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ボーイング787

ぼーいんぐせぶんえいとせぶんまたはななはちなな

米ボーイング社が設計・製造するジェット旅客機。
目次 [非表示]

概要

ボーイング社が設計・製造する中型ジェット旅客機2010年代における同社の最新鋭機である。

愛称「ドリームライナー」。


2004年より開発開始、2009年に初飛行。


中型機であるがそれまでの大型機並の航続距離を実現しており、大型機を飛ばす程ではないが需要が期待される長距離路線への投入が想定されている。


2011年11月1日より、ローンチカスタマーでもある全日本空輸全日空ANA)によって、羽田空港~岡山空港・広島空港間にて世界で初めて定期便に投入され、以後その他の国内亜幹線(羽田~熊本等)や、上記の通り中需要長距離路線への投入が行われている。2012年には日本航空JAL)へも納入され始めた。


ちなみに米国企業製といいながら機体の多くの部分は各国で製造される。特に日本企業三菱重工業など)の分担比率は約35%に及んでいる。


開発の経緯

ボーイング社は777に続く「新商品」として、「遷音速(ほぼ音速に近い速度)で航行する中型旅客機が必要になるだろう」と予想し、「ソニッククルーザー」計画を立ち上げた。

このソニッククルーザーはカナード付のダブルデルタ翼と低バイパス比ターボファンエンジンを持ち、マッハ0.95程度で航行する中型機という計画である。

しかし、2001年のテロにより航空利用者が低迷したことで「速度よりも経済性」という流れになったため、ソニッククルーザー計画を中止。当時「7E7」という仮称が与えられていた、767クラスの高効率の中型機開発に着手する。これが後の787となった機体である。

(ただ、このソニッククルーザー計画自体も外観と「遷音速で飛ぶ旅客機」という発表がなされた程度であり、一部では本当はソニッククルーザーを商品化するつもりなど最初からなかったとか、A380に対する嫌がらせのためだけに発表したなどとすら言われることもある)


2004年に全日本空輸が50機の大量発注を行ったことにより本格的な開発がスタートしたが、多くの開発メーカーの足並みが揃わず開発は難航し、初飛行は計画より2年遅れ、約275億ドル(3兆円以上)という空前の開発費用を費やしたという。本機の膨大な開発費用は、2010年代のボーイングの経営を圧迫する要因になった。


んで、今までの飛行機とどこが変わったの?

機体に炭素繊維複合材(カーボンファイバー)を全面採用

787の一番の特徴と言えるのが、機体に炭素繊維複合材を全面的に採用したことである。

従来の航空機でも炭素繊維複合材は使われていたが、飽くまで部分的に採用されただけであった。

一方787は、エンジンカウルのような熱影響の大きい部分以外は殆ど炭素繊維複合材を採用している(機体に至ってはほとんどが炭素繊維製とも言われる)。

ここが最大の違いといえるだろう。


炭素繊維は以下の様な特性を持つ。

  • 長所

(金属材料と比べて)軽い・強度が高い・しなやか・湿気に強い・金属疲労が起こらない

金属材料とくらべて軽いということは当然燃費向上に寄与する。

「強度が高い」というのは、機内の与圧の圧力を今までより上げることができる(従来の飛行機は機内の与圧が高度2400m相当だったのに対し、787では1800m相当の圧力にまで高められるとされている)ということでもあるし、さらに空気の薄い高々度を飛行できるということにもつながる。

高々度なら空気が薄い、つまり空気抵抗が少ないので結果として燃費向上につながる。

(「ファントム無頼」で旅客機の機長・伊達がハイジャッカーに対して「この機はハワイまでの燃料しか積んでない。お前たちの行きたいところに行くには高度を上げて省エネするしか無い」と発言したのは、要するにこういうことである。尤も本当は、高々度からの弾道飛行で一時的な無重力状態を作り出し、神田・栗原コンビにハイジャッカー制圧のチャンスを与えるためであったが)

また、「しなやか」という特性は、振動を素材自体が吸収出来るということであり、結果として乗り心地の向上につながる。

「湿気に強い」という特性は、機内の湿度を地上とほぼ同じ程度に引き上げることを可能としたことを意味する。(従来の航空機の機内がとんでもなく乾燥していたのは、ぶっちゃけると錆を防ぐためである)

金属疲労が起こらないというのは説明不要。強度計算とかでの悩みどころから解放される。


  • 短所

熱に弱い(燃えやすい)・異方性がある・高い

そんな炭素繊維でも弱点はある。

まず、燃えやすい。

炭素繊維というくらいなので、主成分は炭素の塊である。よって、難燃化の処理は必須である。

異方性というのは、ものすごく乱暴に言うと「特定の方向の力にだけ弱い」ということである。

異方性の例としてわかりやすいと思われるのは「さけるチーズ」であろう。

さけるチーズはチーズの繊維の集合体なので、横からだと結構歯ごたえがある(切れにくい)けど、縦に裂くとあっさりと小さく出来る。

実はこれと似た性質が炭素繊維複合材にもある。

炭素繊維複合材により部材を構成するには、まず炭素繊維を目的の形に整形した上で、その整形した繊維を焼き固め、さらにプラスチックをしみこませるという手法をとっている。

このうち「炭素繊維を整形する」というのがクセモノである。

炭素繊維の正体は呼んで字のごとく炭素の繊維、糸である。この糸を編んだり巻いたりして「原型」を作るのである。

飛行機の胴体のような「筒形」の部材を作るには、炭素繊維をまず芯に巻きつけて形を作り、それを焼き固めてプラスチックを浸透させる。

この「芯に巻きつける」という工程で、丁度糸巻きのような状態になり、「軸と直角方向にせん断する力に弱い」という性質が生まれてしまう(土産物店で売られている、いわゆるマジックスプリングを思い浮かべればなんとなくでも想像出来るだろう)。

要するに、例えば胴体の場合は「押したり引っ張ったりする力には弱くても、ずらす力には弱い」という性質となってしまうのである。

金属材料であればさほど気にする必要は無い(一枚の板なので。誤解しないように言っておけば、金属にも結晶の成長方向などにより異方性は発生する)が、炭素繊維の場合はそうは行かないのだ。(金属材料と比べれば、無視出来ないほどの異方性が発生する)

「高い」というのは、まだ炭素繊維複合材自体が特殊な素材に入る故の宿命と言える。ここは量産化に期待するしか無い。


「オール電化飛行機」?

787は駆動系以外の動力を極力電力で賄っているため「オール電化飛行機」と呼ばれることがある。


ブリードエア(エンジン内の圧縮空気を一部取り出して与圧空調などに回す)を廃止し、主翼の除氷装置をブリードエアを使う除氷ブーツ(空気を入れて膨らませて氷を割る)から電気ヒーターに変更し、与圧も電動ポンプで行なっている。また、油圧ポンプをエンジン直結からモーター駆動に置き換え、油圧で動いていたブレーキも電気式に変更した。これにより、エンジンの負荷を軽減し、燃費を向上させている。


もちろんその分電気系統を大幅に強化しており、従来機ではエンジン1基に対して1つであった発電機を2つずつ装備している。従来はエンジンの回転数に関係なく発電周波数を交流400Hzに保つ定速装置付きダイナモであったが、787は逆に電気を流せばスターターモーターとしても機能するジェネレーターに変更された。これにより自動車と同じように駐機状態からの単独でのエンジン起動を可能とし、理屈の上では高圧コンプレッサーの設備がない空港にも就航できる。787のジェネレーターは定速装置を廃しているので発電する交流の周波数(360~800Hz)がエンジン回転数に応じて変化してしまうが、半導体スイッチングによって常に一定の周波数を出力するようになっている。


しかし、飛行のための推力は従来通りジェットエンジンのみから得ており電気飛行機ハイブリッド電動飛行機ではないし、油圧系統も廃止していない(動翼の駆動を油圧ではなく電動にしたとの解説もあるが誤りである。油圧ポンプが電気式になったことを直接電気駆動と混同したものと思われる)。このため787を導入した航空会社は「住宅にたとえるならば、全エネルギーを電気でまかなうオール電化住宅になったわけではなく...『ガス暖房がエアコンでの暖房になった』といった話のイメージの方が適切です」としている。


中型機ながら大型機並みの航続距離

空気抵抗の少ない高々度の飛行を可能とした・エンジンのパワーを駆動(と発電)以外に割かなくて済むようになった・新設計の翼により最適化が図られたなどにより、B787はB767と同クラスの中型機ながら大型機並みの航続距離を手にすることができた。

これにより、需要がちょっと微妙な遠距離路線にも中型機である787で直行便を設けることにより、採算を採りやすくなった。


787に関しての疑問

  • 787による置き換え対象は767の他に一部の777となっているけど、なんで中型機で大型機の777を置き換えるの?

これは、要するに「需要はそれほどのものでしか無いが、距離の関係で仕方なく大型機を使っていたところに、『航続距離の長い中型機』である787を投入して採算を採りやすくするため」であると思われる。

現代の旅客機は機体=燃料タンク、特に主翼の内部を燃料タンクとする設計が主流である(インテグラルタンク)。

言い方を変えれば、機体が大きいほど燃料タンクの容積も大きくなるので航続距離も伸びるということである。

このため、そこそこ距離のある路線ではたとえ需要そのものは微妙でも距離の関係で仕方なく大型機である777などを投入しなければならなかったが、「航続距離の長い中型機」である787に置き換えれば、航続距離は777並なのに採算の取りやすい中型機という787を使用することにより、適正なコストで運航できる……ということが見込まれているため、と思われる。


不具合

2013年、ANAとJALが運航するB787に相次いで出火事故があり、全世界のB787が全て運航停止されるという事態に発展した。

火元はバッテリーリチウムイオン電池)であり、これは日本企業のGSユアサが担当した部分であったことから、日本企業の品質管理に疑いの目が向けられることになった。ボーイングは対処マニュアルを整備し運航を再開。GSユアサのバッテリーも引き続き使用することを発表したが、いまだ原因の完全な解明には至っていない。


関連タグ

B787 787

A350:ライバル・エアバス社の同規模機種。

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