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ガラスの幸福の編集履歴

2023-03-19 13:04:58 バージョン

ガラスの幸福

がらすのこうふく

「仮面ライダー龍騎」のトラウマ回、第44話のサブタイトル。

概要

仮面ライダー龍騎』第44話のサブタイトル。

2002年12月8日放送。


脚本は井上敏樹、監督は石田秀範


13ライダーの一人、インペラーの退場エピソード…にして『龍騎』最大のトラウマ回。


予告

仮面ライダー龍騎!

「まさか怪物捕まえようってんじゃないだろうな?」

「では、この私を雇いたい、そうおっしゃるわけですね?」

「私は、ここにいる」

「優衣」

「悪いな、負けるわけにはいかないんだよ」


あらすじ

ライダーバトルが佳境に入る中、仮面ライダーインペラーこと佐野満の下に父親が死んだという知らせが入った。

しかしどこか他人事のように捉える彼は、とあるビルの中で重役らしき人物達と話をする。実は佐野は大企業の御曹司だったのだ。

彼がこのビルに呼ばれた理由は、佐野を次の社長にするという先代社長の遺言の為で、佐野にフリーターをさせていたのは、世間を知って欲しいという親心だったと言う。

てっきり勘当されたと思っていた佐野は最初は戸惑うが、重役達のヨイショもあって快諾。早速豪華な食事にありついた。


一方その頃、佐野の部屋にいた仮面ライダータイガこと東條悟は自分の姿が映る窓を覆い隠し、鏡を壊した。

仮面ライダー王蛇仮面ライダーゾルダとの戦いで連敗が続き、すっかり自信を失っていたのだ。

電気もつけず、部屋の隅でうずくまっていた東條を、帰宅した佐野が心配する。

土産である食事会の残り物を食べながら、佐野は東條に尋ねた。

「英雄になって、何がしたい?」

東絛は答える。

「英雄になれば、みんなが好きになってくれるかもしれない」


その答えに満足したのか、佐野は頷きつつもライダーバトルが終わる前に願いが叶ったら意味がないと呟いた。


すっかり社長ライフを満喫する佐野の前に、神崎士郎が現れた。これ幸いとインペラーのカードデッキを差し出す佐野。


「辞めたいんだ。ライダーを」


当然の事ながら神崎は拒否するが佐野は逆ギレしてカードデッキを床に叩きつける。それに対し神崎は珍しく声を荒らげて告げる。


「戦わないのはお前の自由だ。だがそれが何を意味するかお前も分かっている筈だな?」


神崎の背後のガラスには、佐野の契約モンスター・ギガゼール達ゼール系モンスターが蠢いていた。ライダーをやめるということは契約放棄と見なされ、モンスターの餌食になるという事。

佐野が慌ててカードデッキを拾い上げると、神崎やギガゼール達は消えた。しかし神崎の声は響く。


「戦え、そして生き残れ。そうすればライダーを辞める事ができる」


ライダーを辞めるためにはライダーバトルを勝ち抜くしかない。佐野は途方に暮れた。


佐野は仲間を求め、営業再開した花鶏を訪問。そこで仮面ライダー龍騎こと城戸真司と、仮面ライダーナイトこと秋山蓮の二人と交渉する。

しかし以前、優衣を狙った佐野を二人は信用しない。金で釣ろうにも突っぱねられる始末(真司は突き付けられた大金に驚きつつも速攻で一蹴したが、一方で蓮は未練ありげな目で金を見つめていた)。

次に北岡秀一の元を訪れると意外にも好感触で、すんなり北岡を雇うことに成功。

しかし、佐野は釈然としない様子だった。

その読みは当たっており、北岡は佐野に協力する気など毛頭なかった。そのくせ差し出した金は前金として懐に入れている。


「契約書を作るって時間がかかるんだよねぇ~一年先か二年先か…」


もう頼れる人物が東條しかいないと、佐野はちょっと高いお弁当を手に彼の元を訪れた。

食事をする東條に、佐野は自分をどう思っているか尋ねた。


「感謝してる。先生以外で初めて優しくしてくれたから」


その言葉に満足した佐野はすっかり気を良くするが、最後に一言、確認するように呟く。


「友達、だよな…俺達…」


その言葉に、東條はただ、小さく頷いた。


次の日、佐野に百合絵という社長令嬢と婚約の話が舞い込んできた。父親同士が知り合いだったらしく、佐野も百合絵もまんざらでもない様子。

ようやく幸せをつかみ、さらには恋人まで手に入れた佐野は人生の頂点にいた。


(俺は勝つ。勝って俺の人生を守って見せる!)


それが脆くも崩れ落ちるとも知らずに…


その最中、通りかかった車から戦いを催促するギガゼールの横槍(物理)が二人を襲い、佐野は百合絵を残しインペラーに変身。ミラーワールドに入ると、モンスターと交戦していた龍騎に襲い掛かった。

だがインペラーは龍騎に力負けしてしまい、敗北寸前。するとそこにタイガが現れた。仲間が来たと思いタイガに助けを求めるインペラー。二人がかりで再び龍騎を追い詰める。

しかしその途中、タイガはデストワイルダーを召喚し、インペラーを襲わせたのだった。


「お前!?」

「ごめん。でも君は大事な人だから。……君を倒せば僕はもっと強くなれるかもしれない


以前、恩師であるオルタナティブ・ゼロこと香川英行を倒した際に、彼から教わった「大切な人を失ってでも大勢の命を救う」という教えを「大切な人を殺せば英雄になれる」と歪んだ解釈をしてしまった東條。

その歪んだ思想から、東條は簡単に佐野を裏切ったのである。

見かねた龍騎がタイガを抑え込み、インペラーを逃がす。坂道を惨めに転がり落ちていくインペラー。


「何だよアイツ、何考えてるんだよ!?」


ここでミラーワールドを離脱していれば、まだ再起の目もあったかもしれない。


だが、彼の不幸はこれで終わらなかった。なんと坂道を転がり落ちた先で、よりにもよって王蛇と遭遇してしまったのである。


インペラーは逃げようとするも、足が上手く動かない。王蛇はファイナルベントのカードを使い、ベノクラッシュでインペラーを撃滅するのだった。

インペラーのカードデッキはVバックルから落下し、粉々に砕け散ってしまった。


その直後、豪雨が降り始めた。ボロボロになった佐野は打ち棄てられていた鏡に、未だ彼の帰りを待つ百合絵の姿を認めて必死で呼びかける。


「百合絵さん!百合絵さん!…出してくれ!出してくれ!!」


当然、百合絵にその姿は見えず、その声は聞こえない。鏡を潜ろうとするが、もはやデッキを失った彼に道は開かない。苛立ちのままにその鏡を蹴って割り、その破片を握りしめて、百合絵を追う佐野。百合絵の姿を間近に捉えたところで、背後を振り返る。

しかし、ミラーワールドの鏡は現実世界を映している。

ミラーワールドのそこには、誰もいなかった。


「出してくれ……出してくれよ!!俺は帰らなくちゃいけないんだ!!俺の世界に!!

 嫌だ…嫌だああああ!!出してくれ!!出してえええええええええ!!!!!」


「なあ……なんでこうなるんだよ……俺は、俺は、幸せになりたかっただけなのに……うあああああ―――!!」


失意と絶望の中、粒子となり消滅する佐野。その最後の悲痛な声はもう誰にも届かなかった。

佐野が完全に消えると、手にしていたガラスの破片も地面に落ちて砕け散った。


場面は変わり、佐野の住んでいた部屋が映し出される。佐野が飼っていた小鳥が、鳥籠の中に取り残されていた。


餌をあげる佐野がいなくなった以上、この小鳥も佐野と同じく閉じ込められたまま死んでいくことを暗示するかのように…


余談

  • この回のラストに表示されたアドベントカードは強奪効果のスチールベント佐野の幸せは、ライダーの宿命に奪われた」ことを意味しているのだろうか(幸せをスチールベント)。そして、スチールベントは設定上、王蛇が持っているカードであり佐野の幸せを奪ったのは王蛇である。どこまで皮肉なんだ……

  • この次の回で、真司と蓮は「会社の社長、就任直後に失踪!?」という見出しの新聞記事で佐野の死を知ったが、蓮はこれまでの彼の不誠実さもあってか「自業自得」と一蹴した。ただ、真司の方はそれ自体は否定しなかったものの「死んでもいいというのは違う」として、「もっと話を聞くべきだったかもしれない」と悔やんでおり、何とも後味の悪い思いをする事となった。

  • 佐野の父親は、遺言により息子を次期社長に指名したらしいが、重役たちが誰一人として同族経営に反発をしなかったこと(反対派の存在は仄めかされていたが)と、その遺言が本当だったかどうかが曖昧であることから、非常に胡散臭い話である。そのため「重役たちは佐野を傀儡にして会社を裏で支配し、いざという時には佐野を切り捨てる」という可能性を視聴者に指摘されている。もしこの仮説が正しければ、それはそれで惨めな末路を迎えることになる。

いずれにせよ、安易な考えで目先の欲に飛びつき続ける佐野の人生には碌な結末が待っていなかったという事だろうか。


  • 最終回の「ライダーもモンスターも存在しない世界」には、役者のスケジュールもあってか登場はしていない。しかし今度こそ欲に溺れることなく堅実に生き、幸せな生活を送って欲しいと願う視聴者も決して少なくはない筈である。

  • 裏話的な話だが実は佐野の消滅シーンの撮影中、佐野役の日向崇氏は風邪をこじらせて40度近い高熱を出していたらしい。作中のフラフラ歩きは演技ではなく、本当に熱でしんどかったためだという。ちなみに氏は「インペラーと一緒に俺も死ぬかも」と覚悟を決めていたとか。……そんな状態でずぶ濡れになって大丈夫だったのか。

関連項目

仮面ライダー龍騎 佐野満(仮面ライダー龍騎) 仮面ライダーインペラー

黒い東映


帝王トランザの栄光…このエピソードの戦隊版ともいえるエピソード。こちらも脚本は井上敏樹

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