世界観
『不思議の国のアリス』および『鏡の国のアリス』の後日談……と言うにはあまりにも壮絶な「事件」である。
ある日、アリスの家が原因不明の火災に見舞われ、家は全焼、両親も焼死する。
アリス本人も重症を負い、一命は取り留めながらも入院を余儀なくされた。
その後、なんとか火傷は回復したものの、家と両親を同時に失ったことによる精神的なショックは大きく、史上類を見ないほどの難病患者として、アリスの身柄はラトレッジ精神病院へと移された。
10年後――18歳になったアリスは、牢獄同然の病棟で、汚れたウサギのぬいぐるみを抱いて眠る日々を送り続けていた。
しかし、ある日ウサギのぬいぐるみがアリスに語りかける。
「助けてアリス」
その呼び声を聞いたアリスは、再び不思議の国へ行くことを決意する。久しぶりの冒険。
しかしそこに待っていたのは、10年前に見た、どこか歪だがワクワクさせるような「おとぎ話」の世界とは違っていた。
まるで自分の精神と連動したかのように狂ってしまったこの世界を舞台に、アリスは自分自身の心の闇を克服するための戦いに身を投じる。
コンセプト
ルイス・キャロル作の物語の続きを、原作の世界観に忠実に作っていこうというスタンスで製作された。したがって開発中は、スタッフ全員が「(原作とはかけ離れた)ディズニー版のアリスは見るな」と念を押されていたという。不条理さが印象的な原作にホラーテイストが加味されていることもあって、雰囲気は全編通して陰鬱かつおどろおどろしい。
また、当時の洋ゲーとしては極めて丁寧なローカライズがされているのも特徴。それぞれのキャラクターのボイスは、英語版とはまた違ったセンスながらも日本語版独自の良さを持つと評判で、看板などはもちろんのこと、壁に書かれている血文字までもが日本語化されているという徹底ぶり。
キャラクター
- アリス
本作の主人公。18歳。火事で家族を失ったショックで心を病み、10年間もラトレッジ精神病院に入院していた。今作に登場する荒廃した不思議の国は、かつてのアリスが訪れた世界ではなくあくまで彼女の心の象徴、すなわち彼女の精神世界であり、アリスの心がいかに荒んでしまったかを物語っている。病んでしまった心を克服し、不思議の国に再び平和を取り戻そうと懸命に武器を振るい戦う。ゲームのパッケージではアリスはナイフを持っているが、本編ではそれ以外にも多数のおもちゃ(このゲームにおける武器)がある。
不思議の国の住人達
不思議の国の荒廃によって、みな恐ろしい姿に変貌している。
アリスに協力するものもいれば敵対するものもいる。
味方キャラクター
- チェシャ猫
アリスの協力者。白ウサギに置いて行かれ困ったアリスに対し、ところどころで現れて助言やヒントを与えてくれる。また初期設定でCキーを押すと呼び出すことができるが(一部のマップでは呼び出せない)、こちらの内容はほとんどが単なる皮肉や格言である。原作同様笑っているものの、全身に刺青、右耳にはピアスをしており、設定上拒食症らしく痩せている。原作の面影はほとんどない。
- 白ウサギ
大人になったアリスに助けを求め、アリスを再び歪んだ不思議の国へと導いた。常に急いでいるためアリスを置いていってしまう事も少なくない。原作とは違い、かなり怖い顔をしている。
- ウミガメ
涙の池で泣いている亀。原作ではニセウミガメ(ウミガメモドキ、代用海ガメとも)という名で登場。公爵夫人に甲羅を取られた上に、スープにされかけた。涙の川にてアリスに甲羅を取り返してほしいと頼む。原作同様顔は牛で、体は二足歩行の亀。
- ビル・マクギル
公爵夫人に仕えるトカゲ。ただし、本編ではカメレオンのような姿をしている。公爵婦人を好んではいない。なお原作では白ウサギに仕えている。
- トロール・エルダー
本編でアリスに小さくなる薬を作ってくれる小人の老人。
- イモムシ
キノコだらけの森に居る大きなイモムシ。アリスが何をすべきか知っている唯一の住人であり、アリスに大きくなるためのキノコの在処を教えてくれた後も声でアリスを導く。原作同様キノコに座っており水パイプを吸っている。
- 白の王
チェスの国、白の王城にいる王。赤の軍に白のクイーンを取られ、アリスに助けを求める。
- ヤマネ(眠りネズミ)
帽子屋に改造されてしまったネズミ。拷問を受けているが、おっとりした眠そうな声でアリスを迎える。帽子屋は自分たちにお茶を飲ませないことを喜んでいる、と思っている。
- 三月ウサギ
ヤマネと同じく帽子屋に改造されたウサギ。アリスに助けを求めるが、直後に妙なナゾナゾを出してくる。こちらもヤマネと同様に拷問を受けているが、二人とも最後まで助けることはできない。
- グリフォン
帽子屋に捕らえられているのをアリスに助けてもらう。そのお礼にアリスを助けジャバウォックの杖の部品をそろえてくれるが、後にジャバウォックによって倒されてしまう。
- ハンプティ・ダンプティ
ただ座っている。壁から落ちたらしく、割れた頭に触れては悲鳴をあげている。近くを探るといいことが。
- トロールたち
炭鉱に住む奴隷。女王を恐れており、みな戦う気力を失くしている。トロールエルダー以外のトロールは、一様に光る珠を背負っている。
中間キャラクター
- 狂気の子
本作オリジナルのキャラクター。ガッコウや精神病院にいる狂った少年たち。ヘッドギアをしていたり頭に釘が刺さっていたりと、バリエーションは多い。狂ったような行動ばかりしており、会話することはできない(攻撃はできるが、殺せない)。基本的に無害だが、帽子屋によってサイボーグへと改造された狂気の子は敵として襲ってくる。アリスが現実世界で見た精神病患者の姿が元になっている。製作者のアメリカン・マギーによれば、アリスと同じく不思議の国を救おうとして失敗してしまった子どもたちの成れの果てだという。
敵キャラクター
- トランプ兵
女王に仕える、ゲームの最初から最後まで出てくる敵。スートにちなんだクラブ、ダイヤ、スペード、ハートの4種類がおり、この順番で強い。それぞれの槍を持っており、クラブ以外のトランプ兵はそこから弾を飛ばして攻撃してくる。
- 公爵夫人
海亀の甲羅を持っている為敵となり、戦うことになる。攻撃はコショウを飛ばしたり、ブタのような爆弾を飛ばしてくる。あまり近くにいるとかじられてしまう。
- ムカデ
大きくなるためのキノコを守っている。時折小さな虫を飛ばしてきたり、毒を飛ばしてくる。弱点があり、そこ以外への攻撃はほとんど効かない。
- 赤の王
白のクイーンを取り返すため戦うこととなる。キングなので一歩ずつしか動けない。ビームを出したり、殴りかかってくる。
- トゥイードル・ディーとトゥイードル・ダム
二人一組で襲ってくる。大きな方がディー、小さな方がダム。飛んできて上から踏みつぶしてきたり、腹から分身を出してくる。アリスの認識においては現実の精神病院の雑役夫とこの兄弟が同一視されているらしく、そのことをにおわせるセリフを言う。
- 帽子屋
中盤あたりで出てくる敵。「帽子屋は6時に来るよ、6時きっかりに」という言葉通り、6時になると時計から出てきてアリスに襲いかかる。また12時になって時計に戻ると、クロックワーク(ロボット)を2体出してきてアリスを攻撃させる。
- セイウチと大工
原作でもディズニー版でも共通した役割を持つ。無垢で哀れな牡蠣の子たちを騙して文字通り喰らい尽くす。
- ジャバウォック
アリスとの戦闘は2回。1回目は途中でグリフォンが助けに来てくれるが、2回目の戦闘前にグリフォンがやられてしまうので戦うこととなる。炎での攻撃は恐ろしく強く、また飛んでいるので攻撃が当たりにくい。ゲーム中最強の敵であることは間違いなく、難易度次第では悪夢のような強さで多くのプレイヤーを悩ませた。
- ハートの女王(赤の女王)
作のラスボス。不思議の国を狂わせた元凶。ゲーム内では「赤の女王」と呼ばれている。容姿は原作とは全く違っており、アリスの心の傷を最も端的に象徴する敵である。
おもちゃ
いわゆるゲーム中の武器である。
プライマリ(メイン)・セカンダリ(サブ)の2通りの使用法があり、おもちゃごとに性能が異なる。
初期装備の「ナイフ」なら、近接戦・投擲の二通りの方法で使用可能。ほとんどのおもちゃは使用すると「勇気(MPのようなもの)」を消費する。
※チェシャ猫のセリフ
- ナイフ
「ナイフだけでは充分とは言えない、役に立つ物があったらキープしておけ、捨てていいのは愚かさだけ。そうすれば生き残れる。」
基本の武器。プライマリ(メイン)攻撃では切りつけ、セカンダリ(サブ)攻撃はナイフを投げつける。どちらも勇気を消費しない攻撃だが、ナイフを投げると一時的に武器がない状態になってしまう。投げナイフは返ってくるのが遅く連射することはできないが、想像以上に遠くまで正確に飛び、意外と強い(簡単モードのトランプ兵なら一発で倒せる程度)。ナイフ縛りという縛りプレイが存在する。
- トランプ
「トランプでいたずらするのはまだいいが、しかしトランプがものを切ったり刻んだりするとなると笑い事ではない。」
プライマリは1枚ずつ投げつけ、セカンダリは9枚ほどを一気に投げる。敵をやや下がらせる(ノックバック効果)、連射可能、ロックしていれば追尾機能がつく、と使い勝手は良い反面攻撃力はかなり低く、敵を倒す前に勇気がなくなってしまうことが多々ある。
- クロッケーの木槌
「なぞなぞだ。クロッケーの木槌がこん棒になるのはどんな時?答え、君が相手を打ちのめした時。」
打撃武器として登場。勇気を消費せず、さらにナイフよりも早く打撃が出来る。セカンダリは勇気を使いボールのようなものを敵に撃つ。ボールは壁や床に当たると跳ね返るため動きが予測しづらいが、敵に当たるか時間が過ぎるまでマップ上に残ってくれる。
- びっくり箱ボム
「ジャックは友人だがすぐに癇癪をおこして爆発する。一人で放っておいてやろう。」
プライマリは投げるとすぐに爆発、セカンダリは長い時間炎を吐きながら回転し、その後爆発する。この爆発は、爆心地にいるほどダメージが大きい。なお爆発、炎はアリスもダメージを受け、さらにこの爆弾に当たって燃えた敵に触るとアリスにも火が点く。
- アイスワンド
「凍えるような寒さは切り傷を負わせるよりもはるかに敵の戦闘能力を奪う、しかし冬は永遠には続かないがね。」
プライマリは杖の先から冷気を出し続ける。近距離だと高威力だが離れると弱くなり、また勇気の消費量が多いため多用は禁物である。ただし、大きいメタエッセンス(回復アイテム)を出すブージャムとは相性が良い。セカンダリは氷の壁を作って敵からの攻撃をしばらくの間防ぐことができる。この攻撃で倒された敵は氷像となる。
- 悪魔のサイコロ
「ああ、悪魔のサイコロだ。言っておくが一人でいるときにこれを放るなよ。悪魔に忠誠心はないし、もしやつらが腹を空かせていたら非常に厄介なことになる。」
アリスと一緒に戦ってくれる悪魔を召喚することが出来るサイコロ。持っている数によって召喚できる悪魔が変わり、1個ならばガーゴイル、2個ならガーゴイルかレッサーデーモン、3個ならガーゴイルかレッサーデーモンかキングデーモンがランダムに召喚される。プライマリ・セカンダリともに攻撃方法は同じ。狭くてゲートが展開できなかったり、サイコロが踏まれたときには召喚失敗となり、消費した勇気が戻って来る。またボスステージでは召喚することができず、敵のいないところで召喚すると悪魔に襲われる。なお、上位悪魔は死亡時にメタエッセンスを出す。
- ジャバウォックの目玉の杖
「この杖を使えば目標は激しいエネルギーでことごとく破壊される。」
3つの部品すべて集めると完成する武器。通常武器の中では最強を誇る。最後の部品は武器名どおりジャバウォックの目玉。プライマリはビームを放ち、最後に爆発するエネルギー弾を発射するが、撃つためにはボタンを長く押していなくてはならない。爆発はアリスもダメージを受けるため、接近戦での使用は注意が必要。勇気の消費量も大。セカンダリはボタンを押し続ける間地面に杖を突き立て、離したときにエネルギー弾を空に向かって打ち出す。このエネルギー弾は、数秒経つと照準付近の敵へと落下してくる。照準付近に敵がいなかったり、敵の数よりも明らかに多いエネルギー弾を発射した場合、アリスに向かって攻撃が落ちて来る。
- らっぱ銃
「アホウがらっぱ銃を扱うほど怖いことはない。君の事を言ってるわけじゃないが、慎重に頼むよ。」
本編最強の武器。隠し武器であり、通常方法では最終戦でしか入手できない。勇気メーターをすべて消費して、弾の当たった付近の敵を一掃する。撃った後は反動でアリスがひっくり返り、スキができる。プライマリ・セカンダリともに攻撃方法は同じ。
- 不思議な時計
「この不思議な時計はしばらくのあいだ時をとめる。死と違って時間は動く。じっとしていた者もやはり時とともに動く。死んでいない限りな。」
時間を止めることが出来る時計。もちろんボスには通用しない。時間が止まっている間に敵を攻撃することが出来るのだが、時間が止まっている間はどんなに攻撃しても敵は死なない。時間が動き出すと死ぬ。プライマリ・セカンダリともに同じ。ちなみに1度使用すると、約6分間使えなくなる(ステージが変わっても継続)。
特殊なもの
戦いを有利にさせるものがある。ときにはアリスの風貌が変わるものも。
- 怒りの箱
赤い箱のような形をしている。近づくと赤い霧のようなものがアリスを包み込み、アリスもうめき声を上げてしまう。その後アリスの見た目が悪魔のような外見へと変わり、一定時間アリスの攻撃力が上がる。防御力は変わらず、無敵ではないため注意。
- グラスホッパーティー
バッタ型ティーポット。飲むと一定時間アリスの移動速度、ジャンプ力があがる。バッタのような姿になる。
- 暗き手鏡
ハートのような形をした手鏡。これを覗くとアリスは一定時間姿が見えなくなる。これをひろうとアリスは手鏡を手にとって、髪の毛をとかすという可愛らしい仕草をする。
スキン
有志により多種多様なスキンが作成され、様々なアリスの姿を見ることができる。
関連イラスト
関連イベント
ゲーム開発当初から映画化される予定があると言われているが、2012年8月現在、その見通しは立っていない。
関連タグ
Alice_Madness_Returns……本作の続編。