概要
インドの民間伝承における女性の悪霊で、地域によりチュディール、チュデル、チュイル、クゼイル、クセルといった呼び名もある。
不浄とされる月経中や出産前後、またはデワリ祭りの期間中に死んだ女性が化けると言われている。
この時期に死ぬ事は、身内に罪人がいる為とされ、
チュレルになった女性は親族を酷く恨んで祟りをなすのだという。
目撃しただけで重い病気になり、近年では電話をかけてきて応答したものを殺すともされる。
バングラデシュや西ベンガル州では未婚であったりして満たされなかった女性がペトニ (পেতনী または পেত্নী)、シャクチュンニ(※1)と呼ばれる既婚者の印である装飾具を身につけたチュレルに、グジャラート州では異常死した女性がジャキルン、ジャカイ、ムカイ、ナグレイ、アルバンチンと呼ばれるチュレルになるとされるが、元々は低カーストの女性が化けるとされていた。
またケーララ州のエクシ、悪霊プレータの女性形プレタニも同一視されることがある。
美女の姿で現れて若い男を誘惑してくるが、
その姿はまやかしであり正体は恐ろしい女妖怪である。
伝承において本来の姿はざんばら髪で、膨れた腹を持ち分厚い唇、黒い舌、身体は前が白く後ろは黒い色で、垂れ下がった乳房を持つとされるが、別の伝承では顔は美しいが口が無く、下半身は胴体と逆に付いているという。
足が後ろ向きについているため、チュレルの足跡を見て、反対に向かって逃げたつもりが、
逆にチュレルに捕まってしまったという話もある。
チュレルに捕まってしまうと生命力を吸われて老人の様になるまで、もしくは死ぬまで解放されない。また誘惑され食べ物をもらった若者が夜明けに村に帰ってきたら老人になってしまったという話しも伝わる。
もし若者が誘惑されて憑依されてしまったら、バイガという呪術師が山羊を生け贄にする事で逃れられるとされる。
なおチュレルになりそうな女性を埋葬する際には、墓の中に石や木の棘を入れる。うつ伏せにして埋める。両手の全部の指に釘を打ち、足を鉄輪で固定する等の方法が効果的らしい。
ヒンドゥー教の伝承においてはラークシャサなどにも関連があり、ダーキニーに変じてカーリー女神の血肉の饗宴に参加することもあるといわれる。
ペルシアの伝承が起源であるという説もあり、パキスタンのピカルペリ、東南アジアのポンティアナックも同一視される。
ちなみに西インドにおいて伝承される、女性の超常的な力を意味する方のダーキニー由来である魔女ダーヤンは、下半身が反対向きに付いているなど姿形が似ており、人々に与える害も同様なものが伝わるので混同されることも多いが、概念的および文化的に異なる存在であるとされている。
創作での扱い
- 女神転生シリーズ
※メイン画像
初出はインド人の民間伝承の悪魔がいくつか登場した『ソウルハッカーズ』で、口が無く下半身が前後逆の幽鬼チュレルとして登場した。
注釈
※1… শাকচুন্নি をはじめ শাঁকচুন্নি、শাকচুন্নী、শাঁকচুন্নী、শাঁখচুন্নি、শাখচুন্নি、শাঁখচুন্নী、শাখচুন্নী といった表記揺れがある。語源的には法螺貝 (শঙ্খ ションコ) から来ており、女性が臨終の際に既婚者の印として法螺貝のお守りを持たせられた事に由来する (ダス 1937)。1833年に発行された英語によるベンガル語・サンスクリット辞典には শাঁখচিহ্নী (śān̐khacihnī) なる語(意味は 1. 魔女、女のゴブリン; 幽霊. 2. だらしのない女)が掲載されているが、これはサンスクリットの śaṅkha-〈法螺貝〉と cihna-〈印〉に由来するとあり、これが転訛してベンガル語のシャクチュンニとなったものと考えられる。シャクチュンニはベンガル語圏の怪談に登場する怪異としては定番の存在であると思われ、大体緑色の肌で描かれる傾向が見られる。
参考文献
- দাস, জ্ঞানেন্দ্রমোহন (ギャネンドロ・モホン・ダス) (1937). “শঙ্খ; শাঁক, শাঁখ”. ''বাঙ্গলা ভাষার অভিধান'' (ベンガル語辞典) (2nd ed.). কলিকাতা: দি ইণ্ডিয়ান্ পাব্লিশিং হাউস, pp. 1920, 1933.
- Haughton, Graves C. (1833). “শাঁখচিহ্নী”. A Dictionary, Bengálí and Sanskrit, Explained in English, and Adapted for Students of Either Language. London: J. L. Cox & Son, p. 2477.