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概要編集

戻るなら殺さないでやるよ

「あの日」とは漫画『呪術廻戦』第265話のサブタイトル。

主人公・虎杖悠仁の幼少期の生い立ちが明かされ、「正しい死」をずっと考えていた虎杖が答えを示す。


そして、虎杖と宿儺の最終決戦である。


あらすじ編集

絶体絶命、起死回生の一手編集

人外魔境新宿決戦は熾烈を極めに極め、ついに決着が間近に迫っていた。

両面宿儺は史上最強の術師だったが、五条悟を始めとする高専の術師達が確実に宿儺の体力を削っていき、呪いの王の脳裏に敗北を予感させるほどにまで追い詰める。しかし、その代償は高く、術師達は次々と倒れていった。


そしてついに、宿儺と戦える者は虎杖だけとなった。

戦いの最中に編み出した魂の境界を引き裂く「解」も、虎杖一人では当てる事ができない。さらに、このタイミングで宿儺が反転術式の出力を取り戻す。

形勢逆転。今度こそ高専側の敗北が確定した……かに思われた、その時。








虎杖領域展開









宿儺「なんだ…… これは……」






直後、両者は駅のホームにいた。

今までの術式が付与された領域とは、明らかに違う様子の空間に困惑する宿儺。

そんな宿儺に、虎杖はまるで仲の良い友人に接するかのような気安い態度で話しかける。


「行くぞ!! 宿儺!!」





人の命の価値、正しい死とは編集

どうやら、この領域の事を必死に展開したためか、虎杖本人もよく分かっておらず、宿儺が語る「人の感情由来の呪力で相手と繋がった現象」でもない、全く謎の空間。

しかし、虎杖は宿儺とまた一度話してみたかったらしく、現実の虎杖が実際に見た街が再現された場所を二人で歩き回る事に。


幼少の頃に暮らしていた街を、虎杖は自分の話をまじえながら宿儺に聞かせる。10年近くぶりに戻ってみたら昔より寂れていて、意外にも感情は動かなかったこと。楽しかったこと、悲しかったこと。小さい頃はサンタクロースの存在を信じていたこと。

そんな昔話をする虎杖にしばらく付き合って、いよいよウンザリとした宿儺は「何が言いたいんだ?」と本題を促した。




「俺は」




これまでの半年間で、自分の前からいなくなった人達の事を思い出しながら、虎杖は静かに語る。



「自分の役割を理解して全うしていく事が、生きていく事なんじゃないかって最近まで思ってたんだ」


「それで死ねたら正しく死ねたって言えるんじゃないかって」


「でも今は それは少し違う気がしてる」


「犬の散歩とか家族を養うとか 役割なんてなんだっていいし」


「そんなものなくても 食ってクソして寝るだけでも 病気で寝たきりでも 自分の人生が 誰とも繋がらなくて何も残らなかったとしても」


「その人を形作る思い出よりも 小さな記憶の欠片がどこかを漂っているだけで、人の命に価値はあるんだよ」


「死に方の問題じゃなかったんだ」

  

その価値を無いように振る舞う奴を俺は許せなかったんだ」


「……宿儺 オマエの事は嫌いだよ」

  

「でも人間は道具じゃないから 生まれた時に役割が決まってるわけじゃない」

 

「善い奴も悪い奴も どっちが本当の人間かなんて分からん」


「間違ってるのは俺かもしれない」

  

「だからせめて知ってもらおうと思ったんだ」

 

「オマエが価値を見出せない オマエ以外の人間の事」



結局のところ、正しい死なんてどこにも無かった


役割の有無とか、それを達成出来たか否かとか、そんなことは重要じゃなかった。


命はただ、そこに在るだけで価値あるものだった。


正しい死に方が無いように、正しい生き方も存在しない。

どんな形の生でも死でも、その人がそこにいたという軌跡が確かに残るのだから。


それを、虎杖は宿儺にも知ってほしかった。

自分を通して、人の命の尊さを感じてほしかった。

しかし、



宿儺「………何も感じないな」


「小僧 貴様の言っている事は全て理解できる」


「その上で 何の感情も湧かない」



宿儺には届かなかった。

虎杖の言葉を、思いを全て聞き、咀嚼した上で断言した。だからなんだ、と。


そんな宿儺の反応を虎杖は予想しており、

   

  「やっぱり ダメか」


と残念そうに虎杖は目線を下げた。

先程まで戦っていた様子とは全く異なる虎杖に、宿儺は唖然とする。


だが、直後に気づく。



「小僧 まさか貴様」


「俺を憐れんでいるのか………?」


「情けをかけようとしているのか………?」



その疑念を肯定するように、虎杖は淡々と答える。

まっすぐに宿儺を見据えて。



「そうだ 宿儺」


「俺はオマエを殺せる」


「伏黒を解放しろ」


「もう一度俺の中に戻るなら 殺さないでやる」










恐怖、憎悪、殺意、畏敬、歓喜。

今まで自分に向けられてきた感情のどれとも違う、自身より圧倒的な弱者の虎杖に憐憫の目を向けられた宿儺は、これまでに見た事がないほど憤慨する。



「勘違いも甚だしいな」


「八つ裂きでは済まさんぞ 小僧」


「貴様の首の前で、貴様の言う価値のある人間とやらを皆殺しにしてやる」



虎杖悠仁と両面宿儺。


価値観も在り方も全く異なりながら、一つの肉体に魂を共にした二人。


彼らの最後の呪い合いが始まる。




余談編集

  • 渋谷事変以降、虎杖はずっと自身を「錆びつくまで呪いを殺す事が自分の役割」「大きな何かの歯車の部品」と言い続けてきたが、今回でその呪いが解かれたと解釈する読者もいる。
  • 作中では五条や宿儺を表す言葉として「天上天下唯我独尊(この世で自分こそが最も偉大)」という言葉が用いられたが、実はこの言葉は「この世に生きとし生けるものは全て尊い」と解釈される事もあり、まさに今回の虎杖の答えが当てはまる。
  • 領域内で戦闘を再開した次週からはサブタイトルは「人外魔境新宿決戦」に戻っている。

関連タグ編集

呪術廻戦

虎杖悠仁 宿儺(呪術廻戦)


人外魔境新宿決戦あの日/???最終回

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