概要
インドの民間伝承には事故、自殺、死刑などといった原因で急死した人々の霊魂は浮遊霊プレータになり、息子が11日以内にちゃんとした葬儀を行わないと、死体や排泄物を喰らい、人を騙してやはり喰らうなどの様々な害意をもたらす悪霊と化すとされる。
またブートにはバガウト(トラに殺された者の霊)、ビジャリヤ・ビール(火で死んだ者の霊)、タール・ビール(ヤシの木から落ちて死んだ者の霊)、ナーギヤ・ビール(ヘビに咬まれて死んだ者の霊)などいった様々な種類が存在しており、特に子供や婦人に対して恐れられているという。
その姿は諸説有るがバラモンのものは麦色か白、クシャトリヤ(古代インドの王族・戦士階級の名)とヴァイシャ(第3の庶民階級)と(隷属民)は黒色とされ、パルミラ椰子と同じぐらいの高さをしておりやせているとされる。
常に渇きを覚えているためミルクを好むので、ミルクを飲んだ直後の赤ちゃんを一人にしておくことは危険であるという。
ブートは木の上に住処を持っているが、これは大地に女神が存在する為、地面に座る事ができないからだといわれており、低いカーストの祠近くに2つの杭、あるいはレンガ、吊るされた竹が設けられているのは彼らが休むための休息場としての意味合いがある。
その他の居場所として火葬場や墓地、暗い所に潜んでおり、夜中にも人前に姿を現すとされ、もしブートに囲われたら神々や女神たち、特にカーリー、ドゥルガー、シヴァに念じればよいとされる。
それ故に寺院には出没できないといわれているのである。
なおブートたちは人間に取り憑く際には頭部から侵入する事が多いが、髪の毛や他の穴からも入り込むこともあるとされる。特に口は魂の出入り口でもあるので、欠伸をする時は口を手で押さえなければ危険であるという。またくしゃみをするときにも入って来ることがあるらしい。
インドで死者を火葬場で頭蓋骨を割るのはブートを外に出す為の行為であり、火葬しない場合でも頭部を椰子の実や法螺貝でたたき割るのもブートを出してから埋葬するためである。
インド北部のパンジャーブ地方では外出の際はブート除けの為に口に灰や塩を付けるとされ、また悪魔を脅す効果があるウコンの粉を焼く臭いにも近付かないといわれている。
余談
- この呼び名はヒンディー語によるもので、サンスクリット語ではブータもしくはブータナと呼ばれる。
- 仏教においては「富単那(ふたんな)」と音写され広目天の眷属とされる。
- ブータナは女性の悪霊を指すが、パンジャ-ブ地方などではチュレルと呼ばれている。
- 叙事詩『ラーマーヤナ』には、ラーマ王子の命を狙ったプータナーという名の毒の乳を持つ魔女が登場するが、種族はラークシャサである。
- ネパールで伝承される闇夜に紛れ人の命を奪うという、冥府の悪霊ハクマ・ブ・ドゥの「ブ・ドゥ」はブートと語源を同じくする。
- インドネシアなどの東南アジアでは、ブタと呼ばれる角のない鬼のような姿で伝わる。
創作での扱い
南方の諸島国家と併合したために文化が変わり、旗などで装飾された帝国「戦闘機ブート」が登場した。
ラストダンジョン地獄に登場する大きな鬼「ふたんなごくそつ」として、『桃太郎伝説Ⅱ』およびプレイステーションでのリメイク作に登場した。