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悪魔が来りて笛を吹くの編集履歴

2022-06-10 17:35:47 バージョン

悪魔が来りて笛を吹く

あくまがきたりてふえをふく

悪魔が来りて笛を吹くとは横溝正史の長編推理小説で「金田一耕助」シリーズの一つである。

概要

『宝石』に1951年11月から1953年11月まで連載。1954年に「第7回探偵作家クラブ賞」候補にノミネートされている。


序盤に発生した「天銀堂事件」の容疑を掛けられた後に自殺した椿英輔の娘・美禰子が探偵金田一耕助に依頼を持ってきた所から、事件が始まる。


本作は戦後の混乱期にあった事件であり、旧華族の没落、さらにはインモラルな描写があり、当時はびこった闇やそこから生じた悲劇や愛憎劇を書いており、他の作品とは異なった独特の雰囲気を持ち、人気作品の一つとなっている。

横溝正史も「自選ベスト10」の6位に本作を挙げている。


あらすじ

1947年(昭和22年)9月28日、金田一耕助の元にある一人の依頼人が訪れた。

依頼人は椿美禰子(みねこ)。この春に起きた「天銀堂事件」において容疑を受け、釈放後に失踪し自殺した元子爵・椿英輔の娘だった。


美禰子が語るには、母の秌子(あきこ)が死んだはずの父を目撃して怯えているという。だが美禰子は父の遺体を確認しており、世間には公開されていないが遺書もあった。

金田一は遺書を読んだが、そこには不可解な言葉が記されていた。


父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。

由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼のなかへ落ちてしまう。

ああ、悪魔が来りて笛を吹く。

父はとてもその日まで生きていることは出来ない。


遺書にはそう書かれており、英輔が死を選んだのはやはり「天銀堂事件」ではないかと美禰子は答えた。

事実、生存者の証言で製作されたモンタージュ写真は英輔によく似ていた。それだけでなく、屋敷内に居る人物が警察に英輔の事を密告しており、それにより英輔は「天銀堂事件」の最有力容疑者となっていた。

取り調べの後、帰宅した英輔は『屋敷には悪魔がおり、そいつが密告した』と言ったという。


密告者に心当たりはないのか尋ねる金田一に対し、美禰子は大伯父の玉虫公丸、伯父の新宮利彦は常日頃から英輔を蔑ろにし、秌子も影響力の強い玉虫につられて英輔を無視していたと語る。

そして英輔の死後、英輔の復讐があるのではと秌子は怯えており、遂には英輔の幻想を見始め、つい最近『英輔に遭った』と言う。しかも秌子だけでなく玉虫の小間使い・菊江と椿家女中のお種も英輔に似た人物を見たという。


美禰子は英輔の生死を確かめるという名目で開催される「砂占い」に参加し、屋敷内の人物たちを観察する事を依頼。

そして金田一は椿邸の人物たちと対面する。


計画停電中に「砂占い」は行われたが、停電が終了すると同時に、家の中に英輔が作曲した異様な曲「悪魔が来りて笛を吹く」のフルート演奏が響く。結局レコードプレーヤーによる仕掛けだったが、誰がそれを仕組んだかはわからない。

更に停電中に砂占いに出た火焔太鼓のような模様に、それを見た数名はざわつき、深刻な表情を見せた。美禰子はその絵が死んだ子爵の手帳に「悪魔の紋章」の名で描かれていたことを金田一に告げる。


その夜、玉虫が殺されているのが発見される。それを皮切りに、次々と起こる殺人。

果たして犯人は?その目的は?


登場人物

主要人物

ご存じ我らが名探偵。

東京警視庁の警部。「天銀堂事件」の捜査にも関与していた。

依頼人。19歳。母に似ず、いかつい顔の不美人。タイプライターによるタイピングを習得している。


椿家

椿家当主で元子爵。フルート奏者で「悪魔が来りて笛を吹く」を作曲。自殺したとされるが……

英輔の妻。40歳。市松人形のような美しい女性。自分の意思がほとんどなく、周囲に流されやすい。

椿家の書生。椿家に入る以前は闇市でブローカーをしていた。戦争で中指の半分ほどと薬指の3分の2ほどを失っている。

椿家の女中。器量が良い。英輔を慕っている反動で秌子たちを嫌っている。

秌子の乳母。彼女が椿家に嫁いだ時に一緒について来た。芸術的な醜さを誇る老婆。

秌子の主治医。その容姿から仙人と呼ばれている。


新宮家

  • 新宮利彦:秌子の兄で元子爵。妹が自分より多額の遺産を相続した事に強い不満がある。
  • 新宮華子:利彦の妻。落ち着いた感じだが何処か憂いがある。
  • 新宮一彦:利彦の息子、美禰子の従兄。英輔の弟子で同じくフルート奏者。

玉虫家

  • 玉虫公丸:秌子・利彦の伯父。元伯爵・元貴族院議員。
  • 菊江:公丸の小間使い兼

河村家

  • 河村辰五郎:堀井駒子の父。玉虫の別邸につとめていた植木職人。とある秘密を知っており、それをネタに玉虫を脅していた。
  • 堀井駒子:辰五郎の娘。昔は玉虫家の別荘で臨時の小間使いをしていた。
  • 河村治雄:辰五郎の息子。
  • 堀井小夜子:駒子の娘。父親は不明。

三島家


他人物

  • 飯尾豊三郎:「天銀堂事件」の容疑者の1人。後に英輔が浮上し、容疑者リストから外れた。
  • 慈道:法乗寺の住職。

映像化

登場しない人物や改変がある作品や原作通りに展開している作品もある。


映画

1954年版と1979年版があり1954年版の主演は片岡千恵蔵、1979年版の主演は西田敏行


ラジオドラマ

NHKラジオ第1放送で毎晩15分ずつ放送。全12回。


原作に忠実な展開。玉虫の密室殺人の謎解きも、金田一の説明以外に、三島の回想をドラマ化して丁寧に説明している。


テレビドラマ

TBSで放送された1977年版と1992年版、フジテレビで放送された1996年版と2007年版、NHK BSプレミアムで放送された2018年版がある。


TBSは両作品ともに主演は古谷一行

フジテレビは1996年版の主演は片岡鶴太郎、2007年版の主演は稲垣吾郎

BSプレミアムの主演は吉岡秀隆


舞台

劇団ヘロヘロQカムパニー主催。主演は関智一

ほぼ原作通りに舞台化だが、あるトリックやヒントの件は存在しない。


余談

「天銀堂事件」は実在に起きた「帝銀事件」をモデルにしている。

銀行の従業員に防疫を装って毒を飲ませ、苦しんでいるのを後目に金品を強奪、最終的に12人が死亡した事件。

日本で初めて「モンタージュ写真」を捜査に取り入れた点も作品に反映されている。


関連タグ

横溝正史 金田一耕助 金田一耕助シリーズ

悪魔 フルート 風神 雷神


青酸カリ:事件に使用された毒物


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