「死体で殺して死体を増やしを繰り返し、静かな死の世界の一丁上がりだァ…」 (第30話)
「やっぱ死ねねぇかァ……こんなにも死体を愛しているのに…“死”からは嫌われてるんだ…可哀想だろ……?」 (同上)
「無駄と分かって、なお足掻く…だから生き物は嫌いだ…」 (同上)
データ
体長 | 195cm(異常成虫時:48.5m) |
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重さ | 157kg (異常成虫時:341.1t) |
分布 | シュゴッダム(夜) |
好物 | 死体 |
観察ポイント | 実はすでに死んでおり、自分自身をも自らの能力で蘇らせていたようである。 |
演・怪人態のCV | 天野浩成 |
スーツアクター | 村岡弘之 |
概要
『王様戦隊キングオージャー』に登場する、宇蟲王ダグデド・ドゥジャルダンに仕える宇蟲五道化の1人。
「静謐のグローディ」の異名を持ち、死体をこよなく愛し、死を求めて彷徨い続ける、非情な不死身戦士。及び殺人鬼。
姿が明らかになった際は黒い外套と帽子を纏い、レンズの入っていない丸眼鏡をかけたチキュー人の成人男性の姿に擬態しており、左顔面にダグデド一派のシンボルマークであるブラックホールの意匠たる白い紋様が入っている。しかし、血色の悪い顔と無気力にも見える表情や、武器として折りたたみ式の長柄の鎌兼ライフル銃『大鎌銃シックルシーカー』を用いる事も併せて、全体的に死神を思わせる不気味さが漂う。
ギラ・ハスティーと同様、ダグデドがバグナラクの母星で依頼を受けて創り出した存在(人間態がチキュー人に酷似しているのは、バグナラクの祖先が元々チキュー=地球人類と遺伝子的に近かった為と考えられる)であり、調整段階で大量のシュゴッドソウルを摂取した結果、記憶・自我の崩壊と引き換えに強大な力を得た殺戮生体兵器たる危険な存在である。いわば、ギラとは異なり人の次元では語れぬ殺人鬼という名の怪物であり、命を奪われたシュゴッド達のシュゴッドソウルから生まれた哀れな存在とも呼べる、人間とシュゴッド両方の未来を脅かす危険人物でもある(同時に、ギラのIFとも言えよう)。
本編開始前にシュゴッダムへ潜入していたカメジムに刺客として招かれる形でチキューに来訪、コーサス・ハスティーを始末した後「人間が生き生きして忌々しいから」と通り魔的な理由で、後述の能力によって無数のシュゴッドの死体を暴れさせチキュー全体に被害をもたらした“神の怒り”事件を引き起こした実行犯。更にはそのどさくさに紛れてヒメノの両親をゴッドスコーピオンの毒で毒殺している。
その後は拘束されゴッカン先代国王カーラス・デハーンに身柄を預けられたが、チキューの法では裁けずカーラスの捨て身の秘術「氷の封印」によってカーラス自身諸共氷漬けにされる形で雪山に封印されていた(なのでダグデドには存在を忘れられていた)。
しかし17年の時を経てカーラスを捜索していたシロンを利用する形でカメジムとミノンガンが居場所を突き止め、彼等の手によって解放され活動を再開した。
ダグデドがバグナラクの母星で造り出し、同時にその星を滅亡に追いやった「お片付けの道具(=兵器)」というルーツからして、バグナラクに世代を超えた受難を長らく齎し、その被害をチキューへも飛び火させた悪因その物でもあった。
当然、大本はそうなる様に意図してグローディを造ったダグデドの悪意だが、グローディ本人もそうした思惑を知覚する機会があっても反抗せず与えられた役割にしがみ付き続けた結果、もはや慈悲を向ける余地すら無い程の罪を積み重ねた「絶対悪」と化してしまった様子。
人物像
先述の製造経緯によって自我が崩壊している事に加え、死体を愛しながらも死ぬ事ができない(厳密には死んでいるが、シュゴッドソウルを捕食した事でその記憶が消えている)特性もあってか「生」の概念を毛嫌いしており、目に付いた者をとりあえず殺す(ヒメノの両親もこの理由でわざわざ毒殺しており、イシャバーナの王夫婦等の身分は全く意に介していない)、倫理観の欠如した宇蟲五道化の中でも突出して危険な行動原理の持ち主である。
その延長で生者の基本的な欲求である食事の材料に致死性の毒を混ぜ込み、世界中に流通させ無差別で人々を毒殺すると言う凶悪過ぎるバイオテロを思い付き実行に移す等、毛嫌いする「生」を貶めるならあらゆる方面の尊厳すらも踏み躙る暴挙を犯す事への躊躇いが一切無い。
しかし、こうした一切他者を顧みない極めて残忍かつ身勝手な性格が後述の末路を招いたという事は想像に難く無い。
無慈悲で冷淡だが口数は割と多く、挑発的な物言いが多い性格で二つ名でもある「静謐」を好むのか、能力発動の際に人差し指を唇に当てるポーズを取るのが癖。なお殺戮以外に興味がない為か仕事がない時は惰眠を貪って過ごしている。創造主であり主であるダグデドに対しては呼び捨てにするなど全く敬意を示していない(むしろ無差別殺戮を好む気質からか不満すら持っている節がある)が先述の性格もあって叛逆する意思もない模様。
ダグデドに与えられた力でリビングデッド化した影響により、自分が生きているか死んでいるかの認識が混濁している節が強く、この点が倫理観の欠如に大きく影響しているのが窺える。
倫理観が欠如している分、非道な大規模テロを躊躇せず引き起こせる思考が構築される事になった半面、自分が生きているか否かの判断が曖昧になり死を求めての偏執的かつ想定外の行動に走る非合理的な行動傾向も持ってしまった模様。
また、シュゴッドソウルの過剰摂取の副作用で記憶障害を起こしており、宇蟲王の兵器になる以前の自分や何故現在の身分と成ったか等の、自身の歩んで来た半生すら忘却し喪失した存在になってしまっている疑いもある。
これらの面が悪い方向に嚙み合った結果、一時の感情の起伏に従いながら自身の能力を惑星全土に行使し、いとも簡単に大災害を引き起こす様は正に、自我を持った厄災その物。
ダグデドの想定する、惑星規模の生命殲滅兵器としては圧倒的な性能の反面、制御に難の残る存在になったとの評価を下されている様子。
能力
カタツムリに寄生しておかしくする虫「ロイコクロリディウム」のBNAを備えており、固有能力は死者蘇生。
目に渦巻模様を光らせると同時に、人間、サナギム、そしてシュゴッド等、あらゆる生き物の死体を召喚・蘇生させる(この時操られた死体の目にはグローディと同じ渦巻模様が浮かぶ)事が可能、これにより圧倒的な物量を確保しての殺戮・破壊を得意とする、昆虫界のアンデッドキング。
ただし蘇った死体は彼曰く「脳みそが腐っちまってる」為に操る事は出来ず、本能的に暴れるのみの(正しい意味での)ゾンビ状態となり、彼の活動した一帯は死体のみで埋め尽くされる静かな死の世界となる事が、「静謐」の二つ名の由来となっている。ただし、神の怒りのセミのシュゴッドの一体の脚を掴んでいたり、死の直後に蘇生されたカーラス等死体に戻る際に微かに正気に取り戻した例がある他、後に蘇らせたイロキに至っては完全に自意識と記憶を保っていたりと、蘇生させた死者の性質は実際にはバラつきが存在する(イロキが特殊だったか、意識を維持して蘇らせる別の手段がある可能性もあるが不明)。
尚、当然グローディ本人も暴れ回る死体の破壊行動に巻きこまれるのだが、グローディ単体でもシックルシーカーの一振りで王様戦隊をまとめて戦闘不能にする戦闘力を持つのみならず、グローディ自身もバグナラクの名も無き死体を元に死者蘇生能力で活動する生きる屍であり、文字通りの不死身の体によって通常攻撃はおろかヒメノの「王の証」による「命の刈り取り」(そもそも命が無いので刈り取る事ができず、過去に捕食したシュゴッドソウルだけが「命」として摘出される)も含めて、あらゆるダメージを全く意に介さない。
要するに、致命傷自体は既に何度も喰らっているが、その身に埋め込まれた力で肉体と精神を現世に縛り付けられ活動を続行、実質致命傷を無効化していたのが真実であった。
怪人態
「とどのつまり、死体が欲しけりゃ…俺が気張るしかねぇんだ……」
「病を慕い、腐れに焦がれ、死を愛す……。
屍の友を携えて、生無き世界へ千鳥足……」
第37話にて遂に御披露目されたグローディの怪人態にして真の姿。まるで糸の切れた人形の様に地面に仰向けで倒れ、そのまま地面に溶けると同時に入れ替わる形で変身する。
ただこれは王様戦隊を挑発する演出らしく、通常時は立った状態から溶け崩れる様な演出を経て変身する(さしずめ死体が腐って崩れ落ちる、というイメージか)。
概ね人間態の服装を踏襲した、死神の様にも眼球が腐り落ちた腐乱死体の様にも見える姿となっているが、ロイコクロリディウムの特徴的な斑模様、肥大化したカタツムリの触角の様な外見が顕になる等禍々しさが更に強調されている。
まるで体内に見え隠れするロイコクロリディウムが死体を無理矢理動かしているかの如き姿は、前述した様にシュゴッドソウルの力で致命傷を無視しながら現世に心身を縛り付けられていたグローディの実態その物でもあった。
また帽子の様な頭部や背中にダグデドや他の五道化共通のブラックホールの意匠がある。
グローディの製造経緯がバグナラク人(の死体)にシュゴッドソウルを大量摂取させるという、怪ジームら現在のバグナラクと殆ど同じである事から、この怪人態も昆虫型生命体の創造主たる宇蟲王一派が自ら手がけた彼らの上位互換の様な存在であり、それ故か自らの意思でシュゴッドソウルを活性化し、任意に異常成虫化する事もできる。
能力
人間態から引き続き、シックルシーカーを用いた近接戦闘なのは変わらないが、鎌の柄の部分を銃身にしたライフル(よく見ると鎌首部分にライフルの引き金が配されている)として遠距離からの狙撃が可能。
また、シックルシーカーで切った対象の箇所を一時的に「腐らせて」弱体化させて身体能力を封じる事も可能。
そしてシックルシーカーによる一刀両断の一撃で命を刈り取る昆虫最終奥義・グローディバイドを必殺技としている。
動く死体という実態上、通常の攻撃はもちろん王の証で発現した『生命を刈り取る力』といった、“敵の命を奪う能力”の一切が通用しない。その体質と死に焦がれるグローディの気質も相まって防御よりも攻撃優先の立ち回りで攻め立て(※攻撃姿勢を邪魔されたのを回避行動等で対処する事はある)、時には致命傷になりそうな一撃も丸腰で受ける事がある。
最終的に命を与えられた事で、こうした死なない事を前提とした攻撃偏重の立ち回りは出来なくなるも、長い事その戦闘スタイルで通して来た癖がそう簡単に抜ける筈も無く、結果防御面に大きな隙が生じたとも言えよう(※グローディ当人は「やっと死ねる」との期待からこの欠点を気にも留めていなかったが)。
活躍
第30話
封印から解放された直後、カメジムに殺されたカーラスの遺体を蘇生させるも、この時カーラスが無差別に発動した氷の秘術を再び受けて風邪をひいていた事もあり、ゴッカンの寒さに耐え切れず行き倒れて遭難者として救助される。
これによりイシャバーナに担ぎ込まれたが、両親の仇としてその顔を覚えていたヒメノに正体を看破された事で、王様戦隊と交戦(因みに自身が不死身である事を明かした際に自身が死を愛していながら死ねない事を「可哀想だろう」と自分が両親を殺したヒメノの前で嘆いており、これだけでどれだけ他人に無関心かが窺える)。
そのまま“神の怒り”を再現するかの如くセミ型シュゴッドの死骸の大群を呼び寄せ、物量に物を言わせて王様戦隊の圧倒を図る。
打つ手がないと判断したリタが嘗てのカーラスのように「氷の封印」で凍結しようとしたが、仲間を失う事を恐れたヒメノの介入で阻止。
大量発生したセミ型シュゴッドは凍結してイシャバーナの湖畔に沈んで“神の怒り”の再来は防がれてしまい、直後に現れたネフィラに王様戦隊毎薙ぎ倒され、水入りとなった。
第31話
物語終盤、ネフィラもまたグローディにより蘇生させられていた事が判明。この件でジェラミーとも因縁を持つ事になった。
当の本人はダグデドらと合流した様で、拠点の空間で寝ていた。
第34話
第37話
トウフの先代王殿イロキを蘇らせる。
形式上は統治者となっているが、元々玉座に興味は無いので、イロキに扇子で小突かれて雑用係の様な扱いをされていた。
しかし、イロキにとってグローディは、17年前に自国の米にゴッドスコーピオンの毒を盛り、それをチキュー全土に流通する事での広域無差別毒殺を企てようとした怨敵。それを阻止する為にタキタテ城に毒入り米を掻き集めて燃やす事で処分、自分は説得に現れたカグラギの目の前で毒入りの米で炊かれたご飯を食して服毒死。その上でカグラギに真相を悟らせた上で自分が彼に討たれた建前を作り後の混乱を収めるも、同時に乱心した暗君として自分の名誉を地に落とした上で死の国に下る等、何重にも理不尽や屈辱等に塗れた上で全てを失う選択を取らざるを得ない状況を作った全ての元凶であった。
雑用係の様な扱いも、散々踊らされて自らの命をも捨てる羽目へ陥らせた怨敵にあの世から傀儡として呼び戻され使われる、屈辱の上塗りでしかない状況に対する細やかな抵抗だったのが真実である。
トウフの奪還に動き出すも、空腹で全力を出せないギラ達にゴッドスコーピオンの猛毒を混ぜた白米を振る舞うも、ヒメノが匂いで毒に気付いた為失敗。食べ物を粗末にする行為に怒りを抱いたギラ達と改めて交戦。
そして、自らが起こした「神の怒り」の際に大量の死体を作るべくトウフの米全てに毒を盛っていた事を改めて自白。
そして、本性を表し怪人態に変貌、空腹で王様戦隊の体力が消耗していた事に加え持ち前の戦闘力で圧倒するが、イロキとの決着を終えたカグラギの王鎧武装したハチオージャーが乱入した事で状況が一変。改めて王殿としての覚悟を決めた彼の一撃で両断されるも不死身の特性ゆえ撃破には至らずそのまま撤退。
その一方、17年前と同様に毒入り米を大量生産して今度こそチキュー全土にばら撒く事を企てており、それを阻止すべくクロダが貯蔵庫に火を付けて焼却処分するも、同時に真実を知らないトウフ国民がカグラギを強く恨む様になる置き土産も残しており、国こそ奪還されたがカグラギをより苦しい立場にする事には成功した。
第39話
怒り心頭のダグデドの命令に従い、他の五道化達と共にンコソパへ出陣。自国を奪還しようと各々が「天上天下唯我独尊」のダミーを携えるキングオージャーを迎撃すべく、因縁の相手であるヒメノとの戦闘に突入。最初から戦闘形態である元の姿で本気を出し、猛攻を仕掛ける彼女の攻撃を不死身の肉体で無効化、シックルシーカーの一撃で圧倒する。
しかし、破壊したのは(五道化それぞれ壊した物全て)ダミーだった上、隠しコマンドの解析に成功して王鎧武装・凌牙一閃にパワーアップしたキングオージャーと乱戦状態に入るも、本気を出したゴーマの能力で自分の能力が入れ替わった為カメジム達と共に撤退した。
第43話
回想ではカメジムと共に先代シュゴッダム国王コーサス・ハスティーを襲撃し、オオクワガタオージャーに王鎧武装したコーサスと戦った事が語られている。
また、一度は撃破されたダグデドを憐れむカメジムに対し、こたつに寝そべりながら「羨ましい……俺も死の味が知りたい」とあまり意に介していない様子だった。
真実(第46話)
「ああ、五月蠅い…。 ゴーマ、ヒルビル……(死ぬのを)抜け駆けしやがって…」
立て続けに五道化が倒された事でお鉢が回って来たらしく、冒頭にてゾンビバグナラク軍を率いてイシャバーナを襲撃。民間人を追い回していた所、迎撃に現れた王様戦隊へ「俺も、さっさと殺してくれ…」と嘯きながら対峙する。
ジェラミー「死者を叩き起こして戦わせるなんて、物語でも書きたくない邪悪だ!」
「知ってるよ…。 憎いなら復讐しろ、俺を殺してみろ…?」
すると敢えて王鎧武装を解除したヒメノが「生命を刈り取る力」を発動、それを受ければめでたく死ねると思ったか「ほう…。最高じゃないか…!」と嬉々として武器を投げ捨て、キングズウエポン大鎌モードを介して放たれた「生命を刈り取る力」を諸に喰らう。
しかし喰らってもやはり死ねず、代わりに腹の中から大量の紫のシュゴッドソウルが出てきた。これにより精神汚染が一時的に弱まったのか、目に付く限りのシュゴッドソウルを必死に掻き集め一時撤退する。
「……俺の身体はどうなっている…!? …どうして死なない…!?」
ダグデド「ど~なってんでしょ~? …何?」
「お前が、俺を造ったんだろうが…! なんで、コレが俺の腹から出てきた…!?」
ダグデドの部屋へと戻り、感情任せにダグデドを斬り付ける(カメジムと入れ替わられて失敗)も、精神汚染が弱まった副作用で一部の記憶が復活。直後頭痛を起こして倒れながら休眠を挟み、自身が殺戮兵器として生み出された事実を思い出したグローディ。
どうやっても死ねない、そもそも死ぬ事の叶わない存在だという事実を前に、開き直ったかの様に自分から零れ出たシュゴッドソウルを貪り食って哄笑する。
「俺は…、『殺す』為に造られたのか…」
ダグデド「そうそう~♪ お前は~、この宇宙を死の世界に変えるしかねぇんだ~♪ ウッハハハハ! イ~ッヒッヒヒヒ!!」
「どうせ死ねないなら……全員黙るまで殺し尽くす……。ハハハハハ……ヒャハハハハハ!」
その後は再びイシャバーナへ襲来し、怪ジームのゾンビを暴れさせる傍らで逃げ遅れた市民達を襲っていたが、「不死の命」という命題について一つの結論を出したヒメノ、ジェラミーに阻止され交戦に入る。
「五月蠅い…。 死ね…フフッ…死ね…! 全部、生きた屍になれ…!」
「シーッ…。…静かにしてくれ…!」
怪人態となって2人と白兵戦を繰り広げ、「無駄だ……。俺は死なない……殺せない。なのにどうして騒々しい……!」と嘲笑い愚痴るも、「お前さんは、命を解かってない!」「決して諦めない! だから、命は煌めく!」と切り返した2人の一撃で怯んだ所にヴェノミックスシューターからの糸を放たれ、四肢を縛りあげられ拘束される。
だがグローディは不死身の自分を殺す事など出来ないと、2人を挑発する。
「どうする…? 細切れにするか、燃やし尽くすか…? 何をしようが、俺はずっと、ずっと殺す…! フッハッハッハ……!」
しかし、そんなグローディの前で変身解除したヒメノは、グローディが体内よりばら撒き取りこぼしていたシュゴッドソウル(奇しくもヒメノと縁のあったガーディアンスネイル)の解析から得た結論を突きつける。
ヒメノ「診断結果を伝える。あなたは……『既に死んでいる』。
…私の力は命を刈り取る。そもそも"命"が無いなら、あなたを倒せないのは当然ね」
「ハッ……?俺は喋って、動いてる。 それでも死体だって……?フフフ……」
ジェラミー「お前さんは、お前さん自身の能力で動く、生きた屍だ」
宇蟲五道化、静謐のグローディ・ロイコディウム。
不死身と思われたその正体は死体を起こして動かす彼自身の能力で蘇り、再生能力を付与された動く死体だったのである。
死ねない身の上を嘆いていたグローディだが、その理由はとっくに死んでいたからだった。
死者は死なない。動く死体であるグローディが、もう一度死ぬ事はできない。
シュゴッドソウルをむさぼり哄笑したあの時、彼の眼に浮かんでいたのは、彼の能力で起こされた死体と同じ波紋模様。それこそが何よりの証だった。
想定外の事実を突きつけられたグローディは自棄になった様に笑う。
「なら、殺すだけだ。みんな殺して、宇宙を死の世界にするだけだ……ハハハハハハ!!!」
ヒメノ「……今のあなたを見て確信した。 死の克服は……医療の夢じゃない!死を忘れた者は…きっと貴方と同じ末路を辿る…死を求めて、死をばら撒く…化け物に…」
ジェラミー「俺も少しだけ、お前さんの気持ちが解かる。 永遠は、寂し過ぎる…。 とても生き物には、耐えられない」
ヒメノ「『生』を全うする為に…医療はある…『死』があるから…生きる事は美しいの…!」
ジェラミー「物語には一つだけなくてはならないものがある。『これで、おしまい』だ」
たとえ死を克服して生き永らえたとしても「生きる喜び」を実感できなければ意味がない。
「死」を知らない生ける者が「死」を恐れて「生」に執着するように、死して「生」を忘れた者は己に無い「生」を憎み、死を求めて死をばらまく。それこそ、今のグローディの様な悍ましい化け物と化す。
ギラが言った様に、“いつか死ぬから、いずれ消えるからこそ命は輝く”。
故にこそその輝きを簡単に消さず、全うする為に医療はある。そしてどんな物語にも必ず終わりがある。
ジェラミー「これが、お前さんが焦がれた、命だ」
その為に、ヒメノの取った手段は医者として、グローディの「死の病」を「治療」する事。
ジェラミーの「王の証」である永遠の命の結晶を、ヒメノが「王の証」により刈り取る事で摘出、それをヴェノミックスシューターにエネルギー化させたものを装填し撃ち込み、グローディに移植する(これとほぼ同タイミングでゾンビ怪ジームも残りの王様戦隊に撃滅され、塵に還った)。
「熱い……体が燃える……!」
ヒメノ「…それが、生きてる証拠」
「命」を得たグローディは死者から生者となった。命ある、生きている者なら殺す事ができる。
つまり不死身でなくなった今ならグローディを倒せる。
身構える2人の前で、久方ぶりの生者の感覚に打ち震えつつ拘束を破り、新たなゾンビ怪ジーム等を呼び出して従えたグローディは歓喜を見せて立ち上がる。
「…最高じゃないか…! ……ハァァッ、『神』にでもなった気分だ……!!」
その言葉と高笑いへ引きずられる様に、狭間の国バグナラクにあった大量のセミ型シュゴッドの屍が動き出しイシャバーナの空を覆う。
それは正に、かつて世界を襲った災厄……「神の怒り」の再来であった。
最期(第47話)
ゾンビ怪ジーム達を手早く片付けた王様戦隊に迫られるも、ダグデドの横槍と彼が語ったグローディのルーツ、その犠牲にバグナラクの先祖がなっていた真実へ王様戦隊が怒りに震える間で、ダグデドが呼び寄せたセミ型シュゴッドの一体に掴まって場を逃れたグローディ。
ダグデドの掌で踊り続ける自分の境遇はもうどうでもよくなり、ただ与えられている力を思うままに振るい今度こそチキューに死を与えるべく、17年前の災厄を再現しようと進撃する。
しかし、彼の相対する王様戦隊とそれに関わる者達は、かつてグローディに多くのものを奪われながらも立ち上がり、そしてこれ以上奪わせまいと誓った者達でもあった。
六王国の王から成る六王国異様事案対策用戦略救命部隊が発令した“対「神の怒り」用避難計画”により、地上の五王国の民が狭間の国バグナラクに全て集められて一人も殺せないまま、夜のシュゴッダムにセミ型シュゴッドの群れ諸共移動。
その上でラクレス/オオクワガタオージャーも含めた七人の王が降臨させたゴッドキングオージャーが更に巨大なオーラを顕現、そこからの一斉砲撃でセミ型シュゴッドの群れが火葬されるが如く薙ぎ払われて全滅。
一人地上に放り出されたグローディは怒って怪人態となり、「チキュー根こそぎ、死の世界に送ってやるよ…!」と毒付きながら異常成虫を発動して巨大化。
交戦するも、死の冷たさしか知らず最初からずっと孤独だった男が、人と手を取り合う事による命の温かさを知る王達を揺るがす事は叶わない。
ジェラミー「お前さんが始めたバグナラクの悲劇は、これで幕切れだ!」
「五月蠅い…! 吹けば飛ぶ、たかが命が何故死なねえ…?」
ギラ「貴様と俺様の違いを教えてやるっ! 手の温かさを、知らない事だっ!」
「知ってたまるか…! 死は、冷たい…。死は、静か…。だから良い…。 …だから死ね…!余さず残さず死に晒せェ!!」
ギラ「手を繋ぎ、命を繋ぐ…! その力の前には、死など無力ッッ!! 貴様が踏み躙ってきた全ての命、その怒りを!」
ヒメノ「お前如きに屈しない、命の力を!」
王様戦隊「「「「「「「思い知れッッッ!!!」」」」」」」
最後は思いを乗せた神の一刀が繰り出され、ようやく願いを叶えられると確信したグローディはまともに食らい、「ハハハハハ………!これが…死か……! アッハッハッハ…!!」と歓喜の哄笑を残して爆散。直後、上空に弾かれたシックルシーカーがさながら墓標、或いは振るい手の命を刈り取るかの如く爆心地に突き刺さった光景を残し、この世から退場した。
だが、王様戦隊が言い放ったグローディが身勝手にも奪い、踏み躙ってきた全ての命の「怒り」を味わうのはこれからであった……
「ここが…、死の世界…。……ハァ、静かだ…」
その後、目覚めたグローディがいたのは、死の国ハーカバーカ。遂に「静かな死」を得られ、穏やかな顔で眠りについた。
…しかし漸く「静かな死」を得られたと思われた彼の耳に、耳障りな呻き声が聴こえてくる。
起き上がると声の主は、ハーカバーカに彷徨う霊魂であった。
死後の世界は彼が願っていた「静かな世界」などでは無く、亡者共の呻き声が永久に木霊する、喧しくも安らかでは無い地獄であった。
もしかすると、中にはグローディに殺された怨みから彼に付き纏っていた者達も少なからずいるのだろう。
あのまま氷漬けで封印されていた方が静かな分まだマシだったのだろうか?
今更気にしたところで時既に遅く……
「……うるさい…うるさいうるさいうるさい…!!!
こうして、死んでも尚他者がもたらす喧騒から逃れられない結果を突き付けられたのに対し、怨嗟の声を撒き散らしながら自身に纏わりつく亡者達に追われ永遠にその声を浴び、怯え情けない声を上げながらハーカバーカのどこかへと消えていった。
かくして、最初から死んでいたのも忘れ「静かな世界」を得る為死を求めた宇蟲の死神は、紆余曲折の末に命を得た事で命の温かさを知る王様戦隊に討たれて漸く死ぬ事が叶うも、その過程で自身が身勝手に奪った命から絶えず責め立てられ続ける、「静謐」とは程遠い怨念の呻き声が渦巻く死後の世界に渡り、永遠に消えない喧騒に怯え彷徨う刑を科されるという因果応報の末路を迎えたのだった。
そもそも、死を操り惑星を蹂躙する『死神』の役柄はダグデドが押し付けた物だが、その扱いに安寧し第46話の時点で既に奴の掌より抜け出るかもしれない機会に遭っても逃れようと足掻かず、邪な神を気取って災厄を振り撒く役にしがみ付いて無為に命を奪い続ける事を選び続けたと思わしき点からして、こうした末路になるのは最初から決まっていたのだろう。
それにしても、自業自得とはいえただ静寂を求めて文字通り「死に物狂い」になって悪事を働いた結果、手にしたものが「怨嗟と雑音が絶えず響き渡る地獄への永住権」だったとはなんという皮肉なのか。
まさに骨折り損のくたびれ儲けとはこの事を言うのだろう……。
その後、第49話ではダグデドとの最後の戦いで絶望させ王様戦隊を追い込むべく大量のコピー怪ジームに加え彼もまた怪人態のコピー体が他の五道化らともに生成。
完全に物言わぬ道具としての駒として王様戦隊を追い込んもうとするも、そこへ立ちはだかったのは皮肉にも蘇らせジェラミーを苦しめたネフィラが死の国から救援として現れる。そして持っていた力を駆使して叩きのめされ、最期はラクレスら達によってカメジム以外の五道化諸共撃破。まさにいいように死を弄ばされた意趣返しとされる扱いだった。
最終話では少しだけ登場。
無数の怨念に曝され続けた結果、諦めの境地に達したのか、生前のような落ち着いた態度ながらも、すっかり憔悴しきった様子で過ごしていた。
そしてデズナラクに生きながらハーカバーカに引きずり込まれたカメジムに「静かにしろ……シー…」と虚ろな表情で静かにするように促すのだった。
演者について
- グローディを演じた天野氏は『仮面ライダー剣』で橘朔也/仮面ライダーギャレンを演じ、『仮面ライダーフォーゼ』で速水公平/リブラ・ゾディアーツを演じるなど、仮面ライダーシリーズに出演した経験があるが、スーパー戦隊シリーズは今作で初出演となった。また、天野の妻である雛形あきこ女史は映画『アドベンチャー・ヘブン』でイロキを演じており、夫婦でキングオージャーへの出演を果たした。
- 第34話では彼がトウフの玉座におり、カグラギが挟まっているが、(中の人的に)嫁から旦那へ玉座が受け継がれた形となる。なお第37話で実際にはこの両者の間にはもっと浅からぬ因縁がある事が発覚した。
- 初登場回である第30話でのキャスト紹介時は「謎の男 ???」と表記されたが、これはサプライズ演出の為にあえて伏せたと思われる。また、同話のタイトルは「凍てつく天秤」であり、演者に関わる要素も含まれている。
- 発表こそサプライズだったが、出演自体は早い段階で決まっていたので、彼のセリフは過去の出演作品やツイート&ポストを参考にした当て書きとの事であり、脚本家の高野水登としては同じく当て書きのダグデドと共にお気に入りである事が窺える。
- ゴーマ・ローザリア役の山路和弘氏も『仮面ライダー剣』にて烏丸啓役で実写出演しており、(今作は声優として出演しているとはいえ)同作品以来の共演となる。
余談
- モチーフ及び名前の由来はカタツムリに寄生する寄生虫の一種「ロイコクロリディウム」。これも正確には昆虫では無いが、広義で「虫」とされる生物である(吸虫)。また、人を殺しても罪悪感を抱くどころか開き直る性格から、「グロい」という言葉も含まれていると思われる。
- ロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリは、触角がロイコクロリディウムの幼体に侵入され肥大化して文字通りグロい見た目になると同時に特徴的な渦巻模様が浮かび上がる事が、能力発動の際の渦巻き模様の由来となっている。そして寄生されたカタツムリはまるでゾンビの様にコントロールされる事となり、死を操る設定に相応しいと言える。その触角の実物はヌメヌメと蠢くイモムシ状で、見た人は思わず「ウワァァァァァァァァァァ!!」と叫びたくなる程なので、苦手な方は画像検索する際は注意。また、モチーフ元に近いネーミングの為か、フルネームで画像検索するとこのロイコクロリディウムの画像がヒットしてしまう事がある。その為、このキャラを調べる際は「グローディ キングオージャー」等で検索する方が安全。
- またカタツムリに関連したモチーフの怪人は機界戦隊ゼンカイジャーのカタツムリワルド以来でもある。
- 46話では体内から出てきたガーディアンスネイルのシュゴッドソウルが、彼の既に死んでいたという「正体」の鍵となった為、関係性が反転しているとも言える。
- 『キングオージャー』では初の素面系のレギュラー幹部である。
- 神の怒りの経緯は「グローディが蘇らせたセミシュゴッドの死体をチキューで大暴れさせた(大量発生したセミシュゴッドの目には、やはり例に漏れず渦巻き模様が現れている)」事が真実だったが、グローディがサソリーヌの毒を持っていた理由は結局明かされることはなかった。
- ヒメノから憎まれているが、ヒメノ役の村上愛花からは「リアルにキングオージャーの中で一番好きかもしれない」と逆に好印象であり、脚本の高野水登から「ああいうタイプがお好きなんですか!?」と驚かれていた。
- これに対し、村上は「強すぎるが故に世界がつまらないと言ってそうな気だるい感じが好き」との事。
- 高野以外にもクレオメイド長役の神里まつりからは悲鳴が…。
- 上述の通り、「神の怒り」の際ヒメノの両親を手に掛けているが、これをヒメノ本人から詰られた際の返答は「どのパパとママか分かんねえよ」つまり、対象が子を持つ親である事を認識した上で及んだ殺しが数え切れない程ある=子供の目の前で両親を殺す所業を数え切れない程行っていた事であり、彼の危険性や異常性を端的に表した台詞となっている(実際、過去には毒物をばら撒いて無差別殺人を企図した事すらあり、日頃からこういったレベルの所業を行っていたのであれば本人が把握できないのも当然である)。
- 彼のこれまでの所業から、ネット上では「天野さんが演じていなかったら俳優まで叩かれているレベルにヘイトを稼ぐことをしている (要約)」との声も。
- 異名の「静謐」は「静かで安らか、世の中が穏やかに治る」意味だが、静かな所以外全て正反対である。
- 最終的に討たれて死に、現世を去り死者の世界へ行く事は叶ったも、そんな勝ち逃げ気分に浸る事は許されず逆に命を奪った者らより永劫に責められる末路を辿ったグローディだが、そもそも身勝手に無数の命を奪った上で自分が死ぬのを望む奴を討ってもそれは、その者の身勝手な願いを後押ししたとも取れる為報いとしては効果が薄いとも言える。
- 故に死んでも「静謐」に至らないあの末路こそがグローディに相応しい罰とも言え、逆を言うなら「静謐」の異名をグローディが持ったのはある種の皮肉とも取れるだろう。
- 「宇宙を救う時」で同じく不死身であるダグデドよりオージャカリバーZEROに「不死身のギラを殺す力(及びダグデドを倒せる力)」が注ぎ込まれた(ラクレスはそれを利用してダグデドを倒すつもりであった)ことに関して視聴者の中では「同じく不死身であるグローディを倒す力が手に入った」と言う声も多かったが、「既に死んでいる者を植え付けた力で動かしていた」グローディには効かないと思われる事実が発覚。
- だが、ジェラミーの体内に有った永遠の命を移植された事で、改めて不死身殺しが効く身体をグローディが持つ事となり、やや変化球の形で視聴者の予想が的中した様な結果になった(ダグデドや彼と同じ細胞を持つギラを倒す為の力の為、それ以外には効かない可能性も立てられていた)。
関連イラスト
人間態
怪人態
関連タグ
死神 殺人鬼 黒魔術 ネクロフィリア ネクロマンサー リビングデッド 生体兵器 ロイコクロリディウム
謎の黒服:名前が判明するまでの通称。
ミノンガン・モウズ:『時間逆行を応用したダグデドのバックアップ』役を危惧され、嘗てグローディが受けた氷の封印に閉じ込められて封印、一足早く死ぬよりも過酷な末路を迎え退場した五道化の仲間。こちらは甘やかしの体裁で自我の発達を殺がれながら道具として扱われていた節があり、グローディと比べたら同情の余地がある。
ギラ・ハスティー(邪悪の王)、デズナラク8世を始めとしたバグナラク人:シュゴッドソウルを摂取して身体を変質させた者達。この変質を強要され続けた果てに、無惨な生体兵器と化した彼等のIFこそがグローディとも言えよう。そして前者においてはVシネマにて、最悪の形で実現することになる。