モビーディックとは
「白鯨」の劇中で重要な役割を果たす、巨大な白いマッコウクジラ。書物(翻訳者)によっては『モービィ・ディック』とも表記される。
その巨体は【頭上の瘤の込み入った皺の隅々まで見える】程に大きく、開いた口は【二列に並んだ歪んだ長い牙の列】のように見え、大きな額はまるで砦のようであり、波を蹴立てて泳ぐ様はジュピターをも凌ぐ威厳を持つ、と形容される。
多重的な象徴的表現を用いて居る事で有名な「白鯨」だが、このモビーディックだけでも「神」「自然」「運命」「悪魔」「キリスト」など様々なモノを象徴として内包しているとされる。
過去に捕鯨船ピークォド号の船長エイハブの脚を食いちぎった事があり、その為エイハブには深く恨まれている。
原作での描写
原作の語り手・イシュメェルは(捕鯨初体験だし)見た事が無いので、仲間から聞いた「捕鯨船の間に伝わる伝説」として認識していく。
最終的にピークォド号は、他の捕鯨船から日本近海で白鯨を見たという情報も得る。台風を乗り越えて、幾多の困難を乗り越えてヘトヘトに疲れているのだが、日本は鎖国中だから寄港不可能。本音としては早くアメリカに帰りたい気持ちも少し出る。
じっくり準備を整えていたエイハブは、ついに仲間達と共にモビーディックに挑むのだが、どうしても倒せない。ようやく銛を打ち込んだら、鯨索がプツリと切れてしまう。怒り狂うモビーディックの反撃で、ピークォド号は一気に叩き潰されてしまった。
結局、倒せなかった。船は全滅して、イシュメェル一人だけが生き延びてしまった。
原作を下敷きに創作された映画・アニメ等では「復讐をあきらめて見逃す」「見事に退治して復讐に成功」といった改変が行われている事が多いが、原作では絶対的な恐ろしさを見せる。
近付いたら即死だから逃げ出す船も多いらしい。マトモな手段では勝てないかもしれない、もし退治出来れば英雄になれるかな、でもやっぱり倒せなかった、神の加護を受けてるのかもしれない…
これは、日本人がゴジラに抱いているイメージに近いかもしれない。
余談
モデルとなった実在の白鯨「モカ・ディック」は南米沖で見られたとされる。
アメリカが鎖国中の日本に開国を要求した目的は複数あるが、日本は捕鯨基地に最適だったという理由もある。通称「ジャパン・グラウンド」とされ、辛坊治郎氏がマッコウクジラに衝突したのもここ。