概要
スマートフォン普及前の1990年代から2000年代にかけて使われていた情報端末。Personal Digital Assistantの略称で、日本語では(直訳ではないが)携帯情報端末と称されることが多かった。
基本的なコンセプトは電子手帳(organizer)を汎用コンピューターとして使えるように拡張し、パソコンなどとの連携機能を付加したというものである。よって基本的な機能はスケジュール帳やアドレス帳、ToDoリストなどであり、当時広く使われていた紙のシステム手帳をコンピューターに置き換えたものという趣を持つ。ガジェット好きに好まれたほか、ビジネスマンの間では実用的なツールとしてそれなりに普及していた。
機能
多くの機種はソフトウェアをインストールして機能を拡張したり、CFカード型デバイスで通信機能を付加することができたため、スマートフォンの源流とみなすこともできる。デジタル手帳関連以外の主要なアプリとしては、辞書やデジタルマップ、ワープロソフトや表計算、ゲームなどがあった。PDFや電子書籍の閲覧もできたが、当時はまだ漫画の配信サイトが充実していなかったため(当時からコミックシーモアなどのサービスはあったが)青空文庫が重宝されていた。
ペン入力の機種が多く、それを活かした電子ノート系のアプリもあったため、モバ絵という文化を育んだことが特筆される。一方でハードウェアキーボードを備えた機種も多く、電源のない出先や電車内で文章を書くには(当時のバッテリー持ちの悪いノートパソコンよりも)実用的だったため、今のポメラに近いデジタルメモ的なニーズもあった。
初期には単三乾電池駆動で白黒ディスプレイの機種が多かったが、2000年代に入り大容量のリチウムイオン電池を内蔵できるようになると、バックライト付きの液晶ディスプレイを内蔵し、動画や音楽再生などのメディアプレイヤー機能やWeb閲覧機能を充実させたものが出てくる。
2007年に指で操作できる静電式タッチパネルを備えフリック入力に対応したiPhoneが登場し、ゼロ年代末にかけて急速に台頭してくると、PDAは姿を消していった。
主要な機種・プラットフォーム
電子手帳を発展させたZaurusやPsionやPalmなどの独自プラットフォーム、パソコンのサブセットであるDOSやWindows CEベースの端末などがあった。独自プラットフォームは発展性がなく消え、Windows CEもAndroidやiOSとの競合に敗れて消えた。スマートフォン向けOSへの脱皮を目指したSymbianやWebOS(Palm OSの後継)も力尽きてしまった。
独自プラットフォーム
Zaurus PIシリーズ/MIシリーズ (シャープ)
PSION (サイオン) 後期のガラケーや一部のスマートフォンに採用されたSymbian OSの源流。
DOSベース
HP200LX(HP)
PC-98HA(NEC)
Palmデバイス
Palm/Tangsten/Zire(パーム)
CLIE(ソニー)
Visor(ハンドスプリング)
WIndows CE
モバイルギア(NEC)
シグマリオン(NTTドコモ) NECのOEM。
INTERTOP(富士通)
Jornada (HP)
CASSIOPEIA (カシオ計算機)
Linux
Zaurus SLシリーズ(シャープ) Ubuntuベースのいわゆる「Linuxザウルス」。MIシリーズとの互換性はない。
NetWalker(シャープ) Ubuntuベース。事実上のZaurusu SLシリーズの後継。
その他
今でいうAIアシスタント的なコンセプトを掲げたMagic CapベースのMagic Link(ソニー)、NewtonテクノロジーとARMプロセッサを搭載したNewton(Apple)、BTRONを搭載したBrainPad TiPO(セイコーインスツル)など、単なるモバイル端末というより「新しいペンベースのコンピュータ」を作るというコンセプトで野心的な技術を詰め込んだ機種もあったが、当時は周辺技術が未熟で成功しなかった。
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