに新本格ミステリーブームに乗ってこのジャンルでの名作を続々と出版したことでノベルズブームも到来。各出版社が次々にレーベルを立て、田中芳樹や佐藤大輔、綾辻行人、夢枕獏といった著名作家を世に送り出していった。
しかし、90年代初頭より電撃文庫などのラノベレーベルが次々に創立・発展していき「攻めた」作品群としてのシェアは徐々にこちらに奪われてしまう。また、2000年代以降はインターネット環境の整備やガラケーやスマートフォンなどの携帯端末の普及により「余暇のお供」としての需要が書籍からこちらに移っていく。そして2010年代以降はWEB小説からのヒット作品が話題の中心になる。
こうした流れの中で各ノベルズレーベルは新規ユーザーの獲得に苦慮するようになり、現在では多数のレーベルが廃刊や休刊を余儀なくされていて、横山信義や西村京太郎ら往年の作家による作品を徐々に高齢化する読者が支えているのが現状である。
かつて『銀河英雄伝説』や『レッドサン_ブラッククロス』を世に送り出した名門であるトクマ・ノベルズも『大正野球娘。』以降は話題作に恵まれず、唯一存在感を維持しているは『新本格魔法少女りすか』ら西尾維新の作品を多数抱える講談社ノベルスくらいとなっている。
その講談社ノベルスにしても近年はメフィスト賞受賞作(つまり新人作家)が刊行されることはなく他レーベルにながれてしまうケースが多い。
こんなことから、人によっては「市場としては消滅寸前」という評価を下す者もいる。