概要
この台詞が飛び出したのは『アニメ版ヒロインたるもの!』第11話である。
第9話『スキャンダル』にて、涼海ひより、染谷勇次郎、柴崎愛蔵の3人の写真が突如ばらまかれてから、不穏な要素が目立ち始めた中村千鶴だったが、第11話「嫌われヒロインの戦い」にて驚愕の事実が判明。
その正体は、LIP×LIPのファン「ジュリエッタ」の一人であり、メイド喫茶でバイトをしているちゅーたんであり、作中でスキャンダル事件を引き起こした本作の黒幕でもあった。
勇次郎の思惑によって盗撮の犯人だと露呈した後は、それまでの大人しい性格から一転してひよりとの対話を拒絶するようになる。成海萌奈からのアドバイスを受けたひよりは、何とか千鶴の本心を聞き出そうとするが、激昂した千鶴と取っ組み合いの喧嘩になってしまう。そしてその際に千鶴の口から放たれたのが、
「お前がクソモブのくせにLIP×LIPと距離近いからだろーが!!」
「アイドルに特別扱いされていい気になってんじゃねぇ!!」
「このクソモブ女あああああああ!!」
という台詞である。
そして、喧嘩の末に、千鶴はひよりをクロスカウンターパンチで気絶させてしまうのであった……。
補足
このシーンは、「千鶴が今までひよりの発言や行動に対して溜め込んでいた怒りと憎しみをぶつけまくる」というものであり、事実、第11話の放映後も、多くの視聴者たちがこの点について指摘している。
しかしこの台詞を放った千鶴に対して、放映当初の視聴者からは否定的な意見が少なくなかった。以下にその理由と千鶴への弁護を記す。
①「マネージャー(見習い)である以上アイドルと距離が近いのは仕方ない」
これはひよりに限らず、他のアイドルのマネージャーや様々な役職にも言える事である。そもそも、千鶴の様に誰もが自分の気持ちを抑えて身を引くことができるわけでもない(事実、『HoneyWorks 10th Anniversary ”LIP×LIP FILM×LIVE”』において事務所に張り込んで愛蔵を待ち伏せしスキンシップを取ろうとしてきた女性・かおりや、ノンファンタジーのMVにて共演したことをきっかけにプライベートでの関係を迫ってきたアイドルのゆめるのように、自分の気持ちを抑えて身を引くことができなかった人物はこれまでにも登場している)。「萌奈ちゃんや飛鳥も距離が近かったのに今更?」と感じた視聴者がいるのも仕方がないところである。
しかし、歴代のアイドルなどがスキャンダル写真を撮られてしまう時は親密な雰囲気になっていたところを影から撮影される等の不測の事態が多いのに対し、ひよりとLIP×LIPの場合は誰が見ているかもわからない校舎の裏側で素の性格を出して度々口論しており、その際にひよりが仲裁に入ることが多く、更にはLIP×LIPがカウントダウンライブに出場することが決定した際に住宅街のど真ん中でひよりが二人とハイタッチをしていたという有様で、明らかに周囲の状況へ意識を向ける余裕がなかったことが窺える。
②「アイドルのマネージャーに向かってその言い方はどうなのか」
千鶴もといちゅーたんのLIPxLIPへの愛情の強さと純粋さは本物であり、LIP×LIPだけではなくその裏方である社長やマネージャーにもファンレターを送るほどであった。そんな千鶴が仮にもマネージャーであるひよりの写真をばらまいたり、罵詈雑言を浴びせるというのは、端から見れば「アイドルに対して喧嘩を売っている」ようなものであった(事実、勇次郎も「策略」を使う際、千鶴への壮絶な怒りを感じさせる表情をしていた)。
ただ、ジュリエッタの一人という立場である千鶴からすれば、ひよりの行動は「自らの立場を悪用している」ように見えた可能性もあり、そんな人物に対し感謝することは出来ないというのも全くおかしくないだろう。
③「盗撮をした千鶴が非難出来るのか」
最大の理由がこれである。そもそもメタ視点と結果論で言えばヒロインたるもの!における千鶴の行為は、もはや犯罪行為にも近いものであり、こちらからすれば「まともなやり方をしてから言え」とも言いたくはなるだろう。
しかし、罪を犯したとは言っても千鶴もひよりや他のジュリエッタと同じように確かな信念を持って必死にLIPxLIPを…応援しようとしたのもまた事実である。そもそも、彼女は劇中でもLIP×LIPが日本一のアイドルになることを応援するための「軌跡ノート」なるものを作り、学校のカバンに入れて持ち歩くほどだったり、バイトを頑張ってLIVEにいったり、恐ろしい数のCDを買って店員にドン引かれたり等、彼女の行動にはLIP×LIPへの熱い気持ちが込められている。ジュリエッタというファンの一つに過ぎない千鶴と、学校やプライベートなどでLIP×LIPに頻繁に接触していたひより。彼の口からこの言葉が放たれるのはそんな状況だったのかもしれない。
その後「私…ファンやめるから……資格、ないから…」と投げ遣りになっていたことからも千鶴の複雑な心情が窺える。
④「千鶴に人の事が言えるのか」
千鶴もといちゅーたんの楽曲の一つ『推し☆ごと』には、「無断撮影ありえない」という歌詞がある。………もうどういうことなのかお分かりだろう。そう、本作での千鶴の行動は、明らかに『推し☆ごと』でのこの歌詞と矛盾しているのである。そのため、千鶴が一部から非難される原因の一つにもなってしまっている。
ちなみに、『推し☆ごと』の公開日は2021年9月21日と、ヒロインたるもの!放映よりも先であるため、「後から肉付けしていったが故の矛盾」と称する声もある。
そもそも中村千鶴/ちゅーたんというキャラクター自体がぶっ飛んだ思想を持っているLIPxLIPのことになると饒舌になるジュリエッタというかなりインパクトの強いキャラクターであることや、視聴者からすれば主人公サイドであった人物が、実は本作における大事件を影で操っていた黒幕であった(同等或いはそれ以上とも言える行動をとった存在ならば前例が無いわけでは無いが、彼らとは違い、千鶴/ちゅーたんは明確な悪意と敵意を持った人物であり、厄介さは遙かに上)というインパクトの強いキャラクターであることからこのセリフが槍玉に挙げられることも少なくないが、この発言そのものが(言い方はともかく)間違っているとは一概に言えないのも事実である。
そのような点から、放送開始前から「嫌われヒロイン」である事が強調されていた『涼海ひより』もとい『ヒロインたるもの!』ならではの展開であったと言える。
……ただ、それらを差し引いてもやや性格に癖が強いことに目を瞑ればいたって普通で善良な女子高生であった人物が実は物語の事件の黒幕であったと判明してから急変し、主人公に罵詈雑言をかますと言うのは中々のインパクトとシュールさがあり、こうして項目になるような、今に語り継がれる迷……名台詞となったのである。
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バカヤロー!!…ウルトラマンメビウスに登場した人物アイハラ・リュウの台詞。活躍した主人公への罵倒という意味合いでは共通しているが、ひよりからすれば逆恨みあるいは八つ当たりともいえるこちらの台詞と違い、向こうの場合は(やむを得ない事情があったとはいえ)言われた側に非があったりする。
なんで…笑ってるの?人殺し!…機動戦士ガンダム水星の魔女に登場した人物ミオリネ・レンブランの台詞。あちらもあちらでやむを得ない事情があったのだが……ちなみに、あちらも主人公と第11話にてわだかまりができてしまうという妙な共通点がある。しかし、ひよりや千鶴と違い、あちらの和解は次のシーズンに持ち越されることになってしまった。
とっととくたばれ糞野郎……千鶴役の早見沙織氏が鬼滅の刃にて声を当てた胡蝶しのぶの台詞。ただしこちらと違い、言われた相手はひよりと違って過去に悪行を重ねてきた人物であるためか、こちらの台詞ほど批判はされていない。