「人とメモリは惹かれ合う……」
「1つの能力では満足できない私は、多彩なパワーのウェザーに出会いました」
「だが、まだ足りない!」
演:檀臣幸
概要
風都で「井坂内科医院」を営む開業医。年齢42歳、1967年10月20日生まれ。
人当たりのいい物腰柔らかな態度から市民に親しまれているが、それは表の顔。本性はガイアメモリの力を求め続け、自らの欲望のままに研究を重ねるマッドサイエンティスト(仕事自体は真面目にやっている)。医者としての通常の診療時間終了後は、ドーパント専門の闇医者としても活動。
その狂気的なメモリへの執着は園咲琉兵衛をして「少々危険な人物」、園咲冴子をして「ガイアメモリが生み出した突然変異の化物」と言わしめるほどの人物であり、実際メモリの力を引き出し、我が物にするためならば他人を死に追いやったり、自身の肉体を実験台にしたりすることも辞さないほど。
上位メモリのシルバーメモリの一本であるウェザーメモリを使ってウェザー・ドーパントに変身する。生体コネクタは右耳の中。
普段は黒いスーツを着ていることが多いが変身すると白い怪人態になるのは、普段は白いスーツを着ていて変身すると黒いライダーになる鳴海荘吉と対になっているとも言える。
かつて照井竜の家族を殺害した張本人にして怨敵。
人物
ガイアメモリの力を得るために様々な研究を重ね、様々なメモリを試し続けた結果、全身のあらゆる箇所に生体コネクタが刻まれている。
ガイアメモリを取り込み続けた結果体質が変容しており、カロリー消費が激しく非常に腹が減りやすくなっている。園咲家での食事シーンでは、数十皿単位の食事を平らげている描写が何度か見られた。
更にドーパントの身体を診察して手を加えたり、メモリやドライバーの改造を独自にこなしたりと結構な技術も会得しており、なんとゴールドメモリ(と同等のメモリ)の一つであるケツァルコアトルスメモリの複製までこなしている(流石に劣化版ではあるが)。
作中ではメモリとの適合率が異常なほど高い「過剰適合者」を利用してその人物を死に至らしめることで、最大限に力が引き出されたメモリを新たに自分の力として取り込むということも行ってきた。
こういったこともあって珍しいガイアメモリを研究することが趣味となっており、人間の美女の肢体よりもドーパントの肉体に興奮を覚える変態。
基本的には他人のことは利用する相手か実験材料としてしか認識しておらず、自らが力を得る為なら平然と他人を実験台にしたり、その結果として様々な副作用で苦しめたり最終的に死なせたり、またメモリの力を試す為に連続殺人を行なった。
感情(恐怖・怒りなど)によってメモリの力が増大化することを理解しているほか、普通は使用者の精神や時に肉体をも蝕むため嫌われているガイアメモリの「毒素」というものを、積極的に取り込むことによってドーパントの力を上げられるものだと考え、本来は危険な「直挿し」を信条にしている。
そのためガイアドライバー・ダブルドライバーなどの毒素を取り除くドライバー、仮面ライダーの使用する毒素を取り除き純正化されたメモリについてもドーパントの力を下げている物として否定的。
作中では園咲若菜のガイアドライバーを直挿しと同じように改造し、結果的に若菜はメモリとの高い適合率を得ている他、園咲冴子はナスカ・ドーパントLv3へと到達している。
井坂の仮説通り、メモリの毒素とは人間がメモリの力に耐えきれずに心身を壊してしまう為に毒素と呼ばれるのであり、メモリとの適合率が高ければ毒ではなくなるということなのかもしれない。
これほどガイアメモリに取りつかれたように研究を行いその力を取り込もうとするのは、彼の過去のある出来事が起因している。
来歴
過去
井坂も元から外道ではなく、医者になったのも「何故自分はこの世界に生まれてきたのか」、そんな生命の真理を解き明かしたいという想いから。しかし生命についての研究を続けても答えを見つけることはできず、そこに無力感を覚えて自暴自棄となり堕落。酒に溺れるような日々を送っていたという。
10年前のそんなある夜、井坂は園咲琉兵衛がテラー・ドーパントの力を揮う現場を目撃する。テラー・ドーパントの「恐怖」の力を見た井坂は感動していた。
その時から井坂は生きる意味をガイアメモリの力を得ることに見いだし、いつかテラーメモリを自分のものにすることを誓って、ガイアメモリの研究に没頭していった。
※演じた檀は後の書籍インタビューで「井坂は己の無力感ゆえに、ガイアメモリの“力”に魅了された」と述べている
テラーの能力は本来なら琉兵衛に近づいたり逆らったりするのを忌避するようになったり恐怖で廃人に追い込まれたりするが、その力を見ても恐怖どころか感動しその力を欲するなど、彼も鳴海荘吉のように精神干渉波への耐性があったようで、シュラウドに琉兵衛を倒せる可能性のある人物の一人として目をつけられ、彼女からウェザーメモリをもらう。
しかしメモリの力に取りつかれた彼は暴走し、ガイアメモリの力の実験のために人々を無差別に殺害する凶悪な殺人鬼に変貌していった。
凍結死、感電死、溺死など風都で原因不明の連続不審死事件を周期的に起こしており、本編の前年の八月には竜の父でガイアメモリ事件を捜査していた警察官の照井雄治を家族ごと殺害している。
雄治に目をつけたのは彼がガイアメモリ事件を追っていたことがきっかけだったものの、彼を家族ごと殺したこと自体は井坂は「(ガイアメモリの力の実験ができるなら)誰でもよかった」と述懐している。
その後
街医者として活動する裏でガイアメモリの研究を進め、ミュージアムとも外部の協力者として深く関わるようになっており、園咲冴子から好意を抱かれるようになる。
しかしインビジブルメモリの力を得るためにそのメモリの過剰適合者であるリリィ白銀を利用しようとし、そのことがきっかけで照井に正体が露見し警察に追われる身となってしまう。更に園崎若菜のドライバーを改造したことを園咲琉兵衛に問い詰められるが、逆に自分を実験台にしたメモリ探求への覚悟・度量を見せて琉兵衛に認められ、彼の計らいで園咲家に身を隠して警察から逃れていた。
結末
琉兵衛を打倒し、テラーメモリの力を自分のものとするという目的を果たすため冴子に接近。最終的に二人は通じ合い、琉兵衛に反旗を翻しミュージアムを去る。
この際にケツァルコアトルスメモリの過剰適合者だった野鳥園の飼育員の少女である島本凪に接触して彼女をあらゆる手段で精神的に追い詰めることでメモリの力を増幅し(この過程で彼女の父親を凪の目の前で殺害している)、最終的にはリリィ白銀の時と同じく彼女の命を奪って最大限に力が高まったケツァルコアトルスの力を手に入れるつもりだった。
そして手に入れた力を使って琉兵衛を倒し、テラーの力を手に入れるべく、いよいよミュージアムに対して冴子と共に反旗を翻す。
一方で最初は単に利用するつもりで接近していたはずの冴子に対し、いつの間にか本当に愛情が芽生えていたことに気付きもしたが、最終的には照井との一騎打ちの末に復讐ではなく、純粋に凪を守る為に力を手に入れて戦ったアクセルトライアルに撃破され、メモリブレイクされる。
「信じられん……ワタシへの憎しみが…ここまでお前を強くしたのか……!!?」
「…オレを強くしたのは…憎しみなんかじゃない」
そして上述の大量のメモリを過剰使用したツケが回り、メモリブレイク後はその反動で、肉体が無数の生体コネクタに蝕まれる。
「こ、これで終わったなんて思うな……!! お前らの運命も仕組まれていたんだ……あの、シュラウドという女に……!!」
「…先に地獄で待ってるぞァァァァァァァァ……!!!!」
仮面ライダー達の運命を仕組んだ女の存在を言い残して細胞がばらばらに分解されて消滅、死亡した。
救いようもないほど悪に染まってしまっていたためか、「どんなクズでも死なせたくない」を信条にする"ハーフボイルド"の翔太郎ですら、「悪魔には相応しい最期か…」と一切の同情を見せなかった。
その他・番外編
- 『ネット版 仮面ライダーW FOREVER AtoZで爆笑26連発』
ドーパント専門の医者として登場。アイスエイジ・ドーパントには「今のウェザーでほぼ同等のことが可能」と興味を示さない一方、ライアー・ドーパント・ダミー・ドーパント・ゾーン・ドーパントなどドーパントの個性的な特殊能力に強い興味を示した。
コーナー『霧彦の部屋』では、冴子を愛した者同士霧彦と険悪になるが、第3の男加頭順の存在により共同戦線ができた。なお、このコーナーでは霧彦からアクセルトライアルの変身シーンの間何をしていたか問われ、「待っていた。交通ルールは守らなきゃいかんだろ」と答えている。
余談
井坂深紅郎を演じた檀臣幸氏は、過去にウルトラシリーズのウルトラQ_darkfantasyの第7話に出演してた経緯がある。また仮面ライダーシリーズに出演するのは今作で最初で最後であり、2013年10月10日に急逝。その11年後にはテラー・ドーパントこと園咲琉兵衛を演じた寺田農氏も亡くなっている。
関連イラスト
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外部リンク
※これより先は風都探偵単行本13巻収録のネタバレになります。未読の人は注意!
「これはこれは…最期の瞬間にあなたに言った通りになりましたねえ。『先に地獄で待っている』…と!」
「感動的な再会じゃないですか。非常に嬉しいですよ。照井竜…!」
第117話「gが死へ招く7/地獄の炎」では、スクリーム・ドーパントとの決戦で致命傷(おそらく心肺停止状態)を負った照井が見た、死後の世界のような光景の中で椅子に座って佇んでいた。
これが現実か、あるいは虫の息の照井が見た幻だったのかは明らかにされていないが、もし現実だった場合、彼は死に際の捨て台詞通り、本当に地獄の亡者となって律儀に照井を待っていたことになる。
臨戦体制をとる照井に急接近するが、そこで何かに気付いて彼を触診し、「まだここに来る時ではない」と判断。溜め息を吐いて残念がりつつも、その場でウェザー・ドーパントにメモリを使うそぶりを見せず変身、即座に照井に落雷による一撃を浴びせた。
「私以外の快楽殺人者にたやすく敗れてほしくない。治療をしておきましたよ。お大事に。」
「いずれまた戦いましょう……。あなたが風都の全ての敵を倒し、真の修羅として完成したその時に!この場所で、ね!」
この一撃を食らった直後、意識を取り戻した照井は辛くもスクリームの撃破に成功したのだが、流石に脇腹に穴が開くほどの重傷(普通の人間ならとっくに死んでいるのが当たり前の状態)だったため、入院(亜樹子の監視付き)を余儀なくされた。
この時照井が復活できた理由について、フィリップは「雷の一撃で蘇生できたのは、致命傷を食らう直前にアクセルがエンジンブレードのエレクトリックによる電撃を自分にかけていたから(奇しくも生前の自分が目を付けていたメモリの過剰適合者を救う際に照井が取った方法と同じである)」とし、照井が見た死後の世界の様な光景、および死んだはずの井坂についても「死後の世界が実在するかどうかは、地球の本棚でもわからない」と述べた。
※地球に蓄積される記憶はあくまで地球が存在する空間に存在する事象のみであり(現に異空間に存在する裏風都およびそれを管理する万灯雪侍らの経歴等は蓄積されない)、ガイアメモリにも使用される「ヘル(地獄)」などの死後の世界をモチーフとした記憶も、結局は死後の世界を思い描いた生者のイメージの積み重ねでしかないため。
また上記の言動から、自身の事を「快楽殺人者」と自虐しているあたり自分の罪を自覚しており、照井を自身の好敵手と捉えていることがうかがえる。