「里子?誰のことかねぇ この蒐集品の中にその娘のかんざしがあれば喰ってるよ」
CV:木村良平
概要
竈門炭治郎が鬼殺隊士になって初めての任務で戦った鬼であり、血鬼術を使う「異能の鬼」。炭治郎が初めて戦った異能の鬼でもある。
額から短い角を生やし、忍装束を思わせる黒い服を着ている。
基本的に鬼は無惨に植え付けられた同族嫌悪の特性故に、互いに徒党を組んだりはせずに単独で活動するのだが(例外はこいつら)、こいつらの場合は3体の鬼が一組となって動いている。
ただし三つ子や影武者という訳ではなく、あくまで血鬼術で分裂しているに過ぎない為に、あくまで単独の鬼である。なお同一人物である為に互いを「俺」と呼びあっている。
また、異能の鬼の中でも珍しく血鬼術を2種類持っており、上記の「分身」に加えて「沼のような異空間を作る」という能力を持つ。この能力でとある街に潜み、夜な夜な16歳の少女を攫って喰っていた。
「女は16歳が最高で、それ以降は刻一刻と鮮度が落ちていく」という偏執的な思考と偏食の持ち主である。また、上着の裏には犠牲者の簪やリボンなど装飾品をコレクションしている。
ちなみに「里子(さとこ)」とは炭治郎が任務先の町で出会った青年「和巳」(CV.酒井広大)の婚約者である。
震えながらも「化け物め…里子さんを返せ…!!」という彼に対して冒頭の言葉を口にしながら簪やリボンを見せつけるが、その中でも一際目立つリボンは里子が身に付けていたものと同じであった。
これにより和巳は「里子は既に喰われた」のだと悟らされる。
そして沼鬼を撃破した後、炭治郎から「失っても失っても 生きていくしかないんです どんなに打ちのめされようと」と諭されるも、ショックのあまり「お前みたいな子供に何がわかるんだ!!」と掴みかかる和巳。しかし炭治郎は反論も弁解も一切せず、悲しくも穏やかな表情でそっと彼の手に触れる。そして「この中に里子さんの持ち物があるといいのですが」と、沼鬼から取り返した遺品を渡し、一礼してその場から歩きだした。
その際、少年とは思えない程に「痛ましく、分厚く、鍛え抜かれた」彼の手を見た和巳は、彼もまた「自分と同じ」=鬼によって大切な存在を失ったのだと気付き謝罪。炭治郎が言葉を返す事はなかったが、代わりに彼に鬼に攫われかけた女性を頼むと手を振り、去っていった。
初任務にして「異能の鬼」を討ち取った炭治郎だが、休む間もなく無惨への怒りを抱きながら次の任務へ向かうのであった……
能力
血鬼術『沼』
あらゆる壁や障壁を無視して移動できる沼のような異空間を作る能力。
普段は沼の中に潜んで、夜になると壁や地面に出入口となる水面を発生させて少女を引きずり込んでいた。壁や地面にならどこにでも出入口の水面を作れるが、何もない空中には作れない。沼の中は空気も殆どなく、沼の闇が入った者の体に纏わりついて身動きをとれなくさせる。
……とのことだが、炭治郎によれば狭霧山の山頂付近はもっと空気が薄いらしく、せいぜい「息苦しい」くらいのレベルで窒息死するほどのものではないと思われる。また、水中での戦いに適した水の呼吸だったとはいえ、炭治郎はこの沼の内部で沼鬼の分身体2体と同時に戦って討ち取っており、身動きをとれなくするというのもやや動きにくい程度で行動不能になるほどのものではないらしい。
沼の中には、喰われた犠牲者達の衣服も多数漂っている。
血鬼術『分裂』
上記の通り、3体の鬼に分裂する事ができる。
一本角の鬼は冷静なリーダー格、二本角は感情的で口数が多く、三本角は常に憤怒の表情で苛立ったように歯軋りをして一切言葉を発しない(歯軋りは人間だった頃からの癖らしい)。しかし、分身は同一人物とはいえ完全に個々で独立しているらしく、分身同士で互いに情報を共有するような能力は無い。よって分断されれば互いの状況を把握できなくなってしまう。
またあくまで3体の独立した個体に分裂しているだけなので、後に登場した半天狗のように本体という概念はなく、それぞれが頚を斬られればそれぞれ死亡してしまうのが弱点である。加えて分身を一度倒されてしまうと、即座に再度分裂する事もできない模様。
最期
一本角と三本角は炭治郎を沼の中に引き込んで始末しようとするが、逆に水中だからこそ本領を発揮できる水の呼吸の陸ノ型・ねじれ渦で、2体まとめて頚を斬られてしまう。
禰󠄀豆子と戦っていた二本角も炭治郎に両腕を斬り落とされ、鬼舞辻無惨について尋問されるが、無惨への恐怖から「言えない」とガタガタ震え出し、殆ど錯乱したように「言えないんだよオオオ!!!」と襲い掛かった為、炭治郎に頚を斬られて絶命した。
何故彼はそれ程までに「言えない」と怯えていたのか。炭治郎はその理由を、後日の矢琶羽・朱紗丸戦で知る事になる。
余談
無惨の手で鬼にされる回想シーンから忍装束を着用しており、三人に分裂する事、沼の血鬼術は土遁の術を想起させる事などから、人間だった頃は忍者だったのではないかとファンの間では考察されている。
作中で「女どもはな、あれ以上生きてると醜く・不味くなるんだ!!そうなる前に喰ってやったんだからむしろ俺たちに感謝しろ!!」と宣った際には炭治郎も本気で怒ったのだが、原作ではこのシーンで怒りで顔が真っ黒になるという、恐ろしい演出がされている。
このように、鬼殺隊入隊後の炭治郎が初めて交戦した敵であり、鬼相手に許さない気持ちを持ちつつ、同時にある程度の情を見せる炭治郎ですら全く同情の余地も見せなかった最初の鬼である。
公式ファンブック「鬼殺隊見聞録」にて、先述の「一人が三人に分身している」事の他、ナルシストである事や、歯軋り癖は人間であった頃からの名残である事が明かされた。
ファンブック弍には三本角の個体が登場。他の鬼達が水の呼吸の感想を言い合う中、相変わらず歯軋りをしていた。
アニメ版での三本角の歯軋りは、SEではなく担当声優の木村氏の演技であり、収録後に口内が痛くなったと語っている。
ちなみにアニメ版やモンストとコラボした時には何故か沼の鬼と表記されていた。
キメツ学園
4巻にて設定が明かされた。
キメツ町に出没する変質者。16歳の少女の下着ばかりピンポイントで盗んでいた為に、下着泥棒の現行犯で炭治郎に捕まっている。
「はなせーーー」
「人の服だろ君が手をはなせ!!」
同時多発的に目撃され事件が起こっている為に、都市伝説になりかけている。
炭治郎は「三つ子ではないか」と推理しており、この事件を追っているという。
スピンオフ漫画「キメツ学園!」では一人のみ登場。
マンションのベランダに忍び込んで靴下を盗もうとサイズを測っていたところを発見され、気付いて逃げ出すが、朱紗丸とアオイ、カナヲが連携して投げたバレーボールをモロに喰らい、捕獲される。カナヲの髪飾りは盗んでいなかったが、それ以外にたくさん盗んでいたため、警察を呼ばれ、逮捕された。
関連タグ
半天狗、童磨…分身作成能力を持つ鬼繋がり。童磨は女性を好んで食うと言う点でも似通っている。しかしこれらは十二鬼月の上弦の鬼であり、強さが桁違いなのだが、上記した分身同士の情報共有手段が限定されているという弱点については、半天狗の方は共通している。