概要
いわゆる「悪役令嬢もの」作品のひとつであり、同時に「チート(無双)もの」(魔法魔力チート・現代知識系内政チート)としても分類される作品。
友人から世間話で聞かされたゲームの悪役令嬢であるサレスティア・ドロードラング男爵令嬢に転生してしまった前世ド貧乏少女による、崖っぷち領地回復奮闘記。なお、そのために悪役令嬢ものとしては物語初期早々より(物語構造的には)破綻している。
2016年2月26日より連載開始、2018年9月18日に本編完結。
第一回アース・スターノベル大賞において佳作受賞。2020年4月よりアース・スターノベルより書籍化し、以降続刊。2021年12月に最終巻である5巻が発刊され書籍版完結(全5巻)。挿絵イラスト(キャラクターデザイン原案)は沖史慈宴が担当。
なお書籍版ではサブタイトルが設定されており、フルタイトルとしては『贅沢三昧したいのです! 転生したのに貧乏なんて許せないので、魔法で領地改革』となっている。
2022年2月よりアーススター社のウェブコミックサイト「コミックアース・スター」にて漫画版が連載開始。作画は木虎こんが担当している。漫画版のタイトルは『贅沢三昧したいのです! ~貧乏領地の魔法改革 悪役令嬢なんてなりません!~』となっておりサブタイトルが少し変化している。
あらすじ
魔法世界にあるアーライル国のドロードラング男爵家の令嬢であるサレスティア。王都の屋敷でワガママ放題、使用人は奴隷としてこき使う。そんな彼女は、ある日、転んで頭をぶつけた挙句前世の記憶を覚醒させてしまい、自らが乙女ゲーム「魔法学園アーライル」の内在魔力だけはチートな、ザコ悪役令嬢である事に気付いてしまう。
しかしサレスティアは前世においてはゲームの存在と自らが悪役令嬢である事には気づいても、前世の実家の極貧によってゲームなどはやったこともなく、全ては友人からのふわっとした又聞きのみ。ゲーム知識による破滅回避など望むべくも無かった。
その現実に愕然としたサレスティアは三日三晩うなされたあげく(自らの知識と現実をすり合わせるための確認作業という)奇行を繰り返し、ついにその行動を疎んじた両親から領地(ド辺境)へと送られてしまう。
前世はド貧乏だったけど、今世では曲がりなりにも貴族の娘。こうなれば前世で出来なかった贅沢三昧をして、乙女ゲームの本筋にも全力で背を向けて破滅回避して、人生を謳歌してやる―――
そう堅く誓って領地へと舞い戻ったサレスティアの目前に広がっていたのは、痩せた農地、崩壊した産業、疲弊した領民たち、廃墟寸前の各村と街地と領主屋敷、空っぽ同然の食糧庫と金庫という凄絶な光景であった。
ドロードラング男爵領はサレスティアの両親による現実を見ない贅沢三昧の浪費によって存亡の危機を迎えていたのである。さらに恐ろしい事にはサレスティアの両親は領民の頭数を補填するために国では禁じられているはずの奴隷貿易にまで手を出していた。男爵領の残った領民、王都屋敷の使用人、そのほとんどが奴隷あるいはスラム出身の行き場のない貧民たち。奴隷ではない正規の領民たちも、ほとんどが疲弊して気力を失っていた。
この現実にサレスティアの「なんじゃこりゃあ!」の叫びが領地に木霊した……が、幸いなことに、その精神的ショックによってサレスティアの魔力チートがゲーム本編よりも早くに覚醒する。
破滅回避なんてやってるどころじゃねぇ! 領地を立て直さないと即詰む! 領地を立て直し、ここで苦しんでる皆と一緒に贅沢三昧してやるんだ!
サレスティアは覚醒した魔力と、ド貧乏少女だった前世で培った生活の知恵を武器にして、領地の復興に挑むのであった。
登場人物
- サレスティア・ドロードラング
- 本作主人公。アーライル国の貴族、ドロードラング男爵家の令嬢。莫大な魔力持ち。
- もとはゲーム「魔法学園アーライル」の悪役令嬢。ゲーム内では同ゲームにおける攻略対象のただのファン(婚約者とか親戚や幼馴染とか、そんな関係性は無く本当にただのファン)で、産まれ持った莫大な魔力を用いてヒロイン(プレイヤーキャラクター)に、しょぼい嫌がらせをするザコ・オブ・ザ・ザコ。のちに実家のドロードラング家が不正を働き不祥事を起こしていた事をヒロインと攻略対象に暴かれ、彼らの前から姿を消す(おそらくは一族郎党連座死罪処刑コース)。
- 本作では前世覚醒と魔力覚醒を起こし、領地の現実を知った事で、領地の立て直しに奮闘する事に。通称:お嬢。領民たちに頭を下げて手を取り合い、共に領地を盛り立てるため邁進。領民たちを引き連れて隣国・隣領にて身の上を隠して冒険者活動や旅芸人活動を行い地場産業復興のための外貨稼ぎや情報収集を行った。さらに領地崩壊の元凶となった両親および母方の祖父母を告発するに至る。
- 第3王子のアンドレイと友人になり、さらにのちには彼の婚約者へと推挙され、この時に父母告発の功績から伯爵へと陞爵された。
- ルルー
- マーク
- ドロードラング領へと戻されたサレスティアにつけられた護衛の剣士。とはいえ剣士の肩書は名目上だけのものであり、その実はスラム出身の「ちょっとケンカできる程度に剣が使える」少年。
- スラムの生活から仲間たちと共に抜け出す事を考え「騎士になろう」と将来を見据えていた時にドロードラング家の使用人募集(待遇に「実力を示せば騎士団への推挙もありうる」と書かれていた。嘘だったが)を見かけ「貴族の使用人なら道も拓けるかもしれない」と志願したが、すぐにドロードラング家の実情と「実は使い捨ての人員を求めていただけ」という現実を知り、サレスティアのお付きにされた事で「領地に着いたら逃げてやる」とか考えていた。しかしサレスティアから騎士団への推挙を約束され、ルルーと並ぶ彼女の側近として活躍していく。
- サレスティアの護衛となった時にルルーと出会い、ドロードラング家から逃げる事を考えていた時には「ルルーも一緒に」とも考えていた。本人に長らく自覚は無かったがルルーにはベタ惚れ。そのザマはルルー以外にはモロバレであったため領内では「ルルーとマークを(興味本位におもしろおかしく)見守る会」が密かに結成されるなど、周囲からは生温く(生暖かく、ではない)見守られていた。
- 最終的にはルルーと結婚。さらにサレスティアの進学によってルルーと共に夫婦で「サレスティアの従者」として学園に通う事に。学園では騎士科の所属。のち国の武術大会にて実力を示し、晴れて騎士として認められ夢を叶えた。
- クラウス
- アレすぎる領主(サレスティアの父)に代わり、ドロードラング領の執政実務を担当していた、ドロードラング家の執事。サレスティアにとっては最も頼りになる側近となる。
- 元々は王国の内政筆頭を担うラトルジン侯爵家の出自であり、自らも文官になることを望んでいたが、なまじっか剣術の才にあふれまくっていたがために自身の意思を無視同然に武の道を歩む羽目になった挙句剣聖という肩書まで得てしまい、さらには戦争にて騎士として従軍させられる。その時に同じ部隊に配され、戦友かつ親友となった男こそサレスティアの祖父であるジャン・ドロードラングであった。
- 戦後には戦時経験のPTSDに苦しめられた上で剣聖の名声が多くの挑戦者や暗殺者を引き寄せてしまい返り討ちにし続けた事で心のバランスを完全に崩してしまう。その様子を見抜いたジャンより真意を尋ねられて「もう人を殺したり傷つけたりするのは嫌だ」と泣いて本音を吐露。それを聞いたジャンから木剣を渡され「不殺の剣」を諭される。さらにのちにはジャンによってドロードラング領に執事として招かれ(幼い頃から夢見ていた)領地の内政に携わる事で、ようやく平穏を得たという過去があり、その事を(ラトルジン家全体で)一生の恩として刻んでいる。(ジャンのこの気遣いが無ければクラウスは自殺するか殺人鬼に堕ちるかしていた可能性が高い)
- なお実家の侯爵家とは「立場や権利を放棄した」事になっているため法律&書類的には縁が切れている。しかし侯爵家の現当主は実兄であり、現王の第三側妃は実の姪。さらに第三側妃の子であるアンドレイ王子とレリィスア姫にとっては大叔父(祖父の弟)にあたる。また自身が立場を放棄し勘当同然になってしまっているが兄弟の絆と信頼は深くサレスティアに「告発にあたって信用できる人を」と問われ真っ先に兄を推した。