概要
ボーイング777は米ボーイング社が製造する大型旅客機であり、「トリプルセブン」という愛称で呼ばれる(元々は全日空の登録商標)。 日本の国内線においては767と並ぶ幹線向け旅客機の主力で、羽田空港などの主要空港では非常によく見かける機体である。
開発の経緯
1980年代、ボーイング社は既に世界最大の旅客機メーカーと言う称号を獲得していたが、欧州エアバス社による猛烈な追い上げを受けていた。事故や老朽化に騒音問題で悩まされたDC-10やロッキードL-1011が退役し、互角の飛行性能を持つ飛行機はMD-11やエアバスA330やA340となった。特にA340は747型機には座席数では劣るが、航続距離が同等かつ、燃費は遥かにA340の方が優秀だった。
そこで、ボーイング社はB767型とB747型の間の席数を埋めるべく、新機体の開発を行うことになり、1986年にマーケティング調査を実施、新機体の設計等について各航空会社を調査した。(ワーキング・トゥゲザー⇒詳しくは後述)
その結果、1989年末にはボーイング社の承認を得て「767-X」として開発されることになった。
その後も各航空会社からも意見を取り入れつつ、1990年には「767-X」から「777」へ変更。1994年に初飛行した。2021年現在も製造が続けられ、大幅な改良版「ボーイング777X」が開発中である。
1980年代以降の旅客機は、開発が年単位で遅れることが多いが、本機は新機種としては珍しく順調に開発が進められた。これは本機が767の拡大版的な存在で、フライバイワイヤ(後述)以外の新機軸の導入が少なかったためである。
運用
他の全世界に普及している機種と比較して安全性の高さには定評があり、事故の件数も死亡者も少ない。運航開始当初から長らく死亡事故は発生していなかったが、2013年7月にはアシアナ航空が全損死亡事故を起こしたほか、2014年3月にはマレーシア航空の777が消息を絶ち、初の乗員乗客全員が死亡した事故になった。777の乗員乗客の死亡事故は上記の2件のほかは2014年7月にウクライナでミサイル誤射・撃墜された事件のみである。
なお、日本政府は政府専用機を2019年3月に退役させたボーイング747-400の後継機として、同年4月よりB777-300ERを運用している。
特徴
飛行機の基本データ
初飛行 | 1994年 |
---|---|
最高速度 | 0.84M |
2016年末時点での生産機数 | 1445機 |
見た目は、乱暴に言えば「でかい767」。
実際、登場して間もなくは「767と見分けがつかない」と言われていて、全日空機は就航した当初わざわざ尾翼の「ANA」の代わりに「777」と書いていたのは有名。
747に迫る輸送力を持ちながら、双発機ゆえに燃費も良好と、いいことずくめのように思えるが、実は搭載している航空史上最も巨大なエンジンは輸送に苦労するという弱点を抱えている。
仮にエンジンが故障して現地修理が不可能の場合、予備を持ってこなければならないわけだが、このエンジンを載せて飛べる飛行機は非常に限られており、ファンを外さない状態なら、ウクライナのAn-124(世界最大の輸送機)でしか運べないと言われる(のちにボーイングも747LCFという機体を運用し、自社で運搬することが可能になった)。
ある意味、双発機の限界に行きあたったとも言える存在である。
ボーイング初のフライバイワイヤ
737、747、757、767など、これまでボーイング社が開発・製造してきた旅客機は油圧による操縦システムであったが、777では初めてフライバイワイヤによる操縦システムを採用している。しかし、サイドスティックによるコントロールを採用したエアバス社とは違い従来の操縦桿を残し、また、翼面のセンサーが検知した風圧を操縦桿に伝えることで、これまでの油圧による操縦を疑似的に再現している。
完全グラスコクピット
直前に開発された747-400のグラスコクピットをさらに改良した、決定版ともいえるグラスコクピットを採用している。従来の機械式計器はバックアップ用に残されているもののみ。
派生形
777-200
基本型。座席数は300~400。
777-200ER
777-200に燃料タンクを増設し、エンジンもより強力なタイプに換装した航続距離延長型。ANAでは当初国際線用に使用していたが、2017年現在は全て国内線に転用されている。しかもそのうち数機(-200が退役した分の代替機)は最初から国内線用に推力を落としたエンジンを装備させたタイプで、「航続距離延長型の短距離仕様」というややこしいモデルになっている。
777-200LR
777-200ERよりさらに航続距離を延長したタイプ。翼端にレイクドウイングチップを装備し、エンジンは世界最大の推力を持つタイプ(-300ERと同じ)を装備している。世界中のほとんどの空港をノンストップで結べるほどの航続力を誇る。
777-300
777-200の胴体を延長し、座席数を増やしたモデル。アジア地域の航空会社のみが導入した。座席数は400~500。
777-300ER
777-300の航続距離延長型。翼端にレイクドウイングチップを装備し、エンジンは世界最大の推力を持つタイプを装備している。この型を導入した航空会社ではボーイング747にかわり長距離国際線の主役となっている。
777F
-200LRを基に-300ERの降着装置と燃料タンクを組み合わせた貨物型。他のタイプにおける客室が貨物室に置き換えられ、100トン以上の輸送力を持つ。またこれとは別に旅客型-300ERを貨物型の-300ERSFに改修する「ビッグ・ツイン」プログラムをイスラエルのIAI社が発表している。
777X(-8/-9)
現在開発中の新世代型。-200や-300よりさらに大型になり、空港での取り回しを考えて主翼の折り畳み機能が装備されている。とはいえ、艦載機のように根元や真ん中から大きく折れ曲がるのではなく、翼端が立ち上がってウイングレットのような形状になる。当初は2020年に引き渡し・就航する予定だったが遅れており、2023年の運用開始となる見込みだったがそこから更に後ろ倒しとなり、2025年運用開始を見込んでいる。
また777Xでは全日本空輸(ANA)からの発注は獲得したものの、日本航空(JAL)は対抗機のA350に受注をさらわれてしまい、欧州エアバス社に敗北した。
詳しくはWikipediaを参照してほしい。
ワーキング・トゥゲザー
777はボーイングと発注した航空会社が設計上の諸問題を解決したり、航空会社が個々の要望を出していく「ワーキング・トゥゲザー」を結成した。これは777を767のただの拡大版で作ろうとした際、殆どの航空会社にダメ出しされてしまったため、開発当初からユーザーである航空会社の意見を取り入れようと考え出された。
有名なもので言うと
・全日空提案:便座の蓋をゆっくりと閉める機能(よく日本のトイレで便座の蓋がゆっくり閉じるアレのこと)
・日本航空提案:英語を母語としない国でも運用しやすいように、マニュアルを平易な英語で書く。
・ユナイテッド航空提案:雪国で点検をする際に手袋をしたままで各部の点検用アクセスドアを開閉できるようにする。またそれらの多くが大きな脚立などを用意しなくても手が届くような高さにする。非常口は女性のキャビンアテンダントでも片手で開閉できる軽さにする。