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概要編集

各国の政府が保有・運用する航空機。アメリカのエアフォースワンが有名。

国内の要人の海外訪問などに使われる他、何らかの理由で外国に取り残された民間人の「救出」などに使われることもある。


使用される機体は様々であり、プライベートジェットクラスの小型機からボーイング747A340のような大型機まで何でもありである。


近年は双発機の長距離飛行制限が緩和されて航続距離が伸びた事もあり、大きくてもせいぜいボーイング777A330程度が主流となっており、ボーイング737NGのような「小型で航続距離の長い機体」も流行している。


基本的には民間の航空会社で退役した「中古」を使用する場合が多い(日本のような例外もある)。運用を行うのはその国の空軍或いはそれに相当する組織であることが多く、日本の場合は航空自衛隊が運用を担当する。


内部には要人用のベッドやオフィス、会議室などを備え、さらに国の運営に係る不測の事態が起きた時に備えて本国と繋がる特殊な通信装置が備えられている事も多い。


日本の政府専用機編集

よく知られているのがB747(747-400型)。先述の通り、中古機を使う場合の多い政府専用機の中で珍しく新造機を使用、日本政府は予備機を含めて2機を導入した。これには航続距離もあったが、貿易摩擦の解消という意味合いも含まれている。


しかし4発機では燃費が悪い(詳細はB747の記事で)ことと、整備を受託していたJALがB747の扱いを止めてしまったことから、2019年3月をもって退役。同年4月より、後継機としてB777-300ERが専用機として運用されている。


退役したB747型の専用機は売却にかけられ、2022年5月に小型人工衛星の打ち上げを手がける米ヴァージン・オービットが取得したと発表。旧専用機と見られる画像をツイッター上で公開している。2020年にはヴァージン社と大分県が「水平型宇宙港」として大分空港の活用を目指す合意を締結しており、近い将来に大分で再びその雄姿を見られるかもしれない。


運用は航空自衛隊・千歳基地の特別輸送航空隊が行っており、パイロットキャビンアテンダントは全員自衛官である。


ちなみにコールサインは「乗客」を乗せていない状態(千歳基地から"出勤"するときなど)では「CYGNUS」(はくちょう座という意味である)、実際に運用に就いている際には「JF」が与えられている。


なお、2002年のサッカー日韓共催ワールドカップではカナダで行われた先進国首脳会議からの帰途、当時のドイツのゲアハルト・シュナイダー首相が帰国する小泉純一郎首相とともに母国の応援のため政府専用機に同乗、来日した。



機内(747-400・旧専用機)編集

気になる機内は原則部分的にしか公開されていなかったが、2019年の退役により極秘であった貴賓室を含めて旧専用機内部の様子が公開されている。

  • 貴賓室

747では通常ファーストクラススペースに利用されるコクピット下の第一ドア前(Aデッキ)は丸々「貴賓室」として使用される個室。天皇や総理大臣が搭乗するスペースであり、専用のトイレ、執務室、長距離航行に備えたベッドやシャワールームなども備え、航空機の中とは思えないほどの多機能・豪華な設備を備えているとされるが、安全上の問題により退役するまで非公開とされてきた。

  • 夫人室

Bデッキの第一ドア周辺右舷(通常搭乗に用いられないドアの側)から中央部にかけて設置。個室。夫人室と言われるのは通常皇后の搭乗スペースとして使用されるため。総理大臣輸送時には官房副長官室(通常随行員の序列二位)として使用されるが、2002年に諸事情でドイツ首相が日本国首相小泉純一郎(当時)と「相乗り」した際は、小泉はドイツ首相に貴賓室を譲ってこちらを使用した。シャワールームは無いもののベッドやトイレなどを装備し貴賓室に準じるとされる。

  • 秘書官室

Bデッキ後方に設置。開放室。通常は政府高官や高位の侍従職など、天皇や首相に準じたいわゆる「お偉いさん」の搭乗スペース。夫人室に面した2席のみ機体進行方向と逆位に設けられ、ファーストクラス然のソファ席が設けられる。同席と向かい合い、また囲むように設置したその他の席は後述する随行員席と同じシートが導入されている。

  • 会議室

Cデッキ前方右舷から中央部にかけて設置。個室。固定机一卓と、それを囲む形で会議用の大型回転椅子4脚が設置される。リニューアル前までは十数人が会議可能な大型の会議室となっていたが、規模が縮小された。

  • 事務室

会議室後方、大型会議室縮小に代わって設置された。半個室。リニューアル前の更に前の初代仕様時などでは大型会議室の後位に事務室があったが、随行員席以下一般座席の増加に伴い消失、改装後現行仕様までは秘書官室に机を設置して対応していた。その通り事務スペースで、それ用の机などがある。

  • 小型個室

事務室後方、準VIPなどに使用?空いたスペースの活用法として設置されたと考えられる個室。

  • 輸送統括者用スペース

前項三室の向かい側、左舷よりの通路脇に設置されている座席と机は、輸送統括責任者用のスペースとして活用されている。

  • 簡易ベッド対応ソファ

上記スペースに隣接して、ロングシート状に設置されたソファが存在するが、これは簡易ベッドとして展開可能である。

  • 随行員室

Dデッキ全域、開放室。政府等の随行員が使用するスペース。座席は、2004年頃よりJALの長距離国際線で使用されているビジネスクラスシート「シェルフラットシート」を元に、政府専用機用に座席カラーなどを調整した座席が使用されている。元となったシート同様、フラットシートになる。また座席配備も同様に2-3-2の2通路横7席仕様。ただしプライベートモニター(座席TV)は省略されといる。

  • 一般客室

Eデッキ全域のうち、中央部記者会見席を除く箇所に配備。開放室。報道関係者など、その他の同行者が利用する客室。こちらもJALの「クラスJ」同様のシートを、随行員席同様の座席カラーで設置している。座席配備もクラスJ同様の2-4-2の2通路横8席仕様。他クラスJシートには無いプライベートコンセントを設置。プライベートモニターは随行員席同様存在しないが、オーディオ設備は設置している。

  • 記者会見席

Eデッキ、一般客室に囲まれる形で設置。三席の大型固定座席とテーブルを進行方向逆位に設置し、すぐ正面の一般席とテーブルを挟んで向かい合う形となっている。一般に機上での記者会見に臨む際に使用する。

  • クルー(乗務員)スペース

乗務員や現地での随行整備員の座席は二階席(アッパーデッキ)に設置される。パイロット用の仮眠室も同部分に設置。座席は四席のみ一般客室と同様のクラスJ然のシートが設置されているが、他は同機で唯一のエコノミークラス同様の座席。先述の四席のみ二列、他は三列配置で、これが通路一つのみを挟んで両側に一組ずつ、つまり3-3または3-2の座席配置となる。二階に設置することで、一階の一般客との干渉を極力避けることが出来る。



後継機にB777を選んだ理由編集

まずボーイング製品を選んだのには「アメリカとの付き合い」と「扱いやすさ」の2点が大きいと言われている。


特に扱いやすさであるが、現場(実際に運用する航空自衛隊や、機内サービスを担当するJALなど)と今までと同じメーカーの機体のほうが何かと勝手が良い。


飛行機の「ハンドル」に当たる操縦桿だけとってもボーイングは操縦輪方式(車のハンドルのような物)であるが、エアバスはサイドスティック方式(脇につけるジョイスティック型の操縦桿)が基本となっている。


B777も当初はエアバスにつづいてサイドスティック方式を採用するかと検討したが、各国の航空会社から「ハンドル変えるな!色々面倒なことになる!」と反対され今の操縦輪方式を続けているという逸話がある。長年ジャンボジェットを飛ばしてきた「現場」からすれば、慣れ親しんだ今までどおりのインターフェイスのほうが都合がよかったのである(しかも機体を直接操作する部分なら、なおさら)。


またメンテナンスの面で言えば、今まで政府専用機のメンテを担当してきたJALが経営再建の関係で政府専用機絡みから撤退することになったので、JAL撤退後のメンテナンス委託先も確保しやすいという理由もあるとか(委託先はANAとなる)。


次にボーイング製品の中でも777-300ERを選んだ理由であるが、これには収容力が現行の747-400に近いためであると言われている(収容力に関してはエアバスでは最大のA380では大きすぎ、A350-900は微妙に劣るとされる)。


日本国では政府専用機を除く747旅客型は全て引退しており、ボーイングの現行製品である747-8は日本貨物航空による貨物型しか導入されていないため、JAL・ANAとも導入済の777-300ERを選定したとされる。


ただし現行の747の強みとして、二階席部分に乗務員用の座席スペースを設けており、これによって執務室などの1階メイン部分を通らずに業務が遂行出来るが、777には二階が無いため、別の手段を講じる必要がある。ただし、777には747に匹敵する広大な天井空間を利用した乗務員用仮眠室の設定などが可能である。


エアフォースワン(VC-25)と政府専用機の違い編集

「アメリカの政府専用機」的に見られることの多いエアフォースワンことVC-25であるが、これは他国の政府専用機とは若干毛色が違う部分がいくつかある。


相違点は色々あるものの、一番の違いは「事実上のアメリカ合衆国大統領の自家用機」という位置づけであり、常識的な範囲内であれば大統領が自由に使うことができるという点である。会談時に他国の首脳送迎も行われることがあり、日本の小泉首相も訪米時にブッシュ大統領と同乗したことがある。一方、日本を含めたアメリカ以外の国ではあくまで「国家の持ち物」であり、首相や国王といえども好き勝手に利用することは許されないということが多い。


なお、エアフォースワンは「大統領が搭乗中の空軍機に与えられるコールサイン」であり、政府専用機を意味する言葉ではない(詳細はエアフォースワンの記事を参照)


大統領専用機として通常使用されるVC-25は日本国政府専用機747と同じ2機が存在するが、アメリカではこの他にB-757をモデルに航続距離を10000km以上航行可能なように改造したC-32が6機存在し、機体整備などで使用出来ない際の予備機として活用される。


日本国政府専用機には予備機が無く、主務機と随行する副務機として2機を共に使用すると本拠地で待機することが出来ない。また整備などで片方が使えない場合、副務機として民間機のチャーターが必須である。こうした状況から日本国では3機目の購入も検討されたが、折しもバブル崩壊に重なったために購入は大蔵省(当時)に凍結され、以降導入計画は頓挫したままとなっている。


また、VC-25は「747-200Bに747-400同様の仕様(グラスコクピットなど)」を導入したものであるがあくまでベースは在来型747である。それに対し、日本国政府専用機は747-400そのものを導入している。アメリカではVC-25の後継機として747-8を選択した。これも777を選択した日本の後継機とは異なる。


政府専用機 777-300ER「MRJ」


関連項目編集

飛行機

航空機

輸送機

VIP

ボーイング747

ボーイング777

MRJ

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