「加速装置!!」
概要
機械やサイボーグなどに搭載される架空の装置。動くスピードを爆発的に加速させる装置である。
この表記の場合は、漫画『サイボーグ009』で使われた、使用者を加速する装置を指すことが多い。
本作での加速装置による描写は作中内外で強いインパクトを残し、後に石ノ森原作の番組である仮面ライダーシリーズなどでも加速装置をオマージュした演出が度々盛り込まれるようになった。
原作ではもともと002(ジェット・リンク)に搭載された機能とされていた。“00x”の番号のサイボーグは試作品で、009(島村ジョー)は001~008までに搭載された機能から有力なものを集めた集大成であると設定されていた。実は原作本編は「神々との戦い編」で石ノ森章太郎(当時は「石森」表記)がギブアップしてしまっており、以降に描かれた作品はすべて番外編となる。
これ以降に描かれた作品では002が加速装置を使うことはほぼ無くなり、009特有のものとなった。また、アニメ第3シリーズ『サイボーグ009 The Cyborg Soldier』では002の加速装置は初期型とされており、地上での最高速度は009に及ばないという設定として位置付けられた。
009では奥歯に起動スイッチが装備されており、噛み締めたり、舌で押さえつけることで加速する(起動時に口元からカチリという作動音が鳴るのがトレードマーク)。体感速度を含めたすべてのスピードが上昇し、走る速さはマッハ3に達する。加速装置は変速ギア式になっているようで、起動スイッチを複数回押すことで加速度を上昇させることが可能。他にも音速に加速するサイボーグ(0013)なども登場している。
基本的な高速移動から近接戦闘、追跡、回避、撤退など汎用性は極めて高い。
009がゼロゼロナンバーサイボーグシリーズの最高傑作たらしめるのも頷ける性能である。
戦闘面では加速能力で一方的にアドバンテージを握っていくことや雑兵を次々と蹴散らすほか、同じく加速装置を持つ相手と互角に渡り合うために使うことが多い。また、不審な人物を追尾する際や敵の急襲を受けた際に加速装置を起動してかわし、逆転の隙を窺うこともしばしば。他にも催眠念波や特殊な波長による妨害攻撃を加速装置の起動によって防ぐこともある。
アニメ版では第2シリーズ(通称新ゼロ)から本格的に活用されるようになり、起動時に「加速装置!!」とジョーが叫ぶのが定番演出となった(原作でも時折叫んでいる)。第1シリーズ(通常旧ゼロ)および旧劇場版では設定上はオミットされているものの、純粋な能力として人知を超越したスピードで走っている描写がなされている。
しかし設定など新ゼロをベースにした(とはいえメインキャストに旧ゼロ出演者も何人かいるが)映画『サイボーグ009 超銀河伝説』では、ジョーもジェットもなぜか加速装置を一切使わなかった。
また、映画『009 Re:CYBORG』における009=ジョーは加速装置を起動後、発射中の弾道ミサイルに上空から次々と飛び乗り着弾前にガンで破壊、更にドバイの市街地に投下された核ミサイルが爆発した際には爆心地から走って逃げ切るなど、加速装置の圧倒的なポテンシャルを遺憾なく発揮していた。
難点として、この加速装置を使用すると、体幹速度が引き延ばされるため周囲が猛烈なスロー(地の文によれば「相手が1動く間にこちらは10の動作が出来る」)になってしまい、あらゆる音がビロンビロンの低音にしか聞こえない(進行方向と同じ向きの場合、音を追い越してしまい全く聞こえない)、逆にこちら側が話す音はチップとデールみたいな超高音になりとても聞いてもらえないという事が挙げられる。また、トップスピードで闘う場合は、周囲が静止して見えるため非常に気色悪い光景が視界を揺さぶるらしく、序盤で同じくマッハ3に加速した0013と戦闘した際には、009はかなり精神ダメージを受けていた。アニメ『Call of Justice』では敵「ブレスド」の首領「エンペラー」が加速中のジョーの視界や感覚を体感させられる場面があり、この時エンペラーは一瞬で激しく狼狽、激昂している。
なお、加速時には『仮面ライダーカブト』の「クロックアップ」や、『ドラえもん』のマッドウォッチのように時間軸をずらしているわけではないため、本人にはすさまじいGと大気摩擦がかかり、速度の二乗に応じて破壊力も増す。従って、加速した009に触れた物体は、マッハ3で動く巨大砲弾が衝突したのに等しいダメージを負う(作中でもこれを利用して防弾ガラスを体当たりで突き破っている)。よって、通常の着衣では加速した瞬間に空気摩擦で炎上する事も多く、その下に着込んだ戦闘服へと早変わりする。生身の人間を加速装置で救助すると即死する可能性があるとジョーも言及している。……その割にエピソードによってはギルモア博士など生身の人間を普通に救助したり、市場から高速でカニを買って来たりしているが。この辺は描写によってまちまちである。
アニメ版『スカルマン』ではとある戦闘服にこの加速装置に似た機構が備えられており、後の加速装置の原型となった事が示唆されている。ただしこれはあくまで戦闘服に備わった機能であるため、通常の人間が使用すると1度でほぼ致命傷に近い重傷を負う事になる。
『結晶時間(別題:凍った時間)』というエピソードではこの加速装置が暴走し、ジョーは体感1ヶ月もの間ほぼ完全に静止した時間で独り過ごさねばならなかったという地獄のような状況に陥った。これはギルモア博士が彼の加速装置をメンテナンスした結果引き起こされたものだが、皮肉にも博士やその他の人々にとってほんの数秒にも満たない時間がジョーにとっては無限に感じられるほどの絶望的な体感時間となっていた。ちなみにこの話は仮面ライダーディケイドの「カブトの世界」の原作でもある。
ちなみにこの”加速装置”、原点はSF作家アルフレッド・ベスターが1956年に世に送り出した傑作SF小説「虎よ、虎よ!」に登場する主人公ガリヴァー・フォイルが使ったものである。
歯に搭載されたスイッチ(009と異なり奥歯ではなく臼歯だが)を噛みしめて起動させるところも009と一緒である。