「私の場合はね、そうは言わない。“入って来る”んじゃないんだよ」
「……“降って来る”のさ」
CV:小野大輔
概要
漫画『風都探偵』に登場するメインキャラクターの1人。
異空間“裏風都”を拠点とし、ガイアメモリを用いて暗躍する謎の勢力『街』のリーダー格であり、自らもオーロラ・ドーパントへと変身する謎多き男性。自称「上流階級の上層市民」「天使」。
『裏風都』を「選ばれし優れた人間だけが住める街」と称し、その「優れた人間」とはガイアメモリに呼応し、秘めたる超常の力を引き出した『ハイドープ』を指すようだ。
メガネウラ・ドーパントを始め、只のドーパントに止まらない進化をしている者を『街』へと勧誘すべく彼に接触する、進化を遂げた者に対しての援助などを行っているが、その目的や正体についてはいまだ謎に包まれている。
また本作のヒロインである謎多き女性、ときめの謎を握る重要人物でもある。
容姿
藤色の長髪に虹色のメッシュを入れており、その部分を編んで金のリングで留めていると、特徴的な容姿をしている。
長身かつ眉目秀麗な若い男で、服装は常に白いスーツ。
人物
一人称は「私」。
基本的な言葉遣いは穏やかで紳士然とした好人物。
それでいて高いカリスマ性を以て『街』の住民を纏めあげている。部下からは老若男女を問わず慕われているようで、とりわけ準幹部の二階堂守は彼に心酔している。
ハイドープである前提条件は付くが、接触した相手がどのような卑劣漢であろうとも、穏やかな態度を変えない。
相手の投げかけた言葉を「そうは言わない」と、やんわりとした口調で否定した後、彼の思う表現に直して伝える口癖がある(本項目冒頭の台詞は、いつの間にか部屋の中に出現していた彼に対する美原睦夫の反応への返答)。
ただし、接触したものの見込み違いだった者や、大きな失態を犯した者については、あからさまに見下した態度で「クズ」や「ブザマ」となじる場面も見られる。
また『裏風都』建造の際、使役した多量のロード・ドーパント達が喰らったであろう数多くの犠牲者についても「理想の世界を築くための『美しい犠牲』」と称したり、自身と関わりを持ったドーパント達が敗れた際は「後始末」「君たちの街に申し訳ない」と称して変身者を始末する等々、本性は極めて冷酷である。
その様はフィリップをして「正真正銘の『悪魔』、そのものだ」と断言させたが、本人は「私は『悪魔』ではなく『天使』なんだ」と返していた。
恐らくフィリップが『悪魔』と呼ばれた過去への皮肉と推測され、この点からフィリップや『ミュージアム』の詳しい情報を得ている事実をうかがわせる(もっとも、神に従い神の意に叛く存在 や、神の威光を貶める存在 を無慈悲に駆逐していく天使も存在する以上、上記の傲慢なままに他者を選別する万灯の姿は、悪い意味で『天使』と呼ぶのに相応しいのも事実であろう)。
組織の運営者としては、人員に対して非常に寛容。
「好きにさせた方が、才能が弾ける人間というのもいる」を基本スタンスに、各配下の行動理念等にほとんど口出しはせず、よほど下手を打たない限りは多額の資金等で援助しつつ見守るに留めている。側近として従える五条一葉/スクリーム・ドーパントの扱いはその顕著な例であり、彼女の趣味である猟奇殺人はお目付役を付けつつも黙認している。
一方で仮面ライダー達に関しては「立場こそ違えど、ハイドープに限りなく近い超人」と最大限に評価しており、それ故に可能な限り接触を避けるのを基本方針とする等、『街』最大のリスクとして捉えている様子。
ある事情から、不本意にも彼らに協力を求めざるを得ない事態となった際も、有事を想定して2人の最高戦力を忍ばせていたり、翔太郎らに提供した資料には自分達の不利になる情報は一切載せず、自ら「国家間の文書」と評される程に徹底して隙を見せない。
その割には自身の名をあっさりと明かし、フィリップに対し「後で検索してみたまえ。まあ、すぐに落胆するだろうが。」とも断言して退けたが……?。
深層心理
物腰こそ穏やかながらも、最奥は極端なまでの完璧主義者であり、既出の言動に反比例して器量そのものはとても小さい。
上記の通り、自陣の者に対しては非常に寛容に見える一方で、万が一失態・敗北を犯した=1つでも傷が付いた者は掌返しで見限り、でき得る限り早く処分しないと気が済まない。
挑発までしに来た裏切り者への怒りと嫌悪は妥当ではあるが、支援しておきながら「見込み違い」としてメガネウラを消し、敗北するや叛意は無かった一葉にも処分の刺客を差し向け、自分自身も同行する様がそれを如実に示している。
無論、機密保持の観点では間違っていないものの、重用していた幹部でさえ強引に処する姿は、慢性的に人員が不足している組織の現状を併せれば、逆に合理性を欠いた行動なのは明白である。
更に、上記の一葉の始末の意図には「裏風都の『守護神』を復活させる」起爆剤としての意味合いもあったのだが、それで幹部格をもう1人失う結果になっても気にもかけない等、最早「組織など二の次」とばかりな行動すら見せている。
また、そのような苛烈な面を見せながらも、同じように失敗したパズルやオウル等の自身や裏風都、ガイアメモリに異常に狂信・心酔する者達の処分を保留したり、同じく自分を敬愛していた二階堂が敗北の責任をとって自爆した際には間際に感謝や弔いすら伝えており、これらの相反する両面から “カルト教団の教祖” じみた空気を感じさせる。
結局、万灯にとって最重要なのは『ハイドープの素質』以上に『 "自分の理想" に叶うか否か』のようであり、新入り故にニュートラルな視線を持つヒカルはその矛盾を早々に悟り、彼への信用を無くし始めている。
ドーパント能力
通常のドーパントや旧組織のミュージアムの幹部ドーパントとも異なり、新型のドライバー「ガイアドライバーrex」を用いてオーロラ・ドーパントへと変貌する。
また、劇中での証言やアニメ版の描写から、オーロラメモリはゴールドに位置するガイアメモリである様子。
明言こそないが彼自身も恐らくハイドープであり、閉ざされた空間や室内に忽然と現れる能力を持つ。彼はこの現象について、冒頭のセリフなどで「降ってくる」の表現を用いている。
ガイアメモリへの執着
人々がガイアメモリを求め、使用し続ける様に対して「これは完璧だからだ!」「何年経ってもこれ以上の発明品を人類は生み出せていないのさ」と誇らしげに語っている様子からも分かる通り、ガイアメモリに対する傾倒・心酔は並々ならぬものがある。
平成ライダー作品内で見ても『地球に存在しうる概念』と豊富なバリエーションに加え、よほど異常な使い方をしなければ、基本的に中毒以上のデメリットが生じない安全性(ただし、中毒性や医薬品による治癒効用の減衰に加え、メモリ毎に危険過ぎる副作用がある 時点で安全性は皆無に等しいが)を兼ね備えるガイアメモリは、変身アイテムでは文句なしの性能を誇るのは間違いなく、少なくとも『兵器』或いは『凶器』としては、十二分以上の性能である実態はほぼ間違いない。
もっとも、オーメダルやアストロスイッチ等の別作品のツールが、風都市内では大っぴらに流通していない事情もあるが、これらのツールは人が使用する上で、何かしらのツールを駆使する必要があったり、使用回数が一部例外を除いて設けられたりしている等、何かしら制限がある場合が多く、他の外部ツール無しに単品だけで完結するガイアメモリの方が万人の使用に向いているのもまた事実である。
ときめとの関係
記憶喪失になる以前からのときめを知っている節がある。
作中でのセリフも「私たちの街を出て行ってしまったのかい?」に代表されるように、ときめが本来「自分達の仲間である」と匂わせる発言が多い。
また、彼女が鳴海探偵事務所の一員として暮らしている現状を「奇妙な運命」と称し、以降も彼女に対し『運命』の形容を用いている。
第80話『fに感謝を/私は君を知っている』にて、遂にときめと直接接触した際は視力の良さや髪質、足指の特徴等の尋常な関係ではありえないレベルで身体の特徴を把握しており、その上で「君は私の一番の宝物だ。」と告げた。
そして、彼女を放置しているのは彼女の「何か」が熟する時を待っている、自身がときめから「ユキ」と呼ばれていた過去も明かしている。
また彼女が所持していた『破損したあるドーパントメモリ』のホログラムを観ているシーンも存在し、こちらとも縁が深いようだ。
秀夫からそのメモリについて話題を振られた際、「……ああ、私も愛しているよ。」「同時に憎らしくもあるがね……」と言及しているが……?
しかし、ときめが記憶を取り戻すも敵対関係が維持された状態に陥り、その現状を危惧する秀夫に対し、万灯は「本人がこの手に入りさえすれば味方にする方法ならいくらでもある」「投薬、洗脳、催眠…みんな君のお手の物だろう」と平然と断言しており、結局「宝物」と称賛するときめですら「自分だけのペット」のように見なしているのが実態であった。
余談
『街』の幹部陣の名前は日本の紙幣が元ネタとなっており、彼の場合、名前の由来は「一万円札」及び、描かれている「福沢諭吉」と思われる。
『街』については、園咲家が率いていた“ミュージアム”よりも遥かに進んだ技術力を持っている点や、一部の進化したドーパント態を持つ人物が所属している以外は殆ど分かっておらず(少なくとも彼の言動から、なんちゃって後継者を名乗っていたグループとは違い、琉兵衛の関与はないものの規模等に限れば、正当なるミュージアムの後続組織であるのは確かな模様)、今後の動向が注目される。
演者の小野大輔氏は『仮面ライダー電王』のテディ以来の出演であるが、悪役を演じるのは初。ちなみに万灯は第7話(原作漫画における第3巻)にて『金森大介』の偽名で行動している(ちなみに、「金森大介」自体実在する人物なのだが、その容姿はごく普通の老人)。
舞台版で万灯を演じる君沢氏は、本編にて園咲霧彦/ナスカ・ドーパントを演じており、ファンからは「霧彦さんがナスカからオーロラに転身した」と話題になった。
関連タグ
パワハラ:傲慢さからの人材の使い潰しを初め、無茶振り、失敗者の命を奪うなどの苛烈な制裁はまさにこれ。
以下、ネタバレ注意!!
作中で断片的に明かされた彼の過去を記載していく。
まずフィリップが「地球の本棚」で彼の名を検索し、その結果、彼がかつて人材育成企業「カイ・オペレーションズ」のCEOだった事実が判明。
この会社は財団Xの母体の一部であり(上記の名前もカイ=χとXの関連性をうかがわせる)、翻って彼もまた財団Xの元メンバーだった、ないしはその関係者であったと見て間違いない。
財団Xはミュージアムのスポンサーとして、ガイアメモリ開発に携わっていた組織であり、彼も「その折にガイアメモリの実態を知ったのだろう」とフィリップは推測した。
……しかし、会社を離れて以降の万灯の記録は地球の記憶に刻まれておらず、現在に至るまでほぼ白紙状態となっていた。この現象は彼が「地球ではない別の場所」……つまり『裏風都』で活動を始めたのが原因と推測されている。
また、中盤からときめが幻視する風都タワーが崩落する事件の記憶の中には、ときめの傍らに立つ万灯の姿があった。
本人も「大道克己というのは大変な男だった」「数多くの人間の運命を変えた。何を隠そう、私もその一人だ」と発言しており、この時の体験が彼に大きな影響を与えているのは間違いない。
また、秀夫の素性の詳細を知っている描写がされた現状唯一の人物でもあり、彼に「子供扱い」をするよう指示されている実態を明かしている。
更なるネタバレ注意!!
第144話にて、ときめとは血の繋がった双子の姉弟である実態が判明。
更に元々は異国の果ての生体実験場で生まれ育っており、「非常に優れた遺伝子の持ち主を配合した結果生み出された子供」として作られたため、両親の顔すら知らずに育ったが財団Xが拾い上げカイ・オペレーションズのCEOを任されていた。
その役目はガイアメモリの適性者の選出であり、それをよく思わなかった姉とは対立していた模様。
本来の名前は不明。
そのような経緯もあってか財団Xには崇拝レベルの忠誠を捧げており、千葉秀夫の出自やガイアメモリへの深い造詣も、この時の地位や経験があったからと思われる。
『実験』で多くの犠牲を出すガイアメモリに傾倒する姿勢や、歪な選民思想にはときめから反対されていたが、唯一の肉親で姉である彼女には執着心にも似た強い愛情を示しており、シャワー中に背後から抱き締めて驚かす等、見た目に反した何処か子どものような悪戯もしていた。
また、現在の戸籍は財団Xによって与えられたものであるため、日本人ではない可能性がある。
自身の本来の名前ではなかったため、地球の本棚では調べられないと踏んでいた模様。
更に、彼には異母妹も居て、裏風都は万灯が彼女を協力させて創造させたものである経緯が判明したが、これを巡って取り返しのつかない大事件が起きてしまう……(詳しくはトワ、シティ・ドーパントを参照)
トワに起きた出来事を対処するため「オペレーションX」を発動するよう伝言した後、ときめとの連絡は取れない状態となっていたが……
ときめが千葉秀夫と裏風都に戻るまでに秀夫の力を借りて、あの禍々しい大都市をシステム面を含めてほぼ完成させ改築、増強された裏風都タワー内でトワをドーパントのまま植物状態におき、その名の通り半永久的に封印する。
ガイアメモリが原因で起きたと呼べる一連の悲劇に、万灯は後悔を見せるどころか「始動の日」や「運命」などと称して、計画の本格始動だと捉え、何処か恍惚とした表情を浮かべていた。
但し、歪ながらトワに対しても肉親の情を持っていたのは確かであり、彼の顔を見た当時のときめは「心が壊れてしまった」と感じたらしい。実際、事件の経過を見守る時やビゼル停止の際には、今では考えられないような狼狽えた表情を浮かべていたが、これ以降はそのような人間らしい表情をほとんど見せなくなり、ほぼ常に不遜かつ穏やかで凍りついたような笑みか、たまに苛立った時に無表情を見せるのみとなっている。
その後、ときめに完成したガイアドライバーrexを与え「好きなメモリを選ぶ」ように促すも、彼女は当然断固拒否。しかしWによるミュージアム頭領やその協力者の撃破、それを受けて財団Xがガイアメモリ計画の打ち切りの決定を伝えたため、「妹を守るため」だと計画に協力させる。
そう、オペレーションXとはトワの暴走を食い止める策ではなく、「財団Xから逃れて裏風都を完成させ、万灯の理想郷とする」彼の野望 そのものだったのだ。組織に恩義こそ感じていた雪侍だったが、結局は自分の理想を達成させるための踏み台としか思っていなかったらしい。
財団Xも薄々それを感じていたのか、関連設備の破却と撤退指示を無視した万灯達に制裁を与えるべく、精鋭部隊と思わしきメンバーが裏風都へと足を踏み入れる……
その際、姉と彼らの戦いぶりを見た万灯は、ときめを「裏風都の守護神」と崇めるようになった上、誓約書の形で財団からお墨付き(干渉打ち切り)を得たのもあって、一葉や二階堂などの戦力をスカウトし、裏風都を発展させていく。勿論、ときめからは相変わらず野望を諦めるよう説得されたが、万灯は聞く耳を持たずに聞き流し続けた。そんなある日、ときめがシティ・ドーパント封印室がもぬけの殻になっている真実に気付く。彼女の目の前に現れた雪侍は、能面のように恐ろしげな無表情で彼女を見下ろしていた……。
その後彼女と戦闘に至った万灯は、交渉を求めるも、彼女は怒りのあまり聞く耳を持たずトワの行方を聞く(この際、「そうは言わない」は元々ときめの口癖であり、それが移ったことが本人の口より語られた)。それに対して彼は「能力だけを制御・抽出した上で本体は永遠に君(ときめ)の手の届かない所に送った」と返答、不気味な笑顔を浮かべる。更に「トワのことは家族と思っておらず、愛しているのはときめだけだった(つまり、トワは最初から道具としか思っていなかった)」真意を明かした。
当然、怒りを爆発させたときめに攻撃されるも、全力の力を以て防御。その衝撃はときめのメモリ(二重の意味で)とドライバーを破壊しただけに留まらず、彼女の体を風都へ吹き飛ばすほどだった……。
ネタバレの余談
カラーイラストやアニメでは、ときめと似た髪色をしていた点等から、ファンの間では「ときめの肉親(兄ないし父)ではないか?」 と早い時点で考察されていた。
ガイアメモリに魅せられ、組織に命じられるまま実験に手を貸す姿は、ある意味ではフィリップのIFとも呼べなくもない。
真の関連タグ
環境が生んだバケモノ:ガイアメモリへの異常な傾倒の根元は、正しくこれ。