ディープ・ドーパント
でぃーぷどーぱんと
概要
裏風都を根城とする謎の組織「街」の裏切り者が「深淵」の記憶を宿す「ディープメモリ」で変身する。
極めて厄介な能力を最大限に悪用した使用者のため、シリーズ通して初となる依頼者が犯人もその使用メモリも知っており、ドーパントとしての能力の情報まで提供された依頼という異質な体制となった。
実質的には、探偵の依頼というより、現状での依頼者・仮面ライダー双方では倒せないこの能力に対する突破口をフィリップに研究開発させる依頼と取るべき事件となった。
上半身にクラゲ状の水を纏ったダイバースーツのようなシンプルな姿で、口部には鋭い針が装備されている。
肉体の分子構造を変えることで無機物をすり抜け、地面を海の様に泳げる能力を有している。
一見、便利ながらもあまり強そうな能力ではないが、基本的にはどのような場所であれ周囲は無機物に囲まれているため、地中や建造物に瞬時に潜ることで、あらゆる攻撃が一切当たらないという、回避能力においては最高峰の能力である。
結果、後述の能力ともども、周囲に被害を出さずに戦闘を行うこと自体が不可能となっている。
加えて使用者が能力を用いて「ディープの力でしか辿り着けない場所への籠城」という手段を取ったために、
- "地中活動"に適したメモリ・ガジェットを一切持っていないWやアクセル
- "裏風都には存在しない"地下空間へだけは直接干渉できない万灯達
の双陣営にとってはこの上なく厄介な相手であり、戦いを避け籠城されたら打つ手がない状態となっている。
また、エターナルによりメモリ能力そのものを封じる方法であればこうした特性も一切無視して勝利は可能だが、能力を物理的に使い「籠城」されてしまった後では、、能力を封じれば閉じ込めることはできても、捕獲や人質救出はできない。
ただでさえ回避能力だけでも厄介な相手だが、その能力を誘拐と籠城に用いたことによる救出というハードルがさらに解決難易度を高めてしまっている強敵である。
戦闘面では回避力だけでも強力だが、その能力を攻撃に転用することも可能。
身体を包む水を超高速で流動させる事により、触れた物体をウォーターカッターの如く削り取る事ができ、単純な殴り合いでも高い破壊力を有する。
戦闘では水の一部を触手のように伸ばし、相手を寄せ付けずに攻撃する戦法を得意とする。
また、逃亡能力との併用により、自身は無機物に潜伏して攻撃を完全回避しつつ、溶け込んだ周囲の無機物をは広範囲にわたり破壊する、攻防一体の動きも躊躇なく見せるため、戦闘となると周囲へ被害を出さずに相手にするのは困難。
しかし、あくまでも「潜ってすり抜ける」能力であり、自身単体での液状化はできず、媒介できる物質と触れていなければならない。また、潜ることができるのは無機物のみであり、生体は透過できない。
強力な能力であるが常時発動しているわけではないため、潜伏するよりも早く攻撃できれば、命中させることは可能である。
そのため、地面に潜る時間を与えず無機物ではない攻撃を叩き込まれれば、為す術がないという弱点も少なからず存在している。
出紋大騎
「不機嫌なマーメイド…だね。素敵だ。ンふふ。」
「自分で言うのもなんだけど、ボクはなかなかのナイスミドルだよ」
ディープ・ドーパントの変身者。
一般的な依頼と異なり、最初から彼による犯行であることが発覚した上での依頼が持ち込まれ、翔太郎達に対し彼の素性やドーパント能力が開示されている。
一方で、あくまで彼の経歴や能力は裏風都に不都合な情報は伏せられた、教えてもよい範囲の情報であり、なおかつ出奔後の犯行に関する現在の実態は把握しきれていない。
自らを「世捨て人」・「芸術家(アーティスト)」と嘯く男性。
一人称は「ボク」。61歳。大きく目を見開いた不気味な髭面の老人。かつては裏風都に所属していたが、現在はディープメモリの能力を応用した地下空間に、自分しか入れないプライベートビーチを作り悠々自適な生活を送っている。
趣味は絵画であり主に若い女性を中心に描いていた。
老化のためかガイアメモリの副作用か、物事が忘れっぽくなっており覚える際にペンで手の甲にメモ書きする癖がある。
饒舌かつ飄々としており、誰に対しても不遜かつ見下した態度を隠そうとしない傲慢な人物。
一方で、女性の扱いには自信があると自称しており、これまでに誘拐してきた女性にもその意思を尊重しており、最終的には恋仲となった相手もいるし、そうならなかった相手に無理矢理に手を出したりはしていないと語る。
もっとも、モデルとして気に入ると誘拐してでも同棲するという時点で立派な犯罪者であり、誘拐したら全裸にした上に、水着のサイズが合っていないと眠らせて着替えさせるという完全なる変質者である。
かつては財団Xの根幹企業の一つ『カイ・オペレーション』の社員であったが、その実態も知らず、年齢の割に待遇にも恵まれない窓際社員であった。その上に重い病に侵されてしまい、若い女性ばかりを描くのも「自らと違い健康的な体」であることへの鬱屈した感情によるものであった。
そして、新たなCEOとなった万灯雪侍にその「心の闇」を見出され、秘書にまで抜擢される。そして裏風都も含め、長らく表でも裏でも彼を忠臣として支えており、お互いに能力や機密まで知り尽くした関係であった。
そしてついにはその働きを認められ、ガイアメモリを与えられる。
適合したディープメモリによって病は完治したが、同時に奥底に深く沈めていた狂気が爆発してしまい、誰の言う事も聞かなくなって『街』から離反してしまう。
その後は、予てより目をつけていたときめを誘拐し、自らの伴侶にするべく動き始め、わざわざ万灯や翔太郎の前に顔を出し勝利宣言と降伏勧告までするという余裕を見せつけた。
流石の万灯も彼が裏切るとは予想していなかったようで、再会した時には珍しく不機嫌な態度を見せている。
その実態(ネタバレ注意)
「……もう…メモリの味を知った女性じゃないと興奮しないんだよ!」
「これだから若造は嫌いだよ。自分の体力や気力が永遠に同じだと思っている!未来に続く道に成功しかないと思い込んでいる!そんなことは全くないのに!君も!万灯も!」
監禁されていたときめの調査により、過去の被害者が全員ドーパント女性であったことが判明。
その上、全員がすでに殺害されている。(本人曰く、意図しての殺害ではなく、メモリの毒素を消そうとして失敗したような言い回しだが、詳細は最後まで不明となった)。
出奔した際に、裏風都にてドーパント能力の向上に使用していた薬物等も入手しており、それを使用して被害者を「ドーパントに最適な体」に徐々に作り変えていた。さらに、大量のガイアメモリとコネクタ装置をも所有している。おそらく、首魁の秘書という立場から所在を把握し盗み出したものと考えられる。
このため、ドーパント女性を狙ったのではなく、好みの女性に好みのガイアメモリを無理矢理使用してきた可能性が極めて高い。
地下空間は数百メートル四方程度の狭い空間であるが、これはディープの物体を削る能力で地道に掘り出した空間である。遠景は絵画で、隔離された中でも数年は生活できる備蓄を常に確保している。
モデル女性を監禁し絵を描くだけが目的であれば、いささか下準備が根気強すぎるが、これは上述の通り裏風都にも仮面ライダーにも手出しされない安全な空間を作り出す、いざとなれば籠城できる自身の保身の面も大きいのだろう。
また、本人の意図ではないようだが監禁した女性が全員死んでいる以上、それを隠蔽できるよう警察の目からも逃れきる必要があった。
本人は女性の意思を尊重すると語っていたが、この薬物投与には思考力を低下させ「人形」にする洗脳をかねた処置である。
つまり、本心から恋仲になどなっておらず、洗脳し女性が自身の従順な恋人になるように仕向けたという、極めて卑劣な犯行である。
結果、フィリップ達から最低の変質者、メモリ犯罪者の中でもダントツで酷い男、クズ野郎とストレートに呼ばれてしまう。
ディープの能力は強力であるが、それ単体であればせいぜい住居侵入や逃亡に便利な程度のメモリであっただろう。
しかし、悪の組織の首魁の秘書という、情報に精通した立場の人間が、知りえた情報と持ち出した道具を駆使し、さらにその能力をより高度に使って見せたことで、メモリの能力の範疇を超えた最凶の変質者を生み出してしまったのである。
深淵から打ち上げられしd(ネタバレ注意)
ときめに圏外の絶望を味わわせるために携帯電話を没収しなかった結果、それが飛べる携帯電話であったことからメールは地上へ届いてしまう。
これがもとで、地下空間に電力が届いていること、微弱だが携帯電話の電波が届く場所もあることが判明してしまい、位置を特定されてしまう。
結果、エクストリームメモリの能力を拡張することでフィリップを電子化し別の機械へ転送する新技術により、スタッグフォン経由で侵入をゆるすこととなった。さらに、事前に位置の目星がついていたため、戦闘中に地上に向けて目印を飛ばされ、アクセルによる物理的な侵入までも許してしまう。
女性を精神的にも支配下に置くための変態的な余裕が、致命的な敗因を産むこととなった。
裏風都にいた時の知識として、彼らが研究していた仮面ライダーにも精通しており、フィリップの能力にも驚かないどころか、その状況ではファングジョーカーにしか変身できないことを知っていたために余裕を見せる。
そうしてディープに変身し戦闘に入るが、彼がファングトリガーに変身したことに動揺。情報にない未知の形態を目の当たりにしたことで意表を突かれ、投擲された銛が直撃したことで肉体の分子構造が麻痺してしまう。
Wを知り尽くしていると思い慢心していたが、その情報とはあくまで彼が出奔する前のものであり、籠城故に最新の情報を把握できていなかったため、ここでも自らの余裕が致命傷となった。
無機物に潜ることもできなくなった彼にWはファングスクリュードルを放つも、薬品で正気を失ったときめが自分にすり寄ったことで攻撃は見当違いの方に飛び、ディープは得意げに勝利を確信。
しかし、目の前の悪魔に好い加減我慢の限界が来ていた二人は『もう一つの牙』であるファングメタルへとメモリチェンジ。
本来であれば、ただでさえ怒り心頭中の翔太郎との変身は不安定であり、ファングではなおさらなのだが、あまりの卑劣な変態ぶりにフィリップまでブチキレていたことでその変身は難なく成功してしまう。
ソウルサイドとボディサイドから鋭利な刃を生やしたWの決め台詞を向けられたディープは「あいにくボクは忘れっぽいから過去の罪など数えられない」と吐き捨てるも、強烈な飛び蹴りと頭突きを顔面に叩き込まれてしまう。
俊敏な動きと強靭な硬度を持つ牙の闘志の特性から、自身にとって最大の天敵であることを理解したことで逃走を図るも、今までの怒りをぶつけんばかりの獰猛さで襲い掛かるダブルに圧倒されたことで最初の余裕は消え、完全に戦意を喪失してしまう。
背中を見せて逃げようとするディープの口部にあるニードル(この時アジトの壁に叩きつけられたことで先端が折れ曲がっていた)を掴み上げられたことで完全に身動きが取れなくなるも、今のWに時間制限があることを察知。
意識が朦朧としているときめを人質にして必死に時間を稼ごうとするが、予定通り天井に放ったファングスクリュードルの痕跡から場所の検討を着けたアクセルブースターも地下空間に巨大な穴を空けながら参戦。
Wとアクセルによってアジトが半壊した上にときめを奪還されたことで「ボクの女を返せっ」と癇癪を起こしたように喚き散らす彼に、再び怒りを滾らせたWは壁に叩きつける。ここまでくると自らの墓穴の掘りっぷりも清々しいほどである。
翔太郎や万灯の前に現れたこともそうだが、そもそもの話ときめを誘拐した時点で彼女のスタッグフォンを破壊するなり没収しておけば、居場所を突き止められることもなかった。
結局のところ、彼の敗因は己の能力を過信していたことであり、その傲慢さが敗北の深みへとはまってしまったのだ。
誰にも追跡不可能な完全犯罪のはずの最凶の変質者だが、他の誰でもなく自らの心に負けたために数々の墓穴を掘り、その末に敗北したのである。
フィリップの指摘に図星を突かれたことで逆上したディープは、全身に触手を纏った回転攻撃で八つ裂きにしようとするも、呆気なく左足を掴まれてしまう。
そのままアクセルの作った天井の穴目掛けて高く蹴り飛ばされると、Wはマキシマムドライブ『ファングスピアバレット』を発動。腹部を貫かんばかりの攻撃に耐え切れるはずもなく、深い地下から風都の地上へと打ち上げられたディープ・ドーパントは絶叫と共に爆散・メモリブレイクされた。
メモリブレイク後に真実を話すように告げられるが、当初は拒否。
しかし、メモリを過剰に使用した後にメモリブレイクされた際のリバウンドについての説明を受け、病に再び侵される恐怖から自白を決意。どこまでも自分本位な男である。
しかし、そこへ裏風都幹部勢が大量のロード・ドーパントを引き連れて集結。
元幹部を救出に来た……わけもなく、翔太郎たちに重要な秘密を明かされることを危惧した粛清である。
必死で命乞いをするも、自らはやめなかったくせにと完全に見捨てられてしまった出紋。
万灯雪侍「これだけ迷惑をかけた男だ。抹殺したら償いもできない。」
「君は我々の街の『大地』になりたまえ。それなら……多少は償えるだろ?」
大勢に迷惑をかけ命を奪ったその末路は、「死ぬ」のではなく「土となる」こと……つまり人肉を糧に裏風都の大地を生み出すロード軍団のエサとなることを以て「贖罪」とし、役に立ってもらうべきであると万灯は宣告。
直後、彼はスクリーム・ドーパントによってロード・ドーパントの集団の只中へと投げ飛ばされ、絶叫とともに全身を貪り食われるという作中屈指のむごたらしい最期を遂げたのだった。
余談
凄まじい狂気を持つ彼だが、かつての上司である万灯を見下し、翔太郎の熱い言動に嫌悪感を覚えていることから「若者へのコンプレックス」だけでなく「健康な者への嫉妬」が根底にあったのかもしれない。
またWひいては全仮面ライダーシリーズのヴィランの中で初の性犯罪者(描写はぼかされているが)といえる。
関連タグ
ヤム:女神転生シリーズに登場するモノに限定されるが、近似した外見の持ち主。
オアシス(ジョジョの奇妙な冒険):能力がほぼ同じだが地面に潜る原理が異なる。
沼鬼:出紋と同じく地面を泳ぐ能力者にして特定の女性を拐い、殺害してきた外道つながり。ただし上記のオアシスと同じく能力の原理は異なる
セニョール・ピンク、モモン:同じく地中遊泳できる能力者にして変態つながり。しかし両方とも出紋とは違い身内の女性を大切にした好漢である。特に後者は出紋と同じ病弱ではないが精神的な脆さが見られたもののパートナーの喝を入れられ、仲間たちの支えもあって克服した。そういった意味ではモモンの仲間にも恵まれず、内面の卑屈さが増長し、今より悪質な変態行為に手を染めたIFとも言える。