概要
アナキズム(無政府主義)は、国家などの政治権力の存在を否定する思想の総称。
しかし、一口にアナキズムと呼ばれる思想をとってみても、共産主義に属するもの、資本主義に属するもの、個人主義に属するもの、共同体主義に属するもの、民族主義に属するものなど千差万別であり、左翼に属するアナキズムもあれば右翼に属するアナキズムもある。
一応、アナキズムと称される思想の中では無政府共産主義(アナルコ・コミュニズム、解放区での自治を主張)と無政府資本主義(アナルコ・キャピタリズム、企業による統治を主張)が代表的思想(イデオロギー)。
互いに全く異質な様々な思想を「政治権力の否定」という共通点だけで大ざっぱにひっくるめたものと言えるが、国家秩序を否定する考えからアナキズムは右であれ左であれ過激化しやすく「極右」「極左」にはアナキズム的傾向の強いものが多い。
近年のアナキズム
アメリカ合衆国では、ネット掲示板4chanなどを拠点に浸透した「オルタナ右翼(alt-right)」の一派、「ブーガルー」(Boogaloo)が台頭。彼らの目的は「アメリカ国内での騒乱、内戦」による国家秩序の徹底的な解体であり、暴動の扇動、暴力行為の他、政府施設の爆破などのテロ行為を計画したとしてFBIなどの監視対象となっている。また、左翼アナキストを中核としたANTIFAも同国での暴動などに関与しており、ドナルド・トランプは彼らを「テロ組織」として名指ししている。
メキシコでは、同国内で最も貧しい州とされるチアパス州の自治区を拠点にサパティスタ民族解放軍が活動している。同団体は1994年の北米自由貿易協定(NAFTA)発効に合わせ武力蜂起したが、1996年2月16日にサンアンドレス協定が結ばれ、政府側と停戦した後は武装蜂起は行わず、主にインターネット上で先住民の権利擁護活動をしている。
フィクションにおけるアナキズム
近年のアニメや漫画などでアナキズムそのものを描いたものは少ないが、SF作品などでいくつかの企業グループが世界を支配し、しばしば抗争する(政府が存在しないか、あっても実権を持たない)アナルコ・キャピタリズム的な世界設定の作品は多数ある。民主政治は存在せず、企業の雇った私兵が戦争を行い、貧困層は人間扱いされないなど、むき出しの暴力と金権が支配する、どちらかというとディストピア的な世界観である。
一方で無政府共産主義の理想郷としての解放区が描かれることはあまりないが、『未来少年コナン』のハイハーバーなどはそれに近いと言えなくも無い。
関連タグ
外山恒一 -元アナキスト