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沈黙の艦隊の編集履歴

2022-05-14 18:36:48 バージョン

沈黙の艦隊

ちんもくのかんたい

「沈黙の艦隊」とは、日本の漫画家 かわぐちカイジ の作品の一つであり、代表作の一つでもある作品。

概要

『沈黙の艦隊』は、漫画家かわぐちかいじの作品であり、『モーニング』(講談社)にて、1988年1996年まで連載された。1990年に第14回講談社漫画賞一般部門を受賞している。

潜水艦戦がメインという作風や核戦争平和政治問題などの様々な要素が含まれており、各方面から注目を集め、国会でも話題になるなどの社会現象を起こした。

連載は冷戦の頃で、物語でもそれに即した設定であったが、連載途中でソ連崩壊や冷戦集結となり、色々な変更があったという。


サンライズ製作でのアニメ化(TV特番とOVA)もされており、北極海の海戦までのストーリーまでが描かれている。

あらすじ

千葉県犬吠埼沖で、海上自衛隊の潜水艦「やまなみ」がソ連原子力潜水艦と衝突し沈没、艦長海江田四郎二等海佐以下全乗員76名の生存が絶望的という事故の報道は日本に衝撃を与える。しかし、海江田以下「やまなみ」乗員は生存していた。彼らは日米共謀により極秘に建造された原潜「シーバット」のメンバーに選ばれ、事故は彼らを日本初の原潜に乗務させるための偽装工作であった。

アメリカ海軍所属となった日本初の原潜「シーバット」は、海江田の指揮のもと試験航海に臨むがその途中、海江田は突如艦内で全乗員と反乱を起こし海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を名乗る。さらに出港時「シーバット」は核弾頭を積載した可能性が高い事が発覚するがアメリカ合衆国大統領ベネットは海江田を危険な核テロリストとして抹殺を図る。海江田は天才的な操艦術と原潜の優れた性能、核兵器(の脅威)を武器に日本やアメリカやロシア(ソ連)、国際連合に対抗してゆくこととなる。


主な登場人物

海江田四郎

本作の中心人物。海自始まって以来の英才と呼ばれ、卓越した潜水艦戦闘スキルを持つ。その操艦能力は敵対する海軍に「海の悪魔」「モビーディック(白鯨)」などと呼ばれ恐れられるほど。また、政治や国際情勢にも明るく、自らが宣言した「独立国家:やまと」の国家元首として各国の首脳とも会談や交渉で渡り合うほど。クラシック鑑賞が趣味でお気に入りはモーツァルト

「やまなみ」の乗員とともに死んだ事にされ、秘密裏に「シーバット」の艦長として着任し、アメリカ海軍の指揮下に入るが、逃亡。「シーバット」は潜水艦を領土とする独立戦闘国家「やまと」であると宣言する。

その後、迫り来るアメリカ、ソ連海軍の猛攻をその鬼才と「やまと」の性能を駆使することで退け、自らの思想表明とその実現に向けて「やまと」を世界に発信していく。


深町洋

海上自衛隊二等海佐で潜水艦「たつなみ」の艦長。

海江田とは[[防衛大学校時代からの同期で、昇進も一緒だったが「やまなみ」事件で海江田が殉職したことにされたため2階級特進しており、追い抜かされている。

操艦技術は演習で海江田に並ぶ程であり、海自、アメリカ海軍上層も認める確かなものであるが冷静沈着な海江田とは逆に大胆でぶっきらぼうな性格。(そのため、シーバットの艦長候補に挙げられていたものの、冷静さを求めたアメリカ海軍によって選択から弾かれた)海江田とはライバル関係だが、深町自身は海江田のことを友達であるとしている。


ニコラス・J・ベネット

アメリカ合衆国第43代大統領。タカ派で「強いアメリカ」「世界の中心のアメリカ」を信念とする人物。当初は海江田を捕まえ、シーバットを沈める事を第一に考え、アメリカ海軍を動員し対シーバット作戦を執拗に行ったが、そのうちに海江田という人物とその思想に興味を持ち、国連総会で対談する事になる。作者はこの作品の中で一番好きなキャラとしてこのベネットを挙げている。


竹上登志雄

日本国内閣総理大臣。「外交オンチ」「「ボケガミ」などと酷評されていた人物だったが、「やまと」事件をきっかけに政治家として成長し、首相としての力を身につけていく事になる。反対論が強い中で「やまと」との友好条約を結んだ上、「やまと」に浮きドック「サザンクロス」を提供するなどした。さらには国連決議で「やまと」独立が承認されるまで陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊及び原潜「やまと」の指揮権を国連に委ねるといった外交策をも採るなど、大胆さを持っている。英国風ではあるが、英語が堪能で通訳無しでの会談ができる程。(なお、現実の外交においては要人の会談は、たとえ外国語に堪能な人物でも通訳を介するのが普通である)。


主な登場兵器

独立国家「やまと」

シーバット(やまと)

スペック

外殻材:チタン合金/無反響タイル

全長:120m 全幅:13m 喫水:10.5m

機関:S8G加圧水型原子炉×1 7翼スキュード・スクリュー×1軸

出力:60000ps/80000ps

速力(水上/水中):35kt/55kt

乗員:76名

安全潜行深度:1000m

最大潜行深度:1250m

発射管:533mm魚雷発射管×8門

装填弾種:対艦・対潜攻撃用Mk48魚雷(通常弾頭/核弾頭)、ハープーンUSM

水中排水量:9000t

建造ドック:河島重工造船所(長崎県佐世保市)


日本初の攻撃型原子力潜水艦(SSN)として日米の最新技術の粋を集めて建造された世界最強の潜水艦。建造は日本、所属はアメリカ、乗員は全て日本人という構成になっている。

形状的には一般に見られる戦闘用潜水艦の外見だが、外装に用いられたチタン合金無反響タイルのお陰で潜航可能深度1000mという作中ではトップクラスの潜航深度をとることができ、エンジン音は他よりも静かで隠密性に優れ、魚雷の格納数も従来艦より向上されているなど、あらゆる意味でハイスペックな機体になっている。

艦体の性能も去る事ながら、操艦する海江田の力量もあって一隻のみで敵対する艦隊を撃退・壊滅させる程の驚異的な戦闘能力を誇る。

シーバットとはその通り「海の蝙蝠」という意味であり、米軍がつけた蔑称であるが海江田自身は「潜水艦に相応しい」として気にしていない発言している。しかし、シーバットよりも相応しい艦名として海江田により「やまと」と命名され、独立国家として宣言されることになる。


アメリカ海軍

ロサンゼルス級原子力潜水艦

実在の当時主力だったアメリカ海軍原子力潜水艦。この世界に於ける最もスタンダードな攻撃型原子力潜水艦としての立ち位置を見せる。

シーウルフ級原子力潜水艦

北極海での戦いで「やまと」を追い詰めたアメリカ海軍最新鋭・最強の攻撃型原子力潜水艦。こちらも実在する艦がモデル。

シーバットより2ヶ月早く任務に着いていたとされ、基本性能はシーバットと同等であるが、北極海での戦いを想定した装備、機能、戦闘マニュアルを有してシーバットを有意な立場から追い詰めた。

ちなみに、実在するアメリカ海軍のシーウルフ級は冷戦末期に完成したが、実際のところ「世界最強」の名にふさわしい戦闘能力を有していた。しかし、コスト度外視の設計&建造、冷戦も終結し、攻撃型原子力潜水艦にそこまで高性能さが求められなくなったことなどから一気に海軍内の問題児になってしまった。(ちなみにこの建造費は一隻25億ドルである)

そのため、現実のシーウルフ級は作中同様、同型艦がたったの2隻とコストカットした準同型艦が1隻のみというワンオフ機に近い状態になってしまった。(ちなみに、アメリカ海軍は当初これを20隻以上生産する計画だったという……)

タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦

こちらも実在の艦がモデル。世界初の実用的イージスシステム搭載型の量産艦で、現在のイージス艦の元になった艦である。

イージスシステムによる攻撃管制や潜水艦の補足、そしてミサイルや魚雷による集中攻撃で「やまと」を追い詰めた(海江田をして「手強い艦」と言わしめている)。しかし、最新のイージスシステムを搭載したこの艦も「やまと」の前では最終的には撃破された。


その他

ニミッツ級航空母艦、アイオワ級戦艦等の大型艦、及びその艦載機F-14トムキャットや対潜ヘリSH-60B シーホーク等多数。

アメリカ海軍は物語序盤から終盤まで、「やまと事件」に関連したため、多数の兵器や艦隊が導入された。

ソ連海軍

アルファ級原子力潜水艦

実在の同名艦級がモデル。ソ連が誇る世界最速の攻撃型原子力潜水艦だった(水中速度時速40ノット以上を記録している)。作中ではこの級である「レッドスコーピオン」が序盤「やまと」を追い詰める敵艦として登場する。レッドスコーピオンはシーバットと同等の最高潜行深度を誇り、それまで米潜水艦との戦いでも余裕の勝利状態だった「やまと」を初めて追い詰めた潜水艦になる。

タイフーン級原子力潜水艦

言わずと知れた世界最大の原子力潜水艦。作中では北極海へ向かった「やまと」とすれ違う形で登場し、直接的な戦闘は行われなかった。

尚、このタイフーン級は主にその維持費から現在のロシア海軍の問題児になってしまっており、すでに数隻が退役・解体になってしまっている。また、搭載されているミサイル兵装も寿命が来るともう生産できない型(ソ連崩壊前に色々な所で分割して生産していたため)であるために使い物にならないという問題も持ってしまっていた。


海上自衛隊

潜水艦「たつなみ」

海上自衛隊所属の架空艦。深町が艦長を務めるディーゼル潜水艦で、シーバットを拿捕する任務を受けて序盤からシーバットを追い続けた。ディーゼル式であるため、アメリカ海軍の原子力潜水艦及び、目標であるシーバットの足の早さについていくことが出来なかったり、酸素供給の問題から追撃を諦めなければならない場面を見せた。しかし、深町の操艦技術もあって本艦は高い戦闘能力を誇り、海江田と同じく演習では米空母を撃沈したり、実戦である東京湾の戦いでは湾内の浅さと東京湾の特徴をフルに活用することでロサンゼルス級の潜水艦隊を撃沈・大破させる程の活躍を見せた。しかし、この東京湾海戦の際に受けたダメージが元で東京湾に水没。以降は潜水艦として活躍する姿は描かれなかった。(後に引き上げられて修理を受けている)







以下の項目には、本編の重大なネタバレが含まれています。















沈黙の艦隊

本編中盤で海江田四郎が世界に公開した、世界的核安全保障への一提案

英語記述は「The Silent Security Service from the Sea」


核兵器を保有した戦略原潜と、護衛・通信・広報を担当する攻撃型原潜で編成した艦隊を、世界の海に航海させる。この超国家原潜艦隊の機能はごく単純で、「国家が実力行使として核兵器を使った場合、使った国家に核攻撃する。」。これだけ。

この艦隊はいずれの国家にも所属せず、強いて言えば国連のような国際条約に従うのみとする。運用については、『「やまと」保険』構想で提示されたように核安全保障を求める多数の国家が資金提供し、各国家を渡り歩くように補給を受ける事が可能と考えられる。


海江田はその航海で、「自律的に航海する原潜を撃滅しつくすことは不可能である」と証明した。「やまと」は単艦だからまだ良かったが、これが「艦隊」だったとしたら?

たとえ何隻か撃沈したとしても、「生き残りがどこかをうろついている」というプレッシャーを払拭する事は不可能であるし、ましてや「それらは核を保有していない」という保証を確立する事は不可能である、と。

ならばそういう艦隊を送り出す事で、「誰が何をした所で、国家が核攻撃をすれば沈黙の艦隊に超国家報復を喰らう」というプレッシャーを全世界にかぶせることが可能であり、それをもって全世界に「核軍縮を急がねばならない」と動機づけする…という構想。


様々な角度から検証が行われ、とりわけ冷戦状態が崩壊した21世紀における大問題「核拡散」に対抗できないという大穴が空いているのだが、核と世界平和に関する問題提起として漫画史上に残る一大テーゼである。


「やまと」がこれを通信して以後、物語は後半の展開に向かう。


関連タグ

架空戦記 かわぐちかいじ ジパング 潜水艦 海戦

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