セリーヌ(ファイアーエムブレム)
せりーぬ
「フィレネの平和のため、そして、あなたのためなら…わたしは手を汚す覚悟ができています。」
データ
概要
全身を覆うほどの大ボリュームな金髪にお花畑を被せたような王冠がトレードマーク。
臣下にクロエとルイを持ち、兄の臣下でもあるエーティエとは幼馴染。
心優しく純真な性格。博愛主義で平和を愛するが、平和のためなら自ら手を汚すことも厭わない心構えを持つ。
ゲーム4章「花の風車村」にて臣下と共に加入。妹ながら兄・アルフレッドに代わって「慈愛の王女の指輪」を託されているキャラクター。襲撃を受けた王城から指輪と共に逃がされており、村で異形兵に囲まれてしまったところで臣下からもまた逃がされる形で神竜軍に合流。…と、さながら助けられるお姫様な登場を見せるが主人公の力で指輪に宿る紋章士セリカを顕現してもらうと一転。セリカのエンゲージ技「ワープライナ」を駆使し、自分の代わりに異形兵に囲まれていた臣下を今度は自分が救い出すという、民のために自らが戦う第一王女に文字通り変身を遂げる華々しいデビューを飾る。
その後、イルシオン軍に襲撃されていたフィレネ王城を彼女や兄を加えた神竜軍が奪還。救い出された母イヴ女王に兄妹揃って世界の平和のために戦うことを願い出た末、「生きて帰る」ことを約束に託された指輪と共に神竜軍の一員として長い旅へ、そして幾多もの戦に身を投じていくことになる。
紋章士セリカとはセリーヌだけが顕現前からもその声を聴くことができ、幼少期から意思疎通ができていたという設定を持っており、発売前PVからゲームソフトのパッケージ裏表紙に至るまでこの二人がエンゲージしている場面が何度もプッシュされている組み合わせ。顕現前からも声を聴くことができたキャラクターは他にディアマンド、セアダスなどがいる。
臣下とも共通する必殺発動台詞は「ティータイムよ」
決め台詞によく用いられる「ショータイム」と「お茶の時間(ティータイム)」をかけたものと思われるが、お淑やかな振る舞いかつ全体的に正統派寄りな人物像をしている彼女がこの横文字台詞を堂々と発する光景は少々ギャップを感じさせるものがある。
なお、本作にはティータイムという名前の回復杖が存在しており彼女に装備させることも可能。
性格
紅茶が大好きで明るく親しみやすいキャッチーな雰囲気の愛らしいお姫様な側面と、国を守る使命や責任感の強く毅然としたシリアス色の強い正統派王族な側面を併せ持つ人物。兄アルフレッドをはじめ、今作は第一印象を裏切ってくるようなキャラクターが多いが、彼女もその代表格である。
民や仲間の前では穏やかで優しい平和的な王女そのものであり、兄同様に「幸せ」という言葉を多く交えた話し方や花になぞらえた婉曲表現をふんだんに用いる、外見通りにキラキラしたお姫様な印象を与えつつも非常に落ち着いた淑女な振る舞いを見せる。この言葉遣いについては上記の戦闘中であっても乱れることはなく、斬り伏せた敵に対しても「美しい花だったわ」「花は散るものよ」などの直接的な表現を避けたような手向けの言葉を贈っている。
仲間を幸せを自分の幸せ以上に喜べる人柄で、フィレネの民たちが幸せに暮らしている光景こそが王女としての幸せだと謳っている。その性質から常日頃、王女として民を幸せにすることを第一に行動している他、軍の仲間から相談を受けた場合は分け隔てなくその解決に自ら積極的に乗り出す親身さも見せる。なお、仲間から料理を作ってもらった際に苦手な献立や失敗料理を食べた時も「個性的なお味ね…香りの強い紅茶と合わせていいかしら…」と相手のことを気遣ったようなオブラートに包んだ物言いをする。
その優しさに溢れた人物像である一方で、数百年間戦争が起きていない歴史背景を持つ平和な国に生まれた王女だとは思えないほどに戦や命のやり取りに対する覚悟が非常に据わっている。
自国やフィレネの民たちをとても愛しているがためにそれを脅かす外敵には厳しい態度を見せ、民に危害を及ぼした賊には本拠地を壊滅させるように指示を出したり、国を守るためなら手段を択ばないと発言するなど苛烈な一面も見せる。
主人公との支援ではフィレネ王国に伝わる、その国風を象徴するような伝承を語ってくれるのだが、これを愛する自国の伝承ながら「罰を与えるでもなく、傷を負わせもしない。抑止力になるのか疑問です」と一蹴しており、言葉選びの華やかさとは裏腹にリアリストな物の考え方をしていることがうかがえる。
紅茶を飲むのも振舞うのも大好きで仲間たちをお茶会に誘うのが趣味。紅茶が大好きというだけに紅茶に関してとても造詣が深い人物であり、一口飲んだだけでその紅茶の材料や茶葉の産地などを的確に言い当てられるという、相当な知識量を以てしてでなければ難しい特技を披露して仲間から驚かれることも。また、お茶会でご一緒した仲間や紋章士たちによると、彼女は紅茶を嗜む側のみならず自ら淹れる紅茶の味やもてなしの作法もかなりのものとの評判。
彼女自身は「茶畑の里のオリジンティー」という銘柄を特に気に入っており、その生産地が故郷である村人ジャンには王女の身ながら直接感謝の意を伝えている。その熱愛たるや、彼が加入する外伝マップで訪れる「茶畑の里」では王女様がお忍びで来ている…なんて噂が流れているほど。
一方で味や香りが良ければ銘柄には拘らない一面もあり、ラピスが飲んでいた野草から淹れたお茶を絶賛しており、彼女からその作り方の指南を所望していた。
また、落ち込んだ気分の時には紅茶を飲むことでリラックスをし、それによって物事がうまくいくこともあるという経験則から「お茶は人を救える」という持論があり、自分自身もお茶に救われていると言い、単なる好物を超えた恩義さえも感じさせるほどの紅茶愛を持っている。
臣下であるルイはそんな彼女に毎日紅茶を淹れるという奉仕を習慣づけており、戦場の外でも主君の心を大いに支えている存在とも言える。
…風花雪月にはあった「お茶会モード」が今作には存在しないことがつくづく惜しまれるキャラクターである。
幼い頃はかなりの泣き虫だったようで、臣下になる以前からその頃の姿を知るクロエ曰く「泣きながらオロオロしていた愛くるしいお姿」だったとのこと。当時は兄が病弱だったのもあり毎日心配し続ける生活を送っていた。ある日、イヴ女王以前のフィレネ王国先王である父親を亡くしてからは母イヴや兄アルフレッドを支えるべく鍛錬や勉学に励むようになり、強い心を手に入れたことで現在のような気丈な性格になった。剣と魔法という戦闘スタイルはこの時期の鍛錬で身に付けたものであるらしい。時を同じくして兄も筋肉鍛錬を始めたことで健康な体を手に入れたため、兄妹揃って父親の死を乗り越えて強い王族へと成長を果たせたことになる。
その過程で彼女は武術だけでなく勉学や教養もそつなくこなせるほどの能力も身に付け、神竜軍の一員になって以降も自国に書簡を遣る公務を続けていたり、国内で発生した賊が茶葉の輸送隊を襲う問題を解決したり、ラピスから教わった知識を活かして民のために災害に備えた実用書の作成にも取り掛かるなど、王女という為政も担う立場でも秀でた能力を発揮している。
兄アルフレッドと同じく、主人公とは目覚める前から面識がある一人。
神竜信仰が盛んなフィレネ王国の王族として母に兄と共にソラネルに連れてこられていたようで、この経験から兄は主人公に対して親しい友のように、彼女は全知全能な存在(原文ママ)として…と信仰心の育まれ方で正反対な別れ方をした模様。
そのため、主人公に対等な関係で話しかける兄とは対照的に彼女は敬虔な信徒として非常に模範的で敬った対応であり、主人公のことを少々持ち上げ過ぎているような台詞も見受けられる。後に加入するメンバーも含め、王族でありながら主人公と他の仲間たちとで口調を使い分けているのは彼女だけである。
他国の王族に対しても目上対応で接する。…が、付け入られやすい性質の自国を想うが故に「他国の人間には警戒を怠らない心算」でもあるとも明かしており、王族の中では他の王族と顔を合わせる場面が最も少なく、主人公を含めても支援会話の相手の半分がフィレネ王国出身という極端な偏り方をしている。彼女は仲間をお茶会に誘うのが趣味であるが、他国出身のカゲツやフォガートから逆にお茶会に誘われた際にはいずれも最初はやんわりとだが断ってしまう。フォガートに関しては二度目の誘いでも断ろうとしており、その際にフィレネ王国の性質とも併せて「外の人に対する門が必要以上に固い」「閉じた世界」と批評を受けたことで少し考えを改めるようになる。また、スタルークには自分が持つ悩みに親身に寄り添われたことから早い段階で心を許しているあたり、信頼に足ると判断した相手には出身国を問わず手を取り合いたいと思っている様子。そしてオルテンシアに関しては、その警戒の必要すらない素直で可愛らしい性格から最初の時点で自分からお茶会に誘いたいと思うほど気に入っており、二人の支援会話では普段から公人としての行動を心がけているセリーヌが珍しく外見年齢相応に羽を伸ばしている姿を見ることができる。「ぷにぷに。」
基本的にお淑やかな言葉遣いや振る舞いをする女性であるが兄アルフレッドに対しては少々毒舌…を通り越して辛辣。登場章からいきなり(主人公を親しい友のように思っている兄のことを)「なんて無礼な」とバッサリ、兄との支援会話では本人の目の前で「見た目が蛮族の方が中身と合っていると思うわ」「王子の皮をかぶった蛮族」…いずれも原文ママで、とても穏やかな王女の口から出るとは思えない言葉を容赦なく浴びせている。
一方で妹として兄の身を誰よりも案じている人物でもあり、他の仲間との支援会話では兄を陰から支えるための努力の数々を目にすることができるし、先の「蛮族」発言中もそれさえ逆に誉め言葉と捉えてしまう兄を上手く御せないあまり地団太を踏んでしまう、少々ラフな言葉遣いになってしまうなど、彼以外の人物には決して見せない妹らしい姿になっていることから、その実は微笑ましく理想的な兄妹仲であると察することができる関係である。
平和を愛しながらも民を守るために実力を付けることには余念がなく、兄アルフレッドほどではないが鍛錬に精を出している場面はそれなりに多い。兄は槍術の猛者として知れ渡っているが、彼女も「王女様なのに剣術の腕前が中々らしい」という噂を仲間から聞きつけられるほどの存在感を持っている模様。しかし内心では戦や武器を嫌っているがために理由がない戦いは望まず、仲間からの申し出であっても手合わせには一切応じない。
また、彼女の幼馴染であり兄と同じく筋肉鍛錬をこよなく愛するエーティエが筋肉鍛錬を教わったのは、実はセリーヌからである。その間柄故か、自分とのお茶会中にもエーティエが鉛入りの筋肉鍛錬用ティーカップを使用していることも自然に受け取っている。この意外な設定が、後述する語り草な彼女の成長率に反映されているのかもしれない…
ユニット性能
ゲーム4章で臣下2人と共に加入。加入時に紋章士セリカの指輪を装備している。
初期兵種のノーブルは兄アルフレッドのそれと同じ名称だが、こちらは馬に乗らずに魔法と剣を使い、戦闘スタイルも魔道。上位兵種のフロラージュになると杖も使えるようになる。
どのパラメーターも満遍なく育つ万能の魔法剣士。初期値は低いが守備の伸びも実はそれなり。
一方で魔力の伸び率はそこまで高くはなく、速さと幸運が伸びる傾向にある(特に幸運の伸びは全キャラ中トップ)。また、魔道スタイルだが力も伸びるという特徴がある……というか力の成長率の方が高い。具体的には力35%に対して魔法は25%。筋肉推しのお国柄と血は争えないのだろうか。
それに加え、初期兵種のノーブルは戦闘スタイルが魔道であるにもかかわらず魔力の成長率補正がかなり小さく(一方で力にも補正が入っている)ことから、紋章士セリカと共に魔法を主力とする加入時の印象に反して魔力が伸びず、やがては力が魔力を追い越していくことに。
普通に育てると魔道士として微妙過ぎる魔力、かといって剣士としても低くはないとはいえ平凡な力でどっちかつかずに陥り2軍行き……なんてことはなく専用上位兵種・フロラージュの兵種スキル『華炎』は力または魔力の半分をダメージに加算するため、魔法メインで戦う場合も力成長が無駄にはならない設計。また、他の魔道士と違って物理剣も装備できるのは大きな強み。普段は魔法で攻撃し、敵の魔道士やモンクには剣に切り替えて攻撃、手が空けば杖で回復役も可能、外伝のセリカに近い性能の万能ユニットへと変貌を遂げてくれる。
『華炎』は物理攻撃でも発動するため、力の伸び方によっては寧ろ剣のほうをメインにしても良い。この場合でも「杖や魔法も扱え、確率で高火力を出せる剣士」という個性を持たせることが可能。専用職とだけあって剣で戦っている時も専用モーションであり、このフロラージュで発動する剣必殺モーションは空中に魔方陣を作り、ジャンプしながらそれを足場にして自らを魔法弾のように高速射出して斬りかかるというまさに「魔法剣士」ならではのスタイリッシュな斬撃で必見の出来。これを繰り出すのがドレスを纏った王女であるというのもまた強烈な印象を残す。
また、同じ射程の魔道書を装備できる以上は敢えて使う必要性が薄いように思える魔法武器「いかづちの剣」も射程2で斧相手にブレイクを取れる、サイレスを受けている最中も扱える、一部の紋章士のエンゲージ技を魔法判定で放てるといった利点があるため、持ち物スペースに余裕があるならばサブ武器に採用する価値あり。
バランス成長傾向とは言うが体格だけは例外。こればかりは初期値がかなり低く、成長率の低さも他のユニットと変わらないため、放置すれば重さが大きい武器を装備した時に攻速が落ちてしまう弱点が付きまとう。そのままフロラージュにクラスチェンジが一般的だが、クラスチェンジ後にジェネラルやウォーリアーといった体格成長に補正がかかるクラスの何かを一度経験させるというのも一つの手。
一方で純魔法ユニットとして彼女を見ていた場合、『華炎』の解禁までは中途半端な成長率による決定力不足に難儀する。魔法ユニットとしては伸び悩む魔力だけを見てしまいやすく、特に初見プレイでは真価に気づかずシトリニカやアイビーと入れ替えてしまうプレイヤーが発生しやすいユニットである。
しかしながらその場合であっても彼女の専用兵種は魔法「剣士」とだけあって速さ限界値が高く、根気よく育てていれば上記の二名を含め今作の軒並み鈍足傾向ある魔法職の中で追撃を取りやすく、その速さと持ち前の高い幸運も相乗して回避率が高く、バランス成長故に受けに必要な守備面も最低限持ち合わせた「前線で戦える高速魔道士」としての大きな強みを開花させることが可能。とはいえ、魔力の伸びは補うに越したことはないので彼女に主力格を担わせるつもりならば精霊の粉を使ってあげる、チェンジプルフで魔力が伸びやすくなるハイプリーストに一旦就かせるなどの工夫をしてあげよう。
力と魔力が足並みを揃えやすい性質上、紋章士の選択肢が広いのも強み。
魔法方面ならば力魔が伸び初期装備でもある「セリカ」、高い幸運を活かせる天刻の拍動を持ちエンゲージ武器も活かしやすい「ベレト」、サポート型としてもアタッカーとしても活躍できる「セネリオ」(DLC)などが挙げられる。
またフロラージュの幸運限界値は50を超えており、ベレトから天刻の拍動+を継承していれば攻撃を必中にすることが出来る。
そして力も伸びるが故に物理方面の紋章士も選択肢に入り、剣も魔法も強化されオーバードライヴに魔力補正が付く「シグルド」、体格補正が噛み合う上に物魔両用かつ華炎の存在からテトラトリックが高性能になる「リーフ」、剣士としての性質を大きく伸ばし、獅子紅蓮焔舞が強化される「ロイ」、通常時は魔法の威力強化をしつつエンゲージ時には特効有りの強力な物理攻撃も叩きこめる「エイリーク」などが有力。
今作の魔法ユニットは魔法向けの紋章士は全体数が少ないがために取り合いが発生しやすい悩みを持っているが、魔法方面に限定しないセリーヌはこの点で他の魔法ユニットにはない強みを有しているとも言える。
「隣国が不幸になろうとも知らない。」
クラスはEXノーブル、個人スキルは「戦場の花」。
もう一つのエレオス大陸でもフィレネ王国の第一王女だが、感情的で他者に対して高圧的に振る舞う人物となっている。
本編のセリーヌは平和のため戦うが内心では戦を嫌っている人物であるのに対し、こちらの世界のセリーヌは平和とは無関係に戦いをこよなく愛する戦闘狂となっており、主人公との戦闘会話では「寧ろ戦うことを望んでいた」「本気で殺しあったらどうなるか味方の時は考えるのも許されなかったけれど今は叶うんだからとても幸せだわ」とまで発言している。また、本編での彼女が持つ「仲間の幸せ」を尊ぶ性質も、こちらでは「自分の幸せ」に固執するものに反転している。
ストーリーでは自国の豊穣だった土地が徐々に実りを失い、産業崩壊の兆しを見せていることへの策が無いことを理由に鉱石資源の豊富なブロディア王国に攻め入ろうとアルフレッドに提案。その侵略行為を「フィレネだけが幸せであればいい」「幸せはいつも誰かの不幸の上に成り立っているけれど、我が国が不幸せを請け負う義理はないもの」と自己正当化してしまう程に攻撃的な性格へと変貌していた。その際の説得方法も、この世界では保身的な性格に変化している兄の重い腰を上げさせるためとはいえ、これ以上待たせるのなら彼女自身が単騎で向かい、我が身を果てさせてでも後に続かせるとまで言い出すなど、半ば脅迫に近いやり方である。
しかしながら、全てはあくまで自国や民を救うことを第一に考えての選択であること、その為なら手段を択んでいられないという考え方、最悪単騎で向かうと言い出せるほどの覚悟の強さは本編のセリーヌ譲りと言えるものでもある。
紅茶は本編と変わらず好物である模様で、必殺発動台詞は元の「ティータイムよ」とほぼ同じ意味の「お茶の時間よ」になっている。しかし、意味こそ同じだが語感や演技の変化からそのニュアンスは「お命頂戴」のそれを思わせるものである。
自身との戦闘会話では、本編世界のフィレネ王国ではその体制上決して考えられない、侵略行為をする側に立っていることに本編世界のセリーヌから強い反感を買われており「我ながら愚かね」「ゆっくり紅茶を飲んで考え直すべき」と強い諫言を受ける。しかしこの世界ではその紅茶を淹れてくれる人物は既に…。
エルからの腕輪の返還要求はアルフレッドともども拒否、双子への不信を隠さず戦闘も辞さない構えを取り続けていたが、異界から来た主人公をこちらの世界の神竜の異形兵であると判断し交戦状態へと入る。
敗北後はイルから事情を聞き先程の態度を謝罪、彼女自身も臣下や母親を邪竜との戦争で失い心の整理が未だ付いていなかったと明かす。
邪竜の章のPV公開時には上記の台詞と共に本編では見せなかった見下すような表情(イラスト参照)を見せ多くのファンが衝撃を受けた。
(本編のセリーヌは目を細めた鋭い目付きをするのに対し、こちらは逆に白目部分を大きく見せるように掻っ開いている)
また彼女にカーソルを当てた際に取る、上記の攻撃的な表情とは真逆に目を細め、気高さを感じさせるポージングは本編のセリーヌのそれとのギャップもあってとても人気が高い。
幸福な王女 セリーヌ
「フィレネ王国第一王女、セリーヌよ。
平和のために戦うというのなら、
幸運をもたらせるよう力を尽くすわ。」
属性 | 緑 |
---|---|
兵種 | 魔法/歩行 |
武器 | 幸福の良書(専用) |
奥義 | 氷蒼 |
A | 速さ魔防の万全4 |
C | 再移動制限3 |
エンゲージ発売前に2023年1月から登場。
ステータスは攻撃、速さ、魔防は高いがHPと守備は低い。
専用武器はキラー武器効果とターン開始時、周囲三マス以内に味方がいると自分とその周囲三マス以内の味方にHP7回復。そして戦闘後でも周囲三マス以内の味方にHP7回復も発動する。
もう一つは周囲三マス以内に味方がいると戦闘中、全ステータス+5かつ与えるダメージが周囲三マス以内にいるHPが50%以上の味方の数×5分、増加(最大15)して受けるダメージと範囲奥義ダメージもHPが50%以上の味方の数×15%軽減する(最大45%)し、戦闘後にHPが7回復する。
それぞれエンゲージでの個人スキル「平和の花」と兵種スキル「華炎」を意識していると思われる。魔法アタッカー兼ヒーラーはギネヴィアと一緒だが特攻を持たない以外、回復性能はこちらが上回る。
そして当時メディウスのみだったスキル「再移動制限」がレギュラー入り。
味方全体に及ぶHP回復力で戦禍の連戦や英雄決闘などの長期戦に向いたユニットで再移動制限の機動力阻害にも対応している。とくに壁役や護り手持ちとの相性も良く、常に回復を続けるので難攻不落の要塞と化す。
HPと守備に対しては紙耐久で軽減があるとはいえ、不治の幻煙での回復封じやダメージを貫くダメージ軽減無効も弱点。戦闘面は味方のHPが減りすぎてしまうと武器効果も弱まる上に味方依存のため、離れすぎるかいなくなると効果無しの魔道に成り下がる。
「想いを集めて」では紋章士セリカとの関係が掘り下げられており、セリーヌがまだ泣き虫だった幼い頃から指輪の「声」に何度も励まされていた過去を召喚師(プレイヤー)に明かす。兄が病弱で毎日心配していた時、彼女を大きく変えることになった出来事である父親の崩御の時も、そこには紋章士セリカの励ましの声があったという。そしてその経緯からここアスク王国では紋章士セリカに会う術がないことを寂しく思っていたところ、これを聞いた召喚師の計らいでアスク王国に召喚されていた「本物のセリカ」と引き合わされ、歓喜。セリーヌの話にセリカも興味を示し、彼女のお茶の誘いを快諾する。思念体であり喫食を共にできない紋章士の時とは違い、自分と同様に紅茶を口にして美味しそうに笑うセリカを見て涙が出るほどに嬉しかったと、これ以上は無いほどの幸せに満ち溢れた感想と感謝の気持ちを召喚師に伝えている。
最上部にあるセリーヌの召喚応じ台詞はエンゲージ4章冒頭で顕現された紋章士セリカの最初の台詞「大切な物を守るためなら、喜んで力を貸すわ。」をリスペクトしたものになっている。
コミカライズ
「し…しんりゅうさまに手を…!」
ゲーム4章の場面にあたる4話の後半に初登場。
ゲームとは異なり、王城から単身で逃げ出していたところを主人公リュールが単独で追跡、そのまま風車村まで追いかけて二人きりになった状態で顔合わせに。
侵攻を受けた王城から逃げ出した際に王冠を落としているために暫くは何も被っていないままの姿で描かれており、その風貌はゲームよりも幼さを感じさせる印象を与える(蝶のような髪飾りはこの時も付けている)。
また、顕現前から声を聴くことができるセリカには頻繁に話しかけていた。
しかし、被害が自分以外の民に及んだ瞬間。
苛立った追っ手がフィレネの民への暴力行為に及び、「きゃーー」と悲鳴が耳に入った途端、
「これ以上フィレネを脅かすなら 容赦はしません」
「ぐっ…!? 情報と違うぞ セリーヌ王女…!」
懐に隠し持っていた剣で追っ手をまとめて一刀両断。顔つきも同漫画のアルフレッドを思わせる高貴な王族然に様変わりする、コミカライズという媒体ならではのギャップ演出と共に追っ手を全滅させる。民に仇なす外敵への容赦の無い態度と覚悟の据わり方はゲームでの彼女と同様であり、この一瞬の出来事にはリュールも驚きを隠せない反応。
ここで名前が発せられたことで、王冠を落としていた身元不明の少女がセリーヌ王女であり、そして「慈愛の王女の指輪」を所持していることを知ったリュールは彼女から、「ヒーローズ」でも語られていた二人の関係や王城から逃げ出すまでの経緯を教えられ、フィレネを救うために紋章士セリカを顕現。
ここではこれまでテキストのみの存在であった幼少期のセリーヌの後ろ姿が描かれており、兄妹喧嘩をした時も励ましてもらいに指輪が安置されている台座の前で声を掛け続けていたようである。そして、ゲームではイヴ女王に託された指輪だが、こちらでは顕現前のセリカが事前に王城襲撃を察知し、セリーヌに直接助けを求めたという経緯に変更されている。
「やっと逢えたわね セリーヌ…!」
顕現されたセリカとの邂逅を果たす。
この時にルイから思いっきり目が合った状態で「とても…いい――」と熱視線を注がれていた彼女だが「無事だったのね!」と返すあたり、そのことを全く気にしていない様子。ゲームでは不明瞭な部分であったが、臣下たちの趣味を変に思わない度量の持ち主であったと判明する。
ゲームでは風車村で遭遇した異形兵から主君を逃す役回りだった臣下たちだが、こちらでは王城にてイルシオン兵から主君を逃し、遅れて駆けつけての合流になっている。
落としていた王冠をクロエから受け取ったセリーヌはここでようやくゲームでお馴染みの姿になり、劣勢になっているという王城へ主君と臣下、そしてリュールを加えた4名で急ぎ向かう。
その途中で、ゲームでは5章の敵将を務めていたイルシオン軍の将校ネルーケに快楽で焼き払われた村を発見。
「散る覚悟は できたかしら…?」
王城奪還のためリュールの作戦に協力をする彼女は彼の合図のもとで紋章士セリカとエンゲージ、そして「王城内でリュールとアルフレッドが敵の注意を引き、自分は城外から王城内へワープライナで急襲」という連携プレイによって王城内でイヴ女王を捕縛していたイルシオン兵を一掃すると共に母親を即座に救出することに成功。ゲーム5章では目の前で人質になっている母親を見て弱気に陥ってしまっていた彼女だが、こちらでは城外から即座に救出という作戦が功を奏したのか、一瞬も弱気な姿を見せていない。その後はシグルドとエンゲージしたアルフレッドが「オーバードライヴ」で残りのイルシオン兵を殲滅、一人で敗走を試みたネルーケをリュールが逃さずその場で処刑。
主人公と紋章士の力を借りて王城を奪還し、自国を守ることができた彼女は兄と共に神竜軍に加わり、次なる紋章士の指輪が待つブロディア王国へ向かう。
同漫画では兄アルフレッドとその臣下たちが巨大な瓦礫を軽々と持ち上げ、リュールから「やはり武力の国では!?」と勘違いされるほどの逞しい筋力が描写されていたが、彼女も彼女でかなりの高さがある城壁から飛び降りてすぐに駆け出す、リュールが中々追いつけない程の速さで走る、川をジャンプ一回で飛び越える(それを追いかけ続けたリュールは息切れを起こしている。それに対してセリーヌは殆ど息を乱していなかった)といった逞しい脚力を披露していたりする。
余談
名前の由来はそのままフランスのラグジュアリーブランド「セリーヌ(CELINE)」から。
専用兵種「フロラージュ」はフランス語で「花」を意味する。フロラージュはバランス型成長、専用スキルの「華炎」、剣と魔法の武器種と本作にもDLCで出演しているルフレ(FE覚醒)の専用職「神軍師」を彷彿とさせる特徴が多い。英語版では同クラス名が「Vidame(ヴィダム)」に変更されており、こちらは「副支配者」を語源とするフランスの封建的称号が由来。
担当声優の鬼頭明里氏はファイアーエムブレムシリーズ初担当となる。
ニンテンドードリーム23年4月号で実施された「『FE エンゲージ』キャラクター人気投票」では7位にランクイン。女性キャラでは今作の主要ヒロイン格であるアイビーやヴェイルを抑えて2番目と大健闘(1番目は5位のユナカ)。
徳間書店より発行されている「ファイアーエムブレムエンゲージ 完全攻略本」では、イヴ女王の関係者の欄で「娘/第二王子」と誤植されてしまっている。
見た目や性格、趣味も相まって非常に正統派な王女キャラではあるが、よく見ると上着の防御力は非常に薄い。パッと見、リボンを巻いているだけの様に見えなくもないレベルである。彼女の大ボリュームな金髪に丸みを帯びたお姫様ドレスというデザインは正面からの映りこそ自然なものの、後ろから見ると…なんというか特徴的。具体的には巨大なたまねぎか球根か何かのような謎の物体に見え、今作の戦後散策では遠方に佇む彼女の後姿を新種の動物(今作は動物を保護して拠点に連れて帰れる)などと誤認するプレイヤーを多発させており、彼女が持つ逞しい力成長率の次にネタにされやすい。
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オルテンシア…同作のもう一人の妹王女。こちらは姉を持つ。
セリカ…「魔法+剣の妹王女」つながり。争いを好まないながら気丈な性格も似ている。エンゲージでは紋章士として登場しており、セリーヌと同時に加入する。
エイリーク…こちらも優しいが気丈な性格が似ている。こちらは魔法は使わない。やはり紋章士として登場している。
カムイ…上等な紅茶を淹れてくれる臣下を持つ王女繋がり。そのためかセリーヌとの絆会話は終始紅茶の話で貫徹している。
本当の性格
以下はゲーム全編に関するネタバレを多く含みます
「それは確かに幸福です。けれど…人生最大の幸せなんて定義が、わたしには不要だわ。
だって、そんなものが来たら…
その後の全ての時間を『あの頃は良かった』と思いながら過ごすだけの存在になるのだもの。」
その内面は息苦しさを強く覚えさせる描写や自分で自分の首を絞めるような物の考え方で満ち溢れた、キラキラした印象とは反対に「後ろ向きな性格に陥った人間」と察せるものである。
会話に多く目を通していくと、彼女の「自己犠牲が強い」行動が目立ってくる。
仲間やフィレネの民の幸せを第一に考え、軍の一員として戦場を共にするだけでなく自由時間ですら国を与る王女としての公務、施策などに多く時間を割いている姿はまさに理想的王族といったところだが、言い換えればそれは滅私奉公そのものであり、そんな彼女に息苦しさを覚えるカゲツや主人公からは心配の目を向けられている。
しかし彼女は「無責任なことはできない」「大変なことは多い」と認めつつも「民の生活が守れるなら王女の苦労なんて大したことじゃない」と譲らず、主人公に対してはその後のお目覚め会話も合わせて、自分に対して心配な顔を見せたこちら側を逆に庇うような対応を取ってくるためにますます息苦しさを感じさせる。
内心では戦を嫌いながら平和のために剣を取っているのも王族としての使命感(兵に全てを任せて後ろで見ているなんてできないと言っている)で耐え忍んでいるのみであり、戦場でこそそのようなそぶりを殆ど見せていないが戦後散策で彼女に話しかけると「戦うことに慣れたくはない」という本心を主人公にだけ伝えてくることがある。紋章士と二人きりである絆会話では「戦うと決めたけれど、戦いは永遠に終わらないかもしれない」と不安を隠さずに伝えている他、平和のために戦うという選択が本当に間違っていないかどうかについて何人もの紋章士に言い方を変えながら似たような問いを投げかけていることからも、内心にある戦うことの苦しさ、戦い続けることへの迷いのようなものが感じ取れる。彼女にとって印象強い戦闘前画面での鋭い目線についても、残りHP1/3未満の時にはその目や眉が左右不揃いで戦に対する苦しさを隠しきれていないような表情に変化している。
主人公との支援会話では賊の本拠地殲滅を命じた件に関して自らがフィレネに伝わる平和的な伝承(泥棒や侵入者にはいたずらをして追い払う)と真逆の対応を選んだこと、賊とはいえ人同士で殺し合わせる選択をしたことに強く心を痛めており、毅然な王族を貫いている言葉とは対象的に彼女の声色などから漏れ出している落ち着きを欠いた様子からそのことを主人公が看破し、強く庇われると一度は否定するものの遂には認め、王族として剣を取る心構えを持っていても戦いを嫌がり傷ついてしまう自分に「それがわたしの弱さ」だと思い詰めてしまう。しかしそのことを主人公は即座に「弱さではなく優しさ」、そして先の伝承を聞いて主人公が抱いた「フィレネの民が持つ優しさ」だと訂正する(程度の違いこそあれど、戦を厭える性質は兄や臣下たちにも備わっているものである)。この諭しを受けた彼女はこの後のお目覚め会話で「いつかそう思えるようになりたい。」と胸に留めており、自分の性質と向き合い、自分が持つ本音を適度に赦し、より正しい心構えで剣を取ることができるようになったものと思われる(そのため、邪竜の章のもう一人の自分のように「優しさ」という歯止めを失った選択を取る線は完全に潰えている)。…一方で主人公に対してこの記事の最上部にある台詞を発してもいて、心の状態は改善したものの自己犠牲についてはこの件で更に加速している可能性がある。
自らもその身の絶対死守を命じられている臣下を持つ王族でありながら、兄や主人公といった彼女が目上扱いしている人物たちと自分自身との間で明確に命の優先順位を付けているような姿勢であり、「必要ならこの身を挺しても構いません」という発言まである。
そして、ゲーム5章クリア以降にクラシックモードで彼女がHP0になると、本当に撤退することなくその場で死亡する。散り際の台詞も個人的な未練を一切発さず、残される仲間たちを動揺させまいという自己犠牲に貫徹したものだが、その後の散策会話では取り残された兄は母との「生きて帰る」約束を果たせなくなったことを強く嘆き、主君を守れず生き残ってしまった臣下は自らに騎士失格の烙印を押すといった悲痛な光景が繰り広げられる。…彼女は6章以降の本編章のイベントシーンには登場しないため、このまま先へ進んでも彼女が複数持つ青マークの散策台詞を一切聞けなくなるのみでストーリーそのものは通常通り進行する。進行するのだが…
この事実もあり、先の戦闘で多くの被ダメージを負って生還した際に彼女が発する「生きて帰れないかもしれないと覚悟をした」をはじめに自らに命の保証がないことを言い表す台詞の数々が非常に重苦しいものになっている。
彼女を自己犠牲な姿勢にしている要因として大きいのが、「仲間の幸せを尊ぶ」という彼女の人柄の裏側にある「仲間の不幸を過剰に恐れる」という性質。
ゲーム4章では囮を買って出た臣下に対して別れる前に「必ず戻ってくるから持ちこたえて」と言葉をかけ、主人公との合流に成功した際は紋章士セリカを顕現するよりも前から自分を守ってくれた臣下やこの村の民たちを守りたいという強い意思表示をし、顕現したセリカの力を借りて救助、先の約束を有言実行すると共に「もうあなたを置いて行ったりしない、これからは共に戦いましょうね!」と殺し文句を決めるなど、正に強い心を持った王女らしい大立ち回りを演じていたのとは対極に、その次の5章にて王城に到着した彼女はそこで捕らわれている母イヴに心配を隠しきれない呼びかけを発して以降は前章での姿が嘘のように委縮してしまっており、その後神竜軍が王城を奪還し母親を救出するまでは殆ど何も言い返せない弱気な姿勢になってしまっている(敵将ネルーケと戦闘に入る段階ではいくらか覚悟を固め直したような台詞を発せる程度に立ち直ってはいる)。
その母親イヴも、ネルーケが仕掛けた自分自身に対する脅しには一切動じずに彼を浮足立たせていたのに対し、その後に駆けつけたセピアが「(イヴ女王以外の)城の者を一人ずつ殺していく」と脅し方を変えた途端に取り乱し、駆けつけた実の子である兄妹を見て「あの子たちに手を出さないでください!」と自分の身よりもそちらを案じる姿勢を見せており、親子で共通点のある反応をお互いに取り合っていた。
その傍らで終始毅然な態度のままセピアと口舌で渡り合っていた兄や、後に同じく母親を人質に取られるが全く物怖じしないどころかたとえ肉親を犠牲にすることになっても自分が国を守るとまで言い切って場を乗り越えて見せたミスティラとは対照的である。
彼女は自らに対しては滅私奉公に身を置き、心を摩耗する戦にも耐え続け、最悪命を賭せるほどに気丈であり頑丈である一方、仲間が受ける被害や命の危機に対しては非常に弱く、そして当事者以上に苦しんでしまう性格。彼女の言葉を借りるならこれが真の「わたしの弱さ」にあたるだろう。
臣下のルイとの支援会話では、毎日お茶の席を共にする主君の笑顔や感謝の言葉から奉仕者の喜びを感じていた彼が主君をより大きな幸せを届けるべく特別な紅茶を献上し、彼女はその一杯にこれまでにない至福を感じていた…のも束の間、それが険しい道のりの先にある天然の茶畑にしか自生せず、目の前の臣下がその採取にあたって凶暴な獣に襲われて負傷していた事実を知った途端、飲んでいる途中のお茶に手を付けるのを止めてそそくさに席を外してしまう。その後、彼が苦労して用意したお茶を残してしまったことを謝りつつも、そのお茶のために彼を負傷させてしまったのが嫌だったということ、その恐れが無い普通のお茶を淹れてほしいという切実な願いを伝えている。
幼馴染のエーティエとの支援会話でも勘違いが元で有りもしない病気の可能性を疑い、その会話中にセリーヌが自ら語った「毎日心配していた」頃の自分を思わせる心配性になってしまっており、勘違いが晴れた後も「エーティエに何かあったらわたしはきっと立ち直れない」と漏らしていているほど過剰なまでに相手の身を案じていた。その様子を見た目の前の幼馴染に申し訳なさを感じさせている。
本編ストーリー後半では主人公たち神竜軍をおびき寄せるためだけに本作の宿敵サイドにあたる邪竜軍の手によってフィレネ王国内の海沿いの街、フルルの港が焼き払われてしまう。自国が再び戦地と化したこの戦闘で邪竜軍への勝利は収めるものの、自国の愛する民たちの住宅地を焼野原にされ、多くの犠牲者を出してしまった惨状に対して彼女は言葉を失っている様子を戦後散策で見せる。…一方で、この戦後散策で主人公を彼女から距離をとらせると、話しかけた際に見せた悲しみの表情や台詞が裏返ったような憤りの感情を露わにした表情や身振りも取っている様子が映し出される。
クラシックモードで遊んでいた場合は先程の逆、戦場にて彼女が自分の臣下たちを殉職させてしまう事態も起こるものであり、その時の彼女が発する散策台詞にはやはりというか騎士としての命を全うした彼らを称えるような内容は一切なく、自分を責めたり、その直前まで彼らが臣下でいた頃を恋しく思うような文言になっている。…この散策台詞は段階分けがあり、もし一度の戦闘で臣下を2人同時に失った際はその時用の差分もあり、その場合は話しかけている最中の彼女の表情が通常の弱気な顔ともまた違う、非常に痛々しい表情に変化する。台詞の内容も相まって、表向きは気丈な人物である彼女が最も力ない姿を晒してしまう瞬間、そしてその条件が「仲間の不幸」なのだろう。
仲間の不幸を恐れる性質は彼女の実生活にも「悪夢を見る」せいで寝付けない夜が度々来るという悪影響を及ぼしている。幼少期の彼女は当時病弱だった兄を毎日心配する生活を送っていたが、その経験が元で当時から現在に至るまで兄が亡くなる夢に魘されているということがスタルークとの支援会話で明かされる。スタルークも同じく自分の兄ディアマンドのことで悪夢を見るようになったのが最近であるのに対して彼女は兄が健康な体を手に入れた後も症状が続いており、内心では何かの拍子にいなくなってしまうのかもという不安が抜けきっていないと明かす。
その後、彼女自身に寄り添い続けても夢見が一向に改善されないどころか戦況が長引く現状のことも重なって日に日に悪化の一途をたどる彼女を見て、スタルークは自分もアルフレッドを守ると宣言。すると彼女は涙が出そうなくらいという喜びの表情と心が救われたような反応を見せ、そして彼女はスタルークの恩に応えると同時に自分と同じく悪夢に苛まれている彼を救うべく、お互いの国の利になるという名目で彼女自身も彼の兄を「必要ならこの身を挺しても構わない」とまで付け加えて守ると宣言。このことを二人は「正しい行いではないのはわかっている」「公にできない同盟」と言いつつ、今日からは悪夢を見る日が少なくなりそうだと、その二人に悪夢を見せている源であるお互いの心の状態が大いに改善したことを確認し合っている。
これらのことから彼女は自分自身よりも自分が大切に思う存在を守ってもらうことの方を遥かに有難がり、そしてその対象の不幸や命を脅かされる状況が自分自身へのそれよりも遥かに苦痛を感じる性格なのであり、それ故に自らの心を守るために自己犠牲を選び続けてしまっているとも察せる。
兄アルフレッドとの支援会話Aはこれまでの微笑ましい兄妹のやり取りから一転しており、彼女が夜中の森奥を通りかかっている最中に偶然、健康な体を手に入れたはずの兄が発作を起こしている様子を目撃する場面から始まる。彼女が長年抱えていた上記の夢見の悪さ、つまり心の奥で持っていた「何かの拍子にいなくなってしまうのかも」という予感は的中してしまったことになる。青天の霹靂を前にして突発的な不安と動揺に駆られるまま彼女はすぐさま人を呼ぼうとするが、息を乱し続けている兄からの「みんなの前では何の陰りもなく、鍛錬が好きなだけの元気な王子でいたい」と口止めを乞い願われ、彼女も気が気でない自分自身をどうにか抑えてこれを聞き入れる。
この支援会話は他の支援会話2~3つ分に相当する本作随一の長さと内容を誇っており、前半は上記の通り健康な体を手に入れたはずの兄の実態が露呈する内容で、後半は強い心を手に入れたはずの妹の実態が露呈する内容になっている。
その実態とは、彼女が「不幸せばかり見ている人間」であること。
容態が少し落ち着いた兄は自分の思いを守ってくれた目の前の妹に対して自分が彼女のような妹を持てたことを人生最大の幸福の一つだと言って最大の賛辞を贈り、そして彼女に対しても自分の一番の幸せは何かと問いかける。その問い対する彼女の返答は「ありません」の一言。思いがけない答えに兄は自分とは違って今も昔も健康な体を持っていることを引き合いにそんなことはないだろうと問い質すが、その時に彼女はこの項目の冒頭にある台詞を、普段から「幸せ」という言葉を多く交えている人物のものとは思えない物の考え方を提示。それに続けて彼女は自分自身が「幸せを願いつつ、不幸せばかり見ている」と明かす。
彼女の苦手なものの中に「大きすぎる幸せ」というものがあるが、これは彼女が「幸せはいつも誰かの不幸の上に成り立っている」と捉えているのが要因であり、つまり「幸せな出来事が起こればその裏で不幸な出来事も起こる(起こっている)」という考え方をしている。そのせいで彼女は幸せを望んでいるように見えて大きな幸せを、特に自分自身に対する大きな幸せを素直に喜びにくい性格になってしまっており、それを受け取ってしまうことは寧ろ帳尻合わせに大きな不幸を招いてしまうかもしれないものだとして仲間の不幸同様に恐れている節さえある。(これらを全て反転させ、他者を直接的に不幸にしてでも自分たちが幸せであればあるほど良いというスタンスを持っているのが邪竜の章での彼女である)
この考え方から彼女は兄にも問われた「人生最大の幸福」を自分の中で定めることを嫌がり、作中でも特に彼女が幸せそうな姿を見せる紋章士セリカとの絆会話も最後は「今以上の幸せなんて、もう来ないんじゃないか」という不安な心情の吐露で締めくくられてしまう。臣下のルイとの支援会話で彼女が紅茶を飲むのを辞めて慌ただしく席を外してしまったのも単に彼が怪我をしたというだけでなく、その原因が自分の特別な茶葉の一杯で感じた至福という大きな幸せを受けたことにあると捉え、罪悪感に苛まれた故のものである可能性が高い。戦闘中に彼女がレベルアップした時も4~5ピンの時は喜びの表情になっているのに対し、6ピン以上になると「大きすぎる幸せは怖いけれど」という言葉を据えて少し抑えたような表情になっている。
その他にも紋章士ミカヤが持つ「未来を視る能力」についても主人公がそれを羨むような反応を見せているのに対してセリーヌは絆会話にて「それで辛い思いをしたことはないの?」と真逆の反応を見せていたり、エーティエとの支援会話でお茶会中にティーカップを持つ手が震えていることを必要以上に指摘すると共に不安な表情を見せ(実際はエーティエが筋肉鍛錬用ティーカップを新調し、負荷を上げたことで手がプルプルしていただけ)、その次のお茶会でも幼馴染が今度は筋肉鍛錬用ティーカップの使用を中止していたことについても理由を聞く前にまた心配な顔を見せるという二度もの早とちりをするなど、彼女の「不幸せばかり見ている(気にし過ぎる)」性格の証左となるシーンは多く見受けられる。彼女自身が明かした通り、兄同様に「幸せ」という言葉を多く口々にしていながら、「蛮族」という言葉さえも誉め言葉に捉えることすらできるポジティブシンキングな彼とは対照的に、その実は物事を後ろ向きに捉えてしまいやすい人物なのであった。(彼女の苦手なもののもう一つは「無理やり前向きになること」である)
兄との支援会話の続きでは、ゲーム4章での強い王女として立ち回っていた時さえも「フィレネが落とされたら」「お母さまが死んでしまったら」「お兄様と会えなかったら」という胸の内に秘めていた当時の心情を明らかにし、そして自分だけが見ていた悪い夢ではなく現実に今も兄が病を患い続けているという実情を思い返し、兄の身体が昔のように発作を曝け出してしまったように、彼女も心を押し潰されるあまり昔のように今にも泣き出しそうなそぶりを見せ始める。
「…死ぬわけがないさ。鍛えればどうにかなるとも。」
「本当に…頭の中だけは蛮族だわ… 体もそうならいいのに…」
「だからそうなるように鍛えているじゃないか。」
本作において兄妹共通の語り草となっている「蛮族」というワードが彼女の涙ぐんだ声から発せられるこのシーンはとても印象深いものである。今度は兄が目の前の心が不安定に陥っている妹を落ち着かせるべく「珍しい四つ葉の野草」を話題に振る。兄の機転によって妹は、幼少期は兄妹で小さな幸せ探しをしていた頃に思いを馳せ、そうしているうちに兄の容態も安定を見せたところで安堵を覚え、先ほどまで弱っていた心に落ち着きを取り戻すことができた。
しかし、この「珍しい四つ葉の野草」が生えていたのはそれを見つけたアルフレッドではなくセリーヌの足元。それを兄が手で指し示した上で「ご覧」と言っているのにもかかわらず彼女自身はこの「珍しい四つ葉の野草」を発見できていない。二人が病弱だが前向きな兄、健全だが後ろ向きな妹という関係であることとも併せて含みを感じる構図になっており、そしてこの次に彼女は「昔はわたしの方が上手だったのに」とも言っている。明言こそされてはいないが、つまり彼女は、主人公たちに対しては「何か幸せが見つかりましたか?」などの言葉を贈ってくれる人物であるにもかかわらず、自分自身は年を経るにつれ後ろ向きな物事の捉え方が進行していき、幸せを見つけるのも下手になってしまった可能性がある(紋章士リーフとの絆会話では「久々に」小さな幸せを見つけられたことを嬉しそうに報告している)。この描写に関連してか、今作に存在する贈り物「シロツメクサ(稀に葉を4枚持つ種が生えていることがある草)」を二人に贈った時、兄は好きなもの判定であるのに対して彼女は普通の判定になっている。
この二人の支援会話の締めくくりとして、兄からは「お詫びに僕がたくさんの幸せを見つけて(妹に)持っていく」「これからも迷惑をかけるかもしれないけれど…フィレネの王族として支え合い生きていこう」と、妹からは「あなたの思いはわたしが守ります」「必ず二人揃ってフィレネに帰りましょう」と約束を伝え合う。セリーヌが他のキャラクターとの支援会話等で「今の兄は健康」だと再三触れ回っているのは、冒頭で伝えられた兄の思いを守っているからなのかもしれない。そしてこの二人の旅立ちを許した母が言い渡した約束を完遂させるべく、二人は主人公たちと共に平和を取り戻せる最後まで戦い抜き、そして共に「生きて帰る」ことを目指す。
以下は本作のゲームクリア後に関するネタバレを含みます
旅の始まりから終わりまで主人公に寄り添い、微笑みをかけ、護り抜いた兄アルフレッドを待っていた未来…後日談は、平和を取り戻した世界から早逝してしまったと目される短命な生涯であった。
彼は病弱な自分を筋肉鍛錬で追い払うことができず、とうとう蛮族のように逞しい身体を手に入れることが叶わなかった。
そして、平和を取り戻しつつも戦によって多く生じた被災地の復興、神竜軍という仲間同士での国際交流の中で洗い出された旧体制の見直しなどの課題が山積みであるこれからのエレオス大陸で、これまで旅路を共にした次期国王たちと肩を並べてフィレネ王国を長く支えていく人物…それは兄の思いを守る第二の王位継承者、セリーヌである。
…もしも二人に旅立ちを許した母親と結んだ、後に二人の間でも結んだ「生きて帰る」という約束を果たせずにこの未来を迎えた場合、即ちセリーヌを死亡させた状態で本作のエンディングを辿った場合、フィレネ王国は非常に後味の悪い未来を迎えてしまうことになる。
そして、結果論とはいえ彼女が愛するフィレネ王国や民たちを第一に想うのであれば、最も高い優先度で庇護すべき御身が、彼女がその自己犠牲の姿勢で幾度も酷使し、命の危機にも晒し、最悪の場合は身を挺する側だと判断をも下した自分自身であったという構図はこれ以上は無いほどの皮肉である。
そんな彼女に贈られる称号は「幸福な王女」。
この称号にはオマージュ元と思わしきものがある。
それはオスカー・ワイルドの童話「幸福な王子」。
博愛の心を持つ自我を持った王子像が人々の不幸を悲しみ、像が持っている金箔や宝石を人々に分け与える自己犠牲で人々を幸せにし、輝きを失いみすぼらしい像へと変わり果てた王子像は人々に取り壊されるという報われない結末を迎える同著書のあらすじは、
仲間の不幸を何より恐れ、国や大切な人のために身を滅ぼしかねない心構えや行動選択、滅私奉公の数々での自己犠牲で人々を幸せにし、そして最後はこのように命にも代えたい思いで支えてきた兄を不可抗力によって失う、或いは国を支えていくことすら叶わずに果てるという報われない結末を迎える「幸福な王女」のオマージュ元そのものである。
本作には主人公との間にのみペアエンドが発生し、兄アルフレッドをパートナーに選んだ場合、後日談で語られる彼の短命な生涯が人並みの寿命を享受できたと推測できる内容に変化する。
この場合、兄は主人公のパートナーとしての人生を歩むことになるため、未来のフィレネ王国でセリーヌが請け負う役目そのものは変化しないものの、兄妹二人で共に生き残り、平和になった後の世界で同じ時を長く過ごすことができ、そして兄が最愛のパートナーと共に大きな幸せを享受し続けているという背景が加えられた世界線は、仲間の幸せを、それも命よりも大切というほどに想っている兄の幸せを何より尊べる彼女にとっても大きな幸せ、それも誰も不幸にしてしまうことのない幸せを手に入れられる、真に報われた結末と取ることもできるだろう。
反対に、彼女自身をパートナーに選んだ場合、つまり上記の人生を歩む対象が彼女に成り代わると共に兄は本来の短命な生涯を迎えてしまい、そして本来のフィレネ王国を長く支えるという選択さえも変えてしまえるこの世界線は、パートナーに選んだ際に発生する支援会話にて彼女が打ち明ける複雑な想いと共に、彼女にとって幸福かどうかが受け手の解釈によって入れ替わり得る結末なのかもしれない。