概要
『機動戦士ガンダム水星の魔女』公式サイトで公開されている、同作のОPテーマ「祝福」の原作にあたる小説。
シリーズ構成・脚本を担当する大河内一楼氏の書下ろし小説であり、主人公・スレッタ・マーキュリーが搭乗するガンダム・エアリアルの目線で彼女の成長を描いており、憧れの学校に行ける事が決まった時のスレッタの複雑な心境、スレッタとエアリアルが『母』と呼ぶ存在の思惑、エアリアルの把握している情勢などが断片的に窺い知れる。
時間軸はプロローグから第一話開始前の間である。
登場人物
- ガンダム・エアリアル:語り部兼本小説の主人公。一人称は「僕」。便宜上ここに表記。
- スレッタ・マーキュリー:本編の主人公。
- 「お母さん」:スレッタの母であり、エアリアルを開発した。
- エルゴ・ペルダ:チャオモンフ基地所属の老作業員。
- メリッサ・ペルダ:エルゴの妻のチャオモンフ管制官。
書評(?)
一見よくあるただの前日譚的な内容のオマケ小説かと思いきや、よく読むと本編とプロローグとの繋がりに違和感を覚える描写が多々見られ、様々な考察を呼んでいる問題作となっている。
深く物語を理解したり考察したい人は是非一読をオススメする。
逆に深読みせずアニメのライブ感を楽しみたい人は読まないほうがいい……かも?
(以降、ネタバレ注意!)
要点
辺境の水星においてスレッタを幼少期から見守ってきた家族であり、過酷な環境で一緒に仕事をこなしてきた「最高のコンビ」として、彼女のパイロットとしての技量に全幅の信頼を寄せる。
思春期を迎えたスレッタの“学校”に対する憧れを受け止めながらも、「ガンダム」を危険視する世情を把握しており、復讐心を秘めた「お母さん」によって彼女がアスティカシアへ送り込まれることを快く思っていなかったが、最終的にはスレッタ自身が道を選んだ事を納得した上で、より多くを掴み取れるよう願っている。
スレッタの身を常に案じており、音声や文章での会話はできないため、UIに干渉したり、モニタを瞬かせるなどして意思を表明してはいるものの、スレッタに返答として伝わっていたかについては明確な描写は無い。
アニメ本編でもルブリス含めてパイロットを認識し反応している描写はあるが、これが小説内で見られた反応と同じかは言及がない。
雑感
(搭乗兵器としての)モビルスーツの意志と呼べるものを描写した作品にはいくつか前例があるが、本作におけるこの描写が「本編内にも反映されていく描写」か「擬人化としての描写」かは不明である。
仮に意識があるとしても前述のような機械的な反応によるものなのか、思考までも可能な人間的AIなのか、スレッタとの交流で人格や意識に類するものが芽生えたオカルト的な要因なのかもまた不明となっている。
本当に意思などが存在しているとするならば、デリング・レンブランが演説で訴えた、「戦争の愚かしさを自覚するため、殺人は人の手によって行われなければならない」という主張を、GUND-ARMの"呪い"とは別の意味でも否定している機体となる、との解釈もされる。
関連動画
市ノ瀬加那による朗読動画