概要
正式タイトルは「てのひら開拓村で異世界建国記~増えてく嫁たちとのんびり無人島ライフ~」。
星崎崑氏原作のライトノベル。作画はあるや氏。全7巻。
ヤツタガナクト氏によりコミカライズもされている。既刊6巻。
チート能力を持って異世界転生した少年が主人公の作品ではあるが、小説家になろう投稿の作品ではない完全書き下ろし(ただし、星崎氏はなろうに別作品を投稿している)。
主人公たちは半ば世界を敵に回している立場であり、チート能力をもってしても状況は厳しく、それをいかに切り抜けていくかが主軸となっている。
なお、副題に「~増えてく嫁たちと」とあるが、主人公たちの年齢が低めなせいか、いわゆるお色気シーンは抑えめになっている(終盤で一応あるが)。
あらすじ
現代日本で病弱が原因で夭折した少年は異世界で転生した。
捨て子だった彼はその世界の宗教「ファーレー教」の神官に一緒に捨てられていた少女と共に拾われ、「カイ」と名付けられる。
その世界の人間の中には十三柱の神々から「祝福」という能力とその証である「聖印」を授けられる者がおり、カイと義妹のルキアも祝福者であることが判明。
本来は12歳で受けられる「祝福の儀式」までどの神の祝福かは不明なのだが、カイはあの手この手で自分の祝福が「アラミラ」神の「てのひら開拓村」であることを突き止める。前世で大好きだった箱庭ゲームにそっくりの開拓村を育てながら、一人前になり養父に恩返しすることを願っていた。
しかし、祝福の儀式の日に状況は一変する。担当の神官に聖印を見せたところ、カイは拘束されて島流しにされてしまう。実はファーレー教ではアラミラ神は「邪神」とされて祝福者は排除されていたのだった。
流された島は凶悪なモンスターが生息している無人島。生存は絶望的と思われたが、カイは開拓村の能力をフル活用し、島で出会った人造人間の少女「アビス」の助力もあり生き延びる。
そしてカイとアビスは、開拓村の能力で生まれた小人「戦士君」や狐耳の魔導士「レン」、カイの一年遅れで島に流されたアラミラの祝福者の少女「カエデ」、戦争で故郷を失った小国の王女「ユーリ」や元側近の「サラ」をはじめとする居場所を失った者たちと共に島に国を作ることを決意するのだった。
主な登場人物
- カイ・ハスクバーナ
主人公の少年。現代日本で病死し、異世界転生した。
前世では箱庭ゲームをよくプレイしていた。
年齢は12歳(島流しにされた時点)~18歳(本編終了時)。
突然家族から引き離され島流しにされるも、それにめげることなく周りに助けられながらも前向きに生きる。ただし、島での生活には自分の祝福が不可欠=自分にもしものことがあれば詰んでしまうため、そこからくる責任感から悩みごとなどを自分一人で背負いがちになることが多い。
所持している祝福は、箱庭ゲームそっくりの世界に移動し、自由に開拓できる「てのひら開拓村」。外の世界から様々な素材を持ち込むことで発展し、定着した物はほぼ無尽蔵に現実世界に取り出せる(例えば、果物を持ち込めば果物が、麻を持ち込めば麻からできるロープや布が取り出せる)ため、食料の確保などに役立てている。他にもワープゾーン代わりに利用できたり、開拓村に一定時間避難することもできる。
- アビス(メイン画像右)
カイが無人島で出会った少女で、事実上のメインヒロイン。
かなりの美少女なのだが、白い髪と小さな角を持つ。これはファーレー教での「悪魔」にそっくりな見た目。
カイが来るより以前に島流しにあった子供達を何度も助けようとしたが、その容貌から全員が彼女を拒絶したり逃げたりし、最後にはモンスターに食い殺されたりしており、誰も助けられなかったことを悔いていた。
正体は人間ではなく、大昔に実在した魔法使い「アビス」を模して千年ほど前に造られた戦闘用の人造人間『レプリカント・アビス』。何故か58年前に突然起動し、島で一人暮らしていた。体と服はいわゆるナノマシンでできており、戦闘時などには大人の姿になれる。ただし、戦闘用であるためか「ひとりで好きに生きる」ように作られておらず、本能的に主を求めている。
大気中の「魔素」という魔力の元を呼吸することで活動するため、魔素のない開拓村では動けないという欠点がある。
初めて自分を怖がらないで受け入れてくれたカイを「マスタ」と呼んで慕っており、カイからも「(自分を好いている女性たちのうち)誰か一人を選ぶならアビス」と即答するほどに好意を持たれている。
7巻でカイの嫁の一人となった。
- エネル
開拓村を管理する「食」を司るアドバイザーエルフ。カイが現実世界にいる間は彼女が村を管理している。村のレベルアップ方法を教えたりと、ナビゲーターも務める。明るい性格で食いしん坊。
毒物の探知能力や食料の栄養調査も可能な能力を持つが、本当の力は名の通りである、エネルギーの操作。開拓村のレベルがカンストした際には現実世界に出られるようになり、外のエネルギーをてのひら開拓村に取り込むことが可能になった。これにより、開拓村に魔素を取り込めたことでアビスたちレプリカントも開拓村で生活できるようになった。
- 戦士君(メイン画像左)
開拓村のレベルアップの特典でエネルからもらった「創造の種」を現実世界で植えたところ誕生した小人。「オサ」としか喋れない。見た目は二頭身だが力持ち。種から生まれたからか、自分を土に埋めることで増殖する。
後に上位職の「僧侶ちゃん」「魔術師君」などが登場する。
- レン
エネルからもらった金色の創造の種から生まれた狐耳と狐尻尾を持つ和服姿の少女。自称「獄炎の大魔導士」で一人称は「わたくしちゃん」。カイのことは「マイロード」と呼ぶ。ややテンションの高い性格だが、敵対する者には容赦がない。
獄炎の大魔導士を名乗るだけあり、炎の魔法が得意で、戦闘能力はアビス以上。
- カエデ・エンフィールド
カイの一年遅れで島に流されてきた少女。カイと比べてやや幼い感じだが理解力は高く、カイやアビスともすぐに打ち解けた。
カイと同様アラミラ神の祝福者であるが、人形などに一定時間命を吹き込む「仮初の命」というカイとは別の祝福を授かっている。島流しにされたときに持っていた人形の「ゴモちゃん」と「メレちゃん」を大事にしている。
作中が進むたびに強力なゴーレムを扱えるようになり、エドワードにキレたときには大地を直接操作してゴーレムを作った。
7巻でカイの嫁の一人となった。
- サラ・ビアンキ
戦争で滅ぼされた小国「モンディアル公国」の元近衛魔導師。メインキャラでは珍しい大人の女性。色々と抜けているがお人よし。今は主従関係ではないがユーリの事を内心では妹のように思っている。
ユーリたちと共に滅亡した祖国から逃亡中に奴隷商人配下の傭兵に捕らえられた上に専用の首輪で魔法を封じられてしまい、それでもユーリを助けようと単身逃走したところで、開拓村の資材集めのために島から出ていたカイとアビスに助けられ、藁にも縋る思いで「自分を売ったお金で姫を助けてほしい」と頼み込む。
開拓村の能力を駆使したカイの作戦により自分を含めたユーリ達の救出に成功し島に移住。魔封じの首輪はそのままなため、料理などの家事を主に受け持つ。
3巻で奴隷商から解除の呪文を聞き出し、魔法を取り戻す。以降は魔法使いとして活躍し、ファウゼルやエドワードから魔法解除の呪文を身に着けている。
7巻でカイの嫁の一人となった。
- ユーリセシル・ディ・モンディアル(ユーリ)
モンディアル公国の元王女。カイと同年代で、「モンディアルの宝石」と呼ばれるほどの金髪美少女。
盾の神ラインの祝福者であり、不可視の障壁を作り出す「戦乙女の聖域」という祝福を持つ。
自分を奴隷商人から救ってくれたカイを「カイ様」と呼び、かなり積極的にアプローチすることも。
なお、島に移住するにあたりカイから「祖国の復讐とかは考えないでほしい」と言われているが、内心では敵国へのわだかまりを残している。
ルキアとは同じ金髪の美少女という共通点があり、カイも彼女に妹の面影を見るのだが、後にルキアの腹違いの妹であることが判明した。
7巻でカイの嫁の一人となった。
- ファウゼル
サラやユーリを捕まえた奴隷商人に雇われていたフリーランスの魔導師。近衛魔導師であるサラに完勝するほどの高い戦闘技術を持つ凄腕の傭兵であり、魔法の威力では圧倒的に上のはずのアビス相手でも渡り合えるほど。
「求めている戦いがないから」と、国などに仕えずに傭兵をしている好戦的な性格だが、義理人情や身内を大事にしており決して悪人ではない。
カイの機転により敗れ去るが、後にフリーに戻っていたところを再会する。
当初は上記の理由からカイについていれば戦えると自分を売りこんだが、実はエドワードとは友人であり、カエデとも親しかったことが判明。死んだと思われていたカエデを助けてくれた恩もあり、ファーレー教に洗脳されたエドワードを助けるためにカイたちの仲間となる。以降は自分の戦闘技術をアビスやサラ達に指南しながら、他勢力との交渉事を引き受けたりと実質的な参謀格として活躍する。
後に実家であるディー侯爵家をカイに紹介した時に、傭兵をしていた本当の理由が「戦いを求めているから」ではなく「仕えたい主君を自分で探すため」であることを明かし、正式にカイに仕えることを宣言した。
当初はただのやられ役だったが、再会後はかなりの重要キャラとなり、これには原作者も驚いているとのこと。
- ルキア・ハスクバーナ
カイと共に拾われた金髪少女でカイの義妹。真実の神イデアを始めとして合計三つの神の祝福を授かっている特殊な存在であり、それをファーレー教に利用されていたがカイたちに救出される。
かなりのブラコンであるが自分が養子であることやカイとは血がつながっていないことは早くから気付いており、彼を一人の異性として好意を寄せている。ユーリとはライバル関係にありよくケンカしている。
終盤に再会したオットーから、今は亡きモンディアル公国の王(ユーリの父)の隠し子で、ユーリの姉であることが明かされた。
7巻でカイの嫁の一人となった。
- リーベル
背中の翼と鳥の足を持つ翼人という種族の女性。捜し物の神ミスラの祝福者で、それ故に、彼女だけ連れ去られることはなかった。カイと出会い、神殿の真実を知り、その後、移住することとなる。祝福を利用しての水源、物、人探しや、飛行能力を生かした偵察など、多岐にわたって活躍する。
7巻でカイの嫁の一人となった。
- コロモ
エネルの妹で「衣」を司るアドバイザーエルフ。素材と実時間が必要だが、現代レベルの製品が作れる。さらには糸だけでなく、製錬で金属、革加工も可能な模様。
- マリエラ
眠りの神リスミーの祝福者で精神操作ができるハイレベルな神官で、翼人族の件でカイと出会う。その時の騒動が原因でルキアの監視役にされ、さらには彼女のスキを利用されたことでルキアに時止めを使われてしまう。それ故に殉教者として、クレア、イブと共に島にやってくる。
元々、享楽的な性格だが、知りたがりな学術的な面も持ち、カイに興味を示し、アビスたちに便乗する形でちゃっかりと彼の嫁の一人にもなる。
- ビーエ・クラウザー
ファーレー神殿で唯一人の特級審問官。運命の神フォルトナの祝福者。近い未来世界が崩壊するという未来を予知した結果、絶望し、ただ神殿の言うことを聞く、戦士として活動していた。
ルキアを助けるためにきたカイに敗北し、さらにはその予知の結果を覆そうとするカイに興味を覚えている。自分の保身第一のため、カイからも「クズ」と思われているほど。
- セレスティアル
アビスと同じレプリカント。ビーエをマスターとしている。カイ達と敵対し、魔素のないてのひら開拓村に閉じ込められ、敗北。
後に、奴隷の首輪で魔法を封じられ、ビーエと共に島で暮らすことになる。
ビーエへの忠義はあるのだが、保身ばかりの彼の言動に内心呆れている節を見せることも。
- エドワード・エンフィールド
カエデの父で魔導師にして軍人。祝福の儀でカエデが行方不明(=島流し)になってしまったことに激怒し、彼女を捜索しようとしたところファーレー教に洗脳され操り人形となっていた。カエデや友人であるファウゼルの声も届かずにカイたちと戦闘になってしまうが、ブチ切れたカエデの作り出したゴーレムに張り倒され、ようやく正気に戻った。
その後は家族と共に島に移住するが、どうやら親バカだったらしく、たくましくなったカエデがいつの間にか独り立ちしているため寂しさを感じている。
- ローザ
時の神エテルノの祝福者で、守護聖人を封印していた前任。最初は視界が封じられる眼帯をつけていた。
500年間時を止めて、解除されたら止めるといったブラック生活を送っており、自由を求めていたが、新たに同じエテルノの祝福者であるルキアが現れたことで解任、自由になれるかと思ったが、神返りを起こさせるために、島に島流しされた。
カイに助けられ、封じられた目も解除されたことで、彼らに協力し、神殿に一矢報いた。
7巻でカイの嫁の一人となった。
- シエル
アドバイザーエルフの末妹で「住」を司る。普段は引きこもりで、最初は開拓村の自宅だけだったが、外にも後で精霊を出せるようになり、精霊を使って大規模な建築、開拓を可能とした。
- ミレイユ・ディー
ファウゼルの母で侯爵家の当主(魔導師は特権階級だが、女系遺伝のため女性当主が多い)。モンディアル公国とも親交があった。
交易相手を探していたカイにファウゼルが紹介し、フィオーナとの政略結婚を条件に彼と親交を結ぶ。
- フィオーナ・ディー
ファウゼルの妹。ミレイユから結婚相手としてカイに紹介される。彼女との婚約をきっかけに、カイはアビスやユーリ、ルキアをはじめとする自分に好意を寄せる女性たちの思いに向き合うようになり、最終的にほぼ全員と結婚する決意を固めた。
- アーサー・ウィリアムズ・ファーレー
ファーレー教の神殿に1000年も封印されていた「守護聖人」。アラミラの祝福者で、ファーレー教のもととなった祝福者を生み出した張本人。能力は自分の想い描いた神と祝福を作り出す「彩りの神々」。
彼自身は妻と娘を大事にする普通の父親だったのだが、彼が死亡して祝福が消えてしまうと、アラミラ以外の神の祝福も消えてしまい世界が混乱してしまうため、当時のファーレー教に封印されてしまっていた。
- アナスタシア(ステイシー)
無人島の中心部にある大樹に封印されていた女性。「魔女」とも「聖女」とも呼ばれるアラミラの祝福者。アラミラの祝福はコピーで、他のアラミラの祝福の能力も持っていて、魔法など、多岐にわたる能力、実力も併せ持つ。
アーサーと同じ時代の人間で、当時のファーレー教の策略で封印されていた。
実は生き別れになったアーサーの娘であることが判明し、無人島で再会した。
- クレア
癒やしの神メディナの祝福者。ルキアの友人で、彼女を訪ねにきたところ、マリエラに精神操作され、カイ達を暗殺するために遣わされた。
マリエラのことを知っていたカイによって阻止され、以降は神殿にばれないために島に住むことになる。
- イブ
盾の神ラインの祝福者。クレアと同じく、ルキアの友人で、彼女を訪ねにきたところ、マリエラに精神操作され、カイ達を暗殺するために遣わされた。
マリエラのことを知っていたカイによって阻止され、以降は神殿にばれないために島に住むことになる。
- レイラ
モンディアル王国海軍提督の娘。海軍の生き残りの中で一番、海戦能力に長けていたことから船長を務めていた。
食に困り、船を襲撃したところ、カイ達が相手で敗北。ユーリの勧めもあり、島に移住し、操船のまとめ役となった。
- オットー・ハスクバーナ
カイとルキアの養父。光の神ルークスの祝福者。結婚はしていたが妻には先立たれている。知人を介してモンディアル公国の王の妾腹の姫(ルキア)を捨て子を拾うという形で引き取ったのだが、その際に何故か一緒にいた少年(転生したばかりのカイ)も引き取り、自分の子として愛情をもって育てた。
祝福の儀式から二人が戻ってこない上に(漫画版1巻の書き下ろしでは、儀式の終了後に二人に出生の真実を伝えるつもりだったことが描かれている)、ファーレー教の上層部に圧力をかけられ、自身は何の権限も持たない下級神官ということもあり泣き寝入りするしかなかったが、数年後にカイとルキアが訪ねてきたことで再会を果たした。
- ホリー
島の古代遺跡の中枢端末。意識があり、アビスの真実も知っていた。世界の危機に対処するため、レプリカントに意識を移し、カイ達に協力する。