概要
物語最初に起きた「天銀堂事件」の容疑を掛けられ後、自殺した「椿英輔」の娘「椿美禰子」が探偵金田一耕助に依頼したところから始まる。
本作は大戦後の混乱期にあった事件、貴族の没落、さらにはインモラルな描写があり、当時に蔓延った闇やそこから生じた悲劇や愛憎劇を書いており、他の作品とは異なった独特の雰囲気で知名度は高くはないが人気作品の一つとなっている。
本作を原作とした映画2本・テレビドラマ5本・ラジオドラマ1本・舞台1作品、そして影丸穣也とJETにより漫画化されている。
ちなみに本作で起きた「天銀堂事件」は実在に起きた「帝銀事件」をモデルにしており、従業員に毒物を飲ませ死亡させた後、金品を奪うという事件で日本で初めて「モンタージュ写真」を捜査に取り入れた点も作品に反映されている。
ストーリー
ある日、金田一耕助の元に依頼が入った。
訪れたのは春に起きた「天銀堂事件」の容疑を受け釈放されたが、後に失踪し自殺した元子爵である椿英輔の娘である美禰子(みねこ)だった。
美禰子は母の秌子(あきこ)が死んだはずの父親を目撃した事に怯えているが、美禰子は父親の遺体を確認しており、世間には公開されていないが遺書もあった。金田一は遺書を読んだがそこには悪魔に怯える英輔がいた。
【父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼のなかへ落ちてしまう。ああ、悪魔が来りて笛を吹く。父はとてもその日まで生きていることは出来ない。】
遺書にはそう書かれておりこの原因は「天銀堂事件」ではないかと美禰子は答えた。
モンタージュ写真は英輔に似ており、それだけでなく屋敷内に居る人物が警察に英輔の事を密告しており、それにより英輔は「天銀堂事件」の最有力容疑者となった。取り調べの後、帰宅した英輔は『屋敷には悪魔がおり、そいつが密告した』と言う。
密告者に心当たり無いのかと聞くと大伯父の「玉虫公丸」や伯父の「新宮利彦」は英輔を蔑ろにし、母「椿秌子」は影響力の強い「玉虫公丸」に釣られて英輔を無視していたりとしていた。そして英輔の死後、秌子はその事で英輔の復讐があるのではと怯えており英輔の幻想を見始めたが、つい最近『英輔に遭った』と言う。しかしこの事は秌子だけでなく玉虫の小間使いである「菊江」と椿家女中の「お種」も英輔の似た人物を見たとの事。
美禰子は英輔の生死を確かめるという名目で開始される「砂占い」に同席し屋敷内の人物たちを観察する事を依頼、そして金田一は椿邸に居る人物たちと対面する。
計画停電中に行われた「砂占い」の最中に使用していたホームライトが消えたが、しばらくすると停電が終わり明かりがついた。その時「砂占い」では火焔太鼓の様な不思議な絵があり、それを見た数名がざわつき始めた。
その時、椿英輔が作曲した「悪魔が来りて笛を吹く」が屋敷内に響き渡る。
登場人物
主要人物
椿家
- 椿英輔:椿家当主で元子爵。フルート奏者で「悪魔が来りて笛を吹く」を制作する。
- 椿秌子:英輔の妻で人形のような美しい女性。
- 三島東太郎:椿家の書生で椿家に入る以前は闇市でブローカーをしていた。
- お種:椿家の女中で器量が良い。
- 信乃:秌子の乳母で彼女が椿家に嫁いだ時に一緒に付いて来た。
- 目賀重亮:秌子の主治医でその容姿から蟇仙人と呼ばれている。
新宮家
- 新宮利彦:秌子の兄で元子爵。妹が自分より多額の遺産を相続した事に強い不満がある。
- 新宮華子:利彦の妻で落ち着いた感じだが何処か憂いがある。
- 新宮一彦:利彦の息子で美禰子の従兄。英輔の弟子で同じくフルート奏者。
玉虫家
河村家
- 河村辰五郎:堀井駒子の父。とある秘密を知っておりそれをネタに玉虫公丸を脅していた。
- 堀井駒子:辰五郎の娘。昔は玉虫家の別荘で臨時の小間使いをしていた。
- 河村治雄:辰五郎の息子。だが次第に辰五郎が実父では無い事に気づく。
- 堀井小夜子:駒子の娘。治雄に惹かれていき将来を誓い合った仲。
- おたま:河村辰五郎の妾。
三島家
他人物
映像化
登場しない人物や改変がある作品や原作通りに展開している作品もある。
映画
1954年版と1979年版があり1954年版の主演は片岡千恵蔵、1979年版の主演は西田敏行。
ラジオドラマ
NHKラジオ第1放送で毎晩15分ずつ放送。全12回。
原作に忠実な展開。玉虫の密室殺人の謎解きも、金田一の説明以外に、三島の回想をドラマ化して丁寧に説明している。
テレビドラマ
TBSで放送された1977年版と1992年版、フジテレビで放送された1996年版と2007年版、NHK BSプレミアムで放送された2018年版がある。
TBSは両作品ともに主演は古谷一行。
フジテレビは1996年版の主演は片岡鶴太郎、2007年版の主演は稲垣吾郎。
BSプレミアムの主演は吉岡秀隆。
舞台
劇団ヘロヘロQカムパニー主催。主演は関智一。
ほぼ原作通りに舞台化だが、あるトリックやヒントの件は存在しない。
関連タグ
青酸カリ:事件に使用された毒物