「自慢の婿の誕生です、お義父さん」
演:君沢ユウキ
概要
旧姓は須藤(すどう)。
敵組織ミュージアム及びそのフロント企業であるディガル・コーポレーションの幹部。
ガイアメモリの密売セールスマンとして史上最高の成績を挙げたことで、ディガルの社長である園咲冴子に見出され、その婿となった。
第2話で衝撃的な初登場を果たし、以降ファンの間では「尻彦さん」と親しまれている。
戦闘においてはガイアメモリの力でナスカ・ドーパントに変身し戦う。
彼の特徴として、ガイアメモリのことを人々を蝕むものではなく「人類の進化や発展に貢献するもの」と考えていた所にある。
そのため、ガイアメモリの実験の邪魔をするWを「街のゴミ」呼ばわりしたり、メモリの力に溺れて犯罪に走ったり自滅した者たちも「実験台として必要な犠牲」「欲にまみれた者の自業自得・自滅」として見下しているなど、ある種の高潔さも持ち合わせている。
その一方で、彼なりの矜持や超えてはいけない一線は存在し、大人に売ることはあっても表向き禁止されている未成年者への販売・譲渡は一切行わず、それを発見した際は将来性があると同時に分別のつかない不安定な子供を実験台にすることに対して強く憤っている。
見方を変えて考えれば、麻薬や銃器の比ではない特級危険物であるガイアメモリの密売という、モラルも社会正義もあったものではない犯罪稼業の中で、未成年には売らないという縛りプレイを貫いた上で史上最高の営業成績を叩き出したという辺り(商品の浄不浄という大前提はさておき)、セールスマンとしての手腕は非常に優れていたことが窺える。
彼が所属するミュージアムは人身の安全に対してさほど興味を持たず、正しい使用者が使えば人々に貢献できるという彼の考えを、精錬されたガイアメモリを用いる仮面ライダーが証明しているのは皮肉という他ない。
なお、「ガイアメモリが人類の進化や発展に貢献する」という考え自体は実は園咲琉兵衛と同じ考え方である。
そんな独自の考えを持つ彼だが、同時に故郷風都への愛は本物であり、組織に入って上を目指していたのも最終的には風都を陰から支える事で、将来の発展に貢献するためであった。
また、妻である冴子への愛情も本物で、彼女に冷たくあしらわれたり尻に敷かれながらも、冴子を支え、また彼女に認められるような男になろうと日々努力を重ねていた。
劇中での活躍
第2話「Wの検索 / 街を泣かせるもの」にて初登場。
ラストで全裸にベルトという衝撃的な姿で全国のお茶の間に強烈な印象を与えた。
第4話「Mに手を出すな / ジョーカーで勝負」にて冴子と結婚式を挙げ、園咲家の婿養子となる
(この際にクレイドールの攻撃を生身で回避するという超人的な身体能力を見せている)。
以降は商売がてら仮面ライダーを宿敵として付け狙うが、妻に手痛いお仕置きをされシャワーシーンで2度目の裸体を晒したり、妻への名誉挽回と意気込むが逆に失望されたりとネタキャラの色が定着しつつあった。
しかし第14話では義妹である若菜を陥れようとした輩を粛清したり、第15~16話では冴子から冷たくされても、密かに訓練を重ねナスカの高速移動を覚醒させ妻のピンチを救うなど、徐々に成長を重ねていく。
早すぎる最期
第17話「さらばNよ / メモリキッズ」では彼の風都への愛がクローズアップされ、風都のイメージキャラである「ふうとくん」は彼が幼い頃にコンクールで優勝し生まれたキャラクターであることが明かされた。
同じ風都を愛する者であり、Wの変身者の片割れである左翔太郎とはたまたま行きつけの散髪屋が同じ「バーバー風」だった事で素顔で鉢合わせすることとなった。
素顔を見るまでは互いに散髪中、かつ顔にタオルがかかった素性の知れぬ状態で風都への愛を語り合っており、敵同士ではありながら少しだけ気持ちを通じ合わせていた。
だがそんな時に未成年者がガイアメモリを有しているという自分にとっては不可解で不穏なアクシデントが発生する。
第18話にて園咲家、更にガイアメモリの謎に近づくも、彼もまた園咲家の野望の実験台に過ぎなかったことを明かされ、そればかりが子供がガイアメモリを手に入れたのもそれを実験台にしようとする園咲家の差し金だった事を知る。
そして成長を続けるナスカメモリの力に彼の体は蝕まれていく。
そんな時に若菜の言葉で自分の信じた物を貫くことを決意、最期はWと協力し、バードメモリの実験台にされていた少女を救い出す。そして、先の散髪屋の会話で翔太郎に約束していたふうとくんのキーホルダーを投げ渡し、ミュージアムという組織の恐ろしさを伝えた後に別れを告げる。
(余談だが撃破後に体の不調で変身解除になっているが、解除音にWと同じ音が少しだけ混ざっている)
そして、冴子に共に園咲の家を出ることを持ちかけるが、父・琉兵衛を超え、彼に自身を園咲を背負う存在として認めさせることに固執していた当時の冴子にとってその選択肢は論外であり、遂に見捨てられ、冴子が変身したタブー・ドーパントによって致命傷を負わされる。
見限られる可能性は折り込み済みだったのか、彼は満身創痍ながらも穏やかな表情を浮かべ、愛する街の風に看取られながら息を引き取った。
「風都…やっぱり、いい風が吹くなぁ…」
彼の体は砂のように崩れ、街の風に乗って散っていった。
愛用のナスカメモリは、皮肉にも、彼を見限ってその手で殺めた妻の手に渡る。
そして、同じく彼がいつも仕立てのよいスーツとともに身に着けていた、もうひとつの愛用品だったスカーフは…
彼の死は表向きには事故死として扱われ、翔太郎には「街を愛する者の死」として虚無感を与え、その報われない死に多くのファンが悲しんだ。
pixivにおいても彼の死を追悼する絵が数多く投稿されている。→園咲霧彦追悼式
余談
彼の早い退場は当初から決まっており、「組織の恐ろしさを見せるためには新入りが犠牲になるのが定番」という三条陸氏(本作のメインライター)の考えによる。視聴者人気で延命する可能性もあったが、「人気があるからこそきっちり死なせる」という結論に至ったという(『風都探偵』第5巻巻末インタビューより)。
演者の君沢氏は、オールアップ後も翔太郎役の桐山漣氏を撮影現場まで送迎したことがあるという逸話がある。
退場から4ヶ月程経って妹並びに霧彦の新撮シーンが登場したのも、その縁からと言われている。
また、君沢氏は『電王』の第1話で良太郎を脅し、最後はM良太郎に返り討ちにされる不良の一人も演じている。(クレジットは中野雄一名義)。
彼の退場した回の最後には風都を嫌う者が現れており、対照的になっている(そんな彼も後に風都を好きになっていくが)
君沢氏は正統続編風都探偵の舞台版にて、新たな敵幹部の万灯雪侍を演じることになった。それに伴いファンからは霧彦がナスカからオーロラに転身したと言われているとか。
本編外での活躍
本編では報われない最期を遂げた霧彦だが『AtoZで爆笑26連発』で再登場し、頭に天使の輪をつけて「霧彦の部屋」というコーナーを担当。
園咲家の面々や自身の関係者を呼び出してトークする……という内容なのだが、
- クレイドールエクストリームへの進化を「太った」と茶化して義妹にビンタされる
- 嫁と井坂のキスシーン(本編未公開)を見せつけられ、さらには思い出してうっとりする嫁にショックを受けて本編同様風になる
- その井坂と対面し敵対心をむき出しにするも、討論の末加頭順の存在を知らされ結託。しかし加頭について教えられる最中に鉄アレイを右足に落とされ骨折
- ↑の怪我で車椅子に乗って登場。聞く耳を持たないミックをからかって投げ飛ばすも、変身した彼に仕返しとしてボコボコにされる
- さらに左腕にギプスを装着。加頭の物を落とす癖を笑った結果、紅茶をかけられる→アタッシュケース内のガイアメモリをぶちまけられる→アタッシュケースを落とされる(それも骨折した方の足に)→指パッチンで金タライが召喚され頭部に直撃して気絶(余談だが、加頭の笑顔やスキップが見られるレアなシーン)。ちなみにこの回の加頭のセリフから見て、霧彦の行動のせいでミュージアムの計画に遅れが出ていた模様。
- とうとう頭にネット包帯を巻いた状態に。息子同然のふうとくんの活動を「アイドル気取りか」と咎め、地道に活動するよう説教。風都に風を吹かせるべく、頭の風車を回すよう強要した結果暴風で画面外に吹き飛ばされた
…とまあ、(大抵自身の態度が元で)なんらかのダメージを負わされて怪我でボロボロになっている。
ファイナルステージでは、ナスカ・ドーパントを嫁に使われマスカレイド・ドーパントに回されてしまう(ナスカを取られたのは、タブー・ドーパントが足の構造上アクションできないためという事情もあるのだが)。
「最強のマスカレイド」を名乗るもマスカレイドがマスカレイドなのでアッサリやられてしまった。
トークショーでの劇中シーン再現コーナー(屋上の最期の部分)では全員から猛攻撃を受け、更に音響さんの暴走でマシンガンを喰らっていた。
『全然風都にいい風吹かないよ!』
公式でもすっかりネタキャラ扱いされている。
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