大怪獣バラン
だいかいじゅうばらん
概要
黎明期の東宝特撮映画の一つで、ゴジラシリーズからは独立した世界観の作品。
ストーリー自体は秘境探索ものと王道怪獣映画を足したようなシンプルな内容である。
カラー映画の『空の大怪獣ラドン』より後にあたる1958年公開作品ながらモノクロ映画として撮影されている。というのも、本作は元々全4話(本多猪四郎は全3話の予定だったと証言している)の連続テレビドラマとしての公開を予定していたもので、モノクロフィルムが使用されているのはその名残である。
制作途中で共同制作していた海外資本の会社が倒産したため映画に変更され、撮り直しの時間がなかったことから画面サイズをトリミングし東宝唯一の「東宝パンスコープ」での公開になった。
このため人物の顔がアップになる場面など画面の上下が見切れてしまっている場面がある。
本多は突然の方針転換には「事務方は現場の作業を全く理解していない」、「初めから(映画として)作り直せれば自衛隊のシーンはもっと派手にできた」と不満をあらわにしている。
主役怪獣バランの体色は作中不確定で、宣伝ポスターでは深い緑色、後の『怪獣総進撃』における飛び人形は茶色で描かれている(バラン記事内「着ぐるみ」の項も参照)。
ストーリー
「日本のチベット」と称される秘境、北上川上流の岩屋部落で杉本生物研究所の調査員が奇怪な死を遂げた。
杉本博士の部下・魚崎や魚崎の恋人にして変死を遂げた新庄の妹の新聞記者・由利子、そして堀口カメラマンらによる第二次調査団が再調査に向かう。
しかし山神の神話を信じる岩屋部落の神主は調査を拒み、愛犬チビを追って湖付近で行方不明になった部落民の少年・源さえも見捨てようとする。
憤慨した魚崎達は部落民たちを説得して源の捜索に向かい救出に成功するが、そのとき湖から巨大な怪獣・バランが出現してしまう。
バランは岩屋部落を破壊して海上へ逃亡、自衛隊の攻撃をものともせず東京国際空港へ上陸する。
対策委員会の藤村博士がトンネル工事や鉱山発破用に開発したダイナマイトより強力な「特殊火薬」に一縷の望みが託されるが、魚崎の決死の努力も空しくその威力すらバランには通用しない。
しかし、杉本博士はバランのある習性に注目し、それを利用した作戦を立案する。果たしてバランの東京侵攻を阻止する事は出来るのか?
余談
- 「部落」という呼称が差別的表現にあたるとして、1980年代に発売されたVHSビデオでは岩屋部落について説明する場面と岩屋部落に到着した研究員が部落民から警戒される場面がカットされている。
- 1954年に公開された『ゴジラ』の映像がいくつか流用されている。
- バランと海上自衛隊の戦闘シーンに使われた楽曲「バラン対哨戒機」、「バラン対哨戒艇」は1959年公開『宇宙大戦争』の「宇宙大戦争マーチ」にアレンジされている。
- バランのテーマ曲は『三大怪獣 地球最大の決戦』以降のラドンのテーマ曲にアレンジされている。この曲は伊福部昭氏が1983年に発表した「SF交響ファンタジー」第1番にも収録されている。
- リメイクやアニメ化などは行われていないが、某マンガのOVAでは、登場キャラの一人が本作を元ネタにしており、パロディ元として本作の一部をアニメで再現している。
関連タグ
サンサーラ・ナーガ2:押井守監督、桜玉吉キャラデザインのRPGで、第三階層に皮膜がマントの素材になる「バラタキモモンガ」という似た姿のモンスターが登場する。