「私はトリン。かつてキョウリュウジャーと戦った戦士だ」
声:森川智之
スーツアクター:岡元次郎
概要
かつて獣電竜を率いて、デーボス軍と戦った人物。獣電竜ブラギガスの相棒でもある。
姿は青い鳥人で、キョウリュウジャーとなるべき人間を探し出したり、秘密基地スピリットベースを用意するなど、所謂司令官ポジションのキャラである。「ブレイブだ!」が口癖。
デーボス軍の出現を察知すると髭がなびくという能力を持っている。
1億年前のデーボスとの大戦で彼は当時の地球の覇者であった恐竜達に機械の体を与え、「獣電竜」と呼ばれる超生命体を作り出してこれに対抗、自らも多大なダメージを受けながらも、デーボスの精神を凍結して氷結城として氷の海に沈めて封印する事に成功した。
しかし、その後も事ある毎にデーボスの配下達が復活を目論み地上侵略に乗り出すと、彼は新たな地球の覇者となった人間の戦士を獣電竜と戦わせ、これに勝った者を獣電竜のパートナーの戦士として認めて共に戦う事にしたのである。これが「強き竜の者=強竜者=キョウリュウジャー」誕生の経緯である。
当初は、キョウリュウグレーやキョウリュウシアン(後のスピリットレンジャー)やキョウリュウゴールドといった大昔のキョウリュウジャー達は単独で戦っていたが、トリンは個々での戦いに限界を感じ始め、一人一人の力を合わせて戦う「獣電戦隊」の必要性を痛感する。しかし、過去の戦いで傷ついたトリンの力では複数の変身アイテムや装備を作る事はできず、到底戦隊を結成できるような状態ではなかった(空蝉丸曰く、当時のトリンはガブリチェンジャーを作るだけでも命を削っていたとの事)。
しかし、現代では研究者ドクター・ウルシェードと出会い、初代キョウリュウバイオレットとなった彼の協力を得て、遂にガブリボルバー等のアイテムの量産化に成功し、トリンはいよいよ獣電戦隊を具現化すべく動き出す。そして彼の下には獣電竜に勝ったダイゴ達5人の若者が集結し、さらには戦いの中で、キョウリュウゴールド=空蝉丸も復活する。そしてドクターの孫娘である弥生が二代目キョウリュウバイオレットになった事で、彼の長年の悲願であった「獣電戦隊」が初めて真の完成を見たのである。
また、「獣電竜0号」ことトバスピノの暴走事件以降、人間の持つ「音楽」や「歌」に秘められた力にも強い関心を持っており、「音楽や歌は人間に秘められた力を解き放つものでもある」という結論に達した。それ故の彼は地球の意思をメロディーとして抽出し、それをキョウリュウジャーの変身にサンバのリズムや音楽として取り入れている。キョウリュウジャーが変身する際に自然と身体が踊り出すのも、流れる地球のメロディーと身体を同調させて潜在能力を引き出す為である。
本人の戦闘力も高く、専用剣である「フェザーエッジ」を使って戦う他、目や手から光弾を放つ事もできる。これらを使い百面神官カオスに襲われた桐生ダイゴを助け、カオスと互角に渡り合い、ブレイブ9では怒りの戦騎ドゴルドを途中まで圧倒する程の強さを見せた。
しかし、かつての戦いの後遺症で長時間戦うと体が石化を始める為に、彼自身は基本的には前線では戦えない。これには本人も忸怩たる思いを抱えている。
人物
性格は真面目かつ高潔な戦士であり、戦いにおいては「ブレイブ」を重視し、仲間のキョウリュウジャーの事を温かく見守り導いている。特に最年少の立風館ソウジに対しては、後に剣術の師弟関係となっており、彼が両親の事を感情に任せて拒絶した際には、両親と話をする前にまずソウジを優しく諭す等、単なる戦士と指揮官としてだけでなく心身共にその成長を見守っている。
普段は冷静で常に落ち着いた口調で話すが、有働ノブハルを他の仲間達同様に「ノッさん」と呼ぶようになったり、スピリットベースに置きっぱなしになっていたアミィ結月の私物の漫画やDVDを内容をしっかり把握するほど読みこんでいるなど意外にもノリの良くお茶目な一面がある。
一方でデーボス軍に対しては容赦のない姿勢を崩しておらず、基本実害が低く性格も比較的温厚であるキャンデリラとラッキューロはわざわざ倒さなくても良いのではないかと話すノブハルやアミィに対しても「デーボス軍の者を残すと、そこからデーボスの復活に繋がる可能性があるから残さず倒すべき」としている。
正体
ブレイブ28以降のネタバレが含まれます
実はかつての彼の名は「魔剣神官トリン」。
元デーボス軍の大幹部であり、百面神官カオスの実弟である。
彼がデーボス軍の出現を察知できるのは、この出生故である。
約1億年前、地球と「昆虫型生物の惑星」のそれぞれを滅ぼす為に、予め現地でその下準備を整えさせるべくデーボスは自身の代理として2人の神官の兄弟を産み落とした。それがカオスとトリンである。そして兄のカオスは昆虫型生物の惑星に送られ、トリンは地球に派遣された。
しかし、降り立った地球で始めて目にした恐竜達を初めとした、地球の生き物達の生命の躍動する様に感動し、それを奪おうとするデーボスに対して疑問を抱き、創造主のデーボスと兄のカオスを裏切るという道を選び、自分に賛同してくれた恐竜達に力を与えて共に戦った。
そして、前述した通り最終的にはデーボスを封印する事にも成功したのだが、デーボスやカオスとの激しい戦いの結果トリンの方も無事では済まず、獣電竜のリーダー格だったブラギガスは大地の魔神ガドマと相討ちとなり、トリン自身は長時間戦うと体が石化する程のダメージを負わされて、長時間戦えない体にされてしまった。一方で、逆にカオスの左肩に傷を負わせる事にも成功し、これを屈辱と感じたカオスはあえてその傷を治さず、トリンに対する復讐の機会を狙っていた。
このような過去の経緯から、兄弟とは言えども既に完全に決別しており、互いに容赦は全くない(そもそもデーボスやカオスは、基本的に自分達の役に立たない者は、誰であれ切り捨てるスタンスなので当然だが)。
ちなみにデーボス軍は、末端のゾーリ魔に至るまでデーボスの細胞から生まれた存在である為、彼等だけが明確に兄弟とされている事に疑問を持つ者もいるかもしれないが、デーボスは様々な星を滅ぼす過程で様々な生物に関する情報を体や細胞に蓄えており、それら様々な細胞から生み出されたのがデーボス軍の者達である。つまりカオスとトリンは同一の細胞から生み出された者同士なので「兄弟」になる(その割には外見は全く似ていないが、マッドトリンの件を考えてもそれぞれの能力や特性などから、外見を変えて生み出せるのだろう)。
そして、トリンはブレイブ28で怨みの戦騎エンドルフによって左の羽を斬り落とされた上に、喜びの戦騎キャンデリラの唄で理性を失いかけ強制的に巨大化させられてしまうが、自分で五連獣電剣を突き立て自決のような形で死亡する。この際に以前話した「デーボス軍の者は残らず倒す」という中には自分も含まれていた事を明し、いずれ時が来ればトリンは自分の命も絶って、デーボスの細胞を残らず消し去るつもりだったと説明している。
しかし、イアン・ヨークランドやラミレスや鉄砕の持ってきた超古代の秘石(ダイゴのペンダントと同じもの)の力をキョウリュウジャーメンバーが祈りの唄で引き出した事で生還し、自分の出生を知った上で信じて助けてくれたキョウリュウジャーの姿に感動し涙を流す。これによって上記の石化の問題も克服する事ができた。
ブレイブ34でブラギガスのパートナーだという事も判明。そして、獣電竜達の親のような存在であるブラギガスにとってパートナーとなる「閃光の勇者」は最初から彼しかいなかった。
しかし彼は、恐竜時代に自分の無力でブラギガスを失ったという自責の念、何よりもデーボスの生まれである自分が、「閃光の勇者」になどなれる筈がないないと決めつけていた。
しかし、ダイゴ達キョウリュウジャーと共に戦う事によって、元はデーボスであったトリンの中にも「ブレイブ」が生まれ始め、次第に彼は「ブレイブの化身」とも言うべき存在となっていた。実際に、デーボスから生まれた者達はデーボスの力が増幅されればその影響で強くなるという性質を皆持っているにもかかわらず、何故かトリンだけはデーボスが強化されても弱体化したままだった。つまりこの時点でトリンはもう、創造主であるデーボスの影響から完全に切り離された存在になっていたのである。
最後の獣電竜・ブラギガスの復活後、それまで自分が感じてきたブレイブを思い出し、自分自身への認識を改めたトリンは、自らブラギガスのパートナー「閃光の勇者」となる事を決意する。そしてギガガブリボルバーを手に、最後の戦士キョウリュウシルバーとして戦列に加わった。
ブラギガスの力が加わった事によって、トリンは再び全盛期の力を完全に発揮する事が出来るようになり、当初は強力過ぎて使えなかったフェザーエッジで三角形の斬撃を放つ必殺技「トリニティストレイザー」を使えるようになる。上記した通り元々高い戦闘力を持っていた彼が、ブラギガスの力を得てさらに強化された結果は凄まじく、初戦では新たな魔剣神官であるマッドトリンをほぼ一方的に撃破し、それ以降も何らかの搦め手を使われた時を除いて、直接の戦闘ではラスボスのデーボス戦以外では殆ど苦戦する事も無かった。
こうして彼は獣電戦隊の頼れる指導者としてでなく、頼れる歴戦の戦士としても活躍する事になったのである。同時にデーボスの生まれの自分がブレイブの化身になれたという事実から、以前のデーボス軍の者は残らず消すべきという考えも改め、それが最終決戦でキャンデリラ達の事を受け入れ後押しすると言う行動に繋がった。
ブレイブ37にて自身の必殺技に憧れて鍛錬をしているソウジを目撃して、最初は「人間の身体では危険」と反対していたが、その後の戦いにおける彼のひたむきな心を理解し、空蝉丸の助言もあってトリニティストレイザーを彼に正式に教える事を決意する。
更にブレイブ42ではダイゴの父、桐生ダンテツとは昔からの戦友であり、彼を「キング」と呼んでいる事が判明。ダイゴを獣電戦隊にスカウトしたのもその縁からである。
地球の王に選ばれたダンテツに、世界を回って地球のメロディーや秘石を探すよう依頼したのもトリンであり、トリンにとっては王はダンテツであった為に(ノブハルを他のメンバー同様「ノッさん」と呼んでいるのに対し)、ダイゴを「キング」とは呼べなかったのだという。
ブレイブ43では、獣電戦隊の責任者と話がしたいというソウジの母親と対話をする為に、鉄砕の幻術の力で『鳥居さん』という人間の姿に一時的に変身する。
更に!ブレイブ45以降のネタバレ!!
ブレイブ45では「トリニティストレイザー」を習得した立風館ソウジに、自身の剣「フェザーエッジ」を託すが、あろう事か「真の地球のメロディ」を聞き取ったダンテツにより殺されてしまう。しかも今度は石化に留まらず砂となって完全に消えてしまった。
ダンテツ曰く、デーボスと交渉して人類を滅ぼしてでも地球という星を守る事が地球の意思であり、その為の生贄としてトリンが選ばれたとの事だが...。
しかし実はこれは、「トリンを正義のスピリットのまま『大地の闇』に送る事によって、『大地の闇』を完全に断ち切って欲しい」という「真の地球のメロディ」に触れたダンテツの秘策だったのだ(後に、鉄砕の発言で「予め打ち合わせていた=知っていた」という事が明かされる)。
ダンテツに「殺された」後のトリンは、スピリットのラミレスや鉄砕を招き入れ、闇時計の進行によって再活性化した「大地の闇」のデーボモンスターを退治しつつ、その中枢に向かう(この際には、マッドトリンを含めた幽霊デーボモンスター達相手に一人で無双している)。
ブレイブファイナルで闇の中枢に辿り着くも、同様の作戦を行ったカオスに阻まれるが、既にデーボス軍を脱退していたキャンデリラと楽しみの密偵ラッキューロの助太刀により、カオス諸共「大地の闇」の破壊に成功。カオスとの長年の因縁に決着を付けると同時に、デーボスが復活する手段を喪失させ、完全にデーボスの退路を断ちダイゴのトドメに繋げる最後の一押しをした。
その後は、キャンデリラとラッキューロの二人を「これからは君達の心のままに生きるといい、ブレイブに!」と激励して地上に送り出し、自らはスピリットレンジャーと共に姿を消した。
更にデーボスを倒したダイゴと獣電竜が戻ってきた後、スピリットとして弥生ウルシェードを含めた7人のキョウリュウジャーの前に現れ、再会を果たした彼等を見守っていた。
上記の通り、トリンは『作中で殉職』しつつも、最終回まで完走するという異例の扱いとなった。
過去の恐竜系戦隊でも、ドラゴンレンジャー/ブライ(恐竜戦隊ジュウレンジャー)、アバレキラー/仲代壬琴(爆竜戦隊アバレンジャー)が作中で殉職をした。これにより、『恐竜系戦隊の追加戦士や番外戦士は、その人物の種類に関わらず殉職者が出る』という法則が成り立ってしまった(ちなみに後輩の恐竜スーパー戦隊でも番外戦士が殉職している為に、この法則は依然有効である)。
ただし、ブライと壬琴が残りの命を戦いに捧げた後の死亡なのに対し、トリンは地球を救う為に死という選択肢を選んで前に進んだと言う形であり、内容は大きく違っている。「死亡してからが本番の作戦」は通常悪役に多いのだが、ヒーローでこのパターンは非常に珍しい。この辺りは「死してなお闘う魂」スピリットレンジャーという概念を持つ本作らしいと言える。
そして、続編では…。
そしてえッ!10年後ォッ!!
王様戦隊キングオージャーVSキョウリュウジャーのネタバレ注意!
「ならば我らが相手をしよう!」
今作では明確にスピリットレンジャーの一員と扱われる。
霊体故に時空を越えてラミレス/キョウリュウシアン、鉄砕/キョウリュウグレーと共に最終決戦に駆けつけ、ダイゴら現行キョウリュウジャーと再会、更にプリンスと王様戦隊キングオージャーとも対面を果たす。
キョウリュウシルバーに変身、不死身の体を持つため生者の攻撃では倒れないグローディ・ロイコディウムを本家トリニティストレイザーで撃破した。
関連タグ
獣電戦隊キョウリュウジャー キョウリュウジャー 桐生ダンテツ
嘉挧:敵組織の大幹部から戦隊司令官に転じた繋がり。ただし、彼の場合は元々平和主義者だったのであり、光落ちした訳ではない。物語終盤(どちらも48話)に死亡した点も共通だが、これは狙いがあった訳ではなく、純然たる作戦失敗の結果である。ただし、死亡後も退場せず主人公達に魂(?)として導きを与えているのは相通じている。
ドギー・クルーガー/デカマスター、ショウ・ロンポー/リュウコマンダー:同じ獣人タイプの司令官。彼等も変身能力を持っている。
クフ・クリスパー:声の演者が同じライダー怪人だが、身体の色や翼による飛行能力が共通している。
オプティマスプライム:同年放映されていたトランスフォーマープライムの声の演者が同じ司令官(ちなみに同作ではドゴルドと同じ声の敵もいた)。比率は違うが身体の色も類似している。
マリー・アンジュ:1時間後の同じく消滅したまま最終話を迎えた存在。
ハリハム・ハリー:5年後の1時間後のプリキュアに登場する彼と同じ経歴を持っていたハムスター
幽遊白書:キョウリュウジャーが放送される21年前の1992年から1995年まで放送されていた、冨樫義博氏原作の漫画を元にしたアニメ。この作品にてトリンの中の人とナレーターの中の人はそれぞれ死々若丸と桑原和真を演じており、更に百面神官カオスの中の人も雷禅を演じ、更にラッキューロの中の人も小兎と桑原静流を演じていたという繋がりがある。
スラムダンク:キョウリュウジャーが放送される20年前の1993年から1996年まで放送されていた、井上雄彦氏原作の漫画を元にしたアニメ。トリンを含めてデーボス軍のメンバーはこの作品のキャラを担当した声優が多く、特にこのモンスターの登場回は、スラダンのオマージュ回とも言える。
滝沢直人/タイムファイヤー:13年前のスーパー戦隊で殉職した恐竜モチーフの追加戦士