概要
1978年にNHKで放送された日本アニメーション制作のテレビアニメ。宮崎駿が全話の演出を担当し、宮崎の実質的な監督デビュー作でもある。宮崎は作画監督の大塚康生とタッグを組んで制作にあたった。
オリジナルアニメの企画はNHKとしては初の試みであった。これは視聴者懇談会の場で母親たちから出された「子供が安心して楽しめる、夢と冒険にあふれたTVアニメを作ってほしい」という要望に基づくもので、企画段階では世界名作劇場のような作品がイメージされていたという。
原作はアメリカ人のアレクサンダー・ケイによる小説『残された人々』だが、冷戦の影響を強く感じさせる暗い内容で、これを嫌った宮崎によって大幅に脚色された。
NHKなので民放アニメのような玩具とのタイアップなどの制約がほとんどなく、制作者としては存分に腕をふるえる環境であった。洗練されたレイアウトシステム、爽快なアクション、巧みに緩急をつけた演出などなど、その後のスタジオジブリ作品にも受け継がれるエッセンスを多分に含んでおり、制作から40年以上経ついまでも語り継がれる不朽の名作である。大塚康生によって描き出された活き活きとしたキャラクターの動きも魅力である。
視聴率的にはふるわなかったが、後続の作家に絶大な影響を与えた作品であり、本作を見てクリエイターの道を志した少年少女は多い。本郷みつるや井上俊之、摩砂雪らは本作がアニメーターの道を目指すきっかけになったという。
ストーリー
最終戦争が勃発した西暦2008年7月、人類は滅亡の危機に瀕していた。核兵器を上回る超磁力兵器によって大地殻変動が起こり、五つの大陸が海中に没して近代文明は滅びた。
それから20年後、地球は再び生命を取り戻しつつあった。そして「のこされ島」という孤島に野生児コナンと彼の保護者・おじいが二人で暮らしていた。地球脱出に失敗し、不時着したロケットから生き延びた者達である。
そこへある時、少女ラナが流れ着いた。彼女はハイハーバーという島からインダストリアという勢力に連れ攫われかけたのだ。
初めて出会う女の子に驚くコナンだったが、ラナはインダストリアの追っ手に連れ去られ、それに抵抗したおじいが死んでしまう。悲しみに打ちひしがれるコナンに、おじいは死の間際に「仲間を集め未来に向けて生きよ」と諭した。
ラナを探して助けるため、新しい仲間を求めて、まだ見ぬ世界に向けてコナンは旅立った。
やがてコナンは世界の運命を左右する戦いに身を投じることになる・・・。
登場人物
- コナン(小原乃梨子) - 人並み外れた身体能力をもった快男児。12歳。
- ラナ(信沢三恵子) - 不思議な力を持った、聡明で気丈い美少女。12歳。
- ジムシィ(青木和代) - かなりの運動神経を持ったコナンの親友。10歳。
- ダイス(永井一郎) - バラクーダ号の船長で、コナン達とは敵やら味方やら。35歳。
- レプカ(家弓家正) - インダストリア行政局長で、世界征服を目論む冷酷な男。33歳。超兵器ギガント復活をもくろんでいる。
- モンスリー(吉田理保子) - レプカの部下で、気の強い冷静な美女。28歳。
- ラオ(山内雅人) - ラナの祖父で、太陽エネルギーを開発した科学者。60歳。
劇中用語
太陽エネルギー
近代文明在りし頃に開発された新エネルギー。それまでのあらゆるエネルギーを軽く凌駕する力を持っており、当初は地球環境を汚染しない理想的なエネルギーとしてもてはやされた。
しかし、その強大すぎる力故に戦争に利用され、結果として最終戦争を引き起こし近代文明を滅ぼす一因となった。
作中では、現実の宇宙太陽光発電(ソーラーパネルを搭載した人工衛星を用いて宇宙空間で太陽光発電を行い、発電した電力をマイクロ波やレーザービームなどに一旦変換して地上の受電施設に向けて発射、地上で電力に再変換するというもの)のような方法によって莫大な電力を供給するシーンが描写されている。
超磁力兵器
核兵器を凌駕する威力を誇る悪魔の超兵器。最終戦争において使用され、その膨大な電磁力が地球中心核を刺激した結果、大地殻変動が巻き起こり、地球の地軸をねじ曲げ五つの大陸を海に沈めるほどの猛威を発揮した。その強大な出力故にエネルギー源は太陽エネルギーによって賄われている。
この超磁力兵器のせいで近代文明は滅び去り、生き残った人類の文明レベルは著しく後退することを余儀なくされた。劇中では具体的にどのようなものかは描かれなかったが、設定では後述するギガントの機首に搭載されている地上攻撃用超大型ビーム砲がそれである。
インダストリア
最終戦争を辛うじて乗り切った産業都市。高度な科学技術を受け継いでいるが、太陽エネルギーが使用できなくなったため都市機能の大半が麻痺したままである。
太陽塔という科学センターを中心に街が作られており、徹底した管理体制が敷かれている。
生活環境としては劣悪であり、市民も階級によって隔てられている。地殻変動によって水没の危機に瀕している。
ハイハーバー
戦争から生き延びた人々が入植し開拓した有人島。自然豊かな島であり、農業と漁業で人々は生活している。
インダストリアと違って電力が無いため、文明レベルは産業革命以前といったところであり、牧歌的でおだやかな場所である。
残され島
コナンが生まれ育った絶海の孤島。島の真ん中にロケットが逆さに突き刺さっているシュールな外見の島である。
最終戦争の末期、地球を見捨てて宇宙に脱出しようとして失敗し、不時着したロケットの乗組員達が開拓した島である。コナンと育て親のおじいを残してコナンの実親ふくむ乗組員はみな病死してしまった。
プラスチップ島
残され島を旅立ったコナンが最初に訪れた人間の住む島で、ジムシィの故郷。元々はゴミの埋め立て地だった場所らしく、農業等の産業は存在せず島民たちは文明を一切失って浮浪者同然の生活をしており、定期的に島を訪れるバラクーダ号のダイス船長の命令でプラスチックごみを拾い集めては食料と交換する事でその日暮らしをしている。ジムシィはそんな無気力な島の大人たちを軽蔑しており、島から出るチャンスをうかがっていた。
ギガント
インダストリアの地下に眠る巨大空中要塞。超磁力兵器を内蔵した最後の戦闘機であり、行政局長レプカはこれを利用し地球に点在する有人島を支配下に治める=世界征服を成そうという野望を秘かに抱いている。
余談
現時点で本作が宮崎駿と富野由悠季が一緒に仕事をした最後の作品となり、富野巨匠を通じ、その後のサンライズ作品に影響を与えた。
本作の続編として『海底世界一周』という企画が宮崎駿によって立案されたものの頓挫。しかし企画案そのものは残り、これを基として宮崎駿が『天空の城ラピュタ』を、NHKが『ふしぎの海のナディア』を、日本アニメーションが『七つの海のティコ』をそれぞれ製作している。また、本作と競合して敗れた『ひみつの花園』は13年後の1991年度NHK総合アニメで放送された。
また、日本アニメーションはこれらとは別に一部の設定を共有した『タイガアドベンチャー』を製作している(第14話までは作品名も『未来少年コナンⅡタイガアドベンチャー』と本作のタイトルを冠したものであったが、物語上の繋がりは一切存在しない)。
上記の通り、子供が楽しめるアニメであるが、原作を元にしているため世界観は暗く、死者を出る、登場人物に中にはゲスト含む、タチの悪さ、裏切り、暴力表現も含まれるためダークな印象がが強い。そのため視聴には注意が必要である。
影響を与えた作品
映像研には手を出すな!…作中で浅草みどりが幼少期にハマったアニメとして登場している。アニメ版では『残され島のコナン』として表記された。さらにはその後、何の因果か(本来放送されている作品の代替放送とはいえ)同じ枠で本作が再放送されるに至っている。
ガンダムシリーズ(但しニュータイプを扱った作品中心)・・・ラナの超感覚はニュータイプに大きな影響を与えたと言える
機動戦士ガンダムZZ・機動新世紀ガンダムX・・・最も本作に近いガンダムシリーズで、後者は戦後世界の描写やストーリー展開は本作を連想、更に主役MS・ガンダムXとガンダムDXのサテライトキャノンはコナンの太陽エネルギーを連想(但し、サテライトキャノンのエネルギー施設DOMEは月にあったが)
戦闘メカザブングル・・・富野巨匠が作品世界設定に本作を参考にした。また、ウォーカーマシンはロボノイドをモチーフにした