あらすじ
1942年、第二次世界大戦。日本統治下のインドネシア・ジャワ島レバクセンバタには日本軍の俘虜収容所があった。
ある朝、俘虜の一人であった英国陸軍中佐ロレンスは、日本軍のハラ軍曹に叩き起こされる。ハラの判断で、ある事件の処理を行うため、日本語ができるロレンスに立会いをさせようというのだ。その事件とは、朝鮮人軍属のカネモトが俘虜のオランダ兵を犯したというもの。この収容所で男色は御法度だった。ハラはカネモトに切腹をさせようとするが、そこへ収容所長のヨノイ大尉が現れ、処理は先延ばしになる。
これを機にロレンスとハラの間には立場を超えた奇妙な友情が生まれる。
同日、バダヴィアの軍律会議に出席したヨノイは、日本軍相手に果敢に立ち向かった英国陸軍少佐セリアズと出会い、その反抗的な態度に視線を奪われる。裁判とは名ばかりの取調べが終わった後、セリアズは処刑されるかと思いきや、レバクセンバタでヨノイの監視下に置かれることとなった。
敵軍の情報を引き出そうと、ヨノイは連日俘虜を苦しめるが、セリアズは奔放な言動で日本軍を翻弄し、俘虜たちを勇気付ける。そんなセリアズにヨノイは心を乱される。
立場と価値観の違いから東西両軍の間に緊張が張り詰めていく。そんな戦場にもクリスマスがやってくる。
概要
大島渚の後期の代表作。通称を「戦メリ」。
戦争映画ながら重火器は登場せず、戦闘シーンもない。キャストは男性ばかりという異色作である。
統治軍と"俘虜"という立場の違いから描き出される人間ドラマであり、フランスなどの一部海外では『Furyo』というタイトルで公開された。
原作はローレンス・ヴァン・デル・ポストの手記『影の獄にて』より、『影さす牢格子』(1954年)と『種子と蒔く者』(1963年)の2編。
ロケはニュージーランドで行われた。
キャスティング
大島は元々、プロの俳優でない人間を役者として使うことが多かったが、今作にはネームバリューの高いキャストがメインに添えられたことで、当時大変な話題となった。
- セリアズ役にはイギリスのロックスターであるデヴィッド・ボウイ。元々ボウイは大島映画のファンで、オファーの際にいつでもスケジュールを明けると約束した。他の候補にロバート・レッドフォードがいたが、シナリオを読んだ上で丁寧に断られた。
- ヨノイ大尉役の候補には滝田栄、沢田研二がいたが、最終的に音楽家の坂本龍一となった。坂本もかねてからの大島ファンであった。坂本は出演の条件として、映画の音楽も担当させてほしいと提示したところ、大島は即決し、坂本は今作で俳優と映画音楽を初経験することになった。坂本のテーマソングは世界的に高く評価され、YMO後の坂本龍一を代表する曲になった。
- ハラ軍曹の候補には緒方拳、勝新太郎がいたが、最終的には芸人のビートたけしで落ち着いた(クレジットはTAKESHI)。当時はまだお笑い芸人という印象が強かったたけしだが、今作での演技は業界内で注目を集めるきっかけとなった。しかしシリアスな映画にもかかわらず、たけしが出ただけで客席から笑いが漏れるという一面もあり、失意のたけしは以後、ヤクザや犯罪者といったハードな役をこなすようになる。その縁で映画監督に進出し、世界的巨匠にまでなったのは周知の通り。
それ以外にも日本のミュージシャンが幾人か配役されている。
キャスト
ジャック・セリアズ英軍少佐 - デヴィッド・ボウイ
ヨノイ大尉 - 坂本龍一
ハラ・ゲンゴ軍曹 - ビートたけし
ジョン・ロレンス英軍中佐 - トム・コンティ
ヒックスリー俘虜長 - ジャック・トンプソン
拘禁所長 - 内田裕也
イトウ憲兵中尉 - 三上寛
カネモト - ジョニー大倉
デ・ヨン - アリステア・ブラウニング
ウエキ伍長 - 飯島大介
ゴンドウ大尉 - 室田日出男
軍律会議通訳 - 戸浦六宏
フジムラ中佐 - 金田龍之介
イワタ法務中尉 - 内藤剛志
日本兵 - 三上博史
スタッフ
脚本 - 大島渚 / ポール・メイヤーズバーグ
原作 - ローレンス・ヴァン・デル・ポスト
製作 - ジェレミー・トーマス
撮影 - 杉村博章 / 撮影監督 - 成島東一郎
編集 - 大島ともよ
日本語字幕 - 戸田奈津子
配給 - 松竹 / 松竹富士 / 日本ヘラルド
データ
公開 - 1983年5月28日(日本) / 1983年8月25日(イギリス)
上映時間 - 123分
製作国 - 日本 / イギリス / オーストラリア / ニュージーランド