概要
原作者である石ノ森章太郎が『009』の最終章を想定して描いた「地下帝国ヨミ編」のクライマックスシーン。
もはや逃げも助けも期待できぬ成層圏の中、ひとり宿敵ブラックゴースト総統との決戦を繰り広げる島村ジョー。世界のために犠牲になったといっても過言ではなく、地上に残った仲間たちが悲観に暮れる中、唯一飛行能力を持つジェット・リンクは親友であるジョーの元へと飛び立つ。
「最後の一秒までチャンスにしがみついてみせる。その一秒が過ぎたら…神よ、お力添えを!生まれて初めて…あなたに祈ります」
やがてジェットはブラックゴーストの要塞が漂う大気圏外まで到達。宇宙へ投げ出されたジョーを救出し、爆散するブラックゴーストの最期を共に見届ける。
しかし大気圏離脱までに消耗し過ぎたジェットの足のロケットのエネルギーは既に尽きようとしていた。
「きみひとりならたすかるかもしれない」と振り解こうとするジョーに対し、「やくそくしたじゃないか……死ぬときはいっしょに……と」と笑い、二人抱き合い大気圏に突入した。
そしてジェットは最期に尋ねる。
「ジョー、きみはどこに落ちたい?」
その時、地球で夜空を見上げる姉弟がいた。落ちて燃え尽きていくジョーとジェットの軌跡を「流れ星」と思い、弟は無邪気に「おもちゃのライフル銃がほしい」と願う一方、姉は世界に戦争がなくなり平和になる事を祈るのだった。
流れが非常に美しく、後年様々な漫画でオマージュ、パロディの対象となった009でも有名なシーン。
元ネタはレイ・ブラッドベリの短編小説『万華鏡』とされる。
ちなみにその後の「怪物島編」において、002と009は大気圏突入後燃え尽きる前に意識を失ったため、そこを001の念動力によりテレポートさせられた(001は自分以外のテレポートは無生物にしか使えないが、サイボーグが意識を失っていれば可能となる)ので半死半生であったものの助かった、とされた。
『サイボーグ009』を象徴するシーンの一つだが、意外にもメディアミックスで描写されたことは稀である。
テレビアニメでは3作目となる平成版のラストで初めて「地下帝国ヨミ編」のシナリオと共に完全再現された。
昭和第1シリーズの最終話ではこのシーンを踏襲したラストはあるもののプロットが大きく異なり(そもそも「地下帝国ヨミ編」のシナリオではない)、昭和第2シリーズは時系列が「地下帝国ヨミ編」の後である。
また、メガCD版のエンディングでもこのシーンが再現されており、昭和第2シリーズの声優である井上和彦と野田圭一による上記のやり取りを聞くことができる。