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概要編集

オスカー・ワイルドによる童話。原題は「The Happy Prince」。

幸福の王子』、『幸せの王子』といった表記も存在する。


作品解説編集

昔、ある町に王子の像が立っていました。身体は金箔に覆われ、両目の瞳はサファイヤ、腰のの装飾には真っ赤なルビーが輝き、心臓でつくられた美しい像です。

そこへエジプトへ渡る最中の一羽のツバメが、寝床を探して像のところまでやってきました。ツバメが王子の像の足元で寝ようとすると、頭上から大粒のが降って来ます。見ると金箔の王子の像が泣いていました。

王子の像は、その視界に入ってくる貧しい人達の生活ぶりを見て、悲しんでいたのでした。

そして王子の像はツバメに「貧しい人達に自分の身体に付いている宝石を分け与えてくれ」と頼みます。

ツバメは願いを聞き入れ、病気に苦しむ子供のいる家族にルビーを届けます。


願いを聞き遂げ、出発しようとしていたツバメでしたが、その翌日、王子の像は「まだ飢えに苦しんでいる人達がいる、もう一日だけ待っておくれ」と願います。

早く出立したかったツバメですが、王子の切なる願いを聞き入れ、目のサファイアを貧しい劇作家に配ります。


いよいよ出立しないと間に合わなくなったツバメは、ついに王子の像に別れを告げようとします。

しかし王子の像の嘆きは収まりません。王子の像はまた「あと一日待っておくれ」と願い、もう一つの瞳のサファイアをマッチ売りの少女に渡してくれるよう頼むのでした。

ツバメは「そんなことをしたら目が見えなくなる」と心配しましたが、「貧しい人が救われるなら」と王子の像は考えを変えません。


その優しい心に触れたツバメは、エジプトへ渡ることを諦め、最後まで王子の像の願いを聞き遂げる決意をしました。ツバメは視力を失った王子の像のため、町の様子を彼に伝えるようになりました。


王子の像は自分の身体の金箔を配るよう願いましたが、配れば配るほど王子の像はどんどん見すぼらしい姿に変わり果てて行きました。

そして王子の像からかつての綺羅びやかな様子が消えた頃、町はを迎えます。


寒さに耐えられないツバメは身体がすっかり弱ってしまっていました。

死期を悟ったツバメは、最期に王子の願いが聞けて幸せだったことを告げ、最後の力で飛び上がり王子の像にキスをすると、ついに力尽きてしまいました。

それを聞いた王子の像は、ツバメが死んでしまったことに大きなショックを受け、ついに鉛の心臓が割れてしまいました。


二人が動かなくなった翌朝、町の人々は「いつの間にか美しく無くなってしまった。溶かしてしまう」と、王子の像を溶鉱炉にかけてしまいました。

しかし鉛の心臓だけは溶けなかったので、ツバメの死体と一緒にゴミ置き場に捨てられてしまいました。


その頃、神様天使と一緒にこの町へやってきました。神様が天使に「この町で一番美しいものを持って来なさい」と命じました。

天使は、割れた鉛の心臓と、ツバメの屍を持って来ました。神様は「確かに、これぞこの町で一番美しいものだ。二人は天国に連れて行ってやろう」


こうして王子の像とツバメは、天国で幸せに暮すのでした。


残酷な童話の代表作編集

自分の身を犠牲にしてまでも他者(町民)に尽くしたにもかかわらず、心ない町民によって恩を仇で返されるという悲劇性が、本作でもっとも語られる部分である。

一応物語上ではある程度救いのある終わり方こそしているものの、大筋を見ればこの作品の結末はハッピーエンドとは言い難い、どこか釈然としないものが残る。

ただし、王子とツバメは『人々を助ける』という願いを果たし、最終的には天国で幸福に暮らしており、当事者としては幸せである。つまり、いわゆる『メリーバッドエンド』である。

昔の童話の残酷性が際立つ作品であり、後の改変によってもこの報われない結末は変わらないことが多いようだ。

また、見落とされがちだが宝石や金箔を配られた人たちが、万が一換金でもしようものなら「王子の像から盗み出した泥棒」の濡れ衣を着せられるという点を忘れてはならない。


王子の像について編集

王子の像の出自もまた不幸で、その国の王子が若くして急逝したため、それを悲しんで立てられたという背景がある。

よってその自我は死んだ王子の生き写しであると伝えられるものもあるが、本作のあらましを解説するうえで上記の経緯は省かれやすいので、単に自我を持った王子の像というファンタジー性が強調されやすい。

どちらにせよ、その製作には莫大な予算が費やされているであろう事は想像に難くない。登場人物みんな貧しいのってそういう……


関連タグ編集

童話 オスカー・ワイルド


表記揺れ編集

幸福の王子 幸せな王子 幸せの王子


関連作品編集

六花としあわせの王子プリキュアオールスターズ絵本 『しあわせの王子』

相田マナの他人のために世話を焼く姿を見てこの童話の王子になぞらえている。


ユーサー・インサラウムの行動がこの童話に例えられた。


「幸福な王子カード」が登場。童話になぞらえて、釈然としない形で不幸が舞い込んでくるというものである。自分の手持ちカードを誰かに1枚強制的に渡すことになる、はた迷惑な存在。後期の作品ではカードではなくイベントに変更されている。


「幸福な王子」をモチーフとした、男装のモン娘スバルが登場する(相棒であるツバメのシックルも連れている)。原作同様、困っている人を放っておけない性分で、ことあるごとに自分の身に着けているものを差し出そうとしては周囲から止められている。なお、燕つながりからか一部この人の要素も取り入れられていたりする。


この童話をモチーフにした幸福な魔女が登場。使役するツバメ型の使い魔の真名も作者からとったとおぼしきOscarである。


ルミエル(とネロちゃん)

石像の王子宝石を集める燕になった少女が登場する。


「幸福の王子」を現代風にアレンジした作品。

ツバメに扮した主人公野原しんのすけが登場している他、王子の像が取り壊される事なくハッピーエンドを迎えている。


原作漫画

王子の像が宝石を町民達に与えた後に強欲な大統領が王子の像を解体して町民からの搾取で新しい像を作ろうと目論んだが、ツバメの活躍で悪事を暴かれて大統領が失脚した事で王子の像がそのまま残された。


アニメ版

王子の像から与えられた宝石で救われた町民達が解体工事の中止を懇願する等、原典とは真逆の結末を迎えていた。


笠地蔵:みすぼらしい石像でも人助けは出来るんです。

サロメオスカー・ワイルドのもう一つの代表作。

左右盲ヨルシカの楽曲。本作をモチーフにしている。

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