「我はデズナラク8世、地帝国バグナラクの王。我らは増殖する、故に無限。我らは死を恐れず、故に無欠。藻掻き、足掻け。望み絶たれるその日まで森羅万象の区別なく、我が深淵が喰らい尽くそう!」 (第9話)
データ
体長 | 196cm(異常成虫時:48.8m) |
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重さ | 157kg (異常成虫時:390.9t) |
分布 | シュゴッダム(朝、昼) |
好物 | チキューの大地 |
観察ポイント | 実はシュゴッドとの共生を望んでいたのか、人知れず小型シュゴッドのタランチュラアビスを守っていたようである。 |
CV | 志村知幸 |
スーツアクター | 清家利一 |
概要
地下に展開する、『地帝国バグナラク』の支配者。
正式名は「奈落王デズナラク8世」で、その表記や『ナラク』の名称が高貴な血統を示している点などから世襲制と思われるが、第26話の過酷な国内描写により襲名制の可能性も浮上した。
容姿
土を食べて耕す虫「ミミズ」のBNAを備えており、レザースーツを思わせる見た目に漆黒のマントを身に着け、全身にまとわりついたミミズの様な赤い触手が特徴的。
性格
言葉の端々には人間への苛烈な怨念や地上への執着心に満ちている物の、その風貌に違わない威圧感を醸し支配者に相応しい人物。
人間への憎悪を以って現代に蘇り、人間とバグナラクの勢力図を書き換えるべく、かつて自国が大敗した要因たるチキューに伝わる三大シュゴッドを探している。
目的の為には自ら他国に赴き最前線で戦う等、首領にしては非常にフットワークが軽い。
人類には憎悪と嫌悪感を剥き出しにしており、非道な作戦を行う物のチキューに対しては思い入れがあるらしく、五王国を滅ぼす為に大地を傷付ける作戦を行う前に「許せチキューよ……」と詫びている。
一方、人類絶滅にはやるが為に自軍戦力=自国民の命を軽視する傾向が強く、他に利用価値が有りそうな怪ジームすら本命の作戦の踏み台として陽動や時間稼ぎに投入、戦死させて使い捨てるなどの非効率過ぎる人材運用をする場面もしばしば。しかもそうした問題点には「我らは無限に増殖する」とした質より数な主張で開き直っており、その面では自国民に酷薄な暴君なのも間違いない。
そして上記の主張に連動して、戦力の平均的な質が下がり続けているバグナラク国内の実情も垣間見える。常時運用可能な戦力が闘争心こそ旺盛だが、知能面に難があるサナギムしかいない、既に死亡していたかつての配下であるダイゴーグを蘇生させて戦線に投入する実状からも分かるが、前述の通り首領が侵略の最前線へ立つ光景自体が、裏返せばバグナラク軍を構成する人員の質低下に歯止めが掛からず、デズナラクが前線指揮官及び主要戦力を兼任しないと、組織系統が破綻する寸前にまで陥っている状態なのを示しているとも見えよう。
能力
その触手は伸縮・サイズ共に調整が自在であり、高層ビル数棟をまとめて薙ぎ倒し巨大怪人並みの大規模破壊を齎す、絶大なパワーを持つ。
また土壌から養分を奪って自身のエネルギーに変換する能力を併せ持ち、他の構成員のエネルギーとして分け与えて強化させる芸当も出来る、昆虫界のナラクキング。
有事の際には触手の1本を引き抜き、触手がそのまま柄になったギザギザしたチェーンソードの様な剣『蛇腹剣ナラクレイモア』を形成、それを携えての近接戦闘も可能で、複数の赤い斬撃を放って敵を牽制できる。
昆虫最終奥義は、マントを脱ぎ捨て全身から伸ばした触手で敵を強襲するデステンタクルズ。
膨大なエネルギーを収奪・蓄積可能かつ、それを自在に扱える能力のフル活用により、単体の戦闘力は群を抜き異常成虫を果たせばゴッドキングオージャーとも真正面からやり合える実力を発揮する。更にはチキューの核に直結すれば、エネルギーを奪い与える能力の応用でチキューその物を単独で破壊し最大級の奈落に落とす芸当すら可能らしい。
一方で彼の気質(あるいは国風)の問題で、損耗を二の次で敵を殲滅せんとする攻戦を望む反面、こちらの奪った拠点を取り返さんと向かって来る相手を返り討つ防戦を苦手としている様子。
各話の動向
第1~5話
「我らは地帝国バグナラク。我が名は奈落王デズナラク8世。我々は人類を皆殺しにする…!」
チキューに伝わる予言通り、人類に対する激しい憎悪を以って2000年ぶりに復活を果たしたデズナラク率いる地帝国バグナラク。
人類を駆逐して自国の勢力を広げるべく、チキューの三大守護神の力を手中に収める為に五王国にそれぞれに配下の怪ジーム、時には自らも赴いて三大守護神の在処を探そうと侵攻を開始。
ことごとく配下を撃破されるも、ゴッカンにて宰相カメジムがゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルの強奪に成功し、残りの2つを確保する為に更なる作戦の準備を進めた。
第6~8話
前回、ゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルを奪った事を受け、五王国に「我々は全世界を人質に取った!」と共に犯行声明を出す。
「繭の中では我が同胞が力を蓄えている。時が来れば、五王国の繭は同時に解き放たれ、お前達を蹂躙する!」
バグナラクが力を蓄える巨大な繭を出現させ、シュゴッドをコントロールできる素質があり、ラクレスの実弟であるギラの身柄を開け渡すように迫った。
カメジム「つい、うっかり不覚にも…油断して奪われてしまった秘宝のおかげで千載一遇の好機が…!」
「計算ずくだろう。カブトムシとサソリ、二大秘宝が揃った!……ギラにも操れない、強大な力!」
そして、カメジムの謀略でわざとゴッドスコーピオンのシュゴッドソウルをギラに奪わせ、シュゴッダムにゴッドカブトも存在する状況を作らせ、更にはラクレスが突きつけたギラとの決闘裁判に乗じてギラを誘拐しようと送り込んだゲロウジームがゴッドホッパーに撃破され、長年待ち焦がれていた三大守護神が揃った瞬間が訪れたのだった。
第9~10話
「最後の三大守護神も姿を現した……。総力を挙げて五王国に同時攻撃を仕掛ける」
カメジム「地上は綺麗なまま手に入れたかったのに、もうメチャクチャ……」
「全ては虫ケラ共の愚かさ故……許せ、チキューよ……。私はお前を壊し、下等生物共を殺し尽くす……!」
「三大守護神が揃った以上、もう地道な作戦を繰り広げる必要はない」と判断したデズナラク8世は、各国に眠る巨大な繭に自身のエネルギーを送り込んで巨大怪ジームを羽化させ、一気に五王国に同時攻撃を仕掛けて滅亡させようと画策。
自らの行いによってチキューが荒らされてしまう事態を詫びつつ、五王国に無数のサナギムを送り込んで作戦を実行に移し、自らも戦線に参加して各国を守ろうとするヤンマ達を次々と撃破。ラクレスに生存が気づかれないようゴッカンに身を隠すギラを捕縛し、三大守護神を呼び寄せようと迫る。
いくら拷問しても拒み続けるギラを外に連れ出し、羽化寸前の巨大繭を見せつけ現実を突きつけようとする。
「見ろ。2000年積み上げた文明は滅び、下等生物は死に絶える。今、このデズナラクこそがチキューの王なのだ!」
ギラ「まだ、玉座は空いてない! 僕が知ってる王様は、自分を曲げない。心を折れない。絶対に、愛する国を、民を傷つける奴を許さない!」
それでもギラが理想にする“王様”の信念を曲げず、更には側近達の本音をぶつけられ、決意を固めたヤンマら4人の王が合流。ギラも王鎧武装を果たしてクワガタオージャーにチェンジを果たし、王様戦隊として心を1つにした5人の姿を目の当たりにする。
次々と配下を切り伏せられ、自らもデステンタクルズで彼らを翻弄するも、5人の連携攻撃によって追い詰められる最中、やがて五王国にデズダンジームなどの巨大怪ジーム達が羽化。深手を負いながらも「もはや止めることは出来ない……滅びを目に焼き付け、己の無力に絶望するが良い……!」と勝利宣言を口にしつつ撤退。
しかし、三大守護神がギラ達に力を貸して合体、奇跡の降臨を果たしたレジェンドキングオージャーによって各国の巨大怪ジームを次々と討伐され、全てを懸けたチキュー滅亡作戦は失敗に終わった。
しかし、自国へ戻ったデズナラク8世は悔しがるどころか、まるで勝ち誇ったように高らかに笑い、更なる作戦の準備を進めており……。
カメジム「デズナラク様。全ての準備が整いました……」
「世界をひっくり返す時だ……。フハハハハ……!」
第11話
前回に敗北したにもかかわらず余裕綽々な面持ちでいるデズナラク8世。すると、そこにクモの仮面を被った謎の男が現れる。
「事は全て、言い伝えの通りに進んでいる」
蜘蛛仮面「そう、『三大守護神仲良しこよし。お日様目指して天まで登れ。さすれば世界はひっくり返る』……とさ」
「あと少しで下等生物共に思い知らせる。“奇跡”は奴らだけのものではない!」
デズナラク8世が三大守護神を手中に収めようとしていたのは、この仮面の男が教えたチキューの言い伝えを信じ、それを実現しようとしていた為。
「今こそ三大守護神が一ヶ所に集まった今こそ好機」とばかりに、予言成就の最後の一押しをすべくシュゴッダムへとナガバジームを送り込んだ。
そして、異常成虫化を果たしてシュゴッダムを攻め入るナガバジームに対して、ギラ/クワガタオージャーはレジェンドキングオージャーを繰り出して撃破するも、突如レジェンドキングオージャーに無数の卵が膨れ上がり、引き起こされた大爆発で合体を解除。更には身動きが取れない三大守護神は、出現したデズナラク8世が呼び出した巨大な繭へと閉じ込められてしまう。
実はレジェンドキングオージャーの初出撃となった五王国を巡っての戦いの際、ンコソパにてナガバジームが卵を仕掛け、頃合いを見ての不意討ちの布石を仕込んでいたのだった。
「『三大守護神仲良しこよし。お日様目指して天まで登れ。さすれば世界はひっくり返る』!」
ヤンマ「何かますつもりだ…!?」
「黙って見ていろ、奇跡が起こる瞬間を!」
とうとう三大守護神を手中に収め、言い伝えを現実のものとし世界をひっくり返る奇跡を起こそうとする……が、何も起こらない。
「なぜ?……なぜ、何も起こらない!? 言い伝えの通りにした筈だ!!」
すると、この時を待っていたかのように蜘蛛仮面の男が現れ、三大守護神のシュゴッドソウルを持ち去られてしまい、急いで跡を追うも蜘蛛の糸で拘束されて身動きが取れない状態に。
蜘蛛仮面「助かったよ。コイツを集めるのがちょいと面倒だったんでね」
それは蜘蛛仮面=ジェラミー・ブラシエリの計略だった。
先の言い伝えの真意は別のところにあり、一ヶ所に集まった三大守護神のシュゴッドソウルを素材に生成機で鍵を作成し、自身の封印を解き素顔であるジェラミーとしての姿を晒す。
そして、デズナラク8世は長年信じてきた言い伝えがブラフであり、利用されていた真実に動揺を隠せない。
「謀ったのか!? 100年、いや1000年に渡って、この為に我々を利用したのか!!」
ジェラミー「おとぎ話ってのは子供を眠らせる為にある。良い夢は見れたかい?」
そしてジェラミーがゲノミックスシューターから放ったヘドロケットが直撃し、何の抵抗もできぬまま爆破されてしまった。
第12話
爆破されたと思われていたが、ジェラミーが周囲を欺く為のフェイクで存命していた事実が判明。命辛々逃げ延びる。
自国に戻って、ジェラミーに怒り散らすカメジムに「シュゴッドソウルを奪い返せればいい」と提案するも、やはり散々利用され尽くされた現実を許せず静かに怒りを振るわせていた。
「あの半端者は、この手でくびり殺す!」
そして、沸き起こる憎悪と殺意の元、ジェラミーを自らの手で抹殺しようと行方を探し、イシャバーナにてジェラミーを発見。ナラクレイモアを引き抜きジェラミー/スパイダークモノスを襲撃し、戦闘を開始。ジェラミーの力を「お前の力、全てまやかしだ!」と否定して斬撃を繰り出すも、縦横無尽に動き回り攻撃を仕掛けるスパイダークモノスに翻弄され、更には仕掛けてあった毒のトラップ(フェイクに織り交ぜた本物)にはまり、毒に侵され動きが鈍った所を拘束、必殺の一撃を決められて撤退に追い込まれた。
第13話
ジェラミーによって大きな深手を負いながら自国に戻ってきたデズナラク8世は、触手を使って地面の養分を取り込み肉体を回復。
そしてシュゴッドソウルがない三大守護神のボディだけは手中に収めている為、それ使ってバグナラクの悲願を成就させようと企てるが、飄々とした様子でジェラミーが現れ、「『人間とバグナラクの和平の足がかり』として平等にシュゴッドソウルを分配」を決めたジェラミーからゴッドホッパーのシュゴッドソウルを手渡された。
それでもジェラミーに対して怒りを見せていると、以前の戦いで撃破されたと思われていたゲロウジームが出現。ジェラミー・ブラシエリの抹殺を名乗り出たが、「誰だ?」と存在をとっくに忘れており、成果を残せず生き延びたゲロウジームを触手で首を絞め、「半端者がっ……! 負けて戻るなら、戦って死ね!!」と、死刑宣告じみた遂行命令を厳命した。
しかし、未だ両者が戦いの手を止めない事態に不満を爆発させたジェラミー/スパイダークモノスが召喚したゴッドタランチュラによって、繋ぎ止めていた糸に引っ張られる形で三大守護神が奪取、ゲロウジームも討伐(に見せかけ、ジェラミーが保護)され、作戦は失敗に終わる。
この回からゴッドタランチュラこそが、三大守護神も含むシュゴッドを思いのままに操れる「真のチキューの秘宝」と定義し、その奪取を主軸にするようになる。
第15~18話
ジェラミーを仲介人として連れたラクレスが自分達のアジトへと来訪。彼は利用されるのを理解しつつも、強大な後ろ盾を作って他国を服従させ、強引にチキュー統一を実現させる為の大義名分を得る為、名ばかりの和平交渉をしようとやってきたのだ。
デズナラク8世は「シュゴッダムには一切の侵略行為を行わない」と約束してラクレスの掲げる和平条約を結び、彼に提供してもらったシュゴッダムの技術を用いて、かつての戦いで自身を勝利に導いた伝説の英雄・一撃将軍ダイゴーグを蘇生させた。
そして自身も、ただ素直にラクレスの和平交渉を鵜呑みにした訳ではなく、バグナラクの後ろ盾を得て雑反する存在の排除に力を注ぐラクレスが本国に居ない隙を突き、シュゴッダムを制圧し自国の支配下へと置いた。
第19話
ラクレス「人類を滅ぼすんだろう……。なぜその椅子にこだわる?」
「ただ殺すのでは、この怒りが収まらんからだ。生きて、たっぷりと絶望を味わえ……!」
シュゴッダムを手中へと収めたデズナラク8世。シュゴッダムの国民を人質に取って迂闊に攻撃できないようにするだけで無く、コーカサスカブト城内にいる者達を処刑しようとしたり、招聘させたダイヤモンドダンジームに歯向かうラクレスを即座に痛めつけさせるなど、和平もへったくれもない恐怖政治を敷く。
更には人類に対する怨恨から一気に殺さず、じわじわと苦しめ尽くして殺す陰湿なやり方で滅亡させようとも考えていた。
「下等生物は理解できん。この腑抜けの王が治める国に、王が寄ってたかって自ら命を捨てに来る……」
ギラ「王は国ではない、国は民だ。王は民のために敵を討ち滅ぼす。その程度も分からん雑魚に、玉座は似合わん!」
やがて、城へギラと王達の6人がシュゴッダムを救う為に現れる。
既にンコソパ・イシャバーナ・トウフからの精鋭チームが救出済みで人質を使っての脅しが使えず、しかもリタの宣言で五国同盟に代わる王達の新たな同盟にして組織・『五王国異様事案対策用戦略救命部隊=王様戦隊キングオージャー』が結成された瞬間を目撃。
手始めにサナギム達をけしかけるも瞬く間に全滅させられ、自身はジェラミー/スパイダークモノスと交戦、ナラクレイモアを使っての荒々しい攻撃を仕掛けるも一歩及ぼす追い込まれ、ダイゴーグ諸共一箇所に集められてしまう。満身創痍になった所でカメジムの進言で、後の戦いをダイヤモンドダンジームに任せシュゴッダムから逃げ去った。
この出来事を境に、余裕がない様子が散見されるようになり、部下や戦力の消耗を顧みないごり押しの作戦を実行する傾向が加速するようになる。その結果、ラクレスと取引をしてまで蘇生させたダイゴーグを第23話で戦死・損失させてしまった。
奈落王の恐るべき計画、人間とバグナラクの戦争の始まり(第24・25話)
異常成虫を果たし、超巨大化したダイゴーグによるシュゴッダム壊滅計画は、シュゴッダムの民が心を一つにして復旧させたコーカサスカブト城=キングコーカサスカブトによって頓挫に追い込まれた。
とうとう業を煮やしたデズナラク8世は、カメジム達を招集させると衝撃の一言を発する。
「カメジム。私の手でチキューを、宇宙の藻屑にする」
それは自身が巨大化してチキューの核へと侵入し、内部から破壊する『チキュー破壊計画』の独断専行だった。それにはカメジムから即刻中断するよう進言されるも、すでに準備の為にザリガジームを送り込んでおり、本気で計画を実行に移そうとしていた。
ジェラミー「お取り込み中失礼。今、上は真夏以上に暑いんだが……お前さんのせいだったりするのかな?」
「これは始まりに過ぎない。下等生物どもは皆殺しだ!」
すると、サナギムに化けていたゲロウジームから連絡を受けたジェラミーが来訪し、スパイダークモノスへとチェンジ。あらましを知り、自らの命を捨てかねない無謀な計画を止めるべく説得を受けるも、デズナラクは「バグナラクは死を恐れない! 下等生物が死に尽くすまで、殺し合うだけだっ!」と全く耳を貸そうとしない。
それでも変身を解除したジェラミーから話し合いを求められ、彼から「何故それほどまでに人類を憎悪するのか?」と問い質されデズナラクはこう返した。
「バグナラクは悪か?」
ジェラミー「2000年前、バグナラクが人類を侵略したからだ」
「それは誰が証明できる? 過去を知らぬ我らは、知らぬ罪を背負わされ、訳もわからず暗い奈落の底へと押し込められた。それは永劫続く……」
ジェラミー「遥か太古の歴史は俺だって知りたいさ。だが知ったところで変えられない。今と未来は変えられる」
「だからこそ……人類を殺し尽くし、我が深淵で塗り潰す。それのみが、バグナラクの汚名を濯ぐのだ!」
デズナラクが口にしたのは「2000年前、自分達バグナラクがチキューの侵略行為を引き起こしたのかどうかなど、現在の誰にもわからない」事実だった。人類に激しい憎悪を抱いていたのは、先入観だけで悪だと決めつけ真実を知ろうともしない挙げ句に、生きようが死のうが続く咎を背負わせた人類に絶望していたからだった。
そして、ジェラミーの説得を突っぱねて「王のなり損ない如きが。己のぬるさ、焼かれて知れ!」と吐き捨て、その場を去った。
ジェラミーもデズナラクの言葉を聞いてシュゴッダムに赴き、ブーンとの対話で自らが意図せずに「バグナラクは悪者」と行間から読めてしまうような筋書きを残してしまい、人類にバグナラクの間違った認識を植え付けた遠因になっていた現実を痛感した。
その後、巨大化したザリガジームを撃破し、ザリガジームが掘ったトンネルを調べに来た王様戦隊の前に、デズナラクが「退けえぃ!」と怒号を発しながら、最後の計画を実行しようと出陣。
ギラ「デズナラク!」
「我はそこに用がある!」
リタ「なら、動かない」
「ならば死ねえぃ!」
動きを止めようと王様戦隊が仕掛ける攻撃のダメージを追いながらもトンネルへと少しずつ歩みを進めていく。
同じ「ナラク」の名を持つ者として見捨てられず、憎悪の原因を作った責任を取るためにジェラミーは王様戦隊を拘束した後「まだ人とバグナラクが手を取り合う筋書きにできる。怒りの炎が消えるまで、俺も共に焼かれよう」と1人で説得を試みる。
「もう遅い!……これは最後の通告だ。我が命と引き換えに、チキューの光を絶つ!」
しかし、デズナラクはそれを拒絶した後、取り出した大量のシュゴッドソウルを食らって異常成虫の準備を整えてしまう。
「我はバグナラクの王、デズナラク8世! 森羅万象の区別なく……我が深淵が喰らい尽くそう!!」
そして、ジェラミーの制止も虚しくトンネルへ飛び込み、チキューの核へと落ちていった……。
そして、異常成虫を果たし巨大化したデズナラク8世は無数の触手を張り巡らせ、チキューを内側からの破壊を試みるも、自らと核を繋ぐのに難儀し地下深くのマグマに浸かりながら日跨ぎで悪戦苦闘していた。
その間で王様戦隊は、自国に居る自分達の大切な人々の中から、シュゴッドのパイロット=自分達と肩を並べて戦ってくれる仲間を探し当て、デズナラクを地下より引き上げる手段を実行する手筈を整える。
そうして王様戦隊が全ての条件を満たして誕生させた、伝説や極限を超えた守護神・ゴッドキングオージャーはチキューの核へ突入、それに捕まったデズナラクは地上へ投げ出されてしまう。そして夜のシュゴッダム市街地で守護神と激しい熱戦を開始した。
「下等生物が!」と叫ぶと同時にマントを脱ぎ捨てエネルギー衝撃波や剣戟で果敢に攻め立てるも、手数は相手の方が上で、テントウスターで吹き飛ばされ、三大守護神の連続攻撃を浴び、スパイダーウェブでナラクレイモアを奪われる。ならばと足掻きの触手で拘束して形勢逆転及び一網打尽を試みるが、ガーディアンウェポンフィニッシュで触手を切られてしまう。
そして転倒した所を、ブーンが乗るゴッドアントの先導で放たれた必殺剣の一撃が直撃。
「たわけが……!」と呟いて爆散するも致命傷へは至らず等身大に縮小し、そこへバグナラクとの完全決着を求める王様戦隊の6人も現れた。
かくして、人間とバグナラクの戦いは最終局面へと突入するのだった。
奈落王の最期、そして新たなバグナラクの始まり(第26話)
キングオージャーとデズナラクは激しい激闘を繰り広げた。ギラは、
「本当に戦いたいのか!? 終わらせたくないのか!?」
と問うも、怒りの頂点に達していたデズナラクは、
「2000年前ッ! お前達に着せられた侵略の罪を、我らの汚名を濯ぐッ!! 敗者が罪を負うならば、お前達が死に絶えるまで、殺し尽くすだけだッ!!!」
と怒鳴り散らしながら、サナギムを巻き込む規模でのデステンタクルズを広範囲に仕掛ける。
キングクワガタオージャーの一撃をまともに受けながらも戦意を失わないデズナラクに対し、ジェラミーは「明日の戦いで勝った者が新たなるバグナラクの王になる」とする決闘を提案し、自身が約束を破らぬ証明としてクモノスレイヤーをデズナラクに預けて撤退した。
仕方なくバグナラクに戻ったデズナラクの前には、彼を「敗残の将」として愚弄するサナギムの一派が「シニゾコナイ! オウノザ、ヨコセェ!」「バグナラクノオウハ、オレダァ!」と息巻き、その首を取らんと迫ったため「ハッ! 身の程知らず共め……!」と吐きつつそれらを殲滅・捕食した。
デズナラクはクーデターを容易く鎮圧するも、直後に呻きつつ膝を着いてしまう。
実は異常成虫は行使した者の命を蝕む諸刃の剣であり、本来ならば余命幾ばくもない身になった上に、自らが国民に強いて来た思想がそっくり跳ね返って来た結果、彼を取り巻く状況は無惨な程に悪化していた。しかしデズナラクはジェラミーの提案を飲み、我が身にムチを打って決闘の時を待つ。
ジェラミー「さあ。どちらが王か……決めようか」
「私はただ、下等生物共を嬲り殺すだけだぁっ!!」
遂に迎えた決闘の日……デズナラクは文字通り残りの命を使い切らんばかりに攻めるが、僅かな隙を突かれて拘束、地上の日に照らされたシュゴッダム市街地へ連行されてしまう。
地に伏せられて尚も憎悪に突き動かされるデズナラクに、ジェラミーは覚悟を決めて彼を討たんとした時、ギラがジェラミーを押さえると同時に王では無く1人の人間として「先に手を出したら悪とか、勝ったら正義とか、全部間違ってる。
本当に大切なのは……どっちが先に謝れるかだ」と語りながら、デズナラクに頭を下げた。
予期せぬギラの行動にデズナラクは怒号を上げるも、当のギラは自らの発言を実践する様に土下座をして誠心誠意の謝罪を示すと、ギラの姿から嘘偽りがないと察したデズナラクは、2000年もの間に培われた憎悪を捨てる様にナラクレイモアを落とした。
決闘の前日、バグナラクのアジトに潜入した王様戦隊は、本来のデズナラクはか弱き者を守る博愛精神の持ち主である事実を知った。
しかし、そんな彼を歪ませたのは2000年にも及ぶ伝承から端を発した誤謬による憎悪と、その憎悪を晴らすべく生まれた弱肉強食の思想であった。
だが、それを知ったギラが自然と見せたあの謝罪は、押し込められた地の底で弱肉強食の共食いを選ばなければ、我が身すら存続できぬ環境に身を置きながら、1体の小さなシュゴッドを守ろうとする優しさを捨てなかったデズナラクの一面に共感した上での慈悲であり、デズナラク当人が本当に欲しかった人間の優しさ=明るい心でもあった。
「これで……こんな事で……終わるのか……」
ジェラミー「そして、始まるんだよ! ……お前さんも、本当は……望んでいたはずだ!」
そして奇跡の和解が成就されようとした瞬間、カメジムの昆虫最終奥義・キョショクリティカルがデズナラクに直撃、ムシマルピンで胸を貫かれ磔にされてしまう。
直後にカメジム本人が姿を現すと、自身が人類とバグナラクの間に諍いの種を蒔き、両者を争わせるべく2000年以上裏で煽り続けていた=遠回しにデズナラクや先代王たちを操っていた真相を暴露。その上で「敗残の虫ケラには、それに相応しい惨めな死を!」と吐き捨てるや、彼を抹殺すべく空高くから光線の照射態勢に入る。
「やっとデズナラクを救えた」と思ったジェラミーは、何としてでも彼を救おうと踠くが、自分が他者に憎しみの道を走らされていた真実を悟るも、直後に本当に望んだものを得られたデズナラクは憑き物が落ちたからか、
「光の届かぬ、奈落の底……。人が忌み、恐れ、嫌う場所で我らは生きている……」
ジェラミー「しおらしくするなデズナラク!」
「だが、木と、水と、大地と同じ! ……森羅万象と共に、我らは生きているっ……!!」
ギラ「逃げろー!」
「お前が王となり、認めさせてみせろ! ……“バグナラクは、ここにいる”と……!!!」
ジェラミー「お前さんも、一緒だっ……!!」
ジェラミーに全てを任せる旨を遺言に伝えるや、デズナラクは彼を守らんと払い除けた瞬間、発射された光線で焼き尽くされ死亡。
最期の時に本来の博愛精神を取り戻した奈落王の遺骸は、灰と化して風に消え地面に焼き付いた影が残るのみだった……。
そして、王様戦隊が元凶たるカメジムを討伐後、デズナラクより王の座を譲る言質と五大国王の許可を得たジェラミーは真名である『ジェラミー・イドモナラク・ネ・ブラシエリ』を名乗り、地帝国バグナラクを“狭間の国バグナラク”と改名。自国と五王国との間に出来た2000年にも渡る断絶を埋める為の戦いを、第六の国の王として始めるのであった。
また同じ頃、奈落王の博愛により生き延びて来たタランチュラアビス(下画像右下)は、シュゴッダムの石畳に刻まれた焼け跡に一輪の花を手向けたのだった…。
彼の墓標となったシュゴッダムの石畳は狭間の国バグナラクにあるサナギムの墓場と共に建てられたデズナラクの墓と一緒に建てられている。
余談
- ミミズ自体がモチーフの戦隊怪人は『天装戦隊ゴセイジャー』のブロブの膜イン以来、13年ぶりの登場となる。更に膜インも、所属勢力の実質的な首魁を務めていた。
- 声を演じる志村氏は『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のスピンオフ作品『もう一人のパトレン2号』に登場したゾニック・リー以来、5年振りのスーパー戦隊シリーズ出演だが、同作はWeb動画作品である為テレビシリーズとしては『烈車戦隊トッキュウジャー』のサーベルシャドー以来、9年振りとなる。
- スーツアクターの清家氏は、『宇宙戦隊キュウレンジャー』のドン・アルマゲ(後期)以来、6年ぶりに敵組織の首領役を務めた。尚、キュウレンジャーは宰相カメジムのスーツアクターを務める蔦宗正人が本格的にレギュラーキャラを演じ始めた作品でもある。
- 目的が目的だけに対話の余地のない敵キャラであるが、一方で「常に前線に出ており、武装した敵の前にも直々に姿を見せる」「交渉事も他人任せにせず、『交渉の時間が欲しい』と乞われると猶予を与える」「決められた時間にしっかりと約束の場所に来る」等々、随所で上に立つ者としての律儀さも見られたりする。そのため、視聴者からは「ラクレス・ハスティーよりマシなんじゃないか?」とも評されている。
- また、第24話での明かされたデズナラクの本心と、バグナラクの実状を知った視聴者からは「道徳の授業の教材になる」「情状酌量の余地しかない」「チキューの核に向かう際に漏らした『明るい』の一言に泣いた」などの意見が多数寄せられ、一気にデズナラク8世自身とバグナラクの評価をひっくり返した。ある意味、目的の「チキューの勢力図をひっくり返す」が我々の世界で果たされただけでなく、キングオージャーが道徳及び教育番組になった。
- 第26話で明かされた彼の真実から、彼もまたギラと同じ「国のために『邪悪の王』となった」人物にして、合わせ鏡たる存在であったと評価出来る。
- そして没落の際に、自身がカメジムの手の内で踊らされていた真実を突き付けられた点は、皮肉にも相互利用関係にあったラクレスと同じでもあった。尚ラクレスの方も密かに情を見せる人物がいたが、現状この事実は王様戦隊に伝わっていない。
- キングオージャーのメンバーはスーツにそれぞれの国章が記されているが、デズナラク8世のマントにもバグナラクの国章を象ったエムブレムが付けられており、これもまた今作の「王と王の戦い」である一面を表している。
- タランチュラアビスを密かに守っていたデズナラクであるが、敗残兵のゲロウジームを再度戦地に送り込んだ指示についても、「生きて戻るくらいなら戦って死ね」とは強要していたものの、別の見方ができるかもしれない。ゲロウジーム自身は死を覚悟して戦いに挑みはしたが、その後はジェラミーの下で生き延びているのだから。
- 邪悪な暴君のように見えたが、実際は民を思いやる人物であった故に、悪に堕ちてしまったことが判明したデズナラク8世。 彼と同時期に初登場したラクレス・ハスティーもまた、民のために悪役を演じていた可能性が高い。
- そして······
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謝ったら死ぬ病:ある意味デズナラクに対するアンチテーゼ。但し、カメジムに殺害される前に、本人なりに償う意思を示した為、正確には「頑固」の方が近い。
死の国より舞い戻る奈落王(第48〜最終話)
第48話
避難計画ゼロの真の意図を知り、ラクレス共々王の意志に背くことを決意した側近達と国民。最後の宇蟲五道化 としてその妨害の命を受けたカメジム・ウンカが、ゴローゲに擬態して人々を扇動しようとするも、本物のゴローゲが現われたため失敗。ならばと実力行使で国民の排除を試み、その場での事実上唯一の戦力であるラクレスと対峙する。
だがカメジムが名乗りを上げた次の瞬間、死者を導く鯨の声が響き、背後で死の国の門が開く。
差し込むその光の中には…
カメジム「うん? ……ああっ…貴様は……!?」
2000年に渡るバグナラクの無念を晴らすため、裏で全てを操っていた邪悪な虚飾の道化を討ち取るため、ハーカバーカより現世に舞い戻った、怒れるバグナラク先代国王・デズナラク8世の姿があった。
「死の国から迎えに来たぞ……! 下等生物!」
第49話
ハーカバーカから舞い戻ったのは彼だけではなかった。ボシマール、イロキ、カーラス、ディード・メタリー夫妻、ネフィラ、そしてライニオールらの懐かしき顔ぶれが続々現れ、満身創痍の王様戦隊に加勢する。デボニカが皆を呼び寄せたのだ。
デズナラクもカメジムを叩きのめしながら戦陣に加わり、
「王としての矜持を見せろ、人間。でなければ、今ここで殺してやる。
この先を生きるのはお前達だ!!」
とギラに荒っぽく、そして熱き檄を飛ばした。
最終話
デボニカが扉を保つのに限界を迎え、他の死人らがハーカバーカへと強制送還される中で唯一留まる中、カメジムと対峙するジェラミーが自身よりも因縁があるラクレスとデズナラクに譲渡。
かつて自身を抹殺した怨敵たるカメジムへ向けてタランチュラアビスが自らの背後で展開した巨大な脚のエネルギーに自らの触手を纏わせ、昆虫最終奥義・デステンタクルズを強化した擬似的な王鎧武装・凌牙一閃にも見える合体技を剣撃と同時に叩き込む形で過去の因縁をぶつけ、彼の首根っこを掴んでハーカバーカの扉へと向かう。
「死の国で永遠に殺してやろう、下等生物…!」
なお、別れを惜しむかのように自身について行こうとしたタランチュラアビスに対して「お前はまだ早い」と制止、カメジムのみを引き摺りハーカバーカへと還っていった。