「クロックアップしたライダーフォームは、人間を遥かに超えるスピードで
活動することができるのだ!」(第2話、ナレーション)
概要
『仮面ライダーカブト』に登場する地球外生物「ワーム」と、その力を利用した仮面ライダーが使用できる能力の名称である。
> タキオン粒子が体を駆け巡って、時間流を自在に行動できるようになり、ワームに対抗してクロックアップする能力を有する。
(『テレビ朝日|仮面ライダーカブト』、「マスクドライダーデータブック」、「カブト」)
> 全身を駆け巡るタキオン粒子により、クロックアップすることで、時間流を自在に活動できる。
(『仮面ライダー年代記(ハイパームック) 増補改訂版』、104頁)
タキオン粒子(tachyon)とは、「特殊相対性理論に矛盾することなく光速度より速く動く仮想的な粒子」である(『コトバンク』、「タキオン」)。なお、常に光速である粒子(光子)はルクソン(luxon)であり、常に光速より遅い粒子(=タキオンとルクソン以外のすべての粒子)はブラディオン(bradyon)であると物理学的に定義されている。
クロックアップの特徴
- クロップアップ中は自分達以外の時間がほぼ止まっているに等しい。
- タキオン粒子の流れる目であれば、クロックアップした者を視認できる(「マスクドライダーデータブック」、「カブト」、「コンパウンドアイ」)。
- 数秒~約1分経過すると自動的に、または自ら解除する(第10話等)。
- 解除後に再度発動する事で、連続してクロックアップできる(第3話等)。
クロックアップは厳密には高速移動ではなく、行動や思考、発した音声なども加速した時間に応じて全て引き伸ばされる。周囲の人間から時間を稼ぎつつ情報を隠すため、クロックアップして会話する場面もある(第3話、第47話等)。もし本当に「ただ単に高速移動するだけ」であれば、音は決して加速者に着いてこないはずである。
アクセルフォームが「100mを0.0058秒で走ることができる」とあるのに対し、クロックアップは「あまりに速くて、現在の科学では計測不能」となっている(「ファイズVSカブト スピードたいけつ!!」)。
本編での描写は視聴者が認識できる速度になっているが、場面毎に速度が一定していない。
例えばクロックアップ中、第1話では爆発に巻き込まれた人がゆ~~っくりと落下していき、第8話では電車が、第23話ではボウリングのボールやガタックに斬り倒された竹がノロノロと動いているが、第2話では高速道路を走る自動車が完全に止まり、第4話では雨粒が、第47話ではZECT製の武器が発射した弾丸が、空中に留まっている。また第39話では、ワーム・ライダー共にクロックアップしていない中、サブストワームが光子を集め放つ「光の矢」で間宮麗奈を狙った際、矢が放たれた後に仮面ライダードレイクが反応して麗奈を庇っていた。
クロックアップした相手を視認できても、自らがクロックアップしなければ対処は困難である(例:第10話のコレオプテラワームに追い詰められたザビー(ライダーフォーム))。
ただし、カブト(マスクドフォーム)は第1話で粉塵や鏡を利用し、カブトクナイガンのポインターを網のように照射することで、クロックアップ中のアラクネアワームの姿を赤いシルエットのような形として感知した。ワームの姿が通常時に戻った次の瞬間、カブトは反撃しワームを倒した(第2話のカブトはキャストオフをする寸前に「この姿で、どこまでやれるか試していたんだ」と語っている)。
以下はクロックアップの上位互換。
ハイパークロックアップ
クロックアップの上位版。その速さはクロックアップの動きですらスローに見えるほどで、さらに時間を超えて過去や未来に移動する事が出来る。しかし、速さは下記のフリーズには及ばない。カブトハイパーフォーム、ガタックハイパーフォーム、仮面ライダーコーカサスが使用。
フリーズ
ハイパークロックアップよりさらに速いモード。もはや、あまりの速さに時間が止まっているのに等しい状態となる。ただ単にスカラベアンデッドの様に時間を止めているのか、途轍もない加速なのかどうかは不明。使用者にとってはクロックアップはもちろん、ハイパークロックアップすら静止と変わらない状態になる。ただし、ハイパークロックアップのような時間移動はできない。カッシスワーム・ディミディウス(カッシスワーム第1形態)が使用。
その他
異世界としての加速描写
クロックアップは行動や思考までもが高速となっているため、ライダー側にとってみれば加速というよりも(龍騎のように)異世界への進入に近い。
明確な情報源は不明だが、プロデューサーの白倉氏は特撮誌のインタビューで「『気付いていないだけで、実は自分のすぐそばで仮面ライダーが(龍騎のミラーワールドよりも身近な場所で)戦っているかもしれない』という感じを出したかった」と語っているらしい。
「君の隣 戦う度 生まれ変わる 目に見えるスピード越えてくモーション」(OP『NEXT LEVEL』歌詞より)
『仮面ライダーディケイド』でのクロックアップ
ディケイドはオリジナルシリーズの再現ではなく、「リ・イマジネーション」であると梶淳プロデューサーは述べている(「『仮面ライダーディケイド』制作発表!」)。そこにおいては、クロックアップとアクセルフォームは同等として描写されている。
なお、小説版の『仮面ライダーディケイド 門矢士の世界~レンズの中の箱庭~』では、クロックアップについて「たちまち世界は動きを止める。士たちの時が人間の何千倍ものスピードで流れていく」と書かれている(220頁参照)。
元ネタ?
2006年に放映開始した『仮面ライダーカブト』に先んじて、高速能力は登場している。端的な例は、『仮面ライダー』シリーズの原作者石ノ森章太郎が1964年に手がけた『サイボーグ009』の「加速装置」。
また、2001年の玉井雪雄の漫画『オメガトライブ』には、意識・行動を高速化する「クロックアップ」という能力が登場している。
2005年の弐瓶勉の漫画『ABARA』には、超高速で活動し人を襲う「白奇居子」という化け物と、白奇居子と戦うために「黒奇居子」に変身する主人公(普段は人間の姿)が登場する。なお、奇居子は「示隔空間」と呼ばれる領域を展開することで、奇居子以外には感知できなくなる。
他の平成ライダーにおける高速移動と使用者
- オルタナティブ(『仮面ライダー龍騎』):アクセルベントのカードで高速移動が可能。平成ライダーで最初に高速移動を取り入れた。
- 仮面ライダーファイズアクセルフォーム(『仮面ライダー555』):腕時計型ツール・ファイズアクセルにより、10秒という制限はあるが動作を普段の1000倍の速度(マッハ51!!)で行う事が出来る。
- 仮面ライダーサイガ(『仮面ライダー555』):背中に装備されたフライングアタッカーにより、アクセルフォームと同等のスピードで飛行できる。
- 仮面ライダーブレイド(『仮面ライダー剣』):マッハジャガーのカードを使用するすることにより、高速移動攻撃ジャガーマッハを発動する(単独使用は『仮面ライダー剣ハイパーバトルビデオ』のみ)。バイクにも使用可能。また、スカラベアンデッドが封印されているカード「タイム」は、時間を止める能力を持っている(本編で未使用)。
- 仮面ライダーキバ飛翔態(『仮面ライダーキバ』):高速移動能力として描かれているわけではないが、飛行速度はマッハ3.4に達する。
- 仮面ライダーディケイド(『仮面ライダーディケイド』):他のライダーの加速能力のカード(フォームライド「ファイズアクセル」、アタックライド「マッハ」、アタックライド「クロックアップ」)を使う事で高速移動を発動させることができる。実際、劇中の「カブトの世界」でクロックアップをした仮面ライダーザビーに対しファイズに変身した後にファイズアクセルのカードを使い互角のスピードで戦った。
- 仮面ライダーディエンド(『仮面ライダーディケイド』):自身の能力として高速移動能力を持つ。カブトの世界での描写を見る限り、クロックアップには劣る。
- 仮面ライダーアクセルトライアル(『仮面ライダーW』):トライアルメモリを使用。現在、ライダーの高速移動では唯一、使いこなすための特訓を行った例。
- ナスカ・ドーパント(『仮面ライダーW』):「レベル2」になると加速能力を得る。Rナスカ・ドーパントはアクセルトライアルと互角のスピードで戦ったことも。
- 仮面ライダーオーズラトラーターコンボ(厳密にはタカトラーターなどチーターレッグの亜種形態24種類も含む)(『仮面ライダーOOO』):チーターメダルを使用。100mをわずか0.222秒で走破する(ちなみにこの速度は秒速450m=時速1621㎞は音速を超え、全ライダーマシン中最速のブロンブースターより70㎞/h以上速い)。他のライダーと違い単体では急に止まる事が出来ない(技を使用する時以外)。
- 仮面ライダーウィザードインフィニティースタイル(『仮面ライダーウィザード』):アックスカリバー使用時にインフィニティーリングをウィザードライバーにかざす事で高速移動を発動する。具体的な話、自らを高速化させる類の魔法ではなく時間干渉の魔法であり、クロックアップにもっとも近いと思われる。
- 仮面ライダー鎧武ジンバーチェリーアームズ(『仮面ライダー鎧武』):は高速移動能力を持つ。ただし鎧武はこのアームズをほとんど使用しなかった。
- 仮面ライダードライブ(『仮面ライダードライブ』):タイプスピードはシフトレバーを数回倒すことで一時的に加速が可能。タイプフォーミュラはオーズラトラーターコンボ以上の走力(100mを0.200秒=秒速500m=時速1800㎞)を持ち、更なる加速(100mを0.120秒=秒速833m=マッハ2.45!!)も可能。後の作品ではドライブの力を使用したドライブアームズ、ドライブ魂、ドライブゲーマーレベル2といった形態が登場しているが、これらの形態もタイプスピード同様の高速移動が可能。
- 仮面ライダーマッハ(『仮面ライダードライブ』):『スーパーヒーロー大戦GP』ではファイズアクセルとの超高速戦闘を行った。
- 仮面ライダーエグゼイドに登場する全仮面ライダー:エナジーアイテムの「高速化」を取得ることによりスピードを一時的に上げることが可能。
- 仮面ライダーエグゼイドムテキゲーマー(『仮面ライダーエグゼイド』):素の走力が100mを0.128秒であり加速後のドライブタイプフォーミュラと同等の走力を誇り、更に自身の全能力を一時的に2倍にする能力を持っている。そのため倍化後はなんと100mを0.064秒(5625km/h=マッハ4.6)で走れるということになる。また、仮面ライダークロノスのポーズ(自分以外の時間を停止させる)を無効化するという能力も持ち合わせている。
その他、ニチアサの高速移動使用者
キュアブロッサム、キュアマリン(『ハートキャッチプリキュア!』):ココロパフュームに赤のこころの種をセットすることにより、高速移動が可能になる。
レッドバスター(『特命戦隊ゴーバスターズ』):超高速移動能力を持つ。『スーパーヒーロー大戦』においてディケイドの変身したディケイドカブトのクロックアップを肉眼で視認して見切った上、自身も高速移動し互角に渡り合った。
忍者戦隊カクレンジャー、忍風戦隊ハリケンジャー、手裏剣戦隊ニンニンジャー:ま、忍者だからね。
非公式でのクロックアップ関連情報
非公式の場(ネット上のファンサイトや動画サイト・イラストサイト等)では、クロックアップと他の高速能力との比較や、クロックアップを使わないクロックアップの撃破方法が唱えられている。
対処法
一旦発動されると全く視認できないため、対処するには同じくクロックアップを使用するか、ゼクトマイザーのマイザーボマーのように「クロックアップした敵もジョウント移動(タイムロスなしの直接移動)で追いつめて爆裂する」=タイムロスなしで対象に飛来する攻撃や高速移動とは別に時間停止能力を備えている仮面ライダーブレイドもその例(攻撃できないのでどうしようもないが)。
他にも、『仮面ライダーディケイド』での弱体化されているとはいえクロックアップをロボライダーやイクサが見切ったように、加速中でも視認できる高感度センサーで見切る方法が取り上げられる。
こちらの場合は、視認できても動きに付いていけなければならないので、あくまで緊急措置に近いとされている。(※ロボライダーはディケイドカブトのクロックアップを捕捉していたが、ボルティックシューターの弾速が追いつかず当てられなかった)。
最近では平成二期第6作にて新たな対処法になり得る能力が出現した。
なお、タキオン粒子の流れる目では視認することができ、第1話のカブトのようにクロックオーバーと同時に迎撃する方法もある。
ディケイドでは弱体化されているが、本来はカウンターを行おうとしてもクロックアップ使用者には非常にゆっくり見え見切られてしまうため不可能である。
相手に誘導する攻撃を持っているなら、『カブト』本編でカブトがフリーズを有するカッシスワームに対して行った「相手が高速移動を発動する前に誘導弾を発射しておき、相手が高速移動を解除した直後に誘導弾が相手を襲うようにする」という方法も使えるかもしれない。
そういった方法も加速能力も持たない場合は、防御を固めて制限時間まで耐え、再発動するまでの僅かな瞬間を狙うパターンが最も適切であり、マスクドフォームはこの方法でクロックアップに対抗する為の形態だと言われている。
以下のような主張も見られる。
- 高速移動能力を使わなくても「カブト」をはじめとした歴代仮面ライダーには、普通に銃弾を視認したり弾道を予測したりして対処できるスピード・五感を持つ者も多い(例:光速の光学兵器を見切って躱した1号、V3、RX、キバ、鎧武、そもそも設定上速いとかそういう次元じゃないZO、銃弾を切り払えるブレイド、電王、ディケイド、雷を躱したストロンガーやWなど)。
- RX・アルティメットフォーム・キングフォーム等を筆頭に、高速移動能力に匹敵・あるいは上回る、反則級の戦力を保持する者もいる。クロックアップがあくまで時間を操作する力であれば、それを無効化できそうなライダー・怪人はいないことはない(ゴルゴムのコブラ怪人など)。
- ウィザードインフィニティースタイルは、カブト同様「時間の流れに干渉した高速移動」を行う事が可能。オーズのスーパータトバコンボでは、時間を停止させる事も可能である。
関連タグ
『仮面ライダーカブト』 ワーム マスクドライダーシステム
メイド・イン・ヘブン
加速装置 この世で一番速いヤツ 一十一 ヤムチャ視点
ニャル子
カオスコントロール - 似たような技。時の流れを遅くして、相対的に高速移動できる。さらに物質の質量や耐久値の操作、物質透過や相手の拘束等。
衛宮切嗣-魔術により常人の2~4倍の速度で動く上、逆に流れを止めて気配を断つこともできる(文字通り命を削っている)。