概要
メキシコ一の貧困州であるチアパス州。その地で1994年に武装蜂起したメキシコ先住民(インディオ)主体のゲリラ組織である。「サパティスタ」というのはメキシコ革命の指導者のひとりエミリアーノ・サパタに由来する名である。
組織の行動理念は先住民に対する構造的な差別の糾弾、北米自由貿易協定(NAFTA)に象徴される新自由主義グローバリゼーションへの反対、農民の生活向上、民主化の推進の要求である。NAFTAによって貿易関税が消失し、アメリカ合衆国産の競争力の強いトウモロコシが流れ込むと、メキシコの農業が崩壊することや、農民のさらなる窮乏化が予測されたのである(この懸念は後に現実となり、麻薬戦争を生む惨事となった)。また、これにあわせて当地の先住民を一掃すべく、ギャング組織が大規模農場主によって雇われ、暗躍しはじめていた。
サパティスタの蜂起に対し、メキシコ軍は武力鎮圧し、チアパス州の先住民居住区を中心に空爆を行なったため、サパティスタ側に150人近くの犠牲者が出た。これを受けてサパティスタ側は対話路線に転換し、結果的にそれが奏功して、以後メキシコ国内外から高い評価と支援を受けることになる。
組織のリーダーは元大学講師とされているマルコス副司令官だが、彼は自分はあくまでも代弁者であり本当の司令官は人民であると言っている。なお、マルコスは先住民ではなく、メキシコの階級社会で上の方に位置する白人系の人物である。したがって補佐役にとどまる意味を込めた「副」司令官なのである。
評価
コロンビア革命軍のような暴力などで解決する左翼組織とは一線を画した「初のポストモダン的革命運動」と評される。マルコスの戦略は、内部では先住民による自治、対外的にはインターネットを活用した非暴力的な宣伝活動に重点をおいている。
チェ・ゲバラに象徴される「古き良き正義の左翼ゲリラ」のイメージを喚起しつつ「反グローバリゼーション運動」の流れの中に自分たちを位置づけ、国際的な支援も集めることに成功した。