親と子(ウルトラマンブレーザー)
かいじゅうはあくかいなか
主な出来事
深夜の住宅街にとある家族がいた。子供は端末で趣味の動画観賞に耽り、親は家事をなっていた。
ある男が皿を洗っていた。その男の名はヒルマ・ゲント。SKaRDの隊長にして家庭を持つ男。皿を洗っていたゲントはテレビで放送してた子育て番組を見ていると、突如として目が青く発光した。その目にはかつて光を掴んだ光景や赤子の顔、野菜ジュースを飲んだ時やストーンが発熱した時が映っていたのだった。
妻サトコに声をかけられる。皿洗いの途中だった為、洗剤が床がこぼれ落ちていたのだった。ゲントは我を思い返す。家事が終わり息子ジュンと戯れる。その端末にはブレーザーが怪獣と戦っていた動画であった。するとテレビから山梨県の鬼涌谷にて謎の岩が発見されたとの情報が流れていたその岩は怪獣の卵ではないか?と言うものであった。
ゲントは久々の有休を取る事が出来たので家族で旅行に行こうと提案する。嬉しがるジュン。
ゲント「明日は久々の休みだし、みんなで出かけるか?」
ジュン「え! ホントに! 何処でもいいの?」
ゲント「おお! 日帰りだけどな」
ジュン「ここに行きたい!」
ジュンが指さしたのは、まさに怪獣の卵だと思われる岩が発見された鬼涌谷だったのである。
翌日、山梨県の鬼涌谷では前日から防衛隊の隊員らによって謎の岩の調査が続行されていた。その光景にスマホで規制線外から写真を撮る一般人達。その中にヒルマ家もいた。
ゲントは「ホントにここでいいのか?」
ジュン「ここがいい!」
隊員らが岩を調査していると、その内部には微弱な熱が感知される事が判明した。
すると、岩が赤く発光した驚く隊員と一般人達。その岩が割れ始めその中から瞳が外を覗いていた。その岩は卵だったのだ。それに反応する様にブレーザーストーンも赤く発光する。卵から怪獣の幼体が出現し隊員達に迫っていく。その光景を目の当たりにし一般人達はより好奇心を掻き立てられ現場は騒然とした。
その雰囲気に危険を感じたゲントは、妻子の安全を考え現場から離れる事と提案し、3人は群衆から脱出しようとしたその時、隊員らの安全を確保する為に隊長らしき人物の命令によって隊員らが幼体に向かって麻酔薬を発砲したのだった。全弾はその幼体に命中するが幼体は身体に当たった麻酔弾を薙ぎ払う。ゲントがその光景に動揺しているとまたストーンが赤く発光する。
ベビーが甲高い咆哮をすると離れた山林の地底から「熔鉄怪獣デマーガ」が出現する。その幼体をデマーガは似た体形をしていたのだった。そう、この二体は親子だったのだ。我が子の危険を察知した親デマーガはベビーデマーガの元へと向かう。
SKaRD本部に怪獣出現の一報が入り、SKaRDは現場へ出向。現場にいた一般人の端末がけたたましい音を発する。それは緊急速報の怪獣警報が発令されたのだった。ゲントの端末にも着信が入る。ジュンは自身の端末に映る巨大怪獣の映像に興奮する。
ジュン「見て! パパ怪獣かな? そっくりだ!」
ゲント「あぁ……そっくり、そっくり……もしもし? 施設課のヒルマです。ちょっと今手が離せなくて……」
エミ 「ゲント隊長……?」
電話の相手は同じSKaRDの隊員であるエミだったのだ。電話の向こうの状況を察したエミは電話をスピーカー設定にし、他のSKaRD隊員らにも聞こえる様にする。
ゲント「今度の訓練の件ですね~一先ずはテルアキさんとヤスノブさんに手配してもらいますか?」
ヤスノブ「施設課って何言ってるんです?」
テルアキ「あ!」
テルアキは咄嗟に受話器から音が漏れない様に手で覆う。
テルアキ「ゲント隊長は、家族には施設課所属だって事にしてるんだ。うまく話を合わせろ」
ヤスノブ「なるほど! ウィルコーすね!」
ゲント「実施については、地元の方々に確認したうえでこちらから連絡しますので……はい~……」
テルアキ・ヤスノブ「「ウィルコー」」
戸惑いつつもエミは通話を終了させ、隠語のアースガロンでの出撃命令を受けた2名は出撃準備をする。
ジュン「適当に言わないで!」
ゲント「じゃあ、ママ怪獣」
適当にあしらわれたと思ったジュンは、ゲントに怒る。
親デマーガは依然として煙の中を進軍していた。その最中で防衛隊は怪獣を「デマーガ」と命名する。
一方、地球防衛隊日本支部の中央指揮所にて、ハルノ・レツ参謀長が指揮に当たっていた。
オペレーター1「デマーガの予測到達地点は、鬼涌谷発掘現場です!」
オペレーター2「孵化した幼体へと向かっている模様!」
レツ「よし。ならばそこを攻撃地点とする。幼体を拘束して動かすな!」
オペレーター3「了解」
レツ参謀長の命令を受理した現場の隊員が、ネットガンでベビーデマーガを捕縛する。そのネットに電撃を流しベビーの足を止める。ベビーはただ呻き声をあげるだけだった。
SKaRD本部にも、現場に対する攻撃命令通信が出されるがテルアキはゲント隊長の指示はどうするのか?と進言するが、上層部はこれを無視。
現場ではゲントの端末に通信が入る。通信相手はエミであった。エミは現場に攻撃命令が発令された事を知らせる。ゲントは冷静に対応し終える同時に、防衛隊員と警察官によって一般人達にも避難する様に促したのだった。一般人達は早急に現場から離れる。
SKaRD本部から、アースガロンMod.2が発進する。一般人達とゲント家が現場から離れる際中にどこからか轟音が響き渡る。なんと頭上にミサイルとその後にアースガロンが飛行していったのだった。
ベビーの元へ到着した親デマーガ。何かを察知しベビーを守る様に蹲るとミサイルが着弾。
ジュン「赤ちゃんを守ってる……」
それに答えるかのように、再びストーンが発光する。
空中からアースガロンが舞い降る。
ただ、その目には瞳が宿っていなかった。
テルアキ「アースガロン現着。目標デマーガ……全兵装攻撃開始」
ヤスノブ「ウィルコー! オールウェポン! ファイヤー!」
どこか渋る様子のテルアキ、それとは反対に気分を高揚させ攻撃を開始するヤスノブ。
アースガロンから攻撃が開始される。攻撃はデマーガに命中するがその場面は心苦しいものであった。
再びストーンが発光したかと思うと、ゲントの目が青く光り始める。その目には遥か遠くにいたベビーを視認した。すると、ゲントの腕にブレーザーブレスが出現したのだった。
親デマーガが倒れアースガロンが進軍を開始するが、親デマーガが口からは赤色の熔鉄光線を発射するとアースガロンの左頭部とMod.2のキャノン部分へと命中。その攻撃によってメインカメラが破損する事態となった。格闘戦に持ち込まれたアースガロンはデマーガによって叩きのめされてしまうが、その最中にミサイルが飛来し親デマーガに命中したのだった。
ジュン「なんか違くない?」
サトコ「違うって何が?」
ジュン「あの怪獣、やっつけなきゃダメかな?」
ゲント「あぁ……やっつけないと、怪獣に街を壊されたらみんなが困るだろ?」
ジュン「わかってる。みんなを守るのが防衛隊の仕事でしょ?それはわかってるよ。でも、怪獣だって同じだよね? 赤ちゃんを守りたいだけだよね? それは悪いことなの?」
その息子の言葉に、何かを思い黙り込むゲントであった。
一方、アースガロンは依然と怒りの咆哮を上げるデマーガに攻撃されていた為、コックピットから火花が飛び散っていた。
避難途中であったゲント一家の元にもデマーガの咆哮はけたたましく響いていた。ゲントの顔は曇っていた。
ゲント「まだ、逃げ遅れた人が残ってるかもしれない。行ってくる」
サトコ「パパ、何言ってるの?」
ゲント「俺も防衛隊だからな。ジュン! ママを頼むぞ」
ジュン「うん。わかった……」
ゲントの言葉に不安な表情を見せるサトコ。ゲントはジュンの頭に手を添える。ゲントの言葉を渋々承諾した2人は先に避難をする。ゲントは現場に向かいブレーザーへと変身する。
ブレーザーは現場へと飛来しデマーガと対峙する。デマーガの背部から火炎弾が発射されるがインナースペースにてブレスに新たなストーンを挿入すると、ブレーザーの手からレインボー光輪が出現し回転し始めた。それをバリアーの様に使用し火炎弾を防いだ後に光輪を逆回転させると水色に変化したのだった。するとその光輪からブリザードの様なものが噴射され、親デマーガは凍ってしまい行動不能に成功する。
ブレーザーがトドメのスパイラルバレードを展開し、親デマーガの元へ歩み寄る。スパイラルバレードを刺そうとした瞬間、その傍にはベビーがいたのだった。するとブレーザーの左腕は刺そうとした右腕を静止し始める。ブレーザーの左腕が頭部を掴む異様な光景にSKaRD隊員らは驚く。
その光景にも驚愕する事無く、レツ参謀長から新たな攻撃命令は発令され、ミサイルの雨が現場へと降り注ごうとしていた。
それに気づいたブレーザーの頭部が突如として青い炎を出したかと思うと、なんと口腔が光り始めハウリングの様な攻撃でミサイルを全弾破壊する。
親デマーガが自然解凍で動き始めると、再びブレーザーはスパイラルバレードを展開する。今度もトドメと思われたが、なんとスパイラルバレードが金色の糸へと変化すると、親子を包み始め金色の繭となり地下に沈んでいった。その光景を無言で目の当たりにしたレツは司令部を後にする。
無事に妻子の元へ帰還したゲント。それに安堵した2人。
ゲント「大丈夫だったか!」
サトコ「大丈夫なわけないでしょ! 心配したんだから! 心配させないでよ……」
ゲント「あぁ……わりぃ……ごめんな! 怖かったろ……」
ジュン「今日のブレーザー良かった!」
ゲント「え? ブレーザー? 今日の?」
ジュン「今までで一番良かった」
一家の緊張は一気にほどけ、家族で食事をしに行く所で今回の物語は終了した。
余談
- この回で、ヒルマ・ゲントの妻子が生存している事が判明した。実は第4話にてエミからゲントの妻宛に花束を渡すシーンがあったのだが、視聴者の間では「妻子は実はこの世にいないのでは?」と噂されていたのだった。
- ウルトラマンブレーザーがトドメを刺そうとした時に左腕が阻止した件で
- この回の似た構図やテーマの作品に『ゴジラVSメカゴジラ』がある。そちらも「命の選択」が絡んでいる。同話の監督をする越監督も、自身のXで告知をした際にそれに絡めたポストをしている。(出典)
- 尚、今回のアースガロンには瞳が浮かぶ事が一切なかった。これに関しては喜怒哀楽がある生物であるデマーガと感情が無いアースガロンとの同じ怪獣であるが異なるモノ同士と言う事を強調していると思われる。この事は「ゴジラVSメカゴジラ」でも描かれている為、そのオマージュであるとも取れる。ただし、第6話『侵略のオーロラ』ではカナン星人ハービーは「機械にも感情がある」と語っていた。そして、アースガロンが自発的にヤスノブを救出するシーンもある。今回は『防衛隊の兵器』としての側面を強調する為に、敢えて瞳を排した青目表現が用いられたものと思われる。
- また田口監督がメインを務めたウルトラマンZで親子怪獣の回があり、その回で主人公がトラウマを起こしているため、一部視聴者から「トラウマ回になるのでは?」と見られている。
- 冒頭のヒルマ家のテレビで流れてた赤ちゃん特集の番組に出てた赤ちゃんは、同話を担当した越監督の第2子である。
- 初登場以降、徹頭徹尾ヴィランとして活躍していたデマーガだが、今回は上記の通り第7~8話と同様に「怪獣と人間のどちらが悪か?」とする哲学回の題材として出演した。
- それもあってか、過去のデマーガと比べても攻撃は最低限の自衛に留めており、被害が出ないように誘導されていたのも加わり、破壊活動らしいアクションは(アースガロンへの反撃を除けば)ほぼ見せていない。
- 越監督によるとシリーズ構成メイン監督の田口清隆監督からはデマーガは(田口清隆が作った怪獣の)長男坊だから弱く見せないでくれというオーダーがあったと語っている。
- むしろ、本エピソードの場合は「孵化したベビーデマーガに即座に攻撃→ベビーデマーガが恐怖から親個体を呼んだ」の図式に加え、ベビーデマーガを守るために動かないデマーガに対しGGFが一方的に砲撃を行うシーンもあって、今回の件は悪く見ればGGFの自作自演or自業自得でもある。
- 休暇中に事件に遭遇するこの手のエピソードでは珍しく、ゲントは休日返上して防衛チームに復帰する事もなく最後まで休暇扱いのままである。