概要
全日空(英:All Nippon Airways)は、JAL(日本航空)と共に国際便の旅客機を出している日本の航空会社の一つである。また、国際的な航空連合の一つ「スターアライアンス」に所属している。IATAコード(2レターコード)はNH、ICAOコード(3レターコード)はANA。
会社側が公式名称として採用している「ANA」で呼ばれることが多い。公式名称が変更になった理由は不明だが、国際線進出後中国や台湾で「毎日空席」という意味ととられたことから、会社側がイメージに配慮したのでは?という説が某航空雑誌などで囁かれている。
旧マークには、レオナルド・ダ・ヴィンチのヘリコプターが意匠として使われている。また、旧塗装は機体頭頂部にも薄青のラインが入っていることから「モヒカン塗装」と呼ばれた。なお、旧マークは、直系の前身である日本ヘリコプター輸送(通称日ペリ航空、1952年12月に設立)から引き継いだもの。因みに日本ヘリコプター輸送は、その名の通りヘリコプターオペレーターとして設立されており、固定翼機(いわゆる普通の飛行機)による定期航空輸送会社に転換し、さらには大阪市に本社をかまえていた極東航空(こちらも1952年12月に設立)を吸収合併・「全日空」に改名してからもヘリコプターのオペレートを行っていたが、1986年2月に「オールニッポンヘリコプター」として分離、2011年にそのオールニッポンヘリコプターを手放した。また、2レターコードのNHは日本ヘリコプター輸送から取っている。
歴史
1952年に設立された日本ヘリコプター輸送と極東航空の航空会社2社が前身。1958年にこの2社が合併する形で全日本空輸となった。しかし、合併からわずか5か月後に墜落事故を起こしたこともあって経営不振に陥り、JALの援助を受けることとなる。
高度経済成長の時期になると急速に成長を遂げ、当時最新の機材も数多く導入する。とりわけJALとのスピード競争はすさまじかった。全日空にとっては、路線面でも補助金でも優遇されているJALは民間だけでやっている全日空にとって追い越すべきライバルだったのである。
運輸省が間に入る形で両社ともボーイング727を導入したが、全日空は自社発注とは別にリースした機体を路線に先行投入した。もちろんJALからは「運輸省の協定を踏みにじるものだ」と非難されたが、「国際線用に政府から融資してもらったCV880を羽田―札幌線にいれていたJALには言われたくない」と反論している。727による羽田―大阪の所要時間は26分と驚異的なものだった(もちろん全日空の速度も機体の性能として問題のない飛行速度ではあったが、JALはさらに安全に配慮してやや遅めの飛行速度としていた)が、スピードにこだわりすぎたために1966年、727の1機が羽田沖に墜落する事故を起こしたために、この方針は撤回されることになる。1966年だけで2回も墜落事故を起こしたため、安全管理の徹底に力がそそがれることとなった。
1970年代に入るとL-1011やボーイング747を導入し、1986年から国際線にも進出、1999年にはスターアライアンスに加盟した。
2000年代には同時多発テロやSARSの流行で一時的に業績が悪化したが短期間で回復し、2014年には旅客キロでJALを追い抜いている。
2019年5月にはエアバスA380-800「FLYING HONU(空飛ぶウミガメ)」を「成田―ホノルル」線に投入、話題になっている。
主な運航機材
- YS-11:1965年就航~1996年退役。
- ボーイング727:1964年就航~1990年退役。-100型及び-200型を運航。全日空初のジェット旅客機。
- ボーイング737-200:1969年就航~1992年退役(エアーニッポンに移管)。
- ボーイング737-500:1995年就航~2020年退役(当初はエアーニッポンが運航し、退役時点ではANAウイングスに完全移管)。「スーパードルフィン」の愛称が付与され、エンジンカウルにイルカ(ドルフィン)のイラストが描かれていた。
- ボーイング737NGシリーズ:2005年就航。-700/700ER型及び-800型を運航。このうち-700ER型は全日空のみが「ANAビジネスジェット」の名称で2機のみ導入したもので、ビジネス需要にスポットを当てた長距離国際線用機材として運航された。2016年に-700ER型が、2021年に-700型がそれぞれ退役。
- ロッキードL-1011トライスター:1974年就航~1995年退役。全日空初のワイドボディ機にして国際線機材。
- ボーイング747クラシック:1978年就航~2006年退役。当初は国内線向けのSR-100型を運航した後、国際線進出開始後は中古機も含む多くの-200B型も導入した。
- ボーイング767:1983年就航。-200型の他、-300/300ER型を運航。2004年に-200型退役、2020年に-300型が退役。
- ボーイング747-400:1990年就航。国内線仕様の-400D型も運航した。2011年に-400型退役、2014年に-400D型退役。
- エアバスA320シリーズ:1991年就航(A321は1998年就航~2008年一時退役、2016年再就航)。A320及びA321、そしてそれぞれの第2世代型ともいえるA320neo及びA321neoを運航。
- ボーイング777:1995年就航。-200型及び300型(ER型含む)を運航している他、次期主力機として-9の導入を決定。なお-200型/-300型はボーイング787によって代替され退役予定。
- ボーイング787:2011年就航。全日空がローンチカスタマーとなった機体で、-8/9/10型全てのタイプを導入している。
- エアバスA380-800:2019年就航。
国内線就航路線
2024年7月現在。太字は拠点空港。コードシェア便は除く。
北海道地方
北海道
東北地方
青森県
- 青森空港(AOJ)
秋田県
山形県
- 庄内空港(SYO)
宮城県
- 仙台空港(SDJ)
福島県
- 福島空港(FKS)
関東地方
千葉県
- 成田国際空港(NRT)
東京都
中部地方
新潟県
- 新潟空港(KIJ)
富山県
- 富山空港(TOY)
石川県
静岡県
- 静岡空港(FSZ) ※季節便
愛知県
- 中部国際空港(NGO)
関西地方
大阪府
兵庫県
- 神戸空港(UKB)
中国・四国地方
鳥取県
島根県
- 石見空港(IWJ)
岡山県
- 岡山空港(OKJ)
広島県
- 広島空港(HIJ)
山口県
香川県
- 高松空港(TAK)
徳島県
- 徳島空港(TKS)
愛媛県
- 松山空港(MYJ)
高知県
- 高知空港(KCZ)
九州地方
福岡県
- 福岡空港(FUK)
佐賀県
- 佐賀空港(HSG)
長崎県
大分県
- 大分空港(OIT)
熊本県
- 熊本空港(KMJ)
宮崎県
- 宮崎空港(KMI)
鹿児島県
- 鹿児島空港(KOJ)
沖縄地方
沖縄県
2024年7月時点で全国32都道府県(うち1県は季節限定運航)に路線網を伸ばしている。
なお日本で民間空港が存在しない、または民間空港は存在するものの定期便がない府県は11(東から栃木、群馬、埼玉、神奈川、山梨、岐阜、福井、滋賀、三重、京都、奈良)である。民間空港がある残りの36都道府県のうち32都道府県に路線を持っており、これは日本航空の30を上回る(逆に民間空港が存在しながらもANAが進出できていないのは東から岩手、茨城、長野、和歌山の4県であり、このうち岩手・長野・和歌山はJALグループの寡占地域、茨城はスカイマークの寡占地域である)。
JALと比較して強みを持つ地域は、鳥取県をはじめとする中国・四国地方、北陸地方、東京都・長崎県の島嶼部地域などである(逆に薩南・沖縄の離島方面では完全にJALに負けているほか、東北地方においても県の主要空港に次ぐ第二の空港を使っているケースが多い)。例として富山空港は、ANA中興の祖とされる元運輸次官の若狭得治(わかさ とくじ)氏の出身地という縁で歴史的にANA一強体制が築かれているという経緯がある。
国際線就航路線
2024年7月現在。日本国内の空港からは東京国際空港(HND)、成田国際空港(NRT)、関西国際空港(KIX)の3空港から発着路線がある。「首都圏デュアルハブモデル」と称した国際線の東京(羽田・成田)一極集中策を取っており、大阪・名古屋からも路線網を伸ばすJALとは対照的といえる。
東京国際空港(HND)発着路線
大韓民国(韓国)
- 金浦国際空港(GMP)
中華民国(台湾)
- 台北松山空港(TSA)
中華人民共和国(中国)
- 北京首都国際空港(PEK)
- 上海浦東国際空港(PVG)
- 上海虹橋国際空港(SHA)
- 広州白雲国際空港(CAN)
- 青島膠東国際空港(TAO)
- 深圳宝安国際空港(SZX)
香港
- 香港国際空港(HKG)
フィリピン
- ニノイ・アキノ国際空港(MNL)
ベトナム
- タンソンニャット国際空港(SGN)
タイ王国
- スワンナプーム国際空港(BKK)
マレーシア
- クアラルンプール国際空港(KUL)
シンガポール
- シンガポール・チャンギ国際空港(SIN)
インドネシア
- スカルノ・ハッタ国際空港(CGK)
インド
- インディラ・ガンディー国際空港(DEL)
トルコ
- イスタンブール空港(IST)
- 2025年2月12日に就航予定
イギリス
- ロンドン・ヒースロー空港(LHR)
フランス
- パリ・シャルル・ド・ゴール空港(CDG)
ドイツ
- フランクフルト空港(FRA)
- ミュンヘン空港(MUC)
オーストリア
- ウィーン国際空港(VIE)
- 2024年8月1日に運航再開予定
イタリア
- ミラノ・マルペンサ空港(MXP)
- 2024年12月3日に就航予定
スウェーデン
- ストックホルム・アーランダ空港(ARN)
- 2025年1月31日に就航予定
アメリカ合衆国
- ロサンゼルス国際空港(LAX)
- ジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港(IAH)
- シカゴ・オヘア国際空港(ORD)
- シアトル・タコマ国際空港(SEA)
- サンフランシスコ国際空港(SFO)
- ジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)
- ワシントン・ダレス国際空港(IAD)
- ダニエル・K・イノウエ国際空港(HNL)
カナダ
- バンクーバー国際空港(YVR)
オーストラリア
- シドニー国際空港(SYD)
成田国際空港(NRT)発着路線
中華人民共和国(中国)
- 上海浦東国際空港(PVG)
- 大連周水子国際空港(DLC)
- 杭州蕭山国際空港(HGH)
香港
- 香港国際空港(HKG)
フィリピン
- ニノイ・アキノ国際空港(MNL)
ベトナム
- タンソンニャット国際空港(SGN)
- ノイバイ国際空港(HAN)
タイ王国
- スワンナプーム国際空港(BKK)
マレーシア
- クアラルンプール国際空港(KUL)
シンガポール
- シンガポール・チャンギ国際空港(SIN)
インドネシア
- スカルノ・ハッタ国際空港(CGK)
インド
- チャトラパティ・シヴァージー国際空港(BOM)
ベルギー
- ブリュッセル空港(BRU)
アメリカ合衆国
- ロサンゼルス国際空港(LAX)
- シカゴ・オヘア国際空港(ORD)
- サンフランシスコ国際空港(SFO)
- ダニエル・K・イノウエ国際空港(HNL)
メキシコ
- メキシコシティ国際空港(MEX)
オーストラリア
- パース空港(PER) ※季節便
関西国際空港(KIX)発着路線
中華人民共和国(中国)
- 北京首都国際空港(PEK)
- 上海浦東国際空港(PVG)
ANAコレ
2005年にANA子会社の全日空商事はANAの制服変更にあわせて海洋堂制作の各時代の乗務員制服のフィギュアシリーズ「ANAユニフォームコレクション」を販売した。当初はインスタントスープのおまけとして発売したが後にローソンの食玩としても販売するようになった。
サッカー
かつて全日空はJリーグチーム「横浜フリューゲルス」を所有していたが1998年に共同経営先の佐藤工業の経営危機と全日空本体の赤字を理由にマリノスに吸収合併された。その後も全日空は横浜F・マリノスを応援しているとされる。
関連イラスト
関連タグ
名古屋鉄道・・・親会社のANAホールディングスの筆頭株主だが、中部国際空港から国際線を飛ばさない為に関係が悪化、将来的には絶縁される可能性もある。
朝日新聞・・・日本ヘリコプター輸送は朝日新聞航空部出身者が中心となって設立した。その縁かは不明だがテレビ朝日のニュース系列はANNとこれまた一字違い。
反町康治・・・社員でありながら全日空横浜サッカークラブ(⇒横浜フリューゲルス)の選手だった。(退社後にプロ契約でベルマーレ平塚に移籍。)
因みにプロ野球選手でも広池浩司投手が一時期社員として在籍した。(1999~2010年まで広島東洋カープ所属、現:埼玉西武ライオンズ職員)