「間もなくもう1人の戦士がここへやって来る。それでゴーマとの戦いが始まる。
気力とは何か、ダイレンジャーがどんな戦士かその時よく分かるはずだ。
良いな?ゴーマとは戦うしかない。ゴーマを倒さなければ、お前たちだけでなく、人類は滅びる」
演:中康次
概要
ゴーマ族の人類侵略を予期し、天火星・亮ら優れた気力を有する若者を集めダイレンジャーを結成した指導者。平時は東京駅地下に設けられた空間(ダイレンジャー本部)に居を構えており、座禅を組みつつゴーマの出現を探っている。
作中では「道士・嘉挧」と名乗っており、亮たちからは単に「道士」とも呼ばれる。
自身も拳法と気力の達人(特に気力は気伝獣龍星王を呼び出すのに不可欠なキーアイテム『天宝来来の玉』の肩代わりができる程)であり、単にダイレンジャーを指揮するのみならず、彼らを戦士として鍛え上げた師匠としての側面も持つ。持ち前の戦闘力も非常に高く、ダイレンジャーを軽々と退けた強豪・鉄面臂張遼とほぼ互角に渡り合い、物語終盤にて成長したダイレンジャー5人でさえ、束になってかかっても一蹴されたほどである。
性格は冷静にして厳格ではあるが、厳しいだけではなく時には影から見守り、また時には的確な助言を与えるなど、情の厚さも兼ね備えた人物でもある。その一方、自身の義父にして師匠である老道士・虞翻が、20歳の京劇の女優・小喬と婚約していることを聞かされた際には思わずのけぞったり、姪のリンがアイドルデビューした際にはその写真集を購入していたりと、時にはコミカルな描写も見られた。
気力、それにダイ族とゴーマ族の歴史など様々な知識を豊富に持ち、さらに6000年前にダイ族を裏切った張遼とも面識があるなど、少なくともかつてのダオス文明の栄華と衰退を、当事者として目撃していたであろう事は物語の早い段階より示唆されていた。
物語中盤になると、自ら敵の本拠地であるゴーマ宮にも出入りし、気力ばかりか妖力まで使いこなす上、敵の首領たるゴーマ十五世とも旧知の間柄である事を匂わせるなど、ただならぬ素性の持ち主であるという色彩をより濃くしていた。そして物語の最終盤において、いよいよ明らかにされたその素性は・・・。
その正体(ネタバレ注意)
「亮、大五、将児、知、リン・・・ダイレンジャーは解散する!」
突然のダイレンジャー本部の閉鎖、それと時同じくして暗躍する謎のゴーマ怪人を守るかのように現れた、赤い甲冑の戦士。その兜の下より現れた素顔は・・・他ならぬ嘉挧その人であった。
嘉挧は本来ゴーマ族の出身、それも皇族の血筋を引く参謀長という高位の人物であった。にも拘らず敵対するダイ族に与していたのは、彼がゴーマ族の中でも世界征服に異を唱える穏健派のリーダーだった事に起因する。対立する強硬派が主導権を握ったことで、主張が容れられないとみた嘉挧はゴーマより離反し、以来長きに亘ってダイ族と共にゴーマの侵略に対抗していたのである。
そんな嘉挧にとって大きな転機となったのが、物語後半にて発生した大神龍の襲来である。この未曾有の脅威を前にして、嘉挧はゴーマ族との間に停戦協定を取り付けたものの、それ以降もダイレンジャーとゴーマとの戦いが収まったかと言えば決してそうではなく、この協定の実効性が低い事は誰の目からも明らかであった。
さらにその後、ゴーマの血に目覚めつつあったコウを助けるのに必要な白虎真剣が、シャダム中佐の手に渡った事を知ると、嘉挧は秘密裡に白虎真剣を取り戻しているのだが・・・実はこの時シャダムとの間で、ある条件のもとに取り引きを結んでおり、その条件こそが「ダイレンジャーの解散」だったのである。
取り引きの条件の履行、そして同時に結ばれた二度目の停戦協定を確たるものとすべく、嘉挧はゴーマ族へ復帰し自ら次期皇帝となる事で、ゴーマの侵略活動を止めさせようと決断したのである。
もっとも、亮たちに余計な心配をかけたくないという思いもあったとはいえ、その経緯や真意などを明かさず一方的に解散宣言を突きつけた事は、嘉挧に全幅の信頼を置いていた亮たちからの当惑と反発という事態を招き、ついには穏健派の同志として協力していた謎のゴーマ怪人こと、子竜中尉とダイレンジャーの潰し合いにまで発展。
嘉挧は実力行使をもって亮たちからオーラチェンジャーと天宝来来の玉を取り上げると、子竜に建てさせた妖力・気力の二本の塔によるパワーを得て、皇位継承を賭けたシャダムとの一騎打ちに臨む事となった。当初は塔からの力を受けてシャダムを圧倒し、後一歩のところまで追い詰めていた嘉挧であったが、シャダムも全くの無策だった訳ではなく、ザイドス少佐らに予め塔の破壊を命じていた。
事情を知って懸命に塔を守ろうとした亮たちの奮戦も空しく、二本の塔は破壊されてしまい、これによってエネルギーの供給を絶たれた嘉挧は、シャダムの反攻によって追い詰められた末に致命傷を負い、皇位継承を賭けた試合は自身の敗北という形で幕を下ろした。
その直後、変身能力を取り戻しゴーマの本拠地に乗り込んだ亮たちと、死を目前にして再会を果たした嘉挧は、ゴーマの世界征服を止められるのが最早亮たちしかいない事、そしてゴーマ十五世に大きな謎が隠されている事を言い遺し、彼らに見守られながら息を引き取った。
死後
こうして物語より退場したかに見えた嘉挧であったが・・・物語の最終局面において、思わぬ形で再び姿を現す事となる。
ゴーマ宮に乗り込んだダイレンジャーと、ゴーマ十六世となったシャダムとの間での戦いの最中、両者の前に幻影として現れた嘉挧は、
「気力と妖力は、光と影。正義と悪。この世の物が全て二極から成り立つように、
気力と妖力もまた表裏一体。元は一つなのだ」
と、根源を同じくする両者の戦いが永遠に決着の付かない虚しいものであるとして、戦いを止めその場から立ち去るよう促したのである。この時嘉挧の言葉に当惑を禁じ得なかった亮たちが、その意味するところを解したのは、それから50年を経ての事となる。
その後シャダムの死によって一応の決着が付き、亮たち自らの意思によって今度こそダイレンジャーが解散の運びとなった際にも、一人残された亮の前にやはり幻影として現れている。
ダイレンジャー解散を宣言した際の徹底した秘密主義や、決闘でシャダムを追い詰めながら何故か止めを刺さなかった結果の返り討ちなど、様々に謎を残す終盤の嘉挧の行動であるが、強いてその真意を推し量るならば、シャダムら一部のゴーマ族が既にこの世の者でなく、彼らの代わりたる泥人形によって世界征服が進められていた――即ちシャダムらの裏により大きな何らかの意志が介在している事を察し、このまま勝ってゴーマをまとめても意味がないと悟ったが故に敗北という道を選んだ、と見る向きもある。
備考
名前の由来となっているのは『三国志』にも登場する、後漢末期から三国時代にかけての政治家・軍師である賈詡。智謀に優れるという点は嘉挧も同様であるが、一方で嘉挧とは異なり世渡りに長け天寿を全うしている。
名前の「嘉挧」の字が非常に難しい(「挧」に漢字変換するのは大変である)ため、「カク」と片仮名表記されることも多い。また、東洋武術系の作品の師匠キャラということで紛らわしいが、「道士」でなく「導師」と誤記されることも少なくないので注意が必要である。
演者の中康次は、本作の放送から22年後の2015年12月に死去したが、その死に際してダイレンジャーの5人を演じた役者たちがみな哀悼のツイートを寄せ、後日劇中でダイレンジャー基地のあった東京駅近くで集合し追悼の会を開くなど、劇中における師弟関係そのもののような絆を感じさせた。
関連タグ
賢神トリン - 20年後の作品で敵組織の大幹部から戦隊司令官に寝返った繋がり。物語終盤に死亡したのも共通点だが、こちらは作戦のうちであった
バスコ・タ・ジョロキア、百面神官カオス - こちらも最後の戦いの時まで負け無しだった悪役。特に前者は一騎打ちで最期を遂げた点も一致
花形/ゴートオルフェノク - 仮面ライダー555にて中康次が演じたキャラクター。作中での立ち位置も嘉挧に通じるものがあった
報連相:本編での嘉挧の死は『亮達に事情を話していれば自身の死は回避できた可能性は十分にあったこと』から一部のファンの間ではこれが関連ワードになっている。
スーパー戦隊の指導者、サポートキャラの系譜